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ヨモギ(蓬、学名Artemisia indica var. maximowiczii[1][2])は、キク科多年草。 別名モチグサ(餅草)ともよばれる。中国植物名は、艾葉(がいよう)[3]

ヨモギ
Artemisia princeps 2.JPG
ヨモギ
分類
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
亜科 : キク亜科 Asteroideae
: ヨモギ属 Artemisia
: A. indica
変種 : ヨモギ var. maximowiczii
学名
Artemisia indica Willd.
var. maximowiczii (Nakai) H.Hara
シノニム

Artemisia princeps Pamp.

和名
ヨモギ
英名
mugwort


名称編集

和名のヨモギの由来ははっきりしないが、よく繁殖し四方に広がることから「四方草」と書いてヨモギと読ませるという説[4][5]、春によく萌える草から「善萌草」に由来とする説[6][5]、よく燃えるので「善燃草」と書いてヨモギと読ませる説[4][7][8]がある。ヨモギの「ギ」は、茎のある立ち草を意味する[6]

別名は、春に若芽を摘んで餅に入れることからモチグサ(餅草)とよく呼ばれていて[4][9]、また葉裏の毛を集めてに用いることから、ヤイトグサの別名でも呼ばれている[4]。ほかに、地方によりエモギ、サシモグサ(さしも草)、サセモグサ、サセモ、タレハグサ(垂れ葉草)、モグサ、ヤキクサ(焼き草)、ヤイグサ(焼い草)の方言名がある[10][11]

英語では、Japanese mugwortとも呼ばれるが[11]英語のmugwortとは異なることがある。

特徴編集

日本在来種であるが[11]、もともとは中央アジアの乾燥地帯が原産と考えられている[12]。日本の本州四国九州小笠原に分布する[6][13]

山野の草地、道ばたに自生する多年草[3][4]。繁殖力が強く、いたるところでふつうに見られ[9]地下茎を伸ばして増え[13]、集団を作る。

まだ寒い早春のうちから、他の植物に先駆けて白銀色の産毛をまとったロゼット状の若芽を出して冬越しする[6]

春に生長をはじめて、草丈は50 - 100センチメートルほどになり[4][13]は立ち上がり、多数分枝してやや木質化する[14]互生し、羽状に深く裂け、裂片は2 - 4対あり、葉縁はさらに切れ込むか鋸葉があって[13][14]、上部の葉は鋸葉が少なくなる[14]。葉の裏面には白いを密生して白っぽく見える[4][8]。この細かな白い毛は、ヨモギが乾燥地帯の中でも生育していくために、気孔をを開いて葉呼吸するする際に、水蒸気として一緒に貴重な水分が逃げてしまわないようにするためのものだと考えられている[12]顕微鏡で見ると、毛の1本が途中から2つに分かれてアルファベットのTの字に似た構造になっていることから「T字毛」と呼ばれており、根元から生える毛の数を多くしている[12]。さらに毛はを含んでいて、水分を逃がさないしくみになっている[12]

花期は8 - 10月のからごろにかけて、茎を高く伸ばして分枝し、小枝に淡褐色の目立たない小花を穂状に咲かせる[4][6]。茎先の円錐花序に直径1.5ミリメートル、長さ3ミリメートルの長楕円形の頭花を下向きに多数つける[13]。頭花は管状花ばかりで、これを包む総苞クモの巣状の軟毛がある[14]。ヨモギと同じキク科の多くの植物は、植物進化の過程で風媒花から虫媒花へ最も進化したグループであるが、ヨモギは虫媒花をやめて再び風媒花に転換した植物である[15]。このため、他のキク科のような目立った花びらもなく地味で、風に任せて大量の花粉を飛ばすため、秋の花粉症の原因植物のひとつになっている[15][16]

花が終わると総苞が残り、中で果実が熟す[17]。果実は痩果で、長さ1 - 1.5ミリメートルほどの線形で灰白色をしており、冠毛はなく、中央に縦の稜がある[17]。風にのって種子散布すると考えられている[17]

セイタカアワダチソウと同様に地下茎などから他の植物の発芽を抑制する物質を分泌する[18]。この現象をアレロパシー(他感作用、allelopathy)と言う[18]

ヨモギが持っている独特の香りは、乾燥地帯で生える多くの植物と同様に、害虫や雑菌から身を守るために抗菌化物質などの科学物質を発展させてきたものに由来する[15]。香りのもととなっている精油成分は、さまざまな薬効成分があるので、古くから薬草として用いられてきた[6][15]

利用編集

特有の香りがあり、葉には精油約0.02%(シネオール50%、アルファーツヨンセスキテルペン)、アデニンコリンタンニン葉緑素クロロフィルなどを含んでいる[19]。精油は内服すると、血液の循環を促して、発汗作用、解熱作用が働き、浴湯料としても、のどの痛み、腰痛、肩こりの痛みを和らげる。タンニンが、組織細胞を引き締める作用によって、止血や下痢止めに役立てられている[19]。ヨモギ属の属名Artemisiaは、ギリシャ神話の女神アルテミスに由来し、月経痛・生理不順・不妊に効果があるとされ、「女性の健康の守護神」の意味である[5]。ヨモギは、その他の多くの薬効があることからハーブの女王の異名がある[5]

食用編集

早春につんだ新芽を茹で、おひたしや汁物の具にしたり、天ぷらにするほか、餅に入れて草団子草餅蓬餅)にして食べる[3][8]ハハコグサに代わって、餅草として利用されるようになり[20]、葉の裏に生えている細かな毛が絡み合って餅の粘り気が増すので、もともとは色や香りをつけるものではなくつなぎとして用いられたものである[12]

香りの主成分はシネオールによるもので[21]ツヨンβ-カリオフィレンボルネオールカンファー、脂肪油のパルミチン酸オレイン酸リノール酸ビタミンAビタミンB1ビタミンB2などを含む。

薬草編集

に使うもぐさ)は、生長したヨモギの葉を日干しして乾燥させ、臼でついてふるいにかけ、裏側の綿毛だけを採取したものである[7][6]ろうそくのように時間をかけて、ゆっくりと燃えていくことを可能にしているのは、もぐさがを含んでいるためである[12]

6 - 8月ころ、よく生育した葉を採集して陰干ししたものは、艾葉(がいよう)という生薬で、漢方では止血、沈痛、下痢止めなどの目的で処方に配剤される[19][3][注釈 1]

民間では、艾葉1日量15グラムを約600 ccの水で半量になるまでとろ火で煮詰めた煎し汁を、、ウルシ・草かぶれあせも湿疹の患部に冷湿布する用法が知られている[19]。また、この煎じ汁をうがい薬として用いると、歯痛、のどの痛み、扁桃炎、風邪の咳止めに効果があるといわれている[19]。下腹部の冷え、痛み、生理痛生理不順、子宮出血には、同様に1日量3 - 8グラムの艾葉を、約400 - 600 ccの水で前記に準じて煎じた汁を3回に分けて服用する用法が知られている[3][14]。温めながら治す薬草であるので、手足がほてりやすい人や、のぼせ気味の人には禁忌とされる[3]。また、8 - 9月ころに、地上部の茎葉を刈り取って刻んで干したものは、布袋にい入れて浴湯料として風呂に入れてると、肌荒れを防ぎ、痛みを和らげ、保温に役立つ効果があるので、あせも、肩こり腰痛神経痛リウマチ冷え症に良いとされる[19][14]青汁は、血圧を降下させると言われている[14]

アイヌの人々は風邪肺炎の際に、ヨモギを煮る際の蒸気を吸引させて治した[22]

その他編集

道路工事にヨモギを使用する例としては、山や斜面を切り崩して道路を作った際に、雨水などで法面(のりめん)の表土が流出しないように成長の早い低木のアカシア(一般に見られるアカシアおよび、ハチミツのアカシアはニセアカシアのこと)や、草の種などを混ぜた土を吹きつける。ヨモギは成長が早く、多年草であるため、地上部が枯れても残った株が生きており、土壌の固定に適している。ただ、ヨモギの花粉はブタクサと同様に秋の花粉症のアレルゲンでもあり、人工的に多用するには問題点もある。

中国地方の口伝では本願寺門徒の間で蓬(ヨモギ)の根に尿をかけたものを一定の温度で保存することにより、ヨモギ特有の根球細菌のはたらきで硝酸が生成されることを発見したという。馬の尿とヨモギでそれは量産(当時にしては)された。これらは当時の軍事機密であったので厳重に守秘されて一般に広まることはなかったが、本願寺派に供給された火薬の主体であったようである。信長が驚いた本願寺の鉄砲の数は、実は弾薬の量に支配されるものであり、安価な硝酸がそれを支えたのである。

近縁種編集

カワラヨモギ
日本の本州から沖縄にかけて分布し、河原や海岸の砂地に自生する。草丈30 - 100センチメートル、花がつかない茎は短く、ロゼット状に葉を広げる。花茎の葉は1 - 2回羽状に裂ける。花期は9 - 10月で、花茎を立てて卵形の頭花をつける[13]
ニシヨモギ A. indica Willd. var. orientalis (Pamp.)
日本の本州の西部以西[14]南西諸島に自生し、沖縄方言では「フーチバー」と呼ばれる[23]。これは沖縄料理沖縄そばやヤギ汁の薬味としてトッピングに用いられる[23]。この語は長崎弁や博多弁など九州方言に見られる「フツ」、「フツッパ(フツの葉の意)」と同根であると考えられる。雑炊に入れた「ふーちばーじゅーしー」も著名な調理法である。
ヤマヨモギ
日本の本州以北に自生する[14]

文学編集

百人一首』(51番)にある藤原実方朝臣の歌に、燃えるような恋の炎をヨモギに比喩して詠んだ歌がある[7]。「かくどだに えらはいふきの さしも草 さしもしらじな 燃ゆる思ひを」である[7]。「伊吹山のさしも草が燃えるように、私の燃えるような思いが、それほどまでとは、あなたは知る由もないでしょう」という意味で、「さしも草」とはヨモギのことであり、漢字で「指燃草」の字が当てられている[7]

花言葉は、「幸福」「平和」「平穏」「夫婦愛」「決して離れない」である[11]

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ なお、艾、艾葉には、ヨモギの他にヤマヨモギ(学名A. montana)も使われる。

出典編集

  1. ^ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ Flora of Japan Database(日本植物誌データベース)[リンク切れ]
  3. ^ a b c d e f 貝津好孝 1995, p. 240.
  4. ^ a b c d e f g h 田中孝治 1995, p. 115.
  5. ^ a b c d 稲垣栄洋 2018, p. 47.
  6. ^ a b c d e f g 亀田龍吉 2012, p. 118.
  7. ^ a b c d e 稲垣栄洋 2010, p. 70.
  8. ^ a b c 田中修 2007, p. 142.
  9. ^ a b 岩槻秀明『街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本』秀和システム、2006年11月5日、470頁。ISBN 4-7980-1485-0
  10. ^ 植物名の由来 中村浩著 P98
  11. ^ a b c d 稲垣栄洋 2018, p. 46.
  12. ^ a b c d e f 稲垣栄洋 2010, p. 72.
  13. ^ a b c d e f 菱山忠三郎 2014, p. 134.
  14. ^ a b c d e f g h i 馬場篤 1996, p. 116.
  15. ^ a b c d 稲垣栄洋 2010, p. 73.
  16. ^ 田中修 2007, pp. 79, 142.
  17. ^ a b c 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2018, p. 40.
  18. ^ a b 田中修 2007, p. 128.
  19. ^ a b c d e f 田中孝治 1995, p. 116.
  20. ^ 稲垣栄洋 2010, p. 56.
  21. ^ 田中篤 1996, p. 142.
  22. ^ 『アイヌと自然シリーズ■第4集 アイヌと植物<薬用編>』財団法人アイヌ民族博物館、2004年、22頁。
  23. ^ a b 山下智道 2018, p. 48.

参考文献編集

関連項目編集

外部リンク編集