コケモモ
コケモモ(苔桃、学名:Vaccinium vitis-idaea L.)は、ツツジ科スノキ属の常緑小低木。果実を食用とするが、栽培されることは稀で、野生のものを採取するのが一般的である。
コケモモ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() 果実をつけたコケモモ
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Vaccinium vitis-idaea L. (1753)[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
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和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
コケモモ(苔桃)、ヒロハコケモモ[2]、 オオバコケモモ[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
cowberry(旧大陸亜種) lingonberry(新大陸亜種) |
分布・生育地編集
自然での生育地はユーラシアの北部や北アメリカの周北林(北半球の寒帯の森林)で、北半球北部の温帯から北極圏に近い地域まで分布する[8]。日本では、北海道、本州、四国、九州に分布する[8]。亜高山から高山の針葉樹林、岩礫地などに自生する[8]。森林に生育するため、日陰で湿度が高く、また土壌が酸性の場所を好む。多くのツツジ科の植物と同様、栄養分の少ない土地でも耐えられるが、アルカリ性の土壌では生育できない。耐寒性にすぐれ、-40℃以下でも耐えることができる一方、夏が暑い場所では生育しにくい。
特徴編集
常緑広葉樹の小低木で、樹高は10 - 20センチメートル (cm) 程度で、よく分枝して直立した幹はぎっしりと密集している[8]。
葉は互生し、長さ1 - 3 cmの倒卵形で光沢がある[8]。寒冷地に生育する広葉樹ではあるが、冬でも葉を落とさない。地中の根茎を伸ばすことで株が拡大する。
花期は初夏(6 - 7月ごろ)[8]。花は淡紅色を帯びた白色で、長さ約6ミリメートル (mm) の釣鐘型[8]。果期は9 - 10月で、果実は直径7 ;ほどで秋に赤く熟す[8]。
コケモモとクランベリー(ツルコケモモ)はよく混同されるが、花が白く、花冠が部分的におしべと柱頭を囲っている点で異なる(クランベリーの花はピンク色で、花冠が後ろに反り返っている)。また、果実も球状で、クランベリーほど洋ナシ型にはならない。コケモモと同じように果樹として利用されるスノキ属の植物としては、他にブルーベリー、ビルベリー、ハックルベリーなどがある。コケモモは英語ではリンゴンベリー、フィンランドではプオルッカと呼ばれている。
亜種編集
コケモモは以下の2亜種が知られている。
利用編集
果実は生食できるほか、ジャムや果実酒などにする[8]。野生のコケモモは北欧で一般的に見られ、とくにスカンディナヴィア諸国では公有地から収穫することが許可されている。果実は非常に酸味が強いため、通常は砂糖などで甘みを加えて調理し、ジャムやコンポート(砂糖煮)、ジュース、シロップなどとして食用にする。コケモモのコンポートは肉料理の添え物とすることがある。
コケモモは有機酸、ビタミンC、βカロテン、ビタミンB類の他、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンを含む。
葉には、尿路感染症に効くアルブチン 、メチルアルブチンなどの化学物質を含み、日本や北アメリカにおいてはウワウルシ(日本には自生しない)の代用として薬草として利用される。
脚注編集
- ^ Maiz-Tome (2016).
- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vaccinium vitis-idaea L. コケモモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月20日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vaccinium vitis-idaea L. subsp. minus (Lodd., G.Lodd. et W.Lodd.) Hultén コケモモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月20日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vaccinium vitis-idaea L. var. minus Lodd., G.Lodd. et W.Lodd. コケモモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月20日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vaccinium minus (Lodd., G.Lodd. et W.Lodd.) Vorosch. コケモモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月20日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Rhodococcum vitis-idaea (L.) Avrorin コケモモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月20日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Rhodococcum minus (Lodd., G.Lodd. et W.Lodd.) Avrorin コケモモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月20日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 259.
参考文献編集
- Maiz-Tome, L. (2016). Vaccinium vitis-idaea. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T18748884A78457217. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-1.RLTS.T18748884A78457217.en. Downloaded on 25 September 2018.
- 平野隆久監修 永岡書店編 『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、259頁。ISBN 4-522-21557-6。