サンプルリターン

サンプルリターン地球以外の天体惑星間空間から試料(サンプル)を採取し、持ち帰る(リターン)ことである。試料は土砂や岩の状態で収集されることもあれば、宇宙塵のように粒子状のものもある。

サンプルリターンの歴史編集

20世紀編集

初めてのサンプルリターンは、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のアポロ計画による「月の石」の採取である。1969年アポロ11号では約22kg、アポロ12号では約34kg、1971年アポロ14号では約42kg、アポロ15号では約77kg、1972年アポロ16号では約96kg、アポロ17号では約111kgの試料を持ち帰った。アポロ宇宙船は有人だった。

一方、ソビエトルナ計画で無人機によるからのサンプルリターンを行った。1970年ルナ16号では101g、1974年ルナ20号では55g、1976年ルナ24号では170.1gの土を持ち帰った。1996 - 1997年には、宇宙ステーションミールエアロゲルを使用して地球周回軌道のスペースデブリの収集が18ヶ月間かけて実施された。

21世紀現在編集

1976年のルナ24号によるサンプルリターンから25年後に打ち上げられたNASAのジェネシスは、2001年12月から2004年4月にかけて太陽風の試料を収集した。ジェネシスの収集器には超高純度のシリコンサファイヤダイヤモンドが使われており、それらの異なるウエハーは異なる太陽風の粒子を採取するために用いられた。しかし、回収カプセルは2004年9月に地球の大気圏に再突入したがパラシュートが開傘せず、ユタ州の砂漠地帯の地上に激突した。壊れたカプセルから微量の試料を取り出すことができた。それは月より外側から得られた初めての試料だった。

1999年に打ち上げられたNASAのスターダストは、2004年1月にヴィルト第2彗星コマから噴出した粒子を収集し、2006年に地球へ持ち帰った。

 
小惑星探査機「はやぶさ」 再突入カプセル

2003年に打ち上げられた宇宙航空研究開発機構 (JAXA) のはやぶさ2005年に小惑星イトカワの探査を行い、試料の採取を試みた後、2010年6月に地球へ帰還した。サンプル採取装置は設計通りに作動しなかったものの、探査機がイトカワに着陸した時に舞い上がった微粒子が試料容器に到達した可能性があるとして、容器の内壁に付着していた微粒子の一部を回収し分析した結果、大部分がイトカワ由来と判断された。

ロシアでは火星の衛星フォボスからサンプルリターンを行うフォボス・グルント計画が進められ、2011年11月9日に打ち上げられたが、地球周回軌道からの離脱に失敗し、2012年1月15日太平洋に落下した。

進行中編集

JAXAでははやぶさ2を2014年12月に打ち上げ、イトカワとは異なる組成の小惑星からのサンプルリターンを目指して2020年12月の帰還を予定している。

NASAでは、地球近傍小惑星ベンヌからのサンプルリターンを目的とするオシリス・レックス計画を進めており、2016年9月に打ち上げられ、ベンヌを探査中である。地球帰還は2023年を予定している。

ヨーロッパ宇宙機関 (ESA) はNASAと共同で火星からのサンプルリターン「マーズ・サンプル・リターン・ミッション」を計画している。ローバーによるサンプル採取・火星周回軌道への打ち上げ・そして地球までの輸送という3段階を、それぞれ別の探査機を用いて行うという、NASAとの共同計画の一部となっている。最初の探査機はNASAのマーズ2020(探査車パーサヴィアランスを搭載)で、2020年に打ち上げられた。ドッキングや惑星間輸送にはATVベピ・コロンボの技術が応用される予定[1]

将来編集

月面からサンプルリターンは中国がまず2020年末に嫦娥5号[2]、その後も嫦娥6号によって実施する予定である[3]。さらに、地球近傍小惑星 2016 HO3からのサンプルリターン機も2022年の打ち上げを目指しており、サンプルリターン後はエルスト・ピサロ彗星の探査も行う予定[4]

JAXAはかぐや後継機による月からのサンプルリターンを計画している。また火星の衛星からのサンプルリターンは、はやぶさの技術を応用すれば可能と考えており、火星衛星探査機「MMX (Martian Moons eXploration)」[5] が開発段階にある。このほか火星探査機MELOSではミッションの一環として固体表面への着陸を伴わない火星大気のサンプルリターンも構想されている。

NASAは将来的に「ARM (Asteroid Redirect Mission英語版)」と呼ばれる、小惑星の破片を月の近くまで運搬して有人作業により回収するという手の込んだ計画もあるが、こちらは中止される見込み[6]

なおアメリカや中国は有人月探査計画を構想しているため、もし実現すればふたたび有人サンプルリターンの機会も得られることになる。

無人サンプルリターンの一覧編集

有人サンプルリターンの一覧についてはアポロ計画および月の石を参照。

打ち上げ日時 名前 サンプル 収集先 帰還日時 結果
1969年7月13日   ルナ15号 (未帰還) 失敗
1970年9月12日   ルナ16号 /101gの土 1970年9月24日 成功
1971年9月2日   ルナ18号 (未帰還) 失敗
1972年2月14日   ルナ20号 /055gの土 1972年2月25日 成功
1974年11月2日   ルナ23号 (未帰還) 失敗
1976年8月9日   ルナ24号 /170gの土 1976年8月22日 成功
1999年2月7日   スターダスト 100万以上の粒子 ヴィルト第2彗星 2006年1月15日 成功
2001年8月8日   ジェネシス 太陽風の粒子 太陽-地球ラグランジュ点L1付近 2004年9月8日 部分的な成功
帰還時に試料の一部が損傷
2003年5月9日   ハヤブサ/はやぶさ 1,500の微粒子 イトカワ 2010年6月13日 部分的な成功
予定より少ない試料を回収
2011年11月9日   フォボス・グルント /200gの土(予定) フォボス 2012年1月15日 (墜落) 失敗
地球周回軌道からの離脱に失敗
2014年12月3日   はやぶさ2 1gから数gの土 (予定) リュウグウ 2020年12月6日 (JST) 予定 試料採集済
復路航行中
2016年9月8日   オシリス・レックス 60gから2kgの土 (予定) ベンヌ 2023年9月 予定 観測作業中 (2018年12月4日現在)[7]
2020年7月30日
(マーズ2020)
   マーズ・サンプル・リターン・ミッション 火星の岩石や土 火星 (帰還機は未打上) 往路航行中(マーズ2020)

脚注編集

  1. ^ ESA計画の火星探査ミッションを動画で紹介。NASAと連携したサンプルリターンも”. sorae.jp (2019年5月28日). 2019年5月29日閲覧。
  2. ^ “ついに復活した、中国の最強ロケット「長征五号」 - 火星探査への道開く”. マイナビニュース. (2019年12月30日). https://news.mynavi.jp/article/20191230-948504/2 2020年1月13日閲覧。 
  3. ^ 中国、月面基地を建設へ 嫦娥6号〜8号計画に言及”. sorae.jp (2019年1月16日). 2019年1月16日閲覧。
  4. ^ 中国、小惑星/彗星探査機を2022年に打ち上げへ”. sorae.jp (2019年4月25日). 2019年4月28日閲覧。
  5. ^ 火星衛星探査機「MMX」 (PDF)”. JAXA/ISAS. 2017年3月25日閲覧。
  6. ^ NASA、「アーム計画」中止へ 小惑星サンプルリターンミッション”. sorae.jp (2017年6月19日). 2017年6月19日閲覧。
  7. ^ 永山悦子 (2018年12月4日). “オシリス・レックス「ベンヌ」到着 米国初の物質採取に挑戦 はやぶさ2と連携”. 毎日新聞. https://mainichi.jp/articles/20181204/k00/00m/040/069000c 2018年12月4日閲覧。 

参考資料編集