サーカス (映画)

1928年の映画

サーカス』(The Circus)は、1928年に公開されたアメリカ映画チャールズ・チャップリンが監督・脚本・演出・音楽・主演を務めた。1929年アカデミー特別賞を受賞した[3]

サーカス
The Circus
ポスター(1928)
監督 チャールズ・チャップリン
脚本 チャールズ・チャップリン
製作 チャールズ・チャップリン
出演者 チャールズ・チャップリン
マーナ・ケネディ
ハリー・クロッカー
音楽 チャールズ・チャップリン
配給 ユナイテッド・アーティスツ
公開 アメリカ合衆国の旗 1928年1月6日
日本の旗 1928年3月29日[1]
上映時間 72分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
配給収入 $3,800,000(世界全体)[2]
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チャップリンがスタントなしで挑んだ綱渡りのシーン

概要 編集

チャップリンがユナイテッド・アーティスツで製作した3作目の映画である (彼自身の出演作品としては『黄金狂時代』に次いで2作目)。公開当時はサイレント映画であったが、1970年に新規に録音したBGMを付けて再公開された。

撮影前に映画のセットであるテントが暴風で破壊されたり、4週間もの間撮り溜めたフィルムが現像のミスで使用不能になるなど、本作品の撮影は困難を極めた[4]。私生活でも二人目の妻であるリタ・グレイとの離婚騒動が有ったりと、チャップリンが公私共に多難であった時期に製作された作品である。そのためか、後年のチャップリン自伝でもチャップリン本人はこの映画について一言も言及していない。

この作品でチャップリンはアカデミー賞喜劇監督賞・主演男優賞脚本賞にノミネートされたが、特別賞の受賞にともなってノミネートを取り消された。ノミネート取り消しに関しては、ハリウッドで反感を買っていたからという説もある[5]

本作の残存するNGシーンがドキュメンタリー『知られざるチャップリン英語版』で紹介されている(#外部リンク参照)。

あらすじ 編集

 
警察に追われて見世物小屋に逃げ込んだチャーリー。ミラーハウスで出口が分からず右往左往…。

見世物小屋を見ていた放浪者(チャップリン)は、スリとして警察に追われ巡業中のサーカスのテント小屋に逃げ込んたことがきっかけで、大道具係としてサーカスに入団。ドジを踏むたびに観客に大うけし、愉快なキャラクターとしてたちまち売れっ子になる。

彼は団長の義理の娘[注 1](マーナ・ケネディ)に恋をするが、彼女は新しく入団した綱渡り師(ハリー・クロッカー)に夢中。彼女をふり向かせようと、放浪者はひそかに綱渡りの練習をするのだった。

そんな中、綱渡りの演目を前にして綱渡り師がいなくなり、放浪者が代役に抜擢される。命綱が外れたりなどのハプニングの中、放浪者はみごとに綱渡りを演じきる。しかし、娘が団長に虐待されているのを見て殴り掛かったため解雇される。娘も虐待に耐えかねてサーカスを抜け出し、放浪者について来ようとする。放浪者は迷った末に、恋敵であった綱渡り師に彼女を託す。娘と綱渡り師は結婚し、娘は放浪者のサーカスへの復帰を条件に綱渡り師と共にサーカスに戻る。

サーカスの馬車が次の興業へと旅立つ中、放浪者はその地にとどまり、去っていくサーカス一座を見送る。

すべてが去り閑散とした跡地に座り込み物思いに沈んでいた放浪者は、やがて思いを振り切るかのようにその場を立ち去っていった。

キャスト 編集

出典:[6]

製作 編集

着想 編集

チャップリンが「何らかの理由で逃れられない状況下でギャグを演じたい」と考えたのに対して、ヘンリー・バーグマンからサーカステントで綱渡りをすることを提案されて本作が企画された[7]

撮影 編集

綱渡りの特訓をして習得したチャップリンは製作を開始する。綱渡りの回数は700回以上、ライオンと共に檻に入ったのは200回に及んだ[7]

こぼれ話 編集

  • チャップリン演じる放浪者が綱渡りするシーンはスタント特撮を一切用いておらず、すべて本人が実際に演じている。
  • 映画監督の牛原虚彦は、本作の撮影隊に参加した[10]
    • チャップリンがスタジオに来るとき乗ってきた自動車の車種を確かめて、待機中のスタッフに知らせるのは牛原の役目だった。これは、チャップリンはその日の気分によって車を変えるので、スタッフも車種を知ることでチャップリンの心の状態を推量することができたことに由来する[11]
  • 再公開の際にチャップリン自身が映画の主題歌を歌った。題名は「Swing High Little Girl」(ブランコをこげ、少女よ)[12]

評価 編集

  • 1928年 第5回「キネマ旬報ベストテン・外国映画」(キネマ旬報発表)第3位[13]

個人のランキングでは、フェデリコ・フェリーニが好きな映画ベスト10の第1位に挙げている(『Sight and Sound』2001年。『街の灯』『殺人狂時代』と同位)[14]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ キャストの字幕では「Step-Daughter」(夫または妻が結婚する前に生まれている配偶者の娘、継娘のこと)と表記されている。

出典 編集

  1. ^ 東京朝日新聞』1928年(昭和3年)3月28日夕刊 広告(帝国館武蔵野館
  2. ^ Biggest Money Pictures”. Variety. p. 62 (1932年6月21日). 2022年10月14日閲覧。 “His 'The Circus' did a total of $3,800,000.”
  3. ^ The 1st Academy Awards - 1929” (英語). Oscars.org. Academy of Motion Picture Arts and Sciences. 2023年10月18日閲覧。
  4. ^ Robinson, David [in 英語]. "Charlie Chaplin : Filming The Circus". charliechaplin.com (英語). Roy Export S.A.S. 2023年12月27日閲覧Even before shooting began, the huge circus tent which provides the principal setting for the film was destroyed by gales. After four weeks of filming, Chaplin discovered that bad laboratory work had made everything already shot unusable. In the ninth month of shooting, a fire raged through the studio, destroying sets and props.
  5. ^ First Academy Awards ceremony - This Day In History” (英語). History channel. A&E Television Networks, LLC.. 2023年10月18日閲覧。 “A special honorary award was presented to Charlie Chaplin. Originally a nominee for Best Actor, Best Writer and Best Comedy Director for The Circus, Chaplin was removed from these categories so he could receive the special award, a change that some attributed to his unpopularity in Hollywood.”
  6. ^ The Circus (1928) - Full Cast & Crew” (英語). IMDb. 2023年10月18日閲覧。
  7. ^ a b 大野 2022, 第2章 謎解きチャップリン映画.
  8. ^ 田吾作ロイド一番槍”. TSUMIKI INC.. 2023年10月18日閲覧。
  9. ^ That monkey…” (英語). Charlie Nelson on Silent Screen. onsilentscreen (2017年12月3日). 2023年10月18日閲覧。 “Other sources have preferred to call the little show-stealer of The Kid Brother, Josephine. That name has certainly been attached to the co-star of The Cameraman, and so today, they are generally regarded as one and the same, and not two monkeys in similar-looking suits.”
  10. ^ 五高の歴史 〜卒業生〜 熊本大学五高記念館”. 熊本大学五高記念館. 熊本大学五高記念館. 2023年8月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月18日閲覧。
  11. ^ 「ラ ブレア 1926年」『チャップリン : その愛と神話』芳賀書店、1978、150頁。 
  12. ^ Charlie Chaplin : Swing Little Girl”. www.charliechaplin.com. 2023年7月30日閲覧。
  13. ^ 1928年・第5回 - キネマ旬報 ベスト・テン”. www.kinenote.com. キネマ旬報社. 2022年12月9日閲覧。
  14. ^ Rodriguez, Cain (2015年1月16日). “Federico Fellini’s 10 Favorite Films Includes ‘2001: A Space Odyssey,’ ‘The Birds,’ And His Own ‘8 1/2’” (英語). IndieWire. Penske Media Corporation. 2024年2月22日閲覧。

参考文献 編集

外部リンク 編集