スダチ
スダチ(酢橘、学名: Citrus aurantium Sour Orange Group、シノニム: Citrus sudachi)はミカン科の常緑低木ないし中高木。徳島県特産の果物で、カボスやユコウと同じ香酸柑橘類[5]。果実は直径3 - 4センチメートルで、多くは緑色の未熟果が使われて果汁に多くの酸味がある[6]。名称の由来は食酢として使っていたことにちなんで、「酢の橘」から酢橘(すたちばな)と名付けていたが、現代の一般的な呼称はスダチである[7]。
スダチ | |||||||||||||||||||||
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スダチの果実
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Citrus aurantium L. Sour Orange Group[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
スダチ(酢橘) | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Sudachi |
木乃酢(きのす)とも呼ばれる[8]。
形態・生産
編集花期は5月 - 6月頃、純白の花を咲かせ、秋頃に果実が実る。果皮が青い未熟果のうちに収穫し出荷するが、熟すとミカンと同様に黄色くなる。旬は8月 - 10月で露地栽培の果実が出荷され、香りも味わいも最もよいものとなっている[9]。冬の11月 - 2月の出荷品は露地栽培したものを冷蔵して販売し、酸味は比較的穏やかとなり、やわらかな味が楽しめる[9]。3月 - 8月はハウス栽培品で、1年中入手することができる。
現在の主な産地は徳島県神山町や佐那河内村、阿南市である。日本における収穫量は2005年が4,469 トン、2010年が5,882 トンであり、その98%が徳島県で生産されている[10]。2009年から2018年までに生産量は約2000トン減少している[11]。
スダチは徳島県を代表する特産物であり、スダチの花は1974年に徳島県の県花に指定されている[12]。1993年にはスダチをモチーフとした「すだちくん」という徳島県のイメージキャラクターが誕生した。
飲食店やホテルなど業務用の需要が多い[11]。2023年3月31日に地理的表示(GI)保護制度に基づく保護対象に登録された[13]。
特にサンマに合わせて使われることから、スダチの売り上げはサンマの水揚げ量と関係している[11]。またマツタケの輸入量とも関連がある[11]。
利用
編集外皮が青、又は黄色の果実を切り分け、鍋料理の具やサンマなどの焼き魚、魚介類の刺身、あるいは焼き松茸などを食べる直前に、料理に果汁をかけるために添えられる[14][11]。
果汁は食用酢としても用いられ、通常の酢の代りに酢の物の材料としたりする[6]。
果汁以外では、青い果実の外皮部分を薄く切ったり、薬味おろしでおろすなどして、薬味として利用される。スダチとカボスではスダチの方が小さい。徳島県では香りを楽しむために味噌汁や酒に入れる[11]。
成分や薬効
編集フラボノイド系
編集レモンやライムの果汁に豊富なエリオシトリンは、スダチ汁にも同等程度含まれるが、ゆず汁やカボス汁には欠ける成分である。またネオエリオシトリン(ダイダイやベルガモットに豊富)も、スダチの果皮や果汁に検出される[15][16]でもスダチのエリオシトリン含有を報告。エリオシトリンは、脂質過酸化にたいする抗酸化作用が発表されており[17]、ネオエリオシトリンと共にアレルギーや動脈硬化に関与するリポキシゲナーゼの形成を阻害するとされる[18][19]。
また、ナリルチンは、花粉症に効き目があるとされる和歌山県の特産かんきつ類ジャバラの有効成分とされ、ジャバラ汁にはユズ汁の6倍の濃度があるとされるが、スダチ汁にもユズ汁の3倍との結果がある(100ml あたり20.1 mg 対 6.6 mg)[15]。ただし、この物質は、果皮にならばユズやカボスにも相当豊富である[15]。
カルシウム吸収促進
編集カルシウム吸収の促進効果が研究されている[20]。
糖尿病への効果
編集2006年、徳島大学の研究チームが、スダチの搾りかすに血糖値の上昇を抑える効果があると発表した。
同チームと農協の共同研究で、スダチの搾りかすの成分に糖尿病治療の効果がある可能性が判明し、ラットに対する実験で、慢性糖尿病の状態にしたラット7匹に対し、1年間スダチの搾りかすの粉末を与えたところ、6匹に改善の効果があったことが分かった(対照実験として、粉末を与えなかった8匹は血糖値が高いままであった)[21][22]。
その他の特徴
編集出典
編集- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrus aurantium L. Sour Orange Group スダチ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月22日閲覧。
- ^ 植物の命名において、普通19世紀かそれ以前の著名な園芸上の文献で見られるが、適切に公表されたことのない名を表す。hortulanorumの略。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrus sudachi Hort. ex Shirai スダチ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月22日閲覧。
- ^ A discourse on Japanese names of trees (Jumoku Wamei Ko) 114, index 8. 1933
- ^ 旧果樹研究所 果樹MAP 徳島県農林水産総合技術支援センター 2024年1月10日閲覧
- ^ a b 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、192頁。ISBN 978-4-415-30997-2。
- ^ 中国四国農政局「管内の名産品 すだち(徳島県)」四国土地改良調査管理事務所 2024年1月10日閲覧
- ^ 「木乃酢」『日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」』 。コトバンクより2023年6月4日閲覧。
- ^ a b 五明紀春・古川 知子「食材健康大事典」2005年 時事通信社
- ^ 農林水産省特産果樹生産動態等調査2013年7月22日閲覧
- ^ a b c d e f 日本放送協会. “徳島特産のすだち 1日1トン余る異例の事態 コロナやサンマ影響”. NHKニュース. 2021年10月1日閲覧。
- ^ 徳島県のシンボル - 徳島県 2019年2月21日閲覧
- ^ “登録産品紹介(登録番号第129号)_徳島すだち:農林水産省”. www.maff.go.jp. 2023年5月2日閲覧。
- ^ 奧山益朗「松茸には欠かせないスダチの風味」『味覚表現辞典』東京堂出版、2001年、224頁 。「戦前から松茸には欠かせないものとして、徳島から近い都市へ来ていたが...」
- ^ a b c Miyake, Yoshiaki (2006). “Characteristics of Flavonoids in Niihime Fruit - a New Sour Citrus Fruit”. Food Science and Technology Research (Food Sci. Technol.) 12 (3): 186-193. doi:10.3136/fstr.12.186 .
- ^ Kawaii, Satoru; Tomono, Yasuhiko; Katase, Eriko; Ogawa, Kazunori; Yano, Masamichi (1999). “Quantitation of flavonoid constituents in citrus fruits”. Journal of Agricultural and Food Chemistry (ACS Publications) 47 (9): 3565-3571. doi:10.1021/jf990153+ .
- ^ Miyake (2006), p. 186
- ^ 農研機構:近畿中国四国農業研究センター (2005年). “エリオジクチオール及びその配糖体のアラキドン酸代謝系リポキシゲナーゼ阻害効果”. 2013年2月閲覧。
- ^ 野方洋一「機能性成分を高濃度に含有するポンカン果汁の製造法」『食品工業』第45巻第18号、光琳、2002年9月、27-34頁、CRID 1521980705607819904、ISSN 05598990。等
- ^ NII, Yoshitaka; FUKUTA, Kazuhiro; SAKAI, Kentaro; YAMAMOTO, Shigeru (2004). “Japanese Citrus Fruit (Sudachi) Juice Is Associated with Increased Bioavailability of Calcium from Whole Small Fish and Suppressed Bone Resorption in Rats”. Journal of Nutritional Science and Vitaminology (学会誌刊行センター) 50 (3): 177-183. CRID 1390001206323827072. doi:10.3177/jnsv.50.177. ISSN 03014800 .
新居佳孝 (2004). Japanese citrus fruit (sudachi) juice is associated with increased bioavailability of calcium from whole small fish and suppressed bone resorption in rats [スダチ果汁添加による小魚カルシウムの吸収促進および骨吸収抑制効果] (博士(栄養学) 乙第1918号 thesis). 徳島大学. NAID 500000311914。 - ^ 田中直伸; 中川博之橋田 和佳, 佐藤 昌俊, 奥瀬 由惟, 田岡 千明, 岩永 智史, 土屋 浩一郎, 高石 喜久「スダチ (Citrus sudachi)の含有成分並びに血糖値上昇抑制作用について」『第一回食品薬学シンポジウム』、2006年10月。。本件は、CiNii論文の登録論文ではない。[リンク切れ]
- ^ “スダチの搾りかすに血糖値抑制効果、徳島大教授ら発表 : ニュース : 医療と介護”. YOMIURI ONLINE(読売新聞). (2006年8月30日). オリジナルの2006年9月2日時点におけるアーカイブ。
関連項目
編集外部リンク
編集- 豊田哲也「徳島県におけるすだち栽培と産地形成」『徳島大学総合科学部人間社会文化研究』第10巻、徳島大学総合科学部人間社会文化研究編集委員会、2003年、131-144頁、CRID 1050282812440576512、ISSN 0919-9411。
- 田渕雅彦, 福井弘之, 新居康生「スダチ粕を混合した発酵TMRの給与が乳牛の生産性に及ぼす影響」『徳島県立農林水産総合技術支援センター畜産研究課研究報告』第13号、徳島県立農林水産総合技術支援センター、2014年3月、1-5頁、CRID 1050282813732025216、ISSN 2188-6083。