カボス
カボス(臭橙、香母酢、酸橙、学名:Citrus sphaerocarpa)は、ミカン科の常緑広葉樹またはその果実で、柑橘類の一種である。
カボス | |||||||||||||||||||||
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![]() カボスの果実
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Citrus sphaerocarpa Tanaka, nom. nud.[1] | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
カボス | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Kabosu |
特徴編集
ユズの近縁種で、枝には鋭い刺がある。果実は緑色のうちに収穫するが、熟すと黄色くなる。果肉は黄白色で、多汁であり酸味が強い。果汁を搾って食用とする。スダチ等と混同されがちだが、果頂部の雌蕊の落ちた跡の周囲がドーナツ型にやや盛り上がるため外観からも容易に区別できる。また、カボスの果実が一つ100 - 150 グラム程度であるのに対して、スダチは30 - 40 グラム程度と、大きさも全く異なる。
由来編集
主産地である大分県臼杵市では、江戸時代に宗源という医者が京都から苗木を持ち帰ったのが栽培の始まりと伝えられている。臼杵市内には、かつて樹齢300年と言われた古木があり、現在も樹齢200年前後の古木が残っているが、大分県外にはこのような古木はない。このため、大分県原産とする説がある[2]。
名称編集
カボスという名の由来は明らかではなく、文献で確認できるのも第二次世界大戦後のことである[3]。
ダイダイの一種に「カブチ」「カブス」などと呼ばれるものがある。平安時代の深根輔仁による『本草和名』に、「枸櫞」「和名加布知」などの記述があり、現代でも和歌山県から三重県にかけてダイダイを「かぶち」と呼ぶ地域がある[4]。また、1603年頃発行の『日葡辞書』にはCabusuの記載があり、1709年(宝永7年)に刊行された貝原益軒の『大和本草』にも「カブス」についての記載があって、その名の由来は「柑子」(かむし、かむす)が訛ったものとも、乾燥した皮を燻して蚊除けに用いるからとも記されている[5]。さらに、愛媛県の一部で三宝柑を「かぶす」、大阪府の一部で文旦を「かぼそ」と呼ぶ地域があった[4]。しかし、これらの柑橘類の名称と「カボス」との関連も不明である。
生産編集
2007年の日本全国の総収穫量は5,175 トン。都道府県別の収穫量は、大分県(5,019 トン)、愛媛県(144 トン)、宮崎県(17 トン)の順で、大分県が全国の97%を占める主産地となっている[6]。また、カボスには表年と裏年があり、表年に当たった2009年の大分県の出荷量は約6,600 トン。2010年は約4,200 トンと予想されている[7]。大分県内では臼杵市、竹田市、豊後大野市、国東市での生産が多い[3]。出荷期は、ハウスものが3 - 7月、露地ものが8 - 10月で、10月中旬 - 2月には貯蔵ものが出荷される[8]。
利用編集
カボスの果汁は、酸味に富むとともに独特の香りを有しており、刺身や焼き魚等の薬味として、あるいは鍋料理のポン酢や、酢の物等の調理に用いられる他、大分県では、味噌汁、麺類、焼酎などにも少し果汁を垂らして風味を付けることもある。果汁を手で絞る時には、縦に4つに切って、切り口を上に向けて両方からじわじわとつまむと、種を落とさず、果皮の香りも加えることができる。また、果汁や果肉を用いた調味料、ジュース、清涼飲料水、氷菓、スナック菓子、和菓子、洋菓子、酒類等の加工品も販売されている。
大分県では、ブリ等の魚類の飼料にカボスを加えると、カボスに含まれるポリフェノールの効果で、切り身の変色や臭みを長時間抑えることができることから、カボスを加えた飼料で養殖したブリやヒラメを「かぼすブリ」「かぼすヒラメ」として売り出している[10][11]。
キャラクター編集
2003年に大分で開催された全国都市緑化フェアでは、カボスをモチーフとしたカボたんがマスコットとされた。カボたんは、フェア終了後、大分県カボス振興協議会によって「大分かぼす」のマスコットとして採用され[12]、2005年からはカボスに限らない大分県の地域振興全般に利用が広げられている[13]。
関連項目編集
脚注編集
- ^ "Citrus sphaerocarpa Tanaka, nom. nud". Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2010年3月25日閲覧。
- ^ カボスの由来-カボス情報 大分県カボス振興協議会
- ^ a b 大分県の特産品 大分県
- ^ a b 尚学図書編『日本方言大辞典』p593、小学館、1989年
- ^ 大和本草 巻之十 木之上 (PDF) 2011年7月25日放映の『雑学王』(テレビ朝日)にて、皮を燻すエピソードが語源として紹介された。
- ^ 平成19年産特産果樹生産動態等調査
- ^ 「かぼすハイボール」県内取扱店が増加中『大分合同新聞』2010年09月21日
- ^ 「ピンチ、大分カボス 供給過多、不況直撃」『大分合同新聞』2010年11月24日
- ^ 大分かぼすがGIに登録されました大分カボス振興協議会(2019年11月18日閲覧)
- ^ 「ブリにカボス飼料 切り身の変色遅らせる」『大分合同新聞』2009年12月30日
- ^ 「かぼす飼料で味力向上 ブリ・ヒラメ出荷へ」『大分合同新聞』2010年12月06日
- ^ 「めじろんの再就職先は? 県が検討」『大分合同新聞』2008年10月14日
- ^ 「カボたん」の商標登録出願について - 大分県