トウテイラン

オオバコ科クワガタソウ属の多年草

トウテイラン学名Pseudolysimachion ornatum、洞庭藍)は、ゴマノハグサ科APG分類ではオオバコ科ルリトラノオ属の種。日本固有種[1][2][3]。中国・湖南省にある洞庭湖(どうていこ)の水のように美しいことが名称の由来である[4]

トウテイラン
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : シソ類 lamiids
: シソ目 Lamiales
: オオバコ科 Plantaginaceae
: クワガタソウ連 Veroniceae
: ルリトラノオ属 Pseudolysimachion
: トウテイラン
学名
Pseudolysimachion ornatum

特徴

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京都府立丹後緑風高等学校網野学舎で栽培されている個体(7月2日時点)

ゴマノハグサ科APG分類ではオオバコ科)の多年草である[2]。草丈は40cmから70cmであり、茎は直立または斜上する[2]

葉序は下部で対生し、上部で互生する[2]葉身は披針形から長円状披針形であり、長さは5cmから10cm、幅は1cmから2.5cmである[2]。葉の下面には白色の毛が密生する[5]

開花時期は7月から11月であり[3]、特に8月から9月である[2]花序は頂生し、穂状に多くの花が付く[2]花冠は青紫色であり、長さは約6mmである[2]。花冠より長い2本の雄蕊を有する[2]果実は球形であり、約4mmで残存するより長い[2]

分布・生態

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日本固有種[1][2][3]京都府鳥取県島根県隠岐諸島のみに分布し[3]、海岸部に自生する[1]

開発や採取などによって急激に個体数を減らしており[3]環境省レッドリストにおける絶滅危惧II類(VU)に指定されている[1]。島根県では準絶滅危惧種(NT)に[3]、京都府では絶滅危惧種(EN)に指定されている[1]

開花期以外にもリーフプランツとなり[3]園芸植物として栽培されることがある[4]。栽培は比較的簡単であるとされ、日当たりや排水に注意すればそれほど手を掛けなくても育つ[6]。種子を蒔き育てると生育しやすい[7]

京都府

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京丹後市役所本庁舎駐車場に植えられているトウテイラン

京都府京丹後市では「市の花」に選定されている[8]網野町琴引浜浜詰海岸に自生しているほか[9]弥栄町道の駅丹後王国「食のみやこ」などに植えられている[10]

1992年(平成4年)、京都府によって京丹後市久美浜町箱石砂丘の群落が京都の自然200選に選定された[11]。2009年(平成21年)には京丹後市が市制5周年記念式典を開催し、トウテイランを「市の花」に選定した[12]京都府立峰山高等学校弥栄分校では園芸の授業でトウテイランを栽培し、2019年(令和元年)8月には京都府立網野高等学校の花壇に約80株が移植された[13]

鳥取県

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鳥取県東伯郡湯梨浜町では「町の花」に選定されている[14]。湯梨浜町には3か所に自生地があるが、全ての自生地を合わせて300個体から400個体程度であり、島根県や京都府と比べて絶滅リスクが高いとされている[15][16]

鳥取県園芸試験場はバイオテクノロジー技術を用いた山野草の保護を行っており、1995年(平成7年)からは鳥取県立倉吉農業高等学校と共同でトウテイランの増殖に取り組んでいる[17]。2022年(令和4年)5月2日、湯梨浜町のトウテイラン群落は鳥取県指定天然記念物に指定された[15][16]。自生地がある湯梨浜町橋津地区には、同年6月4日にトウテイラン1700株が植えられた「トウテイランの里」が開設された[18]

島根県

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島根県では隠岐諸島にのみ自生する[19]。かつて隠岐諸島では各地の海岸に自生していたが、盗掘などが理由で激減した[20]島前知夫里島西ノ島では一般的で沿道でも確認できるが、中ノ島では限られた場所にのみ分布する[21]。2011年(平成23年)から2013年(平成25年)に実施された調査では、いずれの自生地も海岸または海岸近くであり、中ノ島においてはトウテイランの自生が確認できなかった[3]。隠岐諸島では初秋を彩る植物とされている[22]

脚注

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  1. ^ a b c d e トウテイラン 京都府レッドデータブック2015
  2. ^ a b c d e f g h i j k 日本植物画倶楽部『日本の絶滅危惧植物図譜』アボック社、2004年、p.178
  3. ^ a b c d e f g h 加古哲也、持田耕平、中務明、小林伸雄「隠岐諸島に自生するトウテイラン(Veronica ornata Monjuschko)の園芸化を目的とした各種形質の評価」『園学研』19巻4号、2020年
  4. ^ a b 大橋広好、門田裕一、邑田仁、米倉浩司、木原浩(編)『改訂新版 日本の野生植物 5』平凡社、2017年、pp.86-87
  5. ^ 加藤雅啓海老原淳(編)『日本の固有植物』東海大学出版会、2011年、pp.130-131
  6. ^ 「トウテイラン 晩夏から秋を彩る青い花」『朝日新聞』2021年9月7日
  7. ^ 京都府レッドデータブック2002トウテイラン(2024.07.03閲覧)
  8. ^ 市の花・木・歌 京丹後市
  9. ^ 日本固有のトウテイランが咲き出しました 琴引浜鳴き砂文化館、2022年7月18日
  10. ^ 京都の絶滅危惧種「トウテイラン」深い青紫の花が楽しめる道の駅は 京都新聞、2023年9月22日
  11. ^ 京都の自然200選 京都府
  12. ^ 「『市の歌』高らかに 京丹後市制5周年の記念式典に市民ら700人」『朝日新聞』2009年11月22日
  13. ^ 「『トウテイラン』を網野高に80株移植 絶滅危惧2類」『朝日新聞』2019年9月7日
  14. ^ 「薄い青紫色のトウテイラン 燕チョウ園で見ごろに 湯梨浜町引地」『朝日新聞』2006年8月31日
  15. ^ a b 湯梨浜町のトウテイラン群落 鳥取県
  16. ^ a b 保護文化財3件、天然記念物1件を答申 県文化財審 朝日新聞デジタル、2021年2月24日
  17. ^ 「バイテクでトウテイラン増殖に成功 気園芸試験場と倉吉農高」『朝日新聞』1997年5月15日
  18. ^ 「『トウテイラン』親しめる施設に 湯梨浜に開設」『朝日新聞』2022年6月11日
  19. ^ 『改訂 しまね レッドデータブック 2013 植物編』島根県環境生活部自然環境課、2013年3月、172頁。 
  20. ^ 「青紫の花、清々と 隠岐の島、トウテイラン」『朝日新聞』2019年9月23日
  21. ^ 深谷治、小池愛子『島あるき ハンドブックⅡ 西ノ島・知夫の花編』NPO法人 隠岐しぜんむら、2022年3月、96頁。 
  22. ^ 秋空突く瑠璃色 トウテイランの花見ごろ 山陰中央新報、2021年9月4日

参考文献

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  • 大橋広好、門田裕一、邑田仁、米倉浩司、木原浩(編)『改訂新版 日本の野生植物 5』平凡社、2017年
  • 北村四郎、村田源、堀勝(著)『原色日本植物図鑑 草本編1』保育社、1957年
  • 加藤雅啓海老原淳(編)『日本の固有植物』東海大学出版会、2011年
  • 牧野富太郎(原著)、北隆館図鑑編集部(編)『新学生版 牧野日本植物図鑑』北隆館、2020年