トーマスのテーマ』(原題: Thomas Theme[注釈 1]Thomas The Tank Engine Theme[注釈 2])は、1984年に発表された楽曲。イギリスの子ども向けテレビ番組きかんしゃトーマス』の主人公であるトーマスのテーマ曲で、第1シリーズから第7シリーズ(1984年~2003年[注釈 3]まで同番組のメインテーマとして使われた。作曲はマイク・オドネルとジュニア・キャンベル英語版。『きかんしゃトーマスのテーマ』表記も多い。

トーマスのテーマ
きかんしゃトーマス楽曲
英語名Thomas Theme
Thomas The Tank Engine Theme
リリース1984年
規格CD
ジャンルインストゥルメンタル
作曲者マイク・オドネル
ジュニア・キャンベル
ミュージックビデオ
「Thomas Theme」 - YouTube Music

歌詞が付けられたものや、編曲の差異などで公式に複数の音源が存在する。本項目では、オープニングなどで使用されたインストゥルメンタルのオリジナル音源を中心に記述する。

制作経緯・発表 編集

1982年、作曲者の一人であるマイク・オドネルは音楽家として活動すると共に、元ビートルズのメンバーであるリンゴ・スターイギリスバークシャー州アスコット英語版に所有するレコーディングスタジオの管理人を務めていた[2][3]

ある日、海外旅行からスタジオへ戻ったリンゴはマイクに「あるシリーズ番組のナレーターのオファーを受けた。その番組はまだ音楽担当者を見つけていないようだ」と話す。これが『きかんしゃトーマス』であった[2][3]。この件に興味をもったマイクは、デヴィッド・ミットンのオフィスを経由し番組プロデューサーのブリット・オールクロフトへ直接電話をかける[2]。そこでブリットは、音楽担当は候補が何人かいるが決まっていないこと、主題曲が決まっていないことを明かし「もしアイデアがあるなら、提出する時間はまだある」とマイクに話した[3]

マイクは電話後、当時近所に住みバンド活動で何度も組んでいたジュニア・キャンベル英語版を誘い、3つのデモ音源を作成してブリットへ送る。その結果、それが採用されたことで2人は同番組の音楽を担当することに決定。この時に作成されたデモ音源の内の1曲が「トーマスのテーマ」となった[注釈 4][3]

制作 編集

作曲の際、既にリンゴがナレーターを務めることを知っていたマイクは「いつか歌詞がつけられ、リンゴがテーマを歌ったり演奏することもあるだろう」と考え、それを念頭に置き曲を制作した。そのため、テーマはビートルズの楽曲「ミーン・ミスター・マスタード」をオマージュしている[2][4]

使用された楽器は、以下の4つである[5][6]

レコーディングは、ロンドンにあるリンゴのスタジオで行われた。グランドピアノもそこにあったものである[7]

発表・使用終了 編集

1984年、『きかんしゃトーマス』放送開始と同時にテーマも発表。視聴層の子どもだけでなく、その親や祖父母まで老若男女から好評を得た[4]。また、編曲の異なるものが劇伴として各シリーズごと作成され使われた。

第3シリーズでは、本曲に補作曲を行い歌詞がつけられたものがリリースされた。

2003年、第7シリーズで番組の権利がヒット・エンターテインメント(以下「ヒット社」)に移行した際に、それまで製作した楽曲の著作権ロイヤルティーをめぐり裁判となった[8][9]。この裁判で、オリジナル音源の権利はヒット社側にあるとの判決が出ており、後にマイクも自身のSNSなどでその趣の説明をしている[10]。ヒット社の方針による作風の変化やスタッフ一新の影響も受け、マイクとジュニアは本シリーズをもって音楽担当を降板。同時にテーマも使用終了となり、第8シリーズからはエド・ウェルチ英語版作曲の『きかんしゃトーマスのテーマ2』が使われるようになった。

以降はごく稀だが、関連イベントや『きかんしゃトーマス トーマスのはじめて物語』などの作品でアレンジされたものが不定期に使用されている。

リリース 編集

イギリスなどで、オープニングで使用された約30秒のTVサイズはリリースされている。ただし、VHSソフトのエンドロールやイベントなどで使われたフルサイズに関しては、公式にリリースされたことは一度も無い日本国内では、TVサイズも含めて一度もリリースされたことがない。

オリジナルのマスターテープ(劇伴を含む)は、すべてヒット社(現:マテル)が保有している[11]。作曲者のマイクはそのバックアップを保管しているものの[10]、契約上の理由から自らリリースすることは不可能である[12]。ただし、ファンの要望を多く受けたマイクは、2020年にセルフカバー音源を発表。他の劇伴のセルフカバーと共にリリースした[13]

収録アルバム 編集

※すべてTVサイズ。イギリス・アメリカ合衆国で発売。

タイトル 発売日 規格 レーベル 品番 備考
Thomas' Songs & Roundhouse Rhythms 2001年4月3日 CD
カセットテープ
Kid Rhino 081227675721 N/A
2008年5月13日 CD Koch Records KOC-CD-4477 再発売商品
2020年4月10日 デジタル配信 Mattel - Arts Music N/A 再発売商品
Thomas' Train Yard Tracks 2002年9月17日 CD Kid Rhino R2 78267 N/A
2008年 CD Koch Records KOC-CD-4478 再発売商品
2020年4月10日 デジタル配信 Mattel - Arts Music N/A 再発売商品
Happy Birthday, Thomas! 2020年5月8日 デジタル配信 Mattel - Arts Music N/A ハイレゾで配信

「きかんしゃトーマスのテーマ」 編集

きかんしゃトーマスのテーマ
きかんしゃトーマスオールスターズ/トーマス児童合唱団の楽曲
英語名Thomas' Anthem
Thomas We Love You
リリース  1999年12月1日
規格CDVHS
録音1992年
レーベル  ポニーキャニオン
作詞者マイク・オドネル
ジュニア・キャンベル
山田ひろし(訳詩)
作曲者マイク・オドネル
ジュニア・キャンベル
ミュージックビデオ
「Thomas's Anthem」(英語版) - YouTube

1992年、本テーマを基に、補作曲を行い歌詞がつけられたものが『きかんしゃトーマスのテーマ』(原題:Thomas' Anthem、イギリスなどではThomas We Love You)としてリリースされた。『きかんしゃトーマス』で初めてミュージック・ビデオが制作された楽曲である。作曲のマイクとジュニアが作詞も担当した。

日本では、1991年12月30日にフジテレビの特別番組『ひらけ!ポンキッキ・スペシャル きかんしゃトーマスとイギリスのたび』内で世界に先駆け初公開された。オリジナルテーマと異なりCDなど多くのメディアで楽曲がリリースされており、日本での「トーマスのテーマ」はこちらを指すことも多い。

日本語版の訳詩は山田ひろし。歌唱は、登場キャラクターの声優によるきかんしゃトーマスオールスターズ[注釈 5]とトーマス児童合唱団が担当した。

収録媒体 編集

※日本のみ記載。映像媒体はミュージック・ビデオを収録。

タイトル 発売日 規格 販売元
レーベル
品番 備考
きかんしゃトーマス オリジナルソング&ストーリーズ 1998年8月1日 VHS ポニーキャニオン PCVC-10712 英語版を収録
みんなでうたおうトーマスのうた 1 1999年12月1日 PCVC-10918 日本語版を収録
きかんしゃトーマス オリジナルソングス VOL.1 CD PCTG-217
きかんしゃトーマス オリジナルソング&ストーリーズ 1 2004年8月1日 DVD PCBC-50559 英語版・日本語版共に収録

評価 編集

日本では、転調が多い曲として挙がることが多い[14][15][16][信頼性要検証]

ロブ・ベシッツァ英語版は、本テーマがサンプリングリミックスマッシュアップの題材として頻繁に使用されていること述べ、「根底にある曲の複雑なメロディー、ラグタイム、カーニーミュージック、そしてシンプルなドキドキするビートを使ったミックスは相容れないものです」と評している[17]

アメリカのYouTuberで音楽家のチャールズ・コーネルは、テーマを音楽面から分析し「皮肉などでなく本当に良い曲だ」と評している[18]

映画『ブレット・トレイン』では、登場人物の一人がトーマスの大ファンという設定だったため、本テーマをアレンジしたBGMを挿入するアイデアがあったという[19]

カバー 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 公式による表記
  2. ^ 作曲者のマイク・オドネルによる表記
  3. ^ 後に”クラシックシリーズ”と呼称される[1]
  4. ^ 残る2曲はそれぞれ「トビーのテーマ」と「エドワードのテーマ」になった。
  5. ^ ゴードン(内海賢二)、パーシー(中島千里)、ジェームス(森功至)、エドワード(高戸靖広)、ヘンリー(堀川亮)、トビー/テレンス(川津泰彦)、ビル(中友子)、ベン(西田裕美)、バーティー(緑川光

出典 編集

  1. ^ 新作DVDが2タイトルリリース♪”. きかんしゃトーマスブログ. ヒット・エンタティンメント・リミテッド (2012年1月25日). 2022年10月6日閲覧。
  2. ^ a b c d Tom Parry (2020年11月28日). “FIVE FACTS ABOUT MIKE O’DONNELL – RIGHT ON TRACK”. SYN NEWS. 2021年1月22日閲覧。
  3. ^ a b c d Mike, O'Donnell (2021年6月24日). “THE FIRST MEETING”. Mike O'Donnell Official Blog. MOD MUSIC. 2022年10月6日閲覧。
  4. ^ a b Mike, O'Donnell (2021年7月4日). ““BUT THAT’S ANOTHER STORY” SAID RINGO…”. Mike O'Donnell Official Blog. MOD MUSIC. 2022年10月6日閲覧。
  5. ^ Mike, O'Donnell (26 August 2014). Thomas The Tank Engine Theme (Original) - コメント欄/Carson's Video Workshopに対する返信. YouTube. 2022年10月4日閲覧
  6. ^ Mike O'Donnell [@MikeODonnell5] (2021年9月12日). "マイク本人のコメント". X(旧Twitter)より2022年10月6日閲覧
  7. ^ Mike O'Donnell [@MikeODonnell5] (2021年9月12日). "マイク本人のコメント". X(旧Twitter)より2022年10月6日閲覧
  8. ^ Barbara Dohmann QC”. Blackstonechambers.com. 2017年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月6日閲覧。
  9. ^ Tom Hickman QC”. Blackstonechambers.com. 2017年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月6日閲覧。
  10. ^ a b Mike O'Donnell [@MikeODonnell5] (2021年10月25日). "マイク本人のコメント". X(旧Twitter)より2022年10月6日閲覧
  11. ^ MIKE O'DONNELL ONE-HALF OF THE LEGENDARY MUSICAL TEAM BEHIND THOMAS & TUGS”. Sodor Island Forums & Fansite (2007年7月5日). 2022年10月6日閲覧。
  12. ^ Mike O'Donnell [@MikeODonnell5] (2022年6月6日). "マイク本人のコメント". X(旧Twitter)より2022年10月6日閲覧
  13. ^ Mike O'Donnell [@MikeODonnell5] (2019年12月16日). "マイク本人のコメント". X(旧Twitter)より2022年10月6日閲覧
  14. ^ 泉萌子 [@moecoizumi] (2022年4月29日). "「転調がエグい曲」として生徒さんにオススメされた、機関車トーマスのテーマ。⋯". X(旧Twitter)より2022年10月6日閲覧
  15. ^ Sonetto Classics [@SonettoClassics] (2021年7月29日). "「機関車トーマス」テーマの頻繁な転調。⋯". X(旧Twitter)より2022年10月6日閲覧
  16. ^ 森岡典子 [@moriokanoriko] (2021年1月22日). "今日⋯". X(旧Twitter)より2022年10月6日閲覧
  17. ^ ROB, BESCHIZZA (2022年8月1日). “Thomas the Tank Engine theme tune praised”. Boing Boing. https://boingboing.net/2022/08/01/thomas-the-tank-engine-theme-tune-praised.html 2022年10月6日閲覧。 
  18. ^ Charles, Cornell (8 July 2022). The Thomas the Tank Engine Theme is Unironically Really Good. YouTube. 2022年10月6日閲覧
  19. ^ Erik, Swann (2022年8月15日). “The Thomas The Tank Engine Reference David Leitch and Brad Pitt Removed From Bullet Train”. CinemaBlend. https://www.cinemablend.com/interviews/the-thomas-the-tank-engine-reference-david-leitch-and-brad-pitt-removed-from-bullet-train 2022年10月6日閲覧。 
  20. ^ まらしぃ [@marasy8] (2019年7月23日). "きかんしゃトーマスのテーマを弾いてみた 【ピアノ】". X(旧Twitter)より2022年10月6日閲覧
  21. ^ 菊池亮太🎩(Anoatari) [@komuro_metal] (2021年6月22日). "きかんしゃトーマスを思いつきで全調に移調してみたんだが⋯". X(旧Twitter)より2022年10月6日閲覧
  22. ^ Pan Piano (22 April 2021). きかんしゃトーマス テーマ曲 Thomas & Friends [ピアノ]. YouTube. 2022年10月6日閲覧
  23. ^ よみぃ (22 July 2021). 【ストリートピアノ】「きかんしゃトーマス」を演奏するも、演奏者の顔を見た子供が逃げ出したwww byよみぃ Japanese Thomas & Friends Piano Cover. YouTube. 2022年10月6日閲覧
  24. ^ LORI, DORN (2022年8月5日). “An A Cappella Cover of the ‘Thomas & Friends’ Theme”. Laughing Squid. https://laughingsquid.com/thomas-and-friends-a-cappella/ 2022年10月6日閲覧。 

外部リンク 編集