ハリネズミは、哺乳綱Eulipotyphla目ハリネズミ科ハリネズミ亜科(Erinaceinae)に分類される構成種の総称。

ハリネズミ亜科
ナミハリネズミ
ナミハリネズミ Erinaceus europaeus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: Eulipotyphla
: ハリネズミ科 Erinaceidae
亜科 : ハリネズミ亜科 Erinaceinae
学名
Erinaceinae Fischer, 1814[1]
和名
ハリネズミ亜科[2][3]
ナミハリネズミ

広義には、ハリネズミ科に属するすべての動物、すなわちジムヌラ亜科Galericinae、ハリネズミ亜科の両方の生物群を指すが、ふつうは針毛をもたない(あるいはほとんどもたない)ジムヌラ類を除いて、ハリネズミ亜科のもののみを指すことが多い[要出典]。本項でも、ジムヌラ類を除くハリネズミ類について記す。ハリネズミ亜科では、現生のものとしては5属16種が知られている。

目次

分布編集

形態編集

背は体毛が変化した棘で被われる[3]。棘は根元にかけて細くなり、風や落下の衝撃などによって棘に圧力が加わった場合でも根元で折れ曲がることで体に食い込むことを防いでいる[3]。棘の根元は球状で小型の筋肉と連動し普段はこの筋肉が弛緩しているため棘が倒れた状態になっているが、この筋肉の作用により棘を逆立たせることができる[3]。背外縁の筋肉は環状に発達し、この筋肉が収縮して紐付き袋のような役割を果たし体を丸めこみ球状になる[3]。頭部や下半身も頭部や脇腹の皮膚が伸びることで被われ、これらの作用により背の筋肉も伸びるため針がより逆立つようになる[3]。針のようなトゲは、体毛の一本一本がまとまって硬化したものである。これにより敵から身を守る。

左右の上顎第1門歯の間には隙間があり、その間に下顎の第1門歯が収まるようになっている[3]。四肢や爪は頑丈[3]。ヨツユビハリネズミ(後肢の趾が4本)を除いて指趾は5本[3]

分類編集

生態編集

土を掘ることもあり、トンネル状の巣穴を掘る種もいる[3]。温帯域や砂漠に生息する種は冬季に休眠することもある[3]。危険を感じると主に棘を逆立たせ静止することが多いが、体を丸め球状になることもある[3]。棘に唾液を付ける行動が知られている[2]。この行動の用途は不明だが外部寄生虫を避ける働き[2]、性的誘因の働き、味がまずくなることで捕食者に食べられにくくする働きがあるとする説もある[3]

ヨーロッパに分布する種を除いて知見は限られるが、ミミズ、昆虫、鳥類の卵や雛、小型哺乳類、動物の死骸、漿果、落果、種子などを食べる[3]。クビワハリネズミやダウリアハリネズミでは食性のうち小型哺乳類が占める割合が高いとされる[2][3]

繁殖様式は胎生。妊娠期間はナミハリネズミで34 - 49日[3]。インドハリネズミ類は1回に1 - 5頭、ナミハリネズミやオオミミハリネズミ類は1回に1 - 10頭の幼獣を産む[3]

名前編集

日本語では『ネズミ』と付くが、実際はモグラに近い。ミミズなどを捕食する。イギリスでは生垣の下に生息していることが多く、そのため英語名はHedgehog(生垣のブタ)となっている。

人間との関係編集

ハリネズミは多くの文化において食材として扱われる。古くは古代エジプトなどで食用とされており、ヨーロッパ中世後期のいくつかのレシピでは、ハリネズミ肉の記載が残されている[6]。ユーラシア及びアフリカにおいては、ハリネズミは民間治療や呪術医による治療の材料として取引が行われている。中東の、特にベドウィンにおいてはリウマチ関節炎の薬として認められ[7]結核からインポテンツまでさまざまな病気を治療する万能薬とも伝えられている。 モロッコでは、焦げるまで焼いた皮膚や毛の煙を吸入することで、発熱やインポテンツ、尿に関する病気などに利くとされており、ハリネズミの血は白癬によるひび割れやイボの治療薬として利用される[8]ロマの人々の間ではいまでもハリネズミが食用とされ、ボイルあるいはローストして食べられており、血と脂肪は民間治療的に用いられる[9]。1980年代のイギリスにおいて「ハリネズミ風味」のポテトチップスが発売されたことがあったが、この商品にハリネズミは含まれていなかった[10]

ヨーロッパでは市街地にも生息し、生け垣や納屋などに住み着いたり庭や農耕地・芝生・花壇・堆肥などで獲物を探す[3]。民間伝承にも多く登場し、一例としてウシの乳を吸う・ヘビの毒に免疫があるなどといったものがある[3]Pliniusは「棘に果実を刺して運ぶ」と記しており、同様の伝承は中国でも知られている[3]

日本では、化石は発見されているものの、有史以後は分布しなかった。ただし現在は、ペットとして飼われていたと思われるものが、神奈川県小田原市静岡県伊東市などに定着していることが確認されている[11]。日本では2005年12月にハリネズミ属が属単位で特定外来生物に指定(2006年2月施行)されている[12]。2015年にはハリネズミ属が属単位で環境省の生態系被害防止外来種リストにおける総合対策外来種のうち、重点対策外来種に指定されている[12]。2017年現在ヨツユビハリネズミを除くアフリカハリネズミ属・オオミミハリネズミ属・Mesechinus属が未判定外来生物に指定されている[12]

出典編集

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  1. ^ a b Rainer Hutterer, "Erinaceomorpha". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 212-219.
  2. ^ a b c d e f g Pat Morris, Amy-Jane Beer「ハリネズミ科」「ナミハリネズミ」「ヨツユビハリネズミ」本川雅治訳『知られざる動物の世界 1 食虫動物・コウモリのなかま』前田喜四雄監訳、朝倉書店、2011年、6-15頁。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t Andrew Wroot 「ハリネズミ」今泉吉晴訳『動物大百科 6 有袋類ほか』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社1986年、18-25頁。
  4. ^ 今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編 「食虫目・貧歯目・翼手目・有袋目全種名リスト」『動物大百科 6 有袋類ほか』、平凡社、1986年、156-176頁。
  5. ^ a b 阿部永 「モリハリネズミ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社2000年、130頁。
  6. ^ Pidd, Helen (2007年9月14日). “Roast hedgehog and nettle pud ? a slap-up feast for ancient Britons”. The Guardian (London). http://www.guardian.co.uk/britain/article/0,,2169066,00.html 2009年6月12日閲覧。 
  7. ^ Qumsiyeh, Mazin B. (1996). Mammals of the Holy Land. Texas Tech UP. p. 64. ISBN 978-0-89672-364-1. https://books.google.com/?id=Amr2oLxnR10C&pg=PA64. 
  8. ^ Nijman, V. and Bergin, D. (2015). “Trade in hedgehogs (Mammalia: Erinaceidae) in Morocco, with an overview of their trade for medicinal purposes throughout Africa and Eurasia”. Journal of Threatened Taxa 7 (5): 7131. doi:10.11609/JoTT.o4271.7131-7. http://www.researchgate.net/publication/275461953_Trade_in_hedgehogs_%28Mammalia_Erinaceidae%29_in_Morocco_with_an_overview_of_their_trade_for_medicinal_purposes_throughout_Africa_and_Eurasia. 
  9. ^ Qumsiyeh, Mazin B. (1996). Mammals of the Holy Land. Texas Tech UP. p. 64. ISBN 978-0-89672-364-1. https://books.google.com/?id=Amr2oLxnR10C&pg=PA64. 
  10. ^ “Potato Crisps ? A History”. BBC. (2002年12月7日). http://www.bbc.co.uk/dna/h2g2/A16455053 2010年3月22日閲覧。 
  11. ^ ハリネズミ野生化、伊東や小田原で繁殖 東京農大生調査 - 朝日新聞社 asahi.com 2003年9月23日、弘前大学の引用ページより、2016年12月確認
  12. ^ a b c 特定外来生物等一覧 特定外来生物等一覧(指定日別)生態系被害防止外来種リスト環境省 ・2017年11月29日に利用)

関連項目編集