ハリヨ
ハリヨ(針魚 Gasterosteus microcephalus)は、トゲウオ目トゲウオ科に分類される淡水魚の一種。
ハリヨ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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Gasterosteus microcephalus
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Gasterosteus microcephalus Girard,1854 | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ハリヨ |
分布編集
日本固有亜種で昭和初期までは滋賀県、岐阜県、三重県に生息地があったが、現在では滋賀県東部と岐阜県西濃地区、岐阜地区の平野部の湧水地のみで生息が確認されている[1]。岐阜県の養老郡養老町の養老山地からの伏流水が湧き出す津屋川が、生息地の一例である[2]。三重県では1950年代に絶滅した。滋賀県米原市の河川では、人為的に放流されたと見られる同じトゲウオ科の陸封性イトヨと交雑した個体と置き換わり、別に飼育していたものを除きハリヨが絶滅していることがわかった。移入により兵庫県にも生息している。[3]
形態編集
全長5cm前後の小魚で、最大7cm程度。体は木の葉のように左右に平たい。背中には背びれの棘条が3本離れて発達し、さらに腹に2本、尻びれ付近にも1本とげがある。鱗はないが、胸びれの周囲にトゲウオ科特有の鱗板があり、若い個体は2-3個ほどだが成長すると5-7個ほどに増える。若い個体やメスは黄褐色をしているが、成熟したオスは体が青緑っぽくなり、のどから腹部にかけて橙色の婚姻色を発現する。
生態編集
年間の水量が一定した綺麗な湧水地や、その周辺の流れの緩やかな河川に限定して生息し、水草の生い茂った水深20-50cmの浅瀬に生息する。清浄な湧水のあることは生息環境の必須条件で、10-18℃の低水温を好み、水温20℃を超える場所では生息できない。同属種のイトヨは海と川を回遊する個体群が多いが、ハリヨは回遊せず、一生を通して淡水で生活する。食性は肉食性で、小型の甲殻類や水生昆虫などを捕食する。
繁殖期は2-8月と長期間にわたるが、日本では3-5月が中心である。婚姻色が出たオスは縄張りを作り、同種のオスを激しく追い払う。同時にオスは縄張り内の川底に穴を掘って水草の根などを集め、トンネル状の巣を作り、メスを誘って産卵をおこなう[4]。オスは産卵後も巣に残って卵を保護する。寿命は1-2年で、繁殖期が終わるとほとんどが死んでしまう。
保全状態評価編集
絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)
開発による湧水地の減少や川の汚染で絶滅の危機にあり、環境省によって絶滅危惧IA類に選定されている。生息地そのものが天然記念物指定されているところもあるが、分布域の各自治体で保護区を設けて保護活動を行っており、多くの自治体において条例で捕獲が禁止されている。また、小学校や地域団体の自主活動としてもハリヨと清流を守ろうという動きがあり、積極的に河川の清掃などが行われている。しかし、愛好家や業者による密漁捕獲によって減少している[5]。
脚注編集
注釈編集
出典編集
- ^ 森誠一、「魚と人を巡る水環境―ハリヨのこれまで、いま、これから」 水資源・環境研究 1994年 1994巻 7号 p.22-29, doi:10.6012/jwei.1994.22
- ^ “ダーウィンが来た(242回 泉の珍魚 卵を盗んでハートも盗め!)”. NHK・ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜 (2011年8月21日). 2011年9月25日閲覧。
- ^ “ハリヨの固有種、交雑で危機 滋賀・米原地蔵川”. 中日新聞. オリジナルの2010年5月19日時点によるアーカイブ。 2018年12月19日閲覧。
- ^ 長田芳和, 吉村智子, 森誠一、「ハリヨ(トゲウオ科)の求愛行動」 大阪教育大学紀要 III, 自然科学 37(1), 29-36, 1988-08, ISSN 0373-7411
- ^ 森誠一, 小北智之, 松田征也、「滋賀県ハリヨの危機」 魚類学雑誌 2016年 63巻 2号 p.148-152, doi:10.11369/jji.63-148
関連項目編集
外部リンク編集
- ハリヨ 国立環境研究所 侵入生物DB