ハレ市電ドイツ語: Straßenbahn Halle (Saale))は、ドイツの都市であるハレ(ザーレ)やその周辺都市を結ぶ路面電車1891年に電化が行われた、2021年時点で現存するドイツおよびヨーロッパにおける最古の路面電車路線で、2021年現在はシュタットベルケ・ハレドイツ語版の傘下企業であるハレ交通会社ドイツ語版(Hallesche Verkehrs-AG、HAVAG)によって運営されている[3][4][7]

ハレ市電
シンボルマーク
ハレ市電の主力車両・MGT6D(2007年撮影)
ハレ市電の主力車両・MGT6D2007年撮影)
基本情報
ドイツの旗 ドイツ
ザクセン=アンハルト州の旗ザクセン=アンハルト州
所在地 ハレ (ザーレ)
種類 路面電車[1]
路線網 13系統(2021年現在)[2]
開業 1882年馬車鉄道
1891年路面電車[3][4][5]
運営者 ハレ交通会社ドイツ語版[1][6]
路線諸元
営業キロ 87.1 km[1][6]
軌間 1,000 mm[2]
電化区間 全区間
路線図
紫線:現行路線
緑線:廃止路線
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歴史

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現在のハレ市電のルーツは、1882年に開通したハレ軌道(Hallesche Straßenbahn)が運営する馬車鉄道であった。この馬車鉄道は赤色を用いた車体塗装から「赤鉄道(Rote Bahn)」と呼ばれていた。一方、1889年には新たにハレ郊外鉄道(Stadtbahn Halle)が運営する馬車鉄道が開通し、緑色の車体を有することから「緑鉄道(Grüne Bahn)」とも呼ばれたこの馬車鉄道は従来のハレ軌道と競合関係となった。それを受け、同社は1890年に路線電化を目的に電機メーカーのAEGの傘下企業となり、翌1891年4月24日、ドイツおよびヨーロッパにおける初の本格的な路面電車の営業運転が始まった。この電化は成功を収め、以降ドイツ各地に路面電車路線が開通する原動力となった他、ハレ市内においてもハレ軌道が路線の電化を実施する要因になった。その後、両社は1917年に合併し、ハレ都市軌道(Städtischen Straßenbahn Halle)となった後、1929年以降はハレ市が運営する公営路線(Werke der Stadt Halle、WEHAG)に改められた[3][4][5]

一方、これらとは別に1902年にはハレとメルゼブルクドイツ語版(Merseburg)を結ぶ都市間路面電車路線が開通し、開通当初はハレ - メルゼブルク電気軌道(Elektrische Straßenbahn Halle–Merseburg)、1918年以降はメルゼブルク陸路鉄道ドイツ語版(Merseburger Überlandbahn AG、MÜBAG)によって運営された。その後ロイナ(Leuna)への延伸が行われたこの路線がハレ市の管理下に置かれたのは第二次世界大戦後、東ドイツ成立以降の1951年であった[3][4][8]

東ドイツ時代、1960年代までは一部の路線の廃止もあったが、1970年代以降は再度の延伸が行われ、特に1971年バート・デュレンベルクドイツ語版(Bad Dürrenberg)へと延伸した5号線は営業キロ30.7 kmとなり、東ドイツにおける最長の路面電車路線となった他、1980年代にはこの5号線を用いた貨物輸送も行われていた。車両面についても1969年からチェコスロバキア(現:チェコ)製のタトラカータトラT4)の導入が長期に渡って実施された[3][4][9][10]

ドイツ再統一直前の1990年ハレ交通会社ドイツ語版(HAVAG)の運営へと移管されたハレ市電は、再統一後のモータリーゼーションの進展やハレ自体の人口減が要因となった利用客減少に見舞われながらも引き続き重要な交通機関として認識されており、1998年にはノイシュタット(Neustadt)方面への新路線の建設プロジェクトが開始され翌1999年以降2012年までに順次開通した他、既存の路線についても大規模な近代化が進められている。それに先立つ1992年からはバリアフリーに適した超低床電車の導入が開始され、以降順次増備を行う事で長年使用されたタトラカーの置き換えが進んでいる[3][4][7][9][11][12][13][14]

系統

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2021年現在、ハレ市電には以下の13系統が存在する。大半の系統はハレ市内を走行するが、5号線については前述のとおりハレと近隣地域であるメルゼブルクドイツ語版バート・デュレンベルクドイツ語版を結ぶ[1][2][15]

系統番号 起点 終点 備考
1 Frohe Zukunft Südstadt
2 Soltauer Straße Beesen
3 Trotha Beesen
4 Kröllwitz Hauptbahnhof
5 Kröllwitz Bad Dürrenberg
7 Kröllwitz Büschdorf
8 Trotha Elsa-Brändström-Straße
9 Göttinger Bogen Hauptbahnhof 10号線とは経由区間が異なる
10 Göttinger Bogen Hauptbahnhof 9号線とは経由区間が異なる
12 Trotha Hauptbahnhof
16 Göttinger Bogen Beesen

車両

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現有車両

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2021年現在、ハレ市電で営業運転に使用されている車両は以下の通り。タトラT4D-C・タトラB4D-Cを除いた車両は低床車両およびVVVFインバータ制御である[16][12]

主要諸元

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ハレ市電 営業用車両 主要諸元[1][16][13]
形式 全長 全幅 重量 速度 定員 出力 備考
全長 車体長 着席 立席 主電動機 車両
T4D-C 14,950mm 14,000mm 2,200mm 17t 55km/h 26人 47人 43kw 172kw
B4D-C 14,950mm 14,000mm 2,200mm 13.5t 55km/h 28人 56人 - -
MGT6D 29,860mm 28,620mm 2,300mm 32.0t 70km/h 64人 82人 105kw 420kw 3車体連接車
MGTK 21,920mm 20,540mm 2,300mm 27.0t 70km/h 46人 60人 85kw 340kw 2車体連接車
MGTK-2 21,920mm 20,540mm 2,300mm 27.0t 70km/h 46人 60人 85kw 340kw 2車体連接車

保存車両

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路面電車博物館(2013年撮影)

ハレ市電で使用された車両の一部はゼーベナー通り(Seebener Straße)に位置する路面電車博物館ドイツ語版(Historisches Straßenbahndepot)に保存されており、ハレ路面電車友の会(Hallesche Straßenbahnfreunde e.V.)による維持・管理が行われている。また、保存車両の中には動態保存されているものも存在し、特定のルートを経由する保存運転に加え貸切運転にも対応している[22][23][24][25]

今後の予定

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  • シュタットバーン・ハレ - ハレ交通では2013年以降路面電車の軌道の車道からの分離を始めとした高速化計画「シュタットバーン・ハレ(STADTBAHN Halle)」を進めている。これは列車の高速化のみならず騒音の抑制、施設の近代化、必要車両数の削減などを目的としており、同年以降3段階を経て1号線(2015年 - )、5号線(2015年 - )、3・8号線(2020年代)の走行区間における工事が進行している[26][27][28]
  • 新型車両 - 2021年、ハレ交通会社はMGT6Dの置き換えを目的に新型路面電車の導入に関する入札を実施し、翌2022年8月スイスシュタッドラー・レールが計56両分の契約権を獲得した。同社が製造予定の車両は超低床電車の「ティナ(TINA)」で、全長30 m・定員166人(着席64人)のMGT-Mを39両、全長45m・定員267人(着席96人)のMGT-XLを17両製造する事になっている。製造は2024年から始まり、営業運転開始は2025年末を予定している[19][29]

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b c d e HALLE (Saale)”. UrbanRail.Net. 2021年6月23日閲覧。
  2. ^ a b c Timetables”. HAVAG. 2021年6月23日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h Die Chronik der HAVAG”. HAVAG. 2021年6月23日閲覧。
  4. ^ a b c d e f Tatra, Funken, scharfe Kurven - Halles Straßenbahngeschichte”. Mitteldeutsche Rundfunk (2021年5月12日). 2021年6月23日閲覧。
  5. ^ a b Chronik des 19. Jahrhunderts”. Halle (Saale). 2021年6月23日閲覧。
  6. ^ a b Zahlen und Fakten über die HAVAG”. HAVAG. 2021年6月23日閲覧。
  7. ^ a b 寺迫剛 2011, p. 46.
  8. ^ Chronik der ersten Hälfte des 20. Jahrhundert”. Halle (Saale). 2021年6月23日閲覧。
  9. ^ a b 寺迫剛 2011, p. 47.
  10. ^ Chronik der zweiten Hälfte des 20. Jahrhunderts”. Halle (Saale). 2021年6月23日閲覧。
  11. ^ a b ESEPPELT (2020年2月28日). “Aus und vorbei: letzte Tatra rollt aufs Abstellgleis”. Du bist Halle. 2021年6月23日閲覧。
  12. ^ a b c ESEPPELT (2021年5月3日). “Wegen Corona: HAVAG schickt Tatra wieder auf Linie”. Du bist Halle. 2021年6月23日閲覧。
  13. ^ a b c d Neue Niederflur-Straßenbahn rollt auf den HAVAG-Hof”. Hallespektrum (2013年2月28日). 2020年5月16日閲覧。
  14. ^ 寺迫剛 2011, p. 44.
  15. ^ Network and Fare Zone Maps”. HAVAG. 2021年6月23日閲覧。
  16. ^ a b c d e f Fuhrpark der Halleschen Verkehrs-AG”. HAVAG. 2021年6月23日閲覧。
  17. ^ Matthias Pietschmann. “Fahrzeugtechnik T4D-C/B4D-C” (ドイツ語). Strassenbahn-halle.de. 2020年2月15日閲覧。
  18. ^ 50 Jahre Tatra-Straßenbahn - Ein Fest.”. HAVAG. 2021年6月23日閲覧。
  19. ^ a b Libor Hinčica (2021年3月10日). “Halle obnoví flotilu tramvají. Poptává až 56 vozů”. Československý Dopravák. 2021年6月23日閲覧。
  20. ^ Mészáros Gergely (2011年7月31日). “Lejjebb a padlóval! - II. rész”. iho. 2021年6月23日閲覧。
  21. ^ FLEXITY Classic – Halle, Germany”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月23日閲覧。
  22. ^ Verein”. Hallesche Straßenbahnfreunde e.V.. 2021年6月23日閲覧。
  23. ^ Historisches Straßenbahndepot (Museum)”. Hallesche Straßenbahnfreunde e.V.. 2021年6月23日閲覧。
  24. ^ Historische Triebwagen”. Hallesche Straßenbahnfreunde e.V.. 2021年6月23日閲覧。
  25. ^ Historisches Museum”. HAVAG. 2021年6月23日閲覧。
  26. ^ Über das Projekt”. HAVAG. 2021年6月23日閲覧。
  27. ^ Warum?”. HAVAG. 2021年6月23日閲覧。
  28. ^ Stufen des Programms”. HAVAG. 2021年6月23日閲覧。
  29. ^ TINA Trams For Halle (Saale)”. Railvolution (2022年8月24日). 2022年8月24日閲覧。

参考資料

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  • 寺迫剛「コンパクトシティとしてのザクセン・アンハルト州ハレ市」『早稲田政治公法研究』第96巻、早稲田大学大学院政治学研究科、2011年、43-58頁、ISSN 02862492NAID 400188176782021年7月1日閲覧 

外部リンク

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