バンコク・メトロ
バンコク・メトロは、タイの首都バンコクの首都圏を走る高速鉄道網である。正式名称はMRT (Mass Rapid Transit)。バンコク・エクスプレスウェイ・アンド・メトロ [1][2]、略称BEM)が運営している。
MRT ( Mass Rapid Transit ) | |
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![]() ラートプラーオ駅の駐車場 | |
基本情報 | |
国 |
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運営者 | Bangkok Expressway and Metro Limited |
公式サイト | Bangkok Expressway and Metro Public Company Limited. |
詳細情報 |
概要編集
MRTはバンコク首都圏において増加する輸送需要への対応及び慢性的な交通渋滞の緩和を図り、タイの経済発展と温室効果ガスの排出削減を通じて、都市環境の改善に寄与する目的で建設された。
国営のタイ高速度交通公社(英語: Mass Rapid Transit Authority of Thailand、略称MRTA)が路線の建設や施設の保有を行い、民間会社のBEMが運営を行う上下分離方式を採用している。 2022年現在、営業中の路線は以下の2路線。
開通編集
- ■ブルーライン
- 2004年7月3日にバーンスー - フワランポーン間が開通した。その後も延伸を繰り返し、2019年12月23日に全線開通[3][4][5]、バンコクでは初となる環状運転を開始した。翌2020年3月30日からは延伸区間の料金徴収を開始し、正式開業した。
車両編集
ブルーライン、パープルラインともに軌間は標準軌(1435mm)で、直流750Vによる第三軌条集電方式である。最高時速は80km/h。
駅編集
洪水発生時に濁流が地下のコンコース・ホームに流れ込むのを防ぐため、地下駅では地上の出入口にはわざと上り階段が設けられており、地面より1〜1.5mほどの高さの階段を上ったあとに地下へ降りるようになっている。高架駅ではコンコースやホームに濁流が流れ込む恐れはないものの、地上の出入口と直結したエスカレーター、エレベーターはともに地面と直に接していない(階段ないしスロープを上る)などブルーライン同様に洪水対策が施されている(BTSなどでも同様)。
ゲート式の金属探知機と係員の目視によるセキュリティ・チェックが、コンコース階[注釈 1]で行われている。ブルーラインのうち最初に開業した地下駅(バーンスー駅 - フワランポーン駅間)では各出入口ごとに必ずゲートが設けられたため、列車には乗車せず駅構内の改札外通路を通り抜けるだけでもセキュリティ・チェックを受けなければならないが、ブルーラインのうち2017年以降に延伸した区間の各駅とパープルラインの各駅では各改札口の手前のみに設置されている。なお、ゲートでブザーが鳴るとカバンの中身を係員に見せなければならない[注釈 2]。
自動券売機はタッチパネル式のものが置かれている。画面上のマップに表示された駅の部分をタッチして運賃を支払うとトークン(とお釣り)が出てくるので、そのトークンを自動改札機にタッチして入場する。下車駅では、自動改札機にある投入口にトークンを投入して出場する。なお、現在はプリペイド式ICカード「MRTカード」(メトロ専用)または「メンムムカード」(メトロ以外の一部の交通機関でも利用可能)も発売されており、予めチャージしておけばトークンを買う手間が省ける。なお、BTSが発行しているラビット・カードには対応しておらず、使用不可である。
ブルーライン、パープルラインともに、駅のエスカレーター、エレベーターは三菱電機製が納入されている[6]。
ホームは、パープルラインは全て島式だが、ブルーラインは駅により相対式(重層の駅もある)または島式。ホームドアは、ブルーライン・パープルラインともに高架駅では全てのホームで可動式ホーム柵が、地下駅(ブルーラインのみ)では全てのホームでフルスクリーンタイプが、それぞれ採用されている。
パープルラインの各駅(タオプーン駅を含む)では、駅構内に個室の公衆トイレが設置されている。ブルーラインの各駅では基本的に乗客が利用できる公衆トイレの設置はない[注釈 3]が、我慢できない場合は係員に申し出ることで職員用のトイレを貸してくれる(壁面にイラストとともにそのように記載)。なお、駅構内の設備についてはバンコク・メトロのウェブサイト内「Route Map」から確認できる。また、パープルラインの全駅と、ブルーラインのうち2017年以降に開業した新駅の自動券売機にはICカードリーダーが取り付けられており、チャージのほか、残高や利用履歴の確認も可能である。
なお、以下の行為は、駅構内で禁止されている(2019年9月時点)。
- 写真・動画の撮影 - 職員から撮影を止めるよう注意される[注釈 4]
- 喫煙
- 飲食(メトロモールを除く)
- 座り込み
- ゴミのポイ捨て
- 大きな荷物、バルーン(風船)、ドリアンを始めとした臭いのきつい食品、可燃物、ペット(身体障害者補助犬を除く)、銃剣類の持ち込み
- 向かいの座席に足を掛ける行為[注釈 5]
営業時間・ダイヤ編集
ブルーラインは、朝6時から深夜24時まで運行。全日同一ダイヤで、基本は7分間隔だが朝夕のラッシュ時間帯は4分間隔となる。
パープルラインは平日は朝5時30分から・土曜と休日は6時から、終了は深夜の24時頃(に終電が終着駅に到着するダイヤ)まで運行。基本は9分間隔だが、朝夕のラッシュ時間帯は6分間隔となる。
運賃編集
ブルーラインとパープルラインがタオプーン駅でつながったので、現在は両線を乗り通す場合は通し運賃となっている。全線を乗り通したラックソーン駅 - クローンバーンパイ駅間の運賃は70バーツである(割引制度あり、以下参照)。なお、バンコク・メトロのホームページで運賃検索が可能。
ブルーラインの運賃は乗車距離に応じて17 - 42バーツである(2022年1月時点)[注釈 6]。なお、割引制度があり、子供及び高齢者は50%引き、学生は学生用ICカード利用で10%引きとなる。
パープルラインの運賃は乗車距離に応じて17 - 42バーツである(2019年9月時点)[注釈 7]。なお、ブルーライン同様に割引制度があり、子供及び高齢者は50%引き、学生は学生用ICカード利用で10%引きとなる。
歴史編集
路線編集
ブルーライン(チャルーム・ラチャモンコン線)編集
路線名 | 路線色 | 営業開始 | 区間 | 営業キロ | 駅数 |
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ブルーライン | 2004年 | BL01 タープラ駅 - BL38 ラックソーン駅 | 47km | 38 |
- ■ブルーライン(チャルーム・ラチャモンコン線)
2017年8月11日にバーンスー - タオプーン間が延伸開業したことで、パープルラインとの接続が実現した。
起点から時計回りに、タープラ - バーンスー - タオプーン - フワランポーン - タープラ - ラックソーンというルートを通っており、都営地下鉄大江戸線のような6の字型運転となっている。 高架駅であるタープラ駅は立体的に直交し、タープラ終着となる反時計回り方向の列車がラックソーン(或いはその逆)方向に乗り入れることはないが、構内併設の連絡線を経由して回送を行うことが可能。
車両基地は2か所あり、開業時にラーマ9世駅より約1 kmほど東に離れた場所に設けられたほか、延伸時にペチャカセム48駅より500 mほど南に下った場所にも新たに設けられた。他に、タープラ駅に留置線が併設されている。
パープルライン(チャローン・ラチャタム線)編集
路線名 | 路線色 | 営業開始 | 区間 | 営業キロ | 駅数 |
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パープルライン | 2016年8月6日[11] | PP01 クローンバーンパイ駅 - PP16 タオプーン駅 | 20.94 | 16 |
- ■パープルライン(チャローン・ラチャタム線[注釈 9])。
全区間が地上を走り、全駅が高架駅かつ島式ホームである。ブルーラインの延伸工事がパープルラインの開業に間に合わず、既存の鉄道路線から孤立していたことから当初の利用状況は低迷したが[7]、2017年8月11日のブルーライン延伸開業により接続が実現してからは増加傾向にある[16]。
車両基地はクローンバーンパイ駅の東側に設けられている。
オレンジライン編集
路線名 | 路線色 | 営業開始 | 区間 | 営業キロ | 駅数 |
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オレンジライン | 2024年(建設中) | バーンクンノン - イェーク・ロムクラオ | 35.9km | 29 |
- ■オレンジライン
工事中の新線。ブルーライン・バーンクンノン駅を起点とするが、計画見直しにより同線タイ文化センター駅を暫定的な起点とする東側区間の先行開業を目指す。一方、残る西側区間は入札を巡る紛争により着工に至っていない。
車両基地はラーマ9世駅付近のブルーライン基地に隣接している(工事中)。
事故編集
開業から5ヶ月が経過した2005年1月17日、フワランポーン駅へ向かう電車がタイ文化センター駅を出発した所で、後ろから空の車輌が追突。追突された車輌には700人の乗客が乗っていたが、およそ100人の乗客が負傷した。人為的ミスが原因。
その後地下鉄は約2週間営業を停止し、2月1日に復旧。
その他編集
交通渋滞が激しいため、パークアンドライドを目的にブルーラインラートプラオ駅とタイ文化センター駅に駐車場を設けた。パープルラインでもクローンバーンパイ駅に開業当時から駅東側に駐車場が設けられている。
2005年9月9日よりスクムウィット駅にてメトロモールと呼ばれるショッピングモールが開業。今まで売店も無く飲食も出来なかった地下鉄において、このメトロモールが開業したことにより、より利便性が高まった。ただし飲食はメトロモール内のみで可能で、その他の地下鉄構内では不可能。その他、ペッチャブリー駅でも開業。最終的に11の駅で開業する見込み。
延伸計画編集
ブルーラインについては、全線開通したものの、調査段階ではあるがクラトゥムベーン郡方面への延伸構想が報じられている[17]。
パープルラインについては、タオプーン以南の地下区間、およびチャオプラヤー川対岸側の高架区間、計23.6 kmが政府承認を得ているが、着工に至っていない。
詳細は当該記事を参照。
注釈編集
- ^ スクムウィット駅のBTS連絡通路など地上階の場合もある。
- ^ 但し「チラ見せ」程度で、余程でない限り中は物色されることはなく、また特にラッシュ時など混雑時においては事実上スルーとなっていることもある。
- ^ タオプーン駅はパープルラインとの連絡階段の下に個室の公衆トイレがある。その他、スクムウィット駅など一部の駅ではメトロモール内など改札外に公衆トイレがある。
- ^ なお、タイ国鉄、BTSでは撮影は特に禁止されていない。
- ^ 但し、バンコク・メトロではクロスシートの座席はない。
- ^ 2004年8月12日(母の日)までの運賃は、距離に関係なく一律10バーツであり、この期間の収益金は王室慈善プロジェクトに寄付された。その後、2005年7月3日までは乗車距離に応じて、12 - 31バーツであった。
- ^ 当初、14 - 42バーツで開業した[7]が、利用者数が想定を大幅に下回っているため、開業早々半額に値下げが検討され[8]ることとなった。翌9月より実際に値下げされた(初乗りは変わらず14バーツだが最大が29バーツに値下げ[9])ものの却って赤字幅が拡大してしまった[10]。
- ^ かつてはあったが、パープルライン開業時には廃止されている。
- ^ プミポン前国王の命名による正式な名称(タイ語:สายฉลองรัชธรรม、『祝福された仏法による王家の統治』線を意味する)[15]
脚注編集
- ^ “バンコク・エクスプレスウェイ・アンド・メトロ”. ロイター. 2023年3月3日閲覧。
- ^ “バンコクの都市鉄道(BTS・MRT)の需要が回復”. 日本貿易振興機構 (2020年9月23日). 2023年3月3日閲覧。
- ^ “バンコク都市鉄道ブルーライン、西側延伸区間が正式開業”. newsclip.be (Necos Co., Ltd.). (2019年9月30日) 2019年10月9日閲覧。
- ^ “MRT Route Map”. metro bemplc. 2018年10月21日閲覧。
- ^ “バンコク都市鉄道ブルーライン延伸4駅、12月4日に試運転開始 タオプーン駅からチャオプラヤ川西岸へ”. newsclip.be (Necos Co., Ltd.). (2019年11月30日) 2019年12月8日閲覧。
- ^ “バンコク首都圏鉄道新路線 三菱電機製エレベーター、エスカレーター採用”. newsclip.be. (2016年8月9日) 2016年8月9日閲覧。
- ^ a b “日本製車両のバンコク都市鉄道新路線、ガラガラで運賃値下げ検討”. newsclip.be. (2016年8月21日) 2016年8月24日閲覧。
- ^ “タイで2016年8月にパープルライン開業、早速値下げを決定”. Asean Japan (2016年8月22日). 2016年10月20日閲覧。
- ^ “新路線パープルライン、利用者少なく運賃引き下げ”. タイ通 (2016年8月26日). 2016年10月24日閲覧。
- ^ “鉄道新路線パープルライン、値下げし赤字拡大”. タイ通 (2016年9月9日). 2016年10月20日閲覧。
- ^ “バンコク都市鉄道ブルーライン、延伸区間の運行開始 都心と北西郊外接続”. newsclip.be. (2017年8月11日) 2016年8月14日閲覧。
- ^ “バンコク都市鉄道ブルーラインが全線開通 最後の4駅開駅”. newsclip.be (Necos Co., Ltd.). (2019年12月23日) 2019年12月23日閲覧。
- ^ “タイ各地で反体制デモ 当局規制で首都は交通マヒ”. AFP (2020年10月17日). 2020年10月17日閲覧。
- ^ “バンコク首都鉄道パープルライン正式名称決定。8月6日開業へ” (2016年7月6日). 2019年8月7日閲覧。
- ^ “Blue Line extension to be ready ahead of schedue”. The Nation. (2018年11月30日) 2018年12月20日閲覧。
- ^ “ขึ้นฟรีรถไฟฟ้า ‘หัวลำโพง-บางแค’ ก.ค.นี้ ลุ้นสร้างต่อ ‘พุทธมณฑล’” (タイ語) (2019年3月11日). 2019年12月24日閲覧。