リセット・ワールド』は、鷹見一幸ライトノベル。イラストはHimeaki。出版は電撃文庫。全3巻。

本作は『時空のクロス・ロード』に登場した「三日熱の世界」のその後を舞台に、新たな主人公を通して語られる物語となっている。

概要 編集

大人たちがいなくなり、子ども達だけで生きていくことになった世界で、「知恵」と「勇気」 「やせ我慢」と「ええかっこしい」の精神でピンチを潜り抜けていく冒険ファンタジー。本作の舞台は緻密な現場取材を元に、(2008年当時の)実在する街の道路や建物の位置、構造が正確に描写されている。

ストーリー 編集

伝染病の蔓延により大人たちは死に絶え、世界は一度リセットされた。大崩壊から5年後、生き残った子供達は文明を維持できず過去の遺産をゆっくりと食いつぶしていき、ギャングなどに脅えながら生活していた。そんな中『ファウンデーション』と呼ばれる組織から派遣されたエージェント「園山慎吾」はかつての東京に、新たに作られた『国』があると聞きつけ、西東京協和国を訪れる。そこには野盗に脅えることなく暮らす人々の姿があったが、街を見ながら奇妙な違和感を覚える。

その時、男装して他の町から潜入していた少女「矢上」を偶然助けた慎吾は、彼女の口から協和国の実態について聞かされる。この国は「多目」という人物によって作り出された独裁国家であり、支配階級以外の人達は過酷な労働につかされ、近隣のコミュニティを攻撃しては労働力確保のために人々をさらって来たり、労力の無い子供達は残らず殺されていると言う。

その話を聞き終えた時、人狩りから戻ってきた協和国の兵士と拉致されて来た人々を目撃する。その中には10歳前後の幼い少女までいた。亡き妹を思い出し、絶対助けると言う矢上を制止した慎吾は、矢上の代わりに自分があの子を助けると言って行動を開始し、首尾良く少女「サナエ」を助け出すが、ふとしたことで慎吾の正体に感づいた多目は追跡部隊を出し、慎吾達は矢上の住む大宮までの命懸けの逃走をする事になる。

辛くも追っ手を振り切り、前橋・大宮連合との接触に成功した慎吾は彼らを信じファウンデーションについて語り協力を申し出るが、連合を本格的に壊滅させようと協和国も動き出し、事態は関東を二分する戦争へと発展していく……。

用語 編集

コミュニティ
三日熱発生時に避難所として作られたキャンプを前身としている。現在は人のいる集落という意味で定着している。大崩壊後に生き残った子ども達が、法律が通用しなくなった事から出現した野盗から身を守りながら、共同生活を営んでいる。
三日熱
物語開始の五年前に発生し大流行した伝染病。正式名称はABCウィルスだが感染した人のほとんどが発症後約72時間以内に死亡する事から三日熱と呼ばれるようになる。物語の舞台となっている世界の人達はそれまでこの病気に感染した経験がなく免疫がまったく無かった為、多くの人が亡くなった。現在は沈静化しているが、当時を記憶する者は未だに悪夢を振り切れないでいる者も多い。子ども達は感染しても死亡する事が少なかったが、大人達はほとんど死に絶えている。
カタリベ計画
文明を後世に伝える為に国によって選ばれた300人の大人達に抗体をうちシェルターに避難させる計画。人数が少ないのは抗体の試作品が完成した時点ですでに社会機能が麻痺していて十分な数を確保できなかったため。

コミュニティ 編集

西東京協和国
旧・立川市を中心に作られたコミュニティ。住民は一級市民から三級市民に振り分けられ、それぞれの仕事につかされる。ただし体制は独裁国家で三級市民は奴隷同然の扱いを受けている。階級は指導者と戦闘要員が一級、機械の扱いに長けている者や生活用品を探し出せる者は二級、何の能力もない者は三級と位置づけされ、農業などに使役され過酷な労働を強いられている。子供は消費するだけで生産することができないので産まれてもすぐに殺される。慎吾の登場により大人達の生き残りがいることを確信し、支配者達は自分達の自由と保身のためにファウンデーション壊滅と関東制覇を目指して前橋・大宮連合に対して本格的な戦争を仕掛ける。
国の名前は『和国』ではなく『和国』と書かれている。
前橋・大宮連合
前橋が本拠地になっており、大宮を支援する形で作られている北関東最大勢力を誇るコミュニティ。鉄道を動かすことに成功しており、学校などの復活も目指している。『時空のクロス・ロード』にも登場しておりコミュニティの責任者等、重要人物は前作から続投している人物も多く見られる。
熊谷コミュニティ
元は連合傘下ではなく友好関係にあった町だが現在は連合に吸収されている。いつ頃から連合に所属したかは不明。協和国の侵攻に対応するため防備を固める。
岩槻コミュニティ
協和国に侵略された町。男手は義勇軍の名目で無理やり兵士として従軍させられている。
ファウンデーション
カタリベ計画により五年前の疫病から生き残った大人達の集まり。300人のうち50人ほどが自衛隊や警察官などの戦闘要員で、残りは医者や学者などの非戦闘要員。目的は生き残った子供に知識を伝え、文明を復活させる事。自力では十分な活動ができないため子どもたちに教育を施しエージェントとして活動させている。本部は長野県伊那市
組織の名前はアイザック・アシモフが書いたSF小説ファウンデーションシリーズに登場する知識の避難所として百科事典を編纂する財団の名前。作中では本のタイトルは創元推理文庫から発刊されたときの邦題『銀河帝国の興亡』で呼ばれている。

登場人物 編集

メインキャラクター 編集

園山 慎吾(そのやま しんご)
本作の主人公。長野県出身の十代後半の男。過去に悲惨な出来事に会うが生き残っていた大人達に救われ、危険な状況にも対応できるようファウンデーションから訓練を受け眼と耳として活動している。柔軟な思考から機転が利き、物事を客観的にみて素早く最善策を打ち出し、実行することができる。また、危機的状況下においても隣人を見捨てることを良しとしない人間性も持ち合わせる。
蕎麦についてかなり詳しい。
無意識下ではあるが、矢上のことを「大切な人」と感じている。
矢上 由紀江(やがみ ゆきえ)
男勝りでボウガンの扱いに長けた少女。大宮・前橋連合所属の警備要員。正義感が強いが、突っ走りすぎるところがある。西東京協和国が非道な行いをしていると聞いていてもたってもいられなくなり、男装して潜入していたが、正体がばれそうになったところを慎吾の機転で助けられる。
妹がギャングに殺されてからは男嫌いになり、最初は慎吾のことも警戒していたが大宮までの逃避行を経て慎吾を信頼し、好意を寄せるようになる。
さらしを巻かなくても女であることがばれない位の貧乳
サナエ
十歳前後の少女。西東京協和国に捕まっていたところを慎吾に助けられ、慎吾や由紀江と一緒に大宮に行くことになる。助けてくれた慎吾に好意を寄せている。
一巻では髪の長い少女と書かれているが、イラストではショートヘアもしくはセミロングぐらいの長さで描かれている。
メンマ
慎吾が連れている犬。ビーグルテリアが混ざったような雑種でオス。なぜか人間の女の子が大好き。好物はメンマでそれが名前の由来。イラストではコミカルな描写で描かれていて人間のような表情がついている。

前橋・大宮連合 編集

名前の後ろに※が付いている人物は『時空のクロス・ロード』に登場した人物。

玉城(たましろ)※
連合の最高責任者。
筑摩 和彦(ちくま かずひこ)※
連合の幹部。大宮の総責任者だが、鉄道運行の責任者でもあるため普段は大宮の事は他の人間に任せている。
『一番列車は朝焼けに』の主人公。
結城 立也(ゆうき たつや)※
独学で医学を学び、連合でも数少ない医師として活動している青年。熊谷コミュニティーで慎吾の治療も担当した。
水樫 香織(みずかし かおり)※
結城の助手として働く看護師
栗野 武士(くりの たけし)※
前橋コミュニティー防衛部隊総責任者。二十代前半のがっしりした体格の青年。
三日熱が蔓延する以前は高校生で、いわゆるミリオタだったが、自分たちを守って死んでいった自衛隊の人たちの遺志を継ぎ、皆を守れるような人間になろうと努力した。
藤見 翔子(ふじみ しょうこ)
大宮撤退戦にて逃げ遅れた少女。協和国兵に捕らえられそうになったところを慎吾に助けられた。自分を助ける際に銃弾を受けた慎吾を尊敬し、慕っている。
モーターグライダーを操縦することができる。
一巻では小太りの少女と書かれているが、二巻のイラストではスレンダーな体型で描かれている。
青島(あおしま)
連合のリーダーの一人。自分の保身が第一と考えており、他人の意見には文句や批判しか言わない青年。

西東京協和国 編集

多目 祐介(ため ゆうすけ)
西東京協和国の幹部にして頭脳。協和国を作り出した張本人。
大道寺 正行(だいどうじ まさゆき)
西東京協和国の大統領。

既刊一覧 編集

  1. 僕たちだけの戦争 2008年3月10日刊 ISBN 9784840241892
  2. 僕たちが守るべきもの 2008年8月10日刊 ISBN 9784048671750
  3. 僕らが創るべき未来 2008年12月10日刊 ISBN 9784048674270

外部リンク 編集