レールガン: railgun)は、物体を電磁気力(ローレンツ力)により加速して撃ち出す装置である。

レールガンの駆動原理の模式図。

なお、電磁気力に基づく投射様式全般の呼称として、電磁投射砲(でんじとうしゃほう)やEML[1]電磁加速砲[2]などがある。原理が単純で古くから知られていることもあり、ビデオゲームをはじめとするサイエンス・フィクション作品に幅広く登場しており、それらの作中では兵器として扱われることが多い(レールガンに関連する作品の一覧)。

なお、レールという言葉が含まれているが、いわゆる鉄道や列車砲とは無関係である。

概要編集

この装置は並行に置かれた2本のレールとなる電極棒の上に弾体となる金属片を乗せて電流を流し、電磁力により金属片を駆動し射出するというものである。

磁場を与えるために磁石やコイルが追加されることがある。入力される電力が増え弾体が高速になるにつれ

  • レールとの接触を保つのが難しくなる。
  • 空気抵抗と、摩擦熱、ジュール熱といった損失が増大する。

といったデメリットが生じる。なお以下に詳しく述べるが発射に足る電力(主に電流の量的な問題)の供給も大きな課題となっており、また大電流によってレールや弾体の一部が蒸発プラズマ化するといった問題が生じる。

2012年時点では、概念上のものまたは架空のものとして扱われる場面が多く、製品も実験/試験段階のものばかりだが、後述するように様々な利用も想定されている。一例として、後述するように米軍により2016年に電磁加速砲を洋上実験する計画がある。ほかにも2019年現在、米国、ロシア、中国、トルコなどがレールガンの軍事研究を進めていると発表しており、日本においては実験室レベルでの電磁加速システムが作成されている。技術的には米軍が兵器分野でリードしており、陸上と艦船で何度もテストを実施している。また、トルコ軍は多種の兵器応用能力を備える電磁砲を開発し、国際防衛見本市で販売している[3]

原理/構造編集

単純には、並行に置かれた2本の電極をレールとし、その上に弾体となる金属辺を乗せ、レールのそれぞれを電源の両極につなげば実現する。

  • 2本のレールの通電側が銃尾に相当する。
  • 銃尾に近いところで、2つの電極両方と触れるように弾体を置く(いわゆる「弾の装填」に相当)ことで電気回路が形成される。
  • 電流が流れている間、弾体は、レールの解放端(電流が流れていない側)へ向かう方向に駆動される。

この駆動力は磁場の中に置いた導体に電流を流した時に生じる力、あるいは通電中の導体同士に働く相互作用としてフレミング左手の法則に基づくごくごく一般的なものであり、以下に述べる通り基本原理自体は単純である。

電流によって生じる磁場編集

レールと弾体によって形成される「コの字」状の回路に通電するとき、電流を取り巻く磁場が考えられる。電流によって生ずる磁場の方向は、「右手の親指を電流の方向に沿わせたときに他の4指が巻く向き」である。「コの字」の収まる面内で弾体の周囲に着目すると、磁場の向きは面に垂直でかつ、「コの字」の内側と外側で逆向きになっている。

さらにいうと「コの字」の角の部分の内側が特に磁場が強く、これが駆動に寄与する。弾体の内部に分布する駆動力は一様ではなく、レール方向に対し減速する方向や横向きに働く部分もあるが、前述の『「コ」の字の角の内側』が支配的であり、弾体を加速させている。

※高出力を得るためには、レール電流の他に追加の磁場源(磁石や電磁石)を置くほうが容易である。

電流と磁場と駆動力の関係編集

一様磁場を仮定した場合、金属片に働く駆動力   は、磁束密度を  、 電流強度を  、 レール間隔を   とするとき

 

で与えられる。

これはレールガンに照らし合わせると、電流によって生じる磁場が無視できるほどの強磁場が加えられている場合、「電流の方向」と「磁場の方向」の両者が収まる平面を考えたとき、その平面に対して直交する方向に駆動する。これらは

  • 「電流の方向」と「磁場の方向」とが互いに90°で直交するときに最大の駆動力が得られる。
  • 駆動力は、レール間隔、電流強度、磁束密度それぞれに比例する。

ことを意味する。

さらに以下のような条件が加わる。

  • レールと弾体のみで構成する場合の磁場は一様とはほど遠いから、局所ごとに上の式に従うと考えられる。
  • レールと弾体のみで構成する場合は磁場も電流に概ね比例するから、電流の2乗に比例した駆動力となる。
  • レールと弾体のみの場合、弾体を加速する電磁力は、主に、レールと弾体の接点近傍に集中する。さらに、直線導体のみで強磁性体を介さない機構であるため、コイルや磁石を用いたリニアモータに比べて大電流を必要とする。
  • 実際には、回路で生じる磁場とは別に磁束源を足した方が高出力を得やすい。
  • 通電し弾体が駆動されているとき、2本のレール棒についても、それぞれ互いに遠ざかる方向に駆動されるため、これに耐えるよう固定する必要がある。
  • 弾体はレールと接触している間は駆動し続けるため、原理上はレールが長いほど発射速度を上げられる。

投射される物体は必ずしも電気伝導体である必要はなく、この金属箔を貼り付けた非導電性個体をもちいる様式もある[4]。プラズマなどを駆動媒体とし、非導電性の弾体を飛ばすことも可能。

なお、プラズマを駆動体に用いる場合は、プラズマが弾体を追い越して漏れないよう、一般の火薬ガンやガスガンと同様かそれ以上に気密性に富んだ「砲弾形状に合わせた砲身」が必要となる、ただしレールガンの砲身は電気絶縁性が要求される。実際に開発・利用されているレールガンでは、プラズマ化に伴う膨張力(→圧力)やなどに耐えられなければならず、またプラズマ化に伴う膨張圧も弾体の加速に利用する場合は、尾栓に相当する部品を必要とし、これは非伝導体である必要がある。なお、単純にプラズマ膨張圧のみを弾体加速に用いる形式は、サーマルガンと呼ばれる別形態の装置である。

特性(利点/欠点)編集

利点
原理上構造が単純、高速度が得やすい
欠点
接触型ということもあり他の電磁駆動に比べて損失が大きく電源要求が大きい

レールガンが打ち出す弾体の速度は、単純化された理論上は電流/磁場強度とレール長に依存する。実際にはレール長が十分であれば電磁力と摩擦等の各種損失がつりあう速度が最大速度となる。

損失が無視できる条件下では、加速度は電流と磁場の強度に依存する。次のようなレールガン特有の損失があり、これらは弾速上昇にともない増大する。

  • 速度表皮効果(後述)によって投入エネルギーの多くがジュール熱として奪われる。
  • 温度上昇や、接触不良により不要なプラズマが発生する。

また、大電流の供給、加速距離やレールの摩擦電気抵抗・耐熱限界といった点に物理的・技術的制約がある。

到達速度編集

1960年代には、オーストラリア国立大学に所属するリチャード・マーシャルらのグループが550メガジュールを入力した長さ5メートルのレールガンによって、3グラムの弾丸を5.9km/s ( = 5,900m/s) での射出に成功した。なお、21世紀初頭には最大速度8km/s程度のものが開発されている。

比較として火薬を使う火器の弾丸の射出速度を記すと、

  • 拳銃 230 - 680m/s
  • ライフル銃 750 - 1,800m/s程度
  • 戦車砲 120mm/L52の仏GIAT製滑腔砲にAPFSDSであるOFL120F1タングステン徹甲弾では1,790m/s
  • 火薬と水素を使ったライトガスガン 6 - 7km/s

である。

火薬を使用する火器では、燃焼によって生じる熱エネルギーの大半が弾体の駆動に寄与せず、また弾体の速度はガスの膨張速度を超えられない。最新の爆薬を使ってせいぜい2km/s程度である。これらと比べて、現状の実験段階のレールガンでも遥かに大きい発射速度が得られる。

速度表皮効果編集

 
レールガンの速度表皮効果
投射体が高速移動すると磁界変化が間に合わず、電流路が狭い範囲に押し込められる。
 
1.ローレンツ力を受けて投射体が加速される
2.速度表皮効果によって電流の流れる範囲が狭くなり、やがてジュール熱によって「溶解」「プラズマ化」する
3.発生したプラズマが新たな電流の流れを作って投射体への加速が行なわれなくなる

[5]

導体内の磁場が変化するとき、磁場の変化を妨げる方向に誘導起電力が生じる(レンツ則に関連)。これは電気を流す視点で見ると、自己インダクタンスと呼ばれるある種の抵抗とみなされ、導体の内部の電流路の変化を妨げ、変動する電流を導体の表面へ追いやるように作用する。

レールガンでは弾体の移動に合わせてレール内の電流路が移動する際に自己インダクタンスの影響を受ける。すなわち、レール側では弾体との接触部近傍で表皮に電流が集まり、弾体側ではレールとの接触部近傍において後端側へ電流が集中する。

この作用は交流電流の表皮効果と同様に、移動が高速になるにつれ顕著となる。

条件次第では、弾体の後端やレールの表面が、ジュール熱により溶解し、プラズマ化してしまう。

このプラズマが新たな電流路となるとき、電磁力の他に速度表皮効果を受けるため予測しがたい挙動となり、加速に寄与せず散逸する。

レールガンの高性能化は速度表皮効果の対策次第と考えられている[5][要ページ番号]

類似の投射方式編集

リニアモーター
主に、走査される磁場によって導体や磁性体、磁石を加速する装置を指す。レールガンが1巻きコイル1個であるのに対しリニアモーターは多数の電磁石 を並べて構成される。
コイルガン
コイル(ソレノイド)内に弾を通過させる方法を利用したもの。構造上の問題からレールガンのような高速を得にくいという欠点と、非接触でロスが小さいという利点がある。
サーマルガン
電磁力ではなく電流のジュール熱 にて弾体後方の導体をプラズマ化 させ、その急激な体積増加により駆動するもの。すなわち瞬間的なプラズマ化に伴う爆発 を利用する。比較的低入力の割に高い射出速度が得やすいものの、プラズマ膨張速度を超えた速度は得られない。

想定される用途編集

現在、レールガンは様々な分野での利用を期待されている。比較的知られている分野では以下が挙げられる。

  • マスドライバー (地表から宇宙への輸送装置)
  • 地球の衛星軌道上に存在するスペースデブリを軌道上から排除
  • 高速移動物体の衝突時に発生するエネルギーを研究するための設備
    • スペースデブリ(宇宙ゴミ)衝突を想定した宇宙開発における新素材や新構造の研究・開発
    • 被破壊実験等の物理学的な実験
  • 軍事用途
    • 宇宙兵器(隕石衝突を回避するための防衛技術も想定されている)

この他、入力する電流の量により、発射速度や射出タイミングをコントロールしやすい事から、レーザー核融合炉の燃料ペレット投入装置としての利用が期待されている。

兵器としての実用化編集

アメリカ海軍ズムウォルト級ミサイル駆逐艦で採用が決定したAGS 155mm砲[6]と呼ばれるロケットアシスト砲の次の段階として、レールガンの技術開発に着手していることが2007年の米ネイビーリーグ(技術展示会)で発表された[7]米国海軍研究局英語版(ONR)でもこの事実は確認された[8]

ズムウォルト級駆逐艦の特色として統合電力システム (IPS) を採用しており、大型ガスタービンエンジン電力発電、これを船の電気系統はなおのこと推進器などの動力として使う計画であるが、これを更に進めてレールガンにもこの電力を供給し発射しようという計画である。同艦では2基のガスタービン発電機により、最大80メガワットの電力を発生させる。この電力は全速航行時には70MWまでもが推進に使われるが、常時最大船速を出す訳ではないので、速度を落としている際に余る電力が利用されると考えられており、15~30MW程度をレールガン発射に回せれば、毎分6 - 12発の連続射撃が可能だという。

計画では揚陸作戦支援に重量15kgの砲弾を初速2.5km/sで発射、高度152kmまで打ち上げて370km以上先の攻撃目標に終速1.7km/s(マッハ5)で着弾させる、このためには砲口での砲弾運動エネルギーは64MJ(メガジュール入力する電力ではなく、砲弾のもつ運動エネルギーである)を必要としている。

同計画では2020 - 2025年頃を目処に実用機を艦船に搭載することを目標として、BAEシステムズ社とジェネラル・アトミックス社が32MJ砲の試作に入っており、2006年10月の時点で口径90mm・2.4kg砲弾を砲口での砲弾運動エネルギー800キロジュール(0.8MJ・初速830m/s)で発射に成功、2007年1月には3.2kg砲弾で初速2146m/s 砲弾運動エネルギー7.4MJを、2008年1月の試射では3.35kg砲弾で初速2520m/s 砲弾運動エネルギー10.64MJを記録している。[9][10]2010年12月10日には、約10.4kgの砲弾を音速の約8倍(約2.7km/s)、砲弾の運動エネルギーは約33MJでの発射に成功した。これは、目標である15kgの砲弾の2.5km/sに極めて近づきつつある結果である[11]

2014年4月7日、アメリカ海軍は、2016年会計年度中にレールガンの試作機を最新鋭の高速輸送艦ミリノケット[12][13]に据え付け、洋上での実証試験に入ると発表した[14]日本では、防衛省2015年概算要求にて、「艦載電磁加速砲の基礎技術に関する研究」を記載している[2]

歴史編集

フランスの発明家 Andre Louis Octave Fauchon-Villepleeによる発案。彼は 1917 年にthe Société anonyme des accumulateurs Tudor (now Tudor Batteries)の協力の元、実機を作成した。最初に原理的に説明されたのは第二次大戦時下の 1944年、Nazi Germany's Ordnance Office の Joachim Hänsler による。

発射速度は入力された電流に正比例する事は先に述べた通りだが、原理自体は古くから知られており、1844年にはこれに基づいた兵器利用の実用化構想もあった程で、世界各国の軍部が事ある毎に研究してきた歴史がある。第一次/第二次世界大戦当時にもドイツ日本で兵器化への研究が行われていた。しかし弾体が砲身に接触している事から生じる摩擦の問題を解決できなかったり、実際に発射できるだけの電流を生み出す電源が無いといった理由から、当時の技術ではこの問題を解消できずに研究は放棄され、実用化に到らなかった(高射砲一門だけのために、専用発電所が二つ必要という試算さえあった)。

1960年代に、リチャード・マーシャルらのグループが単極発電機[15]の発生させる電流を用いて、従来火器よりも遥かに速い速度で弾丸を射出する事に成功、次第にその威力が現実的な物として考えられるようになり、1980年代にはアメリカ合衆国スター・ウォーズ計画(SDI計画)により、多額の研究資金を得て、大きく発展した。特に宇宙空間では空気抵抗が無いために、高速で運動する物体の破壊力(運動エネルギー)は発射から命中までの間、ほぼ無期限に保存される事、また電源として大気越しではない太陽光が利用できる事から、レーザーと並んで宇宙兵器の有力候補に挙げられている。だが今日では、SDI計画自体が国際情勢の変化に合わせて計画縮小され、実用性においては実績のある既存の火薬を燃焼させて発射する兵器と比較し、巨大な電源装置を必要とする等の点で問題の多い上に、実績も無いレールガンの宇宙兵器化研究は進んでいない。

その一方で、1990年代頃から技術開発や研究方面での利用も進み、様々な分野で開発・利用されている。

日本では宇宙科学研究所で、デブリ衝突などの模擬実験用に研究と同時に実用に供されていた。

なおレールガン開発の歴史は、レールガン本体の改良よりも、むしろ電源開発の歴史と述べた方が適切とされており、SDI計画においても、単極発電機の小型化が最重要課題とされていた。今日各方面で利用されているレールガンにおいては、フライホイールに(運動エネルギーの形で)蓄電された物やコンデンサに蓄電した物が利用されるなどしている。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ : electromagnetic launcher
  2. ^ a b 防衛省:我が国の防衛と予算-平成27年度概算要求の概要- - 防衛省(PDF)
  3. ^ 日本がレールガンを秘密裏に開発 実験室が初公開_中国網_日本語”. japanese.china.org.cn. 2019年7月26日閲覧。
  4. ^ 最新科学論シリーズ15『最新宇宙飛行論』(1991年)学研(P.153 - 155)
  5. ^ a b 「ハイテク兵器の物理学」 防衛技術協会 ISBN 4-526-05644-8
  6. ^ : advanced gun system
  7. ^ ジャパン・ミリタリー・レビュー『軍事研究』2007年7月号P.66参照
  8. ^ 米国海軍研究局 - Electromagnetic Railgun: An Innovative Naval Program Archived 2009年4月30日, at the Wayback Machine.
  9. ^ 米国海軍研究局 - 2008年01月31日発表報道資料- U.S. Navy Demonstrates World’s Most Powerful Electromagnetic Railgun at 10 MJ
  10. ^ Technobahn - 米海軍研究所、10メガジュールの本格的レールガン発射実験に成功
  11. ^ WIRED.COM - Navy’s Mach 8 Railgun Obliterates Record
  12. ^ : USNS Millinocket (JHSV-3)
  13. ^ “米海軍、レールガンを2016年に洋上テストへ 「これはSFではない」”. ITmedia. (2014年4月18日). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1404/08/news069.html 
  14. ^ 米国海軍 - 2014年04月07日報道資料 - Navy to Deploy Electromagnetic Railgun Aboard JHSV
  15. ^ : homopolar generator

参考文献編集

  • 最新科学論シリーズ15『最新宇宙飛行論』(1991年)学研(P.153-155)

関連項目編集

外部リンク編集