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ヴェンチャラー (HMS Venturer, P68) は、イギリス海軍潜水艦V級英語版。艦名は「冒険者」または「投機家」という意味の名詞。「ヴェンチャラー」の名を持つ艦としては三代目にあたる。

HMS ヴェンチャラー
V級潜水艦ヴェンチャラー (1943年8月18日撮影)
V級潜水艦ヴェンチャラー
1943年8月18日撮影)
基本情報
建造所 ヴィッカース・アームストロング
運用者  イギリス海軍
 ノルウェー海軍
級名 V級潜水艦 (2代)英語版
艦歴
起工 1942年8月25日
進水 1943年5月4日
就役 1943年8月19日(イギリス海軍)
1946年(ノルウェー海軍)
退役 1946年(イギリス海軍)
1964年1月(ノルウェー海軍) 
除籍後 スクラップとして売却
改名 HNoMS ウトシュタイン
(HNoMS Utstein)
要目
満載排水量 545 トン(水上)
740 トン(水中)
全長 62.33 m
吃水 4.65 m
主機 ディーゼル・エレクトリック方式
パクスマン式ディーゼル機関電動機×2基
出力 615 shp(水上)
825 shp(水中)
推進器 2軸推進
最大速力 11.25ノット(水上)
10 ノット(水中)
航続距離 4,700海里 10ノット時(水上)
30海里 9ノット時(水中)
潜航深度 95 m
乗員 士官、兵員33名
兵装 53.3cm魚雷発射管×4門(艦首・魚雷8本搭載)
3インチ単装高角砲×1基
7.7mm単装機銃×3基
その他 ペナント・ナンバー:P68
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ヴェンチャラーは第二次世界大戦において、双方が潜航中の状況で敵潜水艦を撃沈した現在に至るまで唯一の戦果を挙げたことで知られている。

艦歴編集

ヴェンチャラーはU級潜水艦第2グループの改良型であるV級潜水艦で最初に完成した艦[1] として1942年8月25日にバロー=イン=ファーネスヴィッカース・アームストロングで起工し、1943年5月3日に進水、1943年8月19日に初代艦長ジェームズ・スチュアート・"ジミー"・ラウンダース(James Stuart "Jimmy" Launders)大尉の指揮下で就役した。

ノルウェー沖編集

公試と錬成訓練完了後、ヴェンチャラーはノルウェー沿岸部を哨戒し、付近を航行する船舶や基地に出入りするUボートの捜索に従事した。

1944年3月2日、ヴェンチャラーはノルウェー沖でドイツ商船トール(Thor)を雷撃して撃沈した。4月15日には同じくドイツ船フリードリヒスハーフェン(Friedrichshafen)を、9月11日にノルウェー船ヴァング(Vang)をそれぞれ雷撃で沈めた。2日後にはノルウェーの商船フォルス(Force)に対して3本の魚雷を発射するが、魚雷は全て外れた。なおもヴェンチャラーは浮上して砲撃によってフォースを沈めようとしたが、ドイツ軍の沿岸砲台から砲撃を受けたため離脱を余儀なくされた。

1944年11月11日、ヴェンチャラーはアンデネス英語版東方7海里(13km)のロフォーテン諸島沖においてU-771英語版を雷撃で撃沈した。

1945年2月9日、弱冠25歳のラウンダース艦長に率いられたヴェンチャラーがシェトランド諸島ラーウィックにあるイギリス海軍潜水艦基地を出て11回目の哨戒を行っていたこの日、ヴェンチャラーは海戦史に残る記録を打ち立てることになった。

ブレッチリー・パークでのエニグマ暗号解読によって得られた情報に基づき、ヴェンチャラーはフェイエ英語版周辺海域に送られ、U-864en:German submarine U-864)の捜索・攻撃を命じられた。U-864は遣日潜水艦作戦の一つであるカエサル作戦英語版として、メッサーシュミット Me262エンジン部品とV2ロケットの誘導装置、そして戦略物資である水銀65トンを日本へ運ぶ使命を帯びていた[2][3]

U-864撃沈編集

1945年2月6日、U-864は発見されることなくフェイエ海域を通過した。しかし2月9日にヴェンチャラーはU-864のスクリュー音を探知することに成功する。ラウンダース艦長は存在を知られないようにASDICを使用せず、聴音のみでU-864を追い詰めることに決めた。約20分後、ヴェンチャラーはU-864の艦長が友軍の護衛艦を探すため海面上に出した潜望鏡を発見した[4]

双方の乗員たちが訓練したことのないこの稀な状況での交戦において、ラウンダース艦長はU-864が浮上し絶好の標的になる瞬間を待つべく、U-864の発見から戦闘配置を命じるまで45分間にわたって追跡を続けた。やがてU-864も自らがイギリス海軍の潜水艦に追跡されていることに気づき、ジグザグ航行で逃れようと試みた。U-864の護衛艦はいまだ到着しておらず、双方は危険を冒しつつ時折潜望鏡で相手を確認しながら行動を続けた。

U-864が22本の魚雷を搭載可能であるのに対して、小型潜水艦であるヴェンチャラーはわずか8本の魚雷しか装備していなかった。3時間後、ラウンダース艦長はU-864のジグザグ航行のパターンを予測して攻撃を決め、水深40フィート(約12m)に調定した魚雷を予想された針路に向かって扇状に発射した。三次元で動く標的に対して行われた人の手による前例のないこの手法は、現代のコンピュータ管制による雷撃照準システムの基礎となった。この攻撃以前には、三次元で動く標的の絶えず変動する位置や深度を予想して魚雷を放ち、敵艦を沈めた例はなかった。この魚雷管制は、敵艦の喫水の深さを完全に想定できる水上艦艇に対する二次元での戦闘を前提としたアナログコンピュータ式魚雷管制装置とは根本的に異なるものであった。

魚雷は12時12分から17秒間隔で発射され、4分後には全ての魚雷がU-864の推定位置に到達した。魚雷を発射後、ラウンダース艦長は反撃を避けるためにヴェンチャラーを急速潜航させた。U-864は魚雷の接近音を探知し、回避すべく進路変更と潜航を試みた。最初に到達した3本の魚雷は回避に成功したが、U-864は4本目の魚雷が向かってきていることに気づいていなかった。4本目の魚雷はU-864に直撃して爆発し、艦体を真っ二つに引き裂いた。U-864は日本人科学者を含む73名とともに水深150m(約490フィート)の海底へと沈んでいった[5][6]

ラウンダース艦長はこの戦闘における功績によって殊功勲章(DSO)を受章した。

1945年3月19日には、ヴェンチャラーはナムソス沖でドイツ船シリウス(Sirius)を雷撃して沈めた。5月24日に艦長がアンドリュー・トーマス・チャルマース(Andrew Thomas Chalmers)大尉に交代し、以降1946年1月30日までその任に就いた。

ヴェンチャラーは現役期間で潜水艦2隻と商船4隻を撃沈した[7]

戦後編集

戦争終結に伴い、ヴェンチャラーは廃棄リストに載った。1946年にヴェンチャラーはノルウェー海軍に売却され、ウトシュタインHNoMS Utstein)と改名された。ウトシュタインは1964年1月にノルウェー海軍から除籍され、その後スクラップとして売却された。

脚注編集

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  1. ^ U & V Class Single Hull Coastal Submarines”. Submariners Association – Barrow in Furness Branch. 2009年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月18日閲覧。 公式なネームシップ自体は同型艦のヴァンパイアである。
  2. ^ Fletcher, Martin (2006年12月19日). “Toxic timebomb surfaces 60 years after U-boat lost duel to the death”. The Times (London). http://www.timesonline.co.uk/article/0,,3-2511387,00.html 2008年11月9日閲覧。 
  3. ^ “Norway tackles toxic war grave”. BBC News website. (2006年12月20日). http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/europe/6193979.stm 2008年11月9日閲覧。 
  4. ^ "Submarine Operational Effectiveness in the 20th Century: Part Two (1939 - 1945)", Captain John F. O'Connell, USN (RET.)著(2011年), ISBN 978-1462042579, p106
  5. ^ "British Submarines At War 1939-1945", Alastair Mars著(1971年), ISBN 07183-0202-8, p204-205
  6. ^ “[http://www6.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/?pid=110812 日本を目指したUボート ~U-864 歴史に残る海戦~]”. NHK. 2018年7月29日閲覧。
  7. ^ HMS Venturer”. Uboat.net. 2008年11月9日閲覧。

参考文献編集

  • Colledge, J. J.; Warlow, Ben (2006) [1969]. Ships of the Royal Navy: The Complete Record of all Fighting Ships of the Royal Navy (Rev. ed.). London: Chatham Publishing. ISBN 978-1-86176-281-8. OCLC 67375475.

外部リンク編集