多選
概説編集
明確な定義があるわけでないが、日本では3期12年を超えて4期目に入れば多選とする向きがある[1]。
多選は政治権力の適切な行使の観点では、権力濫用の抑制、利益誘導の防止、公共のニーズに応える政治行政の実現などの点で主張される[2]。また、民主政治における適切な代表確保の観点では、職業政治家への反発、選挙の競争性の確保、新しい人材と新鮮な考え方の取入れなどの点で主張される[2]。アメリカ合衆国では多選制限の導入の背景に現職優位に対抗する党派的理由もみられたといわれている[2]。
多選制限の禁止は、アメリカ合衆国などでは、多選の制限を直接規定する場合、任期の回数や長さを規定する場合、投票用紙に候補者として記載されなくなる旨を規定する場合がある[2]。
一方で多選制限に対する問題点も指摘されており、レームダックの弊害の発生(最終任期での政治的権力の弱体化)、評価にかかわらず一律に退職となること、政治行政の実績と多選制限とは無関係であるという指摘、専門的能力の涵養が行われない、経験不足・知識不足の者が公職に就くことで官僚やロビイストなどの影響力が強くなる、選挙では有権者が自らの判断で公職者を選ぶ権利を有する、多選を制限しても必ずしも従来と出自が異なる者が公職に就くようになるわけではないなどの諸点である[2]。
各国における多選制限規定編集
アメリカ編集
- 大統領:3選禁止(憲法修正第22条)[2]
- 連邦議会議員:かつては州法等で多選制限していたが、1995年に多選制限が連邦最高裁で違憲とされたため撤廃[2]。なお、違憲判決前に多選制限規定が適用される連邦議会議員は現れず適用例はなかった[2]。
- 州の政治家:自治体により多選制限のある自治体とない自治体がある[2]。
ドイツ編集
- 連邦大統領:3選禁止(ドイツ連邦共和国基本法第54条第2項)[2]
ロシア編集
中国編集
中華民国(台湾)編集
- 総統:3選禁止。
- 地方自治体の長:3選禁止。
韓国編集
メキシコ編集
メキシコでは大統領の再選は禁止されている(憲法第83条)[2][4]。
クロアチア編集
日本での多選をめぐる状況編集
多選制限をめぐる動き編集
日本では法律による多選制限規定はない。
過去に国会で多選制限の法案が何度か提出されてきた。1954年には知事3選禁止法案が、1967年には知事4選禁止法案が、1993年には政令市長の4選禁止の地方自治法改正案が提出されているが、いずれも上記の問題点等が指摘され、法制化されるには到らなかった。
1999年、自治省の「首長の多選見直し問題調査研究会」(座長・大沢秀介)は、「多選禁止は憲法上許される可能性があり、国民の間で十分な論議が必要だ」とする報告書をまとめた。また、2007年、総務省の「首長の多選問題に関する調査研究会」(座長・高橋和之)では、「法律に根拠を有する地方公共団体の長の多選制限については、必ずしも憲法に反するものとは言えない」とする報告書をまとめた。憲法上は違反ではないとの見解は出ているものの、条例の制定根拠となる地方自治法や公職選挙法には多選に関する規定が無いことから、所用の法整備が今後必要と言われている。
多選条例編集
都道府県や市区町村レベルでは知事、市区町村長について多選を制限することを意図した多選条例が制定された例がある。
日本における最多多選者編集
- 都道府県議会議員
- 市長
- 町村長