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建築材料(けんちくざいりょう、: building material)とは、建築物を建てるために使用されるあらゆる材料のことである[1]。短縮形で「建材」(けんざい)とも。

概説編集

建築材料とは、建築物を建てるために用いられるさまざまな材料の総称である。

範囲

どの範囲を「建築材料」と呼ぶかについては若干のゆらぎがある。

通常は「建築材料」という語は、「建築施工の場に提供される材料」を指している(たとえばセメント、砂利、ガラス、煉瓦などである)[2]

(「建築施工の場に提供される材料」という文は「建築施工の場に提供される」という部分と、「材料」という部分に分けられるわけだが) たとえば建築施工の場(=「建築現場」)に「煉瓦」が「提供」され(=運び込まれ)使われる場合は煉瓦を「建築材料」呼び、建築現場ではその煉瓦の原料である粘土については(煉瓦は煉瓦工場では粘土などを原料(材料)として製造されており、煉瓦工場内においては粘土は立派に「材料」であるのだが)「建築材料」とは呼ばない[2]。(なお誤解を避けるために言っておくと、これはけっして「粘土は(常に)建築材料ではない」などという意味ではなくて、粘土も建築材料と呼ばれる場合があり、たとえば建築現場で壁に「左官しごと」をほどこす段階で、建築現場にまさに粘土が粘土そのままの形状で運び込まれ左官がそれを使う場合は、その粘土は「建築材料」と呼ばれるのである。)

(次に定義に含まれる「材料」という言葉に着目すると)上記の建築材料を組み合わせたり加工したもの、例えばサンドイッチパネル、プレキャストコンクリート板、プレハブ部材(≒プレハブ部品)など、つまり現場で実際に建築物を組み立てるという立場に立った場合には どちらかと言えば「材料」ではなく「部材」、それどころか「部品」(parts パーツ)と呼んだほうがよいようなものも、広義には「建材」と呼ばれている[2]水道管ガス管、空調ダクトの類は、「建築材料」に含めることもあれば、含めない場合もあり、ゆらぎがある。 遮光設備、防音設備、あるいは免振設備といった設備も、建築材料に含めない場合もあれば、(建築物に最初から組み込まれ建築物と一体化するので)広義の「建築材料」に含めることもあり、ゆらぎがある。だが、さすがにエアコン(クーラー)のようなものは「建築材料」に含まれないことが一般的である。

分類

いくつか分類法があり、たとえば機能による分類法、部位による分類法、素材の種類による分類法などがある。→#分類

歴史

人類の歴史をたどれば、もともとは自然界に素朴に存在しているもの、自然の中で暮らしている状態で自分たちの身近にあるものをそのまま材料として建築物をつくるようになっていったわけであり、たとえば足元にある土、泥、石などや、森にふんだんにある植物性のもの(木の枝、樹皮、木の葉などや、草(草本)類の茎 等々、また石器を使いこなすようになり樹木を切ることができるようになってからは、その幹(木の幹)も使えるようになったであろう)を用いて次第に建築物を作るようになっていったわけである。(現代でも、アフリカなどでは、泥(しばしば草を混ぜたもの)を手で積んではしばらく乾かしそれを繰り返すことで壁を作り、壁に橋をかけるように木の枝や丸太を組み木の葉で屋根をふき、一軒の家とする、ということが行われている地域がある。建築材料として泥、木の枝(や丸太)、木の葉などだけを用いて家を作るということが、太古から現代まで行われているわけである。)

また石を(とくに加工もせず)積み上げて、泥や(足元にある素材を混ぜ合わせてつくる)モルタル(セメント)で固めて壁を作る、ということも行われるようになった。古代には、やがて、泥を木枠に入れて抜くことで形を一定にし陽光にあてて乾かしブロック状にした「日干しレンガ」を作っておいて、それを積み上げて建築物を作る、ということも行われるようになった。古代メソポタミアのジッグラトでは基本の日干しの泥のブロックに加えて、建築物表面には粘土を火で焼いたブロック(焼成レンガ)も用いられた。古代エジプトでは石材を加工して壮麗な神殿を建造し、加工した石だけを積み上げてピラミッドも建造した。また世界各地で石材を加工する技術が向上すると、(石の形をあらかじめととのえて、現代人が「石垣」と呼ぶような状態の壁も作れるようになり)それを建築物の壁として建築物を構成してゆくことも可能になった。古代ギリシアでは、たとえばパルテノン神殿では、大理石を精巧に加工して建築材料として、白く輝く壮麗な柱を組み上げ、その上に材木を組んで屋根構造を作り、その屋根組の上には陶製の瓦をふくということも行われるようになった。西ヨーロッパでは加工した石材を主たる建築材料とし、石材で組み上げた壁を建築物の主たる構造体とする方法が一般的になっていった。[注 1][注 2]

アジアでは古代には地面を若干掘って床材とし、丸太を建築材料として用いて掘った場所に素朴に組んで建築構造(屋根構造)とし(屋根そのものが、ほぼ建築物全体でもあり)、その上に屋根材として萱などをふくということが行われた。アジアでは材木を主たる建築材料にして、やがて材木に精巧な穴などをあけたり削ったりして相互に組んで建築物を作るということが一般的になっていった。[注 3]

#歴史

分類編集

いくつかの分類法があり、機能(用途)による分類、部位による分類、素材の種類による分類などがある。

機能による分類編集

  • 構造材 - 構造躯体に使う材料。西洋の(伝統的な)建築のアーチ、東洋の(伝統的)木造建築や米国などの近年の木造住宅のなどの材料。
  • 仕上げ材
    • 外装材 - 外装に使う材料。建築物をから護るために、また外見を整えるためにも必要な材料。屋根を覆う屋根材(スレート)、外壁を覆う外壁材(タイルレンガ、サイディングボードなど)がある。
    • 内装材 - 内装に使う材料
  • 補助材料 - 構造材や仕上げ材以外のその他の材料であり、塗料接着剤が含まれる[3][1]

単一の建築材料が必ずしも明確に構造材、仕上げ材(外装材、内装材)のいずれかに分類できるのではなく、複数の部位に使用されるものが多い[注 4]

部位による分類編集

建築物のどの部位に使われるか、という観点で分類する方法もある。

素材の種類による分類編集

(建築に限らないで材料・素材全般に関して言えば、「earth (土、地面、地球表面の物質)」系、植物系、金属系、合成樹脂系...など、その出どころにより大まかに分類する方法は根底にあり、建築材料についてもそうした分類概念は一応 背後に存在してはいるが)建築材料に関しては、素材にもとづく場合は、例えば以下のように分類されている。

歴史編集

古代メソポタミアの時代から現代まで - 日干しレンガ
 
ごく最近作られた泥ブロック(日乾レンガ)。日乾レンガは現代でもさかんに用いられている。

古代メソポタミアの時代から、乾燥した地帯では、さかんに mud brick 泥ブロック(あるいはsun-dried brick ひぼししたブロック、「日干しレンガ」)が用いられている。たとえばジッグラトも基本は日干しレンガでできており、表面だけ焼成レンガを用いている。日干しレンガは(日本人が「煉瓦」という表記を見て想像するようなものとは大いに異なり[注 7])日干しレンガは、泥を四角い木枠に入れて、直後に抜き、そのまま地面に並べた状態で、数日ほど太陽の光に当てて乾かしただけのものである。まったく窯で焼いていないのである。日干しレンガはあらかじめ木枠だけ持っていれば、建物を造ろうとする場所の付近で泥が多い場所や水をまくだけで泥になる場所を見つけて(しばしばそれは、建築地に隣接する空き地である)、屋外で、ある程度の広さの地面を確保し、泥を木枠に入れては、抜き、そのまま地面に放置して乾かすことをひたすら繰り返すだけで、簡単に大量に製造でき、しかも建築中の建物の隣の空き地でも製造できるので、重いものを輸送するという大きな手間も省ける。日干しレンガは、現代でも、中近東アフリカ各地、南米のペルー 等々、世界各地の乾燥地帯で現在も広く用いられているのである。

古代ギリシア
 
パルテノン神殿大理石。ペンテリコの地で産出するものが用いられた。

古代ギリシアでは、石材、木材、陶製の材料などが用いられた。民家は茅葺きの屋根と瓦ぶきの屋根が存在していた。パルテノン神殿の場合、主たる構造材の柱はペンテリコ(Mount Pentelicus)産の大理石が用いられ、屋根の部分の構造材は材木で、その上を瓦で覆っていた。

古代ローマ
 
古代ローマの水道橋。主に石灰岩が用いられた。古代ローマ帝国は水中硬化性のセメントも開発し、水を流したまま、構造を追加したり石材のすきまを埋めることができた。

古代ローマ帝国は建築・建設の分野では突出した技術を持っていた。石材、木材、セメント、モルタル、等々等々 多種多様な材料を用いた。古代ローマの建築技術者は、セメントモルタルの技術も卓越しており、さまざまな配合のセメントやモルタルを、用途に応じて使い分けて駆使していた。水中硬化性のセメントまでも開発し、使いこなしていた。古代ローマで用いられた 優れたセメント(コンクリート)は、現代の研究者らによって「roman concrete ローマンコンクリート」と呼ばれている。古代ローマは水道や水道橋の技術にも優れており、水道に水を流したまま、補修したり、増築することができたのはそのおかげである。今もフォロロマーノなどに古代ローマの歴史的建造物が多数残っており、それらの建材を確認することができる。古代ローマ時代にすでに窓にガラスが用いられ始めていた、という記録がある。

en:Ancient_Roman_architecture#Materials(古代ローマの建築 - 材料)も参照。

中世ヨーロッパ
 
シャルトル大聖堂のバラ窓。数ある教会堂のステンドグラスの中でも特に有名なもの。

中世ヨーロッパでは、石造りの建物を造ってきた歴史があり、壁が構造体となって建物の基本構造を構成する建築法が歴史的には主流で、にさまざまな石材が用いられ(つまり構造材は石材であり)、またなどにも大理石などの石材がさかんに用いられてきた歴史がある。石材をさかんに加工する必要があったので石工という職業が発達し、その職業組合(ギルド)も発達した。また木造建築も造られてきた歴史もあり、木材材木)も建材として使用されてきた歴史がある。木造建築の場合は、構造材も内装材も木材となっていることは多い。教会堂ステンドグラスが用いられた。これは金属枠をはんだ付けしたものと色ガラスから成っている。

中国

中国では、木材竹材などの植物起源材料のほか、石材なども多く使用されていた。また漆喰なども使用されている。屋根は素焼きの瓦が用いられた。中国大陸では夏の時代の歴史資料に瓦が製造されていたとの記録が残っている。(日本と同じく)内装材に紙を用いる例もある。

日本

日本では、縄文時代の住居はほとんどが竪穴式住居であり、植物性の自然素材が多用された。(地面をいくらか掘り下げており、地面が床材ではあるが)構造材として丸太を用い、などで屋根をふいた。なお竪穴式住居は、縄文時代だけでなく6世紀や8世紀ころでもかなり広く用いられていたのが実態であることが、考古学的調査で次第に明らかになってきている。 飛鳥時代では、中国大陸の影響が大きくなり、建材として石材木材など植物性の材料を用いた。日本では、内装材として、木材だけでなく、唐紙障子など、を多用する独特の文化が形成された。これは基本的にヨーロッパには見られない文化・傾向である。

原材料・用途編集

内装材など編集

材料名 原材料名 特徴 用途
アルミニウム アルミニウム 軽い、耐食性があり、加工が楽 建具(サッシ等)
すさ 稲わら等 ヒビや剥落を防ぐ 内装材(壁、天井)
石膏ボード 硫酸カルシウム 耐火性、環境性、リサイクル可 内装材(床、壁、天井)
タイル 磁器 吸水性極小、対侯性、耐久性 外装材、内装材(床、浴室等)
タイル せっ器 吸水性小、硬い、対侯性、耐久性 外装材、内装材(浴室等)、舗装
タイル 陶器 吸水性有、多孔質 内装材
モルタル セメント ペースト状、伸縮性 仕上材、躯体調整、目地材等
ラスボード 石膏ボード 耐火性、遮音性、 内装材(塗壁の下地)

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ その結果、西ヨーロッパの建築では(アジアとは対照的に)、建築にたずさわるさまざまな職人の中でも、石材加工を行う石工(いしく。mason。石材加工職人)の役割が特に重要であった。
  2. ^ 必ずしもヨーロッパ全域というわけではなく、北欧や東欧などには、(石材はほぼ用いないで)ほぼ材木だけを建築材料として用いる建築物がさかんに作られた地域もある。
  3. ^ よって、ヨーロッパとは対照的に、アジアでは、建築にたずさわるさまざまな職人の中でも、木材加工を行う大工の役割が特に重要であった。
  4. ^ コンクリートは主に構造材に含まれるが、外装材としての利用もあり、煉瓦は元々は構造材として誕生したが、装飾的な仕上げ材としての利用も多い。
  5. ^ アテネの建築物の柱の大半がペンテリコ産大理石。以降、西洋では大理石は建築材料として定番中の定番である。
  6. ^ パリの建築物の大半は、付近の地下から掘りだした凝灰岩でできている。
  7. ^ 「煉瓦」と表記してしまうと、漢字の「煉」が含まれ、これには「焼いた」という意味が含まれてしまい、ただ陽光にあてて乾かしただけの日干しレンガの実態に反する表現になってしまっている。

出典編集

  1. ^ a b 河上嘉人、他著、『建築材料』、朝倉書店、2009年4月20日初版第1刷発行、ISBN 9784254268768
  2. ^ a b c 世界大百科事典 第2版「建築材料」
  3. ^ a b c 三橋博三、他著、『建築材料学』、共立出版、2007年4月15日初版1刷発行、ISBN 9784320076952

外部リンク編集