性的嗜好
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性的嗜好(せいてきしこう、英語: sexual preference)は、人間の性的行動において、対象や目的について、その人固有の特徴のある方向性や様式を意味する。すなわち、対象や行動目標において特定の好みやこだわりが存在する場合、何らかの性的嗜好を持つと表現できる。[要出典]
性的嗜好は“性癖″と間違えられやすいが、性癖というのは人間の心理・行動上に現出する癖や偏り、傾向、性格、性向のことである。[1]
性的嗜好の類型 編集
性的嗜好は、人間のあらゆる特徴や行為、行動が多様で、個人毎に様々な好みや傾向性を持つのと同様に、あまりにも多様であり、本来類型化など不可能である。なぜ或る特徴、或る行為、或る状況に魅惑されるのか、その原因と想定されるものが非常に多種多彩であることも考えれば、類型を想定することに無理があるとも言える。
しかし、それでも或る種の性的嗜好は、その原因に関する説明理論から類型が立てられ、また社会道徳的に「異常」と通説されるものは、その行為や嗜好の特異性あるいは外見の特徴から類型が立てられている。異常とされる類型は、精神医学的に、健全な心理の所産とは考えがたいものは性的倒錯の類型となり、世俗道徳的な偏見における類型は、変態性欲の類型になる。
- フェティシズム:相手の身体の一部、衣服・装身具などへの好み・こだわり。
- 身体のパーツに由来するもの(例えばボン・キュッ・ボン体型全体へのこだわり等、複合的な場合もある。)
- 頭髪へのフェティシズム:主に女性の頭髪へのこだわりで、艶々な黒髪等への好みがある。
- 乳房へのフェティシズム:バストへのこだわりで、巨乳や貧乳、思春期前の乳房(つるぺた)、思春期の乳房の発達期などへの好みがある。胸フェチなど。
- 臀部へのフェティシズム:主に女性の臀部(尻)へのこだわりで、女性の豊かな臀部、「お尻の小さな女の子[2]」の小さな臀部などへの好みがある。リンクの画像のようにタイトスカートのスーツで覆われたそれ(豊かな臀部)に特に興奮する等のような場合もある。このように、「身体のパーツに由来するもの」と言っても、後述の「服装に由来するもの」と密接に関わる場合も多い。
- 足・脚へのフェティシズム:主に女性の足・脚の美しさへのこだわり。足フェチ、脚フェチなど。足指、足首、脹脛、腿部などに分類される。また素足(生足)を好む他にも網タイツやパンティーストッキングを着用した女性へのフェチ(さらにそれを破いた時、脱装着時、履いた上から糞尿というようにコアな物へと分類される)。
- 手へのフェティシズム、指へのフェティシズム:男性の手や指へのこだわり。主に女性側からのフェティシズム。手フェチ。
- 筋肉へのフェティシズム:男性の筋肉へのこだわり。主に女性側からのフェティシズム。
- 服装に由来するもの(身に付けている相手に、即ち相手の身体の一部として興奮する場合のみならず、身体から離れてその物のみに興奮する場合、また、相手に限らず自分自身も身に付ける場合など、様々である。)
- 靴へのフェティシズム:ハイヒールなどへの性的嗜好。靴フェチ、ブーツフェチなど。
- 毛皮へのフェティシズム:毛皮を着た対象者への好み。毛皮自体への嗜好。
- デニム生地へのフェティシズム:デニムの色や着用したときの引き締まりへの性的嗜好。
- 革(レザー)へのフェティシズム:レザーの滑らかな光沢や引き締まりへの性的嗜好。
- ゴム(ラバー)へのフェティシズム:ラバーフェチなど、身体にぴったり密着するゴムの衣装などへの嗜好。
- 本繻子(サテン)生地へのフェティシズム:サテンの持つテカテカした光沢感への性的嗜好。下記の下着へのフェティシズムと併発する場合が多い。
- 下着へのフェティシズム:女性のパンティ、ブラジャー、男性のブリーフやふんどしなどへのこだわり。
- 体操服へのフェティシズム:体操着やブルマー、紅白帽子、鉢巻、トレーニングウェア(特にジャージ素材のトレーニングパンツまたはハーフパンツ)など。ブルマーに関しては、かつて学校体操服に広く採用されていたが、徐々に盗撮や盗難の被害が相次ぎ[3][4][5]、 近年は体操服のデザインがユニセックス化し、その姿を消しつつある[6]。
- 水着へのフェティシズム:水着や水泳帽子、レオタード等へのこだわり。
- 異性装へのフェティシズム:女装や男装など異性装への性的嗜好。
- 制服へのフェティシズム:制服への性的嗜好で、制服のスカートを短くし、エロティックな太ももを露出させた女子高生(JK)等への好みがある。
- スーツへのフェティシズム:スーツへの嗜好で、就職活動のためリクルートスーツを着た就活生や、スーツを着たOL等への好みがある。リンクの画像のようにタイトスカートのそれ(スーツ)で覆われた豊かな臀部に特に興奮する等のような場合もある。このように、「服装に由来するもの」と言っても、前述の「身体のパーツに由来するもの」と密接に関わる場合も多い。
- 着物へのフェティシズム:着物への嗜好で、成人式のため振袖を着た新成人等への好みがある。
- 身体のパーツに由来するもの(例えばボン・キュッ・ボン体型全体へのこだわり等、複合的な場合もある。)
- 窃視症:他者の性的行為などを覗き見する性的嗜好。
- 露出症:自分の裸体・性器などを他者や公衆の前に示して性的興奮等を得る嗜好。
- 対象の年齢に対するもの
- 女斗美:女性同士の格闘に性的な魅惑を感じる嗜好。
- 動物性愛:ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコなどの動物に性的魅惑を抱く。獣姦ともなる(牧畜社会などでは、独身の男性がヒツジなどを性的対象とすることは珍しいことではなかった)。
- サディズム:相手に対し(性的な)屈辱などを与える嗜好。
- マゾヒズム:相手から、または自分自身で屈辱などを受ける嗜好。
- 母乳に対する嗜好:相手の授乳を見たり、母乳を身体に受けたり、母乳を飲むことが快楽である嗜好。
- 尿に対する嗜好:相手の排尿を見たり、尿を身体に受けたり、尿を飲むことが快楽である嗜好。
- 糞便嗜好:糞便を食べること、見ること、浣腸、お漏らし、トイレ以外での排泄で性的興奮を得る者や、手などで弄ぶこと、体に糞尿を塗る(塗糞)や顔に糞尿を浴びるなどといった行為で興奮する場合など。
- 死体愛好(ネクロフィリア):死体に対し性的魅惑を感じる嗜好。死姦なども含む。
精神疾患としての嗜好 編集
国連の WHO が定めている精神疾患に関する分類 ICD で、精神障害(mental disorder)として記載されている性的嗜好があり、あるいは米国における APA が定める DSM においても、ある種の性的嗜好は、精神疾患として記載されている。ただし、それは精神障害の名称に、特定の性的嗜好の類型名が使われているので、例えば、フェティシズムやマゾヒズムの性的嗜好を持つ者が、即ち、精神障害という意味ではない。
- ICD においては、「F65 性嗜好の障害」として、Paraphilia(性的倒錯)を含む、次のような性的嗜好が、障害とされる。
- フェティシズム
- フェティシズム的服装倒錯症
- 露出症
- 窃視症
- 小児性愛
- サディズム
- サドマゾヒズム
- マゾヒズム
- 性嗜好の多重障害
- 屍体性愛
- 獣愛
- 接触性愛
- 性的逸脱
- 性的倒錯
- 性的偏倚
- 性嗜好の障害
- APA (アメリカ精神医学会)の DSM-IV-TR では、「Paraphilia(性的倒錯)」として次のような項目が、disorder(障害)として列挙されている。
- 露出症
- フェティシズム
- 接触性愛
- 小児性愛
- 性的マゾヒズム
- 性的サディズム
- 服飾倒錯的フェティシズム
- 窃視症
- その他の性的倒錯
上述の性的嗜好を持つ人が性的倒錯であり、精神障害を持つ人ということではない。精神疾患における「性嗜好」に関係する診断類型に、特定の性的嗜好の名が付けられている。これらの性的嗜好を持つ人の嗜好が、極端化すると精神障害になるのかというと、そうではない。精神の障害が、何かの性的嗜好の形で表現されるというのが寧ろ妥当である。子供に性的魅惑を感じる人は小児性愛の嗜好者であるが、必ずしも精神疾患としての小児性愛者ではない。
脚注 編集
- ^ “性癖 - Google 検索”. www.google.co.jp. 2022年12月25日閲覧。
- ^ “倖田來未 キューティーハニー 歌詞 - 歌ネット”. 株式会社ページワン. 令和5年4月16日閲覧。
- ^ “消えたブルマー 中3女子の「はきたくない」に裁判官は [令和:朝日新聞デジタル]”. 株式会社朝日新聞社. 令和5年4月16日閲覧。
- ^ “ブルマー盗難事件 - YouTube”. グーグル. 令和5年4月16日閲覧。
- ^ “ブルマー盗難事件2 - YouTube”. グーグル. 令和5年4月16日閲覧。
- ^ “日本の制服・ユニフォーム (体操服)|トンボ学生服・とんぼ体操服の株式会社トンボ”. 株式会社トンボ. 令和5年4月16日閲覧。
- ^ “「前社長から性的被害」 元ジャニーズ所属歌手会見 事務所「コンプラ徹底」 - 日本経済新聞”. 株式会社 日本経済新聞社. 令和5年4月16日閲覧。
- ^ “ジャニー喜多川氏の性加害が告発された件について解説します - YouTube”. グーグル. 令和5年4月16日閲覧。
関連項目 編集
参考書籍 編集
- メダルト・ボス 『性的倒錯-恋愛の精神病理学』 みすず書房
- エーリヒ・フロム 『悪について』 紀伊國屋書店
- エーリヒ・フロム 『正気の社会』 中央公論社