旧神(きゅうしん、Elder God)はクトゥルフ神話と呼ばれる一連の創作群において、主に"THE ELDER GODS"と表記される神々の日本語訳。神によっては、旧支配者たちとあまり変わらない行動を取る。

オーガスト・ダーレスによれば、クトゥルフたちを封印したりこの時空から追い出したのは彼等であり、彼等の中で唯一名前が判っているのはノーデンスだけ[1]だという。

ブライアン・ラムレイによれば[2]、旧神の中で力に驕り堕落した者たちがおり、同胞の旧神たちによって追放されたのが旧支配者たちであった。邪神の王はルルイエの主神クトゥルフであり、旧神の王はエリシアの主神クタニドである。[3]

ゲーリー・メイヤーズの設定では「カダスの大いなるもの」(=地球本来の神々)が旧神とされており、先述のダーレスやラムレイの旧神よりもはるかに弱い。[4]

旧神の登場の過程編集

ラヴクラフトに心酔していた作家オーガスト・ダーレスは、師と仰ぐラヴクラフトの作品を自ら出版社「アーカムハウス」を創設して出版するなどラヴクラフトの物語を世に広める最大の功労者と言ってよいが、同時に「悪なる旧支配者」が存在する以上、それに対抗する「善なる存在」も求めた。

そして1932年にマーク・スコラーと共作した、ダーレスの初期のクトゥルフ神話潜伏するもの」に太古の昔にベテルギウスからやってきた(古きもの)あるいは(旧神)と呼ばれるラブクラフトの作品群には言及がない旧支配者に対抗する超越者を書き記した。

ダーレスはその後の作品でも旧神と旧支配者の対立の設定に拘り書いている。邪悪なる旧支配者は善なる旧神と地球の支配権を賭けて戦い、ついには敗れ、そして地球や宇宙の各地に封じられているとした。

この構図はラブクラフトの考える世界観とは違うが、単純で理解し易いためかその後も踏襲する作家も多く、日本のクトゥルフ神話でも、栗本薫の「魔界水滸伝」では旧神は地球を守る先住者と呼ばれる者たちの祖先として位置づけられている。風見潤の「クトゥルー・オペラ」は超能力をもった少年少女が旧支配者と戦うという設定だが、少年達に地球を守るべく超能力を与えた存在はベテルギウスの旧神であった。

ただ、旧神を実際に登場させる作品は存外に少なく、単に旧支配者を幽閉した存在として言及される程度のことも多い。

登場作品編集

旧神一覧編集

Bast(バースト)/Bubastis(ブバスティス)
エジプト神話の猫の女神。人間による信仰は絶えたが、猫たちに信仰されている。TRPGにて旧神にカテゴリされた。ロバート・ブロックは人喰いの邪神として描いた。
出典・登場作品:TRPG『クトゥルフの呼び声』、ロバート・ブロックブバスティスの子ら
Dveahtehs
詳細不明。
出典・言及作品:ジョゼフ・S・パルヴァー『Nightmare’s Disciple』[5]
Four Titans of Balance and Order(安定と秩序の四巨神)
  • Othkkartho(オスカルト) - ノーデンスの長男。四巨神のリーダー。
  • Eyroix(エィロワ)
  • Adaedu(アダイドゥ)
  • Alithlai-Tyy(アリトライ=ティイ)
出典・言及作品:ジョゼフ・S・パルヴァー『Nightmare’s Disciple』[5]
Hypnos(ヒュプノス)
眠りの神。ギリシア神話の眠りの神ヒュプノスと同名で、容姿等もかなり近いが、恐ろしい神として描かれる。地球本来の神々旧支配者とされる場合もある。
Kthanid(クタニド/サニド)
クタニドは、ブライアン・ラムレイの作品では、旧神のリーダーと位置づけられた。クトゥルフの従兄弟でクトゥルフと同じ姿だが慈愛に満ちた黄金色の目をしている。人間たちを守りたいと願う強く優しい神。[3]
登場作品:ブライアン・ラムレイタイタス・クロウ・サーガ、初登場は2巻『タイタス・クロウの帰還』
Nodens(ノーデンス)
一般的に旧神の首魁とされる神。
N'tse-Kaambl(ヌトセ=カームブル)
旧神の印を作った女神。槍と盾を持ちローブを纏った美女の姿でドリームランドで崇拝されている。
出典・言及作品:ゲーリー・メイヤーズ妖蛆の館』、TRPGサプリメント『ラヴクラフトの幻夢境』。登場するたびに名前が変わっている。
Orryx
紫と白に輝く螺旋状の光柱の姿をしている。単一ではなく、複数の群。
クトゥルフ神話に登場した最初の旧神は、この神(神々)である。オーガスト・ダーレスの『潜伏するもの』に登場した無名の旧神を、後にTRPGのサプリメント『The Creature Companion』(未訳)が命名したもの。
Ovytonv
詳細不明。
出典・言及作品:ジョゼフ・S・パルヴァー『Nightmare’s Disciple』[5]
Thibukcall(シバッカル)
シバッカルは[6]ベテルギュース太陽系の惑星ミオブの山の地下に潜む美しく巨大な神。理由は不明だが、自ら選んだ地球人の女性の魂を抜き取り自分の元へ連れ去る。連れ去られた女性の魂は幸福感に包まれ帰りたいという気持ちもなく、シバッカルの言いつけに従って働き、肉体は昏睡状態となっている。これらのことは全てエルトダウン・シャーズに記されている。
出典・登場作品:フランクリン・シーライト『Lair of The Dreamer』(「Lair of The Dreamer ISBN 097938060X」所収)
Ulthar(ウルタール)
ウルタールは『サセックス草稿』でのみ言及されている元旧支配者の旧神。ウルタールは外なる神の一員にしてアザトースの副従者ソトースの息子であり、旧神の力の象徴。旧支配者の動向を知るためにウルタールを地球に向かわせたが、彼は警戒を続けるために儀式が必要。
サセックス草稿に依れば、かつて旧神の王であったアザトースに対し、アザトースの正従者ノーデンス等、他の旧神たちが叛乱を起こした際、父や兄弟を裏切り他の旧神たちについた。
出典:フレッド・L・ペルトン『A Guide to the Cthulhu Cult』ISBN 1887797068
Urthuvn
詳細不明。
出典・言及作品:ジョゼフ・S・パルヴァー『Nightmare’s Disciple』[5]
Vorvadoss(ヴォルヴァドス)
Xislanyx
詳細不明。
出典・言及作品:ジョゼフ・S・パルヴァー『Nightmare’s Disciple』[5]
Xuthyos-Shib'Bz
詳細不明。
出典・言及作品:ジョゼフ・S・パルヴァー『Nightmare’s Disciple』[5]
Yad-Thaddag(ヤード=サダジ)
ヤード=サダジはヨグ=ソトースに相当する旧神。黄金色の球体の集積物の姿をしている。
登場作品:ブライアン・ラムレイのタイタス・クロウ・サーガ最終巻『旧神郷エリシア』
Zehirete(ゼヒレーテ)
ゼヒレーテは「清浄かつ聖なる光の子宮」と呼ばれる女神。ノーデンスの妻。
出典・言及作品:ジョゼフ・S・パルヴァー『Nightmare’s Disciple』[5]
星の戦士たち/星辰天軍 Star Warriors
旧神Orryx配下の先兵。炎状の巨人であり、砲騎兵。ダーレスの『潜伏するもの』に登場。

関連項目編集

ウルトラマン
旧神はオリオン座に住んでいるとされ、オリオン座にはM78星雲が存在する。日本の特撮ヒーローであるウルトラシリーズのウルトラマンたちの故郷もM78星雲とされている。オリオン座のM78と、ウルトラマンのM78星雲は、名前が偶然一致したにすぎない。だが、ウルトラシリーズは平成以降になると、クトゥルフ神話の要素を取り込んだエピソードが現れてくる。特にウルトラマンティガは、地球の古代文明の守護神だったという設定で、クライマックスでは闇の邪神と戦う。

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

出典編集

  1. ^ ハワード・フィリップス・ラヴクラフトオーガスト・ダーレス『破風の窓』(「クトゥルー1(青心社)」所収)
  2. ^ 「タイタス・クロウの帰還」(東京創元社)
  3. ^ a b タイタス・クロウ・サーガの邦訳ではクトゥルー/クタニド、TRPG邦訳ではクトゥルフ/サニドになっている。
  4. ^ ただしこれは『妖蛆の館』第2版の設定である。メイヤーズは設定の大幅リメイクを複数回行っており、第2版と、初版・第3版は内容が異なる。初版・第3版の旧神は強い。
  5. ^ a b c d e f g ジョゼフ・S・パルヴァー『Nightmare’s Disciple』ISBN 1568821182
  6. ^ FRANKRYN.SEARIGHT「Lair of the Dreamer(Hippocampus Pr)