札幌市交通局3000形電車(さっぽろしこうつうきょく3000がたでんしゃ)は、札幌市交通局札幌市営地下鉄南北線で運用していた通勤形電車である。

札幌市営地下鉄3000形電車
自衛隊前駅に停車中の南北線3000形
(2008年3月3日)
基本情報
運用者 札幌市交通局
製造所 川崎重工業
製造年 1978年 - 1990年
製造数 5編成40両
運用開始 1978年10月
運用終了 2012年3月
投入先 南北線
主要諸元
編成 8両編成
電気方式 直流750V
第三軌条方式
設計最高速度 70 km/h
起動加速度 4.0 km/h/s
減速度(常用) 4.0 km/h/s
減速度(非常) 5.0 km/h/s
編成定員 740人(座席定員315人)
編成重量 149.4 t
全長 13,500 mm
全幅 3,080 mm
全高 3,725 mm
車体 アルミニウム合金
主電動機 直流電動機
主電動機出力 110 kW
編成出力 1,760 kW
制御方式 電機子チョッパ制御
制動装置 電気指令式電磁直通液圧変換式ブレーキ
回生ブレーキ
連動補足ブレーキ
保安装置 ATC 二重系
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概要 編集

南北線北24条駅 - 麻生駅間が延伸開業した1978年に登場した。この頃、1971年の開業時に導入された2000形(登場時は1000形)は8両編成化のために中間車が7次車として製造され、本形式は当初その流れを汲んだ2000形8次車として計画された車両である。しかし、後述の様に車体構造、制御方式、デザイン等が大きく変更されたため2000形とはならず、新形式「3000形」とされた。

車体・車内 編集

 
ボギー台車のタイヤハウス
 
車内(2012年2月)
 
3000形の到着を知らせるホーム案内LED装置 麻生駅にて

設計のベースは東西線6000形となり、2000形の特殊な2車体7軸構造からボギー台車による2車体連接構造、平行カルダン駆動に変更された。同じくゴムタイヤ式であるフランスパリのメトロメキシコシティ地下鉄の車両とは異なり、札幌方式では急曲線もゴムタイヤのみで走行するため、左右輪の回転数の差を吸収する仕組みが必要となるが[注釈 1]、本形式では台車に架装された2基の主電動機を左用と右用として使い分けることで差動装置を不要としており、それぞれの電動機から平歯車で前後の車輪を駆動している。

空気圧縮機には、C2000M形を採用したが、昭和60年(1985年)製の305編成では、C2000L形を採用していて301~304編成のとは異なっている、いずれも三菱電機製となっている。

1車体の長さは2000形に合わせて13.5m、客用扉は両開き片側2扉、編成は8両編成、主回路制御方式は6000形と同じ電機子チョッパ制御を採用する。6000形と同様に、乗降促進ブザー音を備えている。第1編成は6000形に近い音色のブザーであったが、第2編成以降は別の音色とされ、以後に増備された車両はすべてこのブザー音に準じている。なお、バリアフリー法に準じた個別ドアへの視覚障害者向けドアチャイムは最後まで設置されなかった。

車内の化粧板は6000形のように市内名所のイラストなどは描かれておらず、薔薇が描かれた暖色系のものを用いている。車両間の貫通路は2000形と異なり、すべて6000形に準じた六角形とされた。吊り革は従来通り三角形で6000形同様のカバーなしタイプである。両先頭車1番または16番ドアから運転席にかけてのスペースが2000形よりも短くなったため、着席人員は減少している。

1995年から導入された5000形とは客用扉の位置と数が異なるため(3000形:片側16ヶ所 5000形:同24ヶ所)、各駅ホームの乗車位置表示は色分けされ、緑色が3000形、青色が5000形のものである。接近時には2駅前発車の時点で「緑色の乗車位置でお待ち下さい」と放送およびLED案内装置の案内が入る(両端の終点駅だけは例外で、真駒内駅は前駅の自衛隊前駅発車後、麻生駅は2番ホームからの回送後に案内が入る)。 なおこの乗車位置の色分けと案内放送は、3000形の運用離脱後にホームドア設置に併せ無くなった。

製造 編集

全車が川崎重工業で製造された。

札幌市営地下鉄の車両では最も製造数が少ない形式であった。

編成および電動車(M)と付随車(T)の配置は、以下の通り。

3000形 全編成一覧(1990年)
 
← 真駒内
麻生 →
運用開始 置換 運用離脱 置換 備考
編成 3100 3200 3300 3400 3500 3600 3700 3800
種別 Mc Mch Mch' M' M Mch Mch' Mc'
第1編成 3101 3201 3301 3401 3501 3601 3701 3801 1978年10月 - 2003年04月 - 2000形8次車で計画
第2編成 3102 3202 3302 3402 3502 3602 3702 3802 1982年00 - 2010年11月 5000形19編成 行先表示器3色LED化
第3編成 3103 3203 3303 3403 3503 3603 3703 3803 1985年03月 2000形19編成 2009年11月 5000形18編成
第4編成 3104 3204 3304 3404 3504 3604 3704 3804 1985年06月 2000形20編成 2011年11月 5000形20編成
第5編成 3105 3205 3305 3405 3505 3605 3705 3805 1990年03月 2000形18編成 2012年03月 - 最終運行編成

なお、本系列登場後に札幌市電3300形が登場しており、3301~3305の番号は3300形と重複している。(札幌市電3300形も5両が製造された)

改造 編集

 
行先表示がLED化された02編成(2007年11月25日 真駒内駅)
 
ドアに貼り付けられた点字プレート(2008年3月)。札幌市営地下鉄で「8号車」の表記があるのは3000形のみであった。

塗装の変更 編集

第1編成落成時点では正面の塗装が窓の周囲を除いて側面帯と同じ濃緑に塗り分けられていたが[記事 1][資料 1]、量産車と同様の淡緑1色に変更され、側面の帯も塗り直された[資料 2]

案内装置等の改良・新設 編集

2003年にLED式行先表示器が設置(02編成のみ)され、車内放送も自動化(02 - 05編成)された。また、すべての連結部に転落防止用外幌が備え付けられた。

2007年7月にはすべての客用ドアに号車とドア位置を示す点字プレートが貼付された。その時点では札幌市営地下鉄唯一の8両編成だったため「8号車」のプレートを見ることができた。

廃車 編集

老朽化および将来の可動式ホーム柵設置・ワンマン運転化を控え、2012年3月25日をもって、全編成が運用離脱した。これにより、南北線の営業車両は5000形に統一された[記事 2]

  • 第1編成 : 2005年3月
    2003年4月1日から使用休止となり、後に2005年5月に解体処分された。
  • 第2編成 : 2011年
  • 第3編成 : 2010年
  • 第4編成 : 2011年
  • 第5編成 : 2012年3月
    最後まで営業運転に使われた車両。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 通常の鉄道車両に用いられている製の輪軸では、踏面のテーパー化と鉄レールとの間の「すべり」でそれを吸収している。そのため差動装置は必要ないが、急曲線では「きしり音」の発生が避けられない。

発表資料 編集

  1. ^ 写真素材集(地下鉄)3000形 3801号車(新製時)”. 札幌市. 2015年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年3月30日閲覧。
  2. ^ 写真素材集(地下鉄)3000形 3801号車(塗替後)”. 札幌市. 2015年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年3月30日閲覧。

報道記事 編集

  1. ^ “【写真説明】地下鉄南北線で営業運転を始めた新型電車” (日本語). 北海道新聞. フォト北海道(道新写真データベース) (北海道新聞社). (1978年11月17日). オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160304190403/http://photodb.hokkaido-np.co.jp/detail/0090268761 2016年3月4日閲覧。 
  2. ^ “札幌市営地下鉄3000形が引退” (日本語). 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2012年3月26日). オリジナルの2012年3月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160304210830/https://railf.jp/news/2012/03/26/135400.html 2016年3月4日閲覧。