海浜植物(かいひんしょくぶつ)というのは、海岸の、主に砂浜に生育する種子植物のことである。

波崎海岸におけるスナビキソウコウボウムギ
(2019年5月・茨城県神栖市

生育環境 編集

海岸で、海の方から見ると、海水に浸る部分は満潮の時の海水面までである。これを高潮線というが、これより少し上までは波によって海水をかぶり、また海水が染み込んでおり、海水の影響が強い。この部分を潮上帯という。潮上帯も高潮線付近では海藻やフジツボがあるが、高潮線を離れるにつれ、目立つ生き物は少なくなる。逆に陸側から見れば、潮風の影響は高等植物にはかなり厳しい条件であり、そこに顔を出す植物は限られている。海岸ぎりぎりの森林を構成するのは中部日本以南であれば、クロマツトベラウバメガシヒメユズリハなどである。それより海に近づくと樹木はなくなり、草本だけが見られる。砂浜であれば、森林の外側に、海から一定の距離を置いて草の生える帯が見られる。それより海に近づくと、海水の影響と波のために高等植物は見られなくなる(マングローブ海草など特殊例を除く)。この帯に生育する植物が海浜植物と呼ばれるものである。日本では、香川県観音寺市の有明浜で、様々な種類の海浜植物が咲いている。

特徴 編集

 
海浜植物をはじめ、貴重な植物昆虫水生生物鳥類などが豊かな生態系を保っている吹上浜 (兵庫県)。水が少なく、日差しが強い場所であるため、葉が厚く、表面が固いものが多い特徴がある。風が強いため、背が高くならず、這うものも多い。

海岸という、多くの高等植物の成育できない環境に生育可能なだけに、いろいろな特徴がある。水が少なく、日差しが強い場所であるので、葉が厚く、表面が固いものが多い。風が強いため、背が高くならず、這うものも多い。また、砂は風で移動しやすい。そのため葉や芽が砂に埋もれてしまうことが多いが、そのような場合には、あらためて茎が伸びて葉を砂の表面に出す。砂を掘ると、長い地下茎が砂の中を這っている訳である。

環境悪化 編集

近年、自然海岸、つまり、護岸などによって閉鎖されていない海岸が少なくなっている。護岸は、往々にして砂浜の最上部に作られ、これは海浜植物の分布域に一致する。また、種々の事情により、砂浜そのものが痩せ細る傾向が見られ、これも、海浜植物にとっての生息環境の減少につながっている。さらに、近年の自動車に於けるSUVのブームで、砂浜に車を乗り入れる者があり、海浜植物帯を踏み荒らす例がある。とくに、ハマボウフウなどの食用の物は、乱獲の問題もある。そのため、絶滅に瀕している種もある。

代表的な種 編集

 
ハマボウフウ

参考文献 編集

  • 中西弘樹著 『海から来た植物 -黒潮が運んだ花たち-』(2008)