日本の漁業協同組合(にほんのぎょぎょうきょうどうくみあい)は、世界の漁業共同組合の中にあって、日本漁業者(漁民)によって組織され・発展してきた協同組合である。略称は漁協ぎょきょう)、またはJFジェイエフ、Japan Fisheries cooperative の略)で、北海道では慣習的に漁組(ぎょくみ)と呼ぶことが多い。

漁業組合の歴史編集

日本では伝統的に網元網子漁民)の関係があったが、として漁業組合という言葉が1886年の「漁業組合準則」によって各地に漁業権を管理する組織として発足した。これらの組織はその後加工事業なども行なうようになり、昭和初期の世界恐慌の時期には「漁業協同組合」と名称を変えて、互助団体としての機能も付加された。太平洋戦争時期、1943年3月公布の「水産団体法」で各地の組合は「漁業会」となり、道府県の「水産業会」に、全国的には「中央水産業会」に統合されて、全国の漁業界は国家統制下に置かれた。[1]

戦後の1948年には水産業協同組合法が公布されて、日本の漁業協同組合は大きく変わった。

現在の漁業協同組合編集

現在の日本の漁業協同組合は水産業協同組合法によって定められており、漁民の協同組織の発達を促進し、もつてその経済的社会的地位の向上と水産業の生産力の増進とを図るための協同組織とされる。正組合員資格は漁業者のうち一定の者に限られ、組合員が一人一票の平等の議決権を持つ。

事業内容は多岐にわたり、操業指導を行う指導事業、漁民の生産物を販売する販売事業、漁民が操業に必要な燃料や漁具・養殖えさや生活に必要な食品などを供給する購買事業、銀行業としての信用事業JFマリンバンク)、保険業の共済事業などが、通常行われる事業である。信用事業を行う漁協は、小切手法により銀行と同視されている。

個別の漁協(単位漁協)には、地域の漁民が集まった総合漁協が多いが、同じ漁法・養殖魚の漁民だけが集まる専門漁協(例・うなぎ漁協)がある。

なお、組合員に出資をさせない組合もあり、この場合は、信用事業、共済事業は行うことができない。

2007年7月に行われた参議院議員選挙で、自民党比例代表丸一芳訓候補(1951年 - 、前兵庫県漁連会長、元警察官、国士舘大学法学部卒)を擁立、組織的に支援したが、落選した。

農協との比較編集

現在の漁協は、明治期からあった「漁業組合」から引き継がれている。漁業組合は、明治期に国家へ漁業を編入させるため創設された制度であったが、漁業権の管理などを担うという実際的な役割を果たしてきた。今日の漁業協同組合は、1948年水産業協同組合法が成立したのが始まりである。

当初、漁協の数は3507にのぼり、それだけ零細にして事業基盤が弱かった。1951年の農林漁業組合再建整備法は経営の健全化に働かず、1960年に成立した漁業業同組合整備促進法が法制度名を変えながら今日まで漁協の統廃合を推進してきた。2012年3月時点で漁協の数は1000になった。漁協合併促進法では、2008年3月末までに数を250に収めることを政策目標としたが、全く届かなかった。

他方、農協は戦後1万組合以上設立されたが、統廃合の結果723組合に落ち着いている。1組合の平均組合員数は農協は1万人を超える一方、漁協は230人である[注釈 1]。また、農協の組合員数は今なお増加する一方、[注釈 2]。農協は一般に職能組合というよりも地域組合として発展した。生活に即した事業や農業外事業への融資を展開し、非農民である准組合員の事業利用を拡大してきた。合併を経た農協は経済合理性を追求するのに有利である。それでも漁協は統廃合や合併に消極的であった。

水産業協同組合法に制限列挙された事業内容は農協とさほど変わらない。しかし、現に行われている事業のバランスは全く違う。農協では信用事業と共済事業が中心であり、漁協は販売事業や購買事務[注釈 3]を主体としている。こうしたバランスに漁協がこだわるのは、漁場管理を担っているからである。

漁場管理とは、地元の漁業を総合的に管理する行為である。高度経済成長期の後に開発された養殖業を除いて、 漁法は江戸時代に開発された。その共同管理を権利として受け継いだのが組合管理漁業権である。これは、形こそ行政庁から漁協が免許されるものだが[注釈 4]、漁業権の行使規則は漁民の合意により作成される。漁業行使権の配分には漁協の職員すら立ち入らない。また、漁民の個別事情が考慮される。このように、漁場管理はボトムアップで行われる。漁民が好き勝手に操業すると漁場はすぐ荒れる。だからこそ関連制度も事業実態も漁民に協調性を要求する。この仕組みを維持しようとする考え方は、統廃合や漁業自由化とは結びつきにくい性質を持っていた。

しかし2011年、漁業自由化を旗印に宮城県知事の村井嘉浩らが切り崩しを行っている[2][注釈 5]

組織編集

事業ごとに次の全国組織および都道府県組織がある。

各上部組織は、単位漁協が出資している協同組合組織(農林中央金庫を除く)であり、一般的な株式会社の親会社、子会社とは関係が異なり、資本関係から言えば、単位漁協の方が上部組織である。

関連企業編集

出資企業編集

主なキャラクター編集

マリンバンク編集

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ 2011年時点でわかっている範囲でも、職員が0-2人の漁協が282もある。10人未満の漁協の数は全体の6割以上だ。
  2. ^ 漁協の方は減少を続ける。
  3. ^ 二者は「経済事業」と総称される。特に販売事業が主力となるが、1990年をピークに今日まで販売額は右肩下がりである。この点、参考文献の著者は、国民的に食が細くなっていることや魚離れといった需要減少を理由にしている。魚離れに関しては、食材として規格化されにくい性質と、そこに着目した小売店の撤退を興味深く論じている。
  4. ^ 他方、漁業経営者が免許されるのは経営者免許漁業権という。経験者優先、地元優先のうえ、より多くの地元漁民が参画した組織に与えられる。あくまで漁協優先だ。実は、組合管理漁業権と経営者免許漁業権のいずれにもあてはまらない形態の方が多い。江戸時代から村共同で営まれているものや、漁協と漁民との共同経営、漁民と民間企業との共同経営、地元漁民が設立した会社法人や水産業協同組合法上の漁業生産組合など。
  5. ^ 2013年4月、漁業権を民間企業に開放しようと宮城県が申請していた「水産業復興特区」の計画を復興庁が認定。[3]

出典編集

参考文献編集

  • 「農協との比較」の節につき、濱田武士 『日本漁業の真実』 ちくま新書 2014年 pp.210-220.

関連項目編集

外部リンク編集