ダウアー・962LM (Dauer 962LM) は、ポルシェ・962Cの公道仕様車として発売されたスーパーカー[1]である。

1994年ル・マンで優勝した36号車

概要 編集

ヨッヘン・ダウアーはレースを休止した後にダウアー・シュポルトワーゲンを設立し、ポルシェ・962の公道向け改造事業を始めた[1]。この開発をポルシェが支援して1993年9月に1号車が完成し、フランクフルトモーターショーに展示された[1]。ポルシェはさらに2台の製作と、1994年のル・マン24時間レースへの参戦を提案した[1]。この3台は、すべてポルシェ所有だったシャシから製造されている[1]

1994年のル・マン24時間レースは規定の変遷期にあり、エントリー台数を確保するためにプロトタイプカーとGTカーを両方受け入れることになった[1]。ただし、プロトタイプカーの性能を制限するため、スキッドブロックの装着により空力性能を抑制し、燃料タンクを80リットルに制限する[注釈 1]など、GT1に有利な規定を作った[1]。これにより、グループCのプロトタイプカーは全盛期との比較で20秒以上遅くなっている[1]

962LMはGT1として参戦するための1台の公道走行可能なナンバー取得車両が発表され、これを小変更した物がル・マンに参戦すると予想されていた。しかし、この公式発表車とは別にボディ前後を延長し、排気ダクト位置の変更等、空力性能に寄与する大幅な改修を受けたレース仕様車のロードカーが認可を取っており、ル・マンの予備予選時に公開された。実質的にポルシェワークスのル・マン・ポルシェ・チーム/ヨースト・レーシングチームからハンス=ヨアヒム・スタック/ダニー・サリバン/ティエリー・ブーツェン組が35号車、ヤニック・ダルマス/ハーレイ・ヘイウッド/マウロ・バルディ組が36号車でル・マンに参戦し[1]、決勝では36号車がグループCのトヨタ・94C-Vとの首位争いを制して優勝した。

小規模メーカーやアマチュアレーサーを優遇する設定であったGT1クラスに、大幅アップデートを施したグループCカーとポルシェのワークス体勢で出走し、後出しになったレース仕様車発表など、参戦経緯を巡って物議をかもした[1]

ダウアーは1994年のル・マン終了後も、ロードカーを10台以上を製造販売した[1]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ GT1は120リットル。

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k 『Racing On』466号 pp.63-67。

参考文献 編集