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ソーシャルワーク(Social work)とは、(2014年のIFSWのグローバル定義から)、社会に対しては①社会変革、②社会開発、③社会的結束を、個人に対しては①エンパワメント、②解放を促進する実践を意味する。また、その実践を発動・継続する根拠(原理)は①社会正義、②人権、③集団的責任、④多様性の尊重であり、その対象は、①社会の様々な構造、②人間の様々な構造である。

個人、家族、カップル、グループ、社会的共同体らのクオリティ・オブ・ライフ(QOL)および主観的ウェル・ビーイングについて、 研究、政策策定、共同体開発、直接的アプローチ、危機介入などの手法によって、 社会的な不利益(貧困など)に対して幸福やセキュリティを向上させ、 身体的・精神的な障害に対して心理社会的ケアを提供し、 社会的不公正に対して社会改革の声をあげ、 自由権人権をおびやかす物に対し社会的抱合を計っていく、職業および学術分野[1]

日本語では、社会福祉援助技術(しゃかいふくしえんじょぎじゅつ)や相談援助(そうだんえんじょ)と称される事もあるが、厳密には、社会福祉援助技術や相談援助が、日本国憲法の理念である①日本国民の最低限度の生活の保障あるいは生存権の保障を、日本の法律や制度に基づき、日本の福祉制度や施策(社会福祉サービス)を、一定の基準に適合するする国民に、公平・公正に提供する実践であるのに対し、ソーシャルワークは、日本国の制度等を超え(すべての国の政治体制や考え方から独立した立場に立ち)、人類すべての人々や社会の構造を対象に、普遍的方法(非暴力など)をもってはたらきかける実践を意味し、両者は共通する理念があるものの、その根拠・規模・適用範囲・方法論等において大きな相違を見ることができる。

19世紀中期、当初は慈善活動による実践主義・前例主義的な体験の積み重ねでしかなかったが、その後、主に米国においあて、心理学社会学の影響を受けて発展していく。また、その過程で援助に対する様々な考えや姿勢が生まれ、近年は、それらは『主義(派)』として大きく3つに分けられていた。しかし現在(2014年グローバル定義を機会に)では、従来の欧米中心の理論や学問(心理学や精神分析学中心)を超え、(少数民族を含め)それぞれの地域で培われた民族固有の「智」(知識、技術、考え方)を含めた方法論として位置づけられている。

目次

定義編集

国際的なソーシャルワーカーの組織であるInternational Federation of Social Workers(IFSW)と国際的なソーシャルワーク教育機関の組織であるInternational Association of Schools of Social Work (IASSW)は、ソーシャルワークの定義を行い、日本のソーシャルワーク関連団体の連合組織である社会福祉専門職団体協議会(社専協)国際委員会が和訳を行っている。[2]

  1. 1982年版「ソーシャルワークの定義」
    ソーシャルワークは、社会一般とその社会に生きる個々人の発達を促す、社会変革をもたらすことを目的とする専門職である。
    ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワーメントと解放を促していく。
  2. 2000年版「ソーシャルワークの定義」
    ※モントリオールにおけるIFSW総会において2000年7月27日に採択された。
    ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会のシステムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。
  3. 2014年版「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義(GLOBAL DEFINITION OFTHE SOCIAL WORK PROFESSION)」[2]
    ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。
    社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。
    ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。
    この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。
    Social work is a practice-based profession and an academic discipline that promotes social change and development, social cohesion, and the empowerment and liberation of people.
    Principles of social justice, human rights, collective responsibility and respect for diversities are central to social work.
    Underpinned by theories of social work, social sciences, humanities and indigenous knowledge, social work engages people and structures to address life challenges and enhance wellbeing.
    The above definition may be amplified at national and/or regional levels.

歴史編集

源流は19世紀末におけるイギリス慈善組織協会の各種慈善活動とされる。アメリカに概念が渡って後、同国にてジェーン・アダムズメアリー・リッチモンドフェリックス・P・バイステック英語版ヘレン・ハリス・パールマンらによって理論が体系化されていく。

資格編集

市民が社会福祉サービスを利用する主体となるときは、その人にとって最良の利益を守るようなアドボカシーの観点が重要であり、このような視点を持つ専門職の存在が必要となる[3]

米国において州政府認定ソーシャルワーカーになるには、ソーシャルワーカー教育委員会英語版 (CSWE) 認定の教育機関にて学位を取得しなければならない。 基本的には修士号(Master of Social Work)の取得が必要とされる。

英国イングランドでは、認定ソーシャルワーカーは保健ケア資格委員会英語版(HCPC)が所管しており、有資格者数は88,981人となっている。[4]

日本には、現在いくつかのソーシャルワーク関連の団体が存在している。そのうちの4団体が、組織として正式に2014年のグローバル定義を承認し倫理綱領の遵守を受け入れ専門職団体として活動している。

日本の福祉制度を中心的に支える国家資格として社会福祉士[5]精神保健福祉士があるが、これらの有資格者で組織がIFSWの定義等の受け入れを表明している。 今後、多くのソーシャルワーク団体が連携して、国内外の人権問題、社会や個人の課題・問題に取り組むことが期待される。

代表的な構成技術編集

直接援助技術編集

間接援助技術編集

主義派編集

クライエントに対するワーカーの立場・見方によって、技術の利用法の傾向が大きく3派に分けられる。

診断主義編集

ソーシャルワークにおいて最も伝統的な主義でS.フロイト精神分析に強く影響を受けた一派。クライエントという個人の持つ問題に対して医学的解釈をもち、クライエントの状態からその問題点を診断し、ピンポイントな解決方法を提示する事でその解決を成そうとする傾向を持つ。(医学モデル

ただし、この考え方が行き過ぎるとクライエントは患者でワーカーは医者という関係が成り立ち、対症療法のごとく直接的な指示に陥る事があり、クライエントの成長に結びつかないという援助の落とし穴を呼び込む。また、クライエントへの安易なラベリング(決め付け)やカテゴライズ(分類主義)に陥りやすい。また問題が広範囲(精神的問題・制度的問題・人間関係的問題)に派生しやすい、日常に密接した『生活空間』という様々なケースを扱う社会福祉という現場では理想論に終わり実効性に乏しい援助となる危険性があると他派より発せられる場合がある。

一方で精神分析を取り入れているため、精神面に大きな問題を持つクライエントに対しては絶大な効果を発揮する。

病院などの医療機関精神障害知的障害が密接に関わってきた福祉現場で勤務してきたカウンセラー系のワーカーに多いタイプ。

機能主義編集

診断主義の精神医学的立場による問題(対症療法化・ラベリング・カテゴライズ・理想論化)を解決するため、クライエントを生態学的な『関係という観点』から見つめ直し(エコロジカル・アプローチ)クライエントの持つ問題を『クライエントを取り巻く(もしくは自身の)関係機能の不全』として捉え、その外部よりの調整によって問題の解決を成そうとする一派。

クライエント自身ではなく、それをとりまく制度や環境の問題から、解決の糸口を見つけようとする一派とも言える。この主義に基づくと、クライエントには元より自らの問題を解決する能力が備わっており、それを補佐する(サービスの提供・情報の提供・それらの取捨選択を考えさせる、など)事で問題の解決が図れるとされる。(生活モデル

ただし、この考え方が行き過ぎるとクライエント自身の内面的問題を見落としがちになる。またクライエントや社会への働きかけによる自然な変化を待つ事例も出るため、診断主義よりも実効性はあれども即効性には乏しく、機能主義による福祉技術の活用は長丁場を強いられる事も少なくない。

一方で機能論の取り入れにより、よりクライエントを中心として広範囲に派生した各種問題に対して柔軟に対応できる利点を持つ。

福祉事務所隣保館、街中の社会福祉施設など地域生活に密接し多岐にわたるケースを扱う場所において勤務してきたケースワーカー系のワーカーに多いタイプ。

混合型編集

診断主義のクライエント個人への診断的アプローチと、機能主義のクライエントの周囲関係への機能的アプローチを同時に取り入れ、即効的な効果と継続的な援助を行い、問題の効果的解決を成そうとする一派。

効果的な半面で継続的な援助を必要とするため完結的解決が存在しない。そのために『本当の解決に至っていない』とする批判が出ることもある。一方で『より日常に対して密接で現実的な援助が可能になる』という考え方もある。

現在のワーカーはこのタイプを選択する者も多い。主に日常生活を地道かつ継続的に援助するため、まさしく即時援助と継続援助の双方が求められるケアワーカー系のワーカーに多いタイプ。

註釈編集

  1. ^ What is social work?”. 豪州ソーシャルワーカー協会. 2015年8月26日閲覧。
  2. ^ a b “ソーシャルワークのグローバルな定義 - ソーシャルワーカーの国際連合”. International Federation of Social Workers(IFSW). https://www.ifsw.org/ja/what-is-social-work/global-definition-of-social-work/ 2019年2月1日閲覧。 
  3. ^ 川廷宗之、宮嶋淳『社会福祉をはじめて学ぶあなたへ2訂版』ヘルスシステム研究所、2008年、142頁。
  4. ^ Regulated profession database - Social Worker”. 欧州連合. 2015年8月30日閲覧。
  5. ^ 2008年までの指定科目では、ケースワーク・グループワーク・コミュニティワーク・社会福祉調査法の大きく4つに分類されて、一つの指定科目とされていた。2009年以降の指定科目としては、社会福祉調査法の部分が「社会調査の基礎」として独立し、残るケースワーク・グループワーク・コミュニティワークの3つについては、「相談援助の基盤と専門職」、「相談援助の理論と方法I」、「相談援助の理論と方法II」に再編統合された。

関連項目編集

外部リンク編集