自警団(じけいだん、: Vigilante)とは、権利の侵害が強く想定される場などにおいて、司法手続によらず自らの実力行使をもって自己および共同体の権利を維持確保するために結成される組織(私設軍隊民兵)、およびそれを模した防犯組織。

概要編集

自力救済機関としての自警団編集

 
自警団のひとつ、フィンランド内戦の際のフィンランド白衛軍

自警団とは自力救済の発露の一つ。しかし、大災害や戦争時及び植民地など大国に支配下にあって独自の軍隊が編成されていない状態などのような局面において警察・治安機関が機能していないと民衆が判断した場合に自衛のために結成されることがある。その中には、専門化・プロ化して民兵へと成長するものもある。アメリカの州兵は自然発生した自警団が法整備により民兵となり、後には正規軍の補助戦力として整備されたものである。

こうした混乱期の自警団は、司法が機能不全を起こしている故に、暴力に歯止めがきかず、残虐行為の主勢力となる事がある。このような例は世界中で見られ、旧ユーゴ内戦ルワンダ内戦等における大規模な虐殺でも戦端を切ったのは国軍や警察によるものではなく、扇動された自警団や民兵が引き起こしたと考えられている。

2019年、ナイジェリア北西部のザンファラ州にて、村を襲った盗賊が自警団の反撃に遭い、59人以上が殺害される事例も発生した[1]

敗戦直後の八重山諸島において組織された自警団(八重山自治会参照)は、後の米軍統治下の住民統治機構への嚆矢となった。

共同体維持のための自警団編集

 
埼玉県川越市の新河岸自警団倉庫。近隣の神社の氏子によって組織されている。

上記のような緊急時に結成される自警団のほか、共同体の成員が共同体維持のため持続的に結成している自警団もある。この自警団は「共同体維持のためのボランティア組織」となっている。治安が悪化している大都市部(ニューヨークなど)において有志によって結成されているガーディアン・エンジェルスはその一つである。日本においても大規模災害対策への認識が高まっていることや犯罪検挙率が低下していることなどを背景として、自主防災組織・自主防犯組織などのように、共同体維持のための住民による自主的な組織化への動きが活発化しつつある。しかし現実の運用では混乱期の自警団と同じく、必ずしも法に則った自警行為が行われる訳ではない。また日本の河川流域で消防団水防団を兼ねる場合に「自警団」と称することがある。(写真参照)この場合は非常時以外の治安維持行為は行わない[2]。また、地方の生活安全担当部局や警察組織への協力ボランティア組織として認定・支援の対象になることもある[3]イタリアでは2002年、自警団による巡回が合法化された[4]

現代日本社会においては一部特殊な場合を除き、自警団は商店街風紀取締りなどの自発的ボランティア活動組織として認知されている。前述したように自警団の構成員には、国からの正式な法的権限委託がない場合が多い。従って構成員に拳銃警棒刀剣等の武器の携帯は認められていない。自警団の構成員が正当防衛でない限り相手に対し何らかの暴力を振るう、あるいは集団で威圧した場合は警察からの逮捕任意同行の対象になりうる。

スラング編集

暴力からの自力救済ではなく鬱憤を晴らしたり排斥活動を行う行為を「○○自警団」「○○警察」「○○ポリス」と呼ぶことがある[5]

2019年からのコロナウイルス感染症により、日本では自粛警察と呼ばれる行為が多発した[6]

ネット自警団編集

20世紀後半から21世紀初頭にかけて、電子ネットワーク社会(インターネットなど)が急速に構築されているが、その進展があまりにも急速であるため、電子ネットワーク社会で発生する事象に対処できる法整備は立ち遅れていると言われている。そうした中、自力救済を目的として、電子ネットワーク上の猥褻図画や誹謗中傷を除去したり荒らし行為を排除する「電子自警団」「ネット自警団」と呼ばれる存在が現れている。日本ガーディアンエンジェルス傘下の「サイバー・ウォッチ・ネットワーク」は、電子自警団が法人格を取得した実例である(アメリカには同種の団体として「サイバー・エンジェルズ」がある)。

インターネット上に犯罪行為と思われる行為や問題とされる行為の画像などが投稿された場合(炎上)、投稿者に激しい個人攻撃を加えたり、その投稿者の個人情報を暴露したり、投稿者の関係する機関に通報したりする者がいる。これらもネット自警団と呼ばれるがこのネット自警団は上記の団体とは異なり「ネット自宅警備員団」の略である。

実態は平日に暇をしている人間が日頃の鬱憤を晴らすための自己満足に過ぎない。[7][8]

私設警備隊編集

地縁ではなく、特定の思想・宗教などを主軸として結成された組織が警備隊を組織する例もあるが、外部からは自警団との違いが分かりにくいため、混同される事も多い。

犯罪集団が襲撃や摘発に備え拠点の防衛を行う人員を揃えることがある。マフィア暴力団のように自警団が巨大な犯罪組織へと変貌することもある。

宗教団体は信徒や宗教施設を異教徒の攻撃から守るため、信徒や僧侶に武装させていた。このような宗教武装集団はウォリアーモンクと呼ばれ、僧兵騎士修道会のように大きな影響力を持つこともあった。現代では宗教を基盤とした過激派が紛争を起こしている。

国家の警察力が小さい場合、軍閥が形成され一部の地域が支配下に置かれる例がある。

ドイツ編集

ドイツでは第一次世界大戦前後から復員兵による民兵組織が共産主義者を攻撃し、対抗するため共産党も私設警備隊を編成した。また他の政党も警備を理由に武装組織を設立していた。

自警団をテーマとした作品編集

映画編集

また、主人公が司法制度に失望するなどして頼らず、私刑によって犯罪者や犯罪組織に挑み、復讐や治安回復などを目的するジャンルをヴィジランテ映画(自警団もの)という。

脚注編集

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関連項目編集