世嬉の一酒造

岩手県一関市に本社を置く蔵元
酒の民俗文化博物館から転送)

世嬉の一酒造株式会社(せきのいちしゅぞう)は、岩手県一関市に本社を置く蔵元。最盛期の醸造石数3500石(約630 KL)に達した[1]。社名は、宮家の一つ閑院宮載仁が立ち寄ったとき「世の人々が喜ぶ酒を造りなさい」ということで命名された[2]1996年には地ビール醸造のブランドいわて蔵ビールを立ち上げた[3]

世嬉の一酒造株式会社
仕込み蔵 (2019年3月)
仕込み蔵 (2019年3月)
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
021-0885
岩手県一関市田村町5-42[1]
北緯38度55分52.5秒 東経141度7分56.9秒 / 北緯38.931250度 東経141.132472度 / 38.931250; 141.132472座標: 北緯38度55分52.5秒 東経141度7分56.9秒 / 北緯38.931250度 東経141.132472度 / 38.931250; 141.132472
設立 1918年
業種 食料品
法人番号 4400501000181 ウィキデータを編集
事業内容 日本酒の製造・販売
代表者 代表取締役社長 佐藤 航[1]
外部リンク sekinoichi.co.jp ウィキデータを編集
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地図
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沿革 編集

  • 1918年大正7年)5月1日 - 創業[3]。初代佐藤徳蔵が「熊文酒造店」を受け継ぎ「横屋酒造」を創立[1][4][5]した。
  • 1929年昭和4年) - 閑院宮載仁が立ち寄る[6]
  • 1944年(昭和19年) - 戦時下の生産統制と企業整備により、酒造メーカー14社と合併し、両磐酒造を設立[1]
  • 1955年(昭和30年) - 自動車学校開設(一関地区では最初)[7]
  • 1957年(昭和32年) - 両磐酒造 から分離独立。「世嬉の一酒造」に社名変更[2]
  • 1960年(昭和35年) - 二代目社長に佐藤正が就任。
  • 1962年(昭和37年) - 千厩に自動車学校開設[7]
  • 1981年(昭和56年) - 三代目社長に佐藤晄僖が就任。
  • 1982年(昭和57年) - 日本酒生産を共同醸造に移行[8]
  • 1986年(昭和61年) - 自社酒蔵を利用し、企業博物館世嬉の一 酒の民俗文化博物館(せきのいち さけのみんぞくぶんかはくぶつかん)を創立[9]。昔の酒造の用具や、杜氏部屋などを展示、公開する。
  • 1995年平成7年) - いわて蔵ビール設立[10]。翌1996年(平成8年)より、発売開始。
  • 1999年(平成11年) - 酒蔵が国の登録有形文化財に登録される。
  • 2012年(平成25年) - 四代目社長に佐藤航[11]、会長に佐藤晄僖が就任。
  • 2021年令和3年) - 会長の佐藤晄僖が、令和3年度(一関市)市勢功労者表彰(産業功労)[12][13]
  • 2023年(令和5年) - 日本酒生産の自家醸造を再開[14][15]

いわて蔵ビール 編集

いわて蔵ビール(いわてくらビール)は、1996年に立ち上げられた地ビールブランド[16][3]

奥羽山脈の地下水と厳選された麦芽やホップ、岩手産の食材、スパイスを取り入れた地ビールは日本国内のみならず日本国外からも評価されている[17]

販売しているバーレーワインビール)はアルコール度数が14度で、国内のビールでは最もアルコール度数が高いとされている[18]

バーレーワインは通常のビールと異なり熟成が必要であるためタンクを長期間占有する[19]。そこで2015年に専用タンク設置のための資金をクラウドファンディングで集めた[19][20]。資金提供者には醸造されたビールが送付されるほか、仕込み見学やビアパーティーの招待といったサービスも用意された[19][20]。このクラウドファンディングの反響は高く、募集を始めた当日に目標額に達した[20]。クラウドファンディングの成功事例として挙げられることも多い[19][20]

レストラン 編集

登録有形文化財の酒蔵などを利用した「郷土料理レストラン 世嬉の一」、「Cafe徳蔵」を経営。

レストランでは、地域の良さ(自然の豊かな、豊かな文化、精神性)を伝える[21]、一関の伝統食(料理、はっと料理)を提供。

登録有形文化財 編集

1999年8月23日、以下が「世嬉の一酒造場」として登録有形文化財に登録された[22]。設計は葛西萬司の門下生、小原友輔[23]による。

  • 旧仕込蔵・酒母室
  • 旧原料米置場・精米所
  • 旧びん詰貯蔵庫・麹室
  • 旧作業場・釜場
  • 旧漕場・売場倉庫
  • 旧売場倉庫
  • 旧店舗・事務所

受賞 編集

熊文酒造店 編集

前身の熊文酒造店は、熊文の醸造部門。熊文は一関藩の有数の豪商(田村家の染物御用達)で、味噌・醤油の醸造・販売と鉄製品の売買を行った。1876年(明治9年)に金森家が明治天皇行幸の御在所、熊谷家(熊文)は随員(岩倉具視木戸孝允東久世通禧ら)の宿泊所となった。 14代の熊谷文之助は清酒醸造を開始「花の友」「谷風」と命名。15代文之助は自ら「天下の熊文」と号し、別邸に庭園を造り、また平泉にも茶室風の別荘「熊文堂」を造営、文人墨客を集めた。16代太三郎の「谷風文庫」に一万冊の蔵書を収めていた。日露戦争後より次第に没落し、太三郎の代の1907年(明治40年)に倒産[28][29]島崎藤村が太三郎の英語の家庭教師として滞在した[30]

周辺情報 編集

脚注・出典 編集

  1. ^ a b c d e 会社案内”. 世嬉の一酒造. 2022年10月26日閲覧。
  2. ^ a b 世嬉の一酒造の由来”. 世嬉の一酒造. 2022年12月14日閲覧。
  3. ^ a b c "世嬉の一". [日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション. コトバンクより2017年2月13日閲覧
  4. ^ 岩手〈世嬉の一酒造〉山あり谷ありの地ビールづくりに、100周年目の新たなチャレンジ。”. Webマガジン「コロカル」 (2017年11月15日). 2021年12月8日閲覧。
  5. ^ 『世嬉の一酒造百年物語』 前編、2頁。 
  6. ^ 『世嬉の一酒造百年物語』 前編、3頁。 
  7. ^ a b 『世嬉の一酒造百年物語』 前編、6頁。 
  8. ^ 『世嬉の一酒造百年物語』 前編、8頁。 
  9. ^ "世嬉の一 酒の民俗文化博物館". 日本の美術館・博物館INDEX. コトバンクより2017年2月13日閲覧
  10. ^ 『世嬉の一酒造百年物語』 前編、10頁。 
  11. ^ 『世嬉の一酒造百年物語』 前編、15頁。 
  12. ^ 令和3年12月20日一関市長定例記者会見概要”. 一関市 (2021年12月20日). 2022年1月19日閲覧。
  13. ^ 広報いちのせきNo.383”. 一関市 (2021年12月22日). 2022年10月25日閲覧。
  14. ^ 自社醸造の日本酒、ついに復活 一関・世嬉の一酒造、約40年ぶり”. 岩手日報 (2023年1月8日). 2023年1月10日閲覧。
  15. ^ とうとうスタートしました!40年ぶりの地酒・酒蔵復活(試験醸造 酒母仕込)”. 蔵元だより. 世嬉の一酒造 (2023年1月25日). 2023年1月26日閲覧。
  16. ^ ワールドビアアワード3年連続受賞・アルコール14%の熟成ビール『バーレーワイン』(大麦のワイン)限定販売開始』(プレスリリース)世嬉の一酒造株式会社(いわて蔵ビール)、2016年10月26日http://www.zaikei.co.jp/releases/411893/2017年2月13日閲覧 
  17. ^ a b 本間景子 (2016年8月31日). “工場見学も人気♪「世界に伝えたい日本のクラフトビール」で優勝したブルワリー「いわて蔵ビール」へ”. ことりっぷ. 昭文社. 2017年2月13日閲覧。
  18. ^ 世嬉の一酒造、国内で最もアルコール度数の高いビール”. 日本経済新聞 (2016年11月8日). 2017年2月13日閲覧。
  19. ^ a b c d 川上清市『事例でわかる!クラウドファンディング成功の秘訣』秀和システム、2015年、176頁。ISBN 9784798043982 
  20. ^ a b c d 「クラウドファンディング」 共感で資金、リターンは”. 日本経済新聞 (2015年3月23日). 2017年2月14日閲覧。
  21. ^ 『世嬉の一酒造百年物語』 後編、7-9頁。 
  22. ^ 世嬉の一酒造場旧仕込蔵・酒母室”. いわての文化情報大事典. 岩手県. 2019年3月18日閲覧。
  23. ^ 世嬉の一酒造場”. 全国近代化遺産活用連絡協議会. 2023年1月8日閲覧。
  24. ^ 平成17酒造年度 全国新酒鑑評会 入賞酒一覧表”. 酒類総合研究所. 2017年2月13日閲覧。
  25. ^ 平成19酒造年度 全国新酒鑑評会 入賞酒一覧表”. 酒類総合研究所. 2017年2月13日閲覧。
  26. ^ 岡田和彦 (2016年5月19日). “岩手)世嬉の一酒造の「山椒ビール」がグランプリ”. 朝日新聞. 2017年2月13日閲覧。
  27. ^ WORLD BEER CUP 2016 Winners List” (PDF). 2017年2月13日閲覧。
  28. ^ 037 一関と言うところ 熊文 酒造り①”. sasayannのブログ (2013年3月27日). 2022年12月14日閲覧。
  29. ^ 038 一関と言うところ 熊文 酒造り②”. sasayannのブログ (2013年3月28日). 2022年12月14日閲覧。
  30. ^ 035 一関と言うところ 島崎藤村 初恋”. sasayannのブログ (2013年2月28日). 2022年12月14日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集

登録有形文化財 編集