電子決済
電子決済(でんしけっさい)とは、商品またはサービスの代金の決済を、硬貨や紙幣などの通貨(現金)で支払うのではなく、通貨と同じ価値を持つデータの送受によって行う仕組みである[1]。
概要編集
郵政省による分類編集
1997年(平成10年)当時の郵政省(現・総務省)の分類によれば、従来の(通貨以外の)決済手段である小切手、クレジットカード(インプリンタ)、オフラインデビットを、オンライン通信[2]により電子化したものが電子決済であり、典型的には以下のものである[3]。
- オンライン化小切手
- クレジットカード(オンライン)
- デビットカード(オンライン)
これに対し、電子マネーは、必要に応じて暗号化・電子署名がなされた[2]貨幣データであり、貨幣データをカード等[4]に格納するものと、ネットワークオンライン認証により保持するものがある。典型的には以下のもの[3]。
決済の手段と方法による分類編集
郵政省による分類に対し、今日的な分類では、決済の手段と方法に着目して分類される。
決済においては、決済の手段(現金や預金など)と、それを前提とする決済の方法(振込、口座振替、小切手、クレジットカードなど)とがある[5]。電子決済にも決済の手段の電子化と、決済の方法の電子化とがある[6]。
例えば電子決済に用いられる電子マネーは狭義には決済の手段を電子化したものをいうが、広義には決済方法だけを電子化したものも含む[6]。したがって、電子マネーは、それ自体が価値を有するか否かにより、決済手段性のあるもの(端末電子マネーやサーバ型電子マネー)と決済手段性のないもの(支払指示型電子マネー)に分けることができる[7]。
電子決済は狭義には決済の手段の電子化をいう[6]。この電子決済のシステムは金銭情報などの電子データを保存している場所によりカード型とネットワーク型に分けられる[1]。金銭情報などの電子データは、カード型の電子決済のシステムではカードや携帯電話に内蔵したICチップ[8]で管理され、ネットワーク型ではオンライン(Webなど)のサーバで管理される[1]。さらにカード型の電子決済は、端末(リーダライター)に挿入して読み取らせる接触型と、端末にかざして無線通信により読み取らせる非接触型がある[1]。
一方、(決済手段性のない)決済の方法の電子化には銀行のデビットカードなどの支払指示型電子マネーがある[6][7]。支払指示型電子マネーはそれ自体が価値を有する決済手段にはなっておらず預金通貨の移転を電子的に指示する仕組みの支払手段である[7](デビットカードは決済方法のみが電子化されており決済手段は口座に預金として存在する[6])。
以上の電子決済のシステムはサービスや商品購入と決済の時間的関係からの分類では、プリペイド方式(前払い)、ジャストペイ方式(即時決済)、ポストペイ方式(後払い)に分けられる。
なお、「電子マネー」は現金の代替となる支払手段の一種をいうが[9]、統計や調査、研究により、どの範囲を電子決済に含めるかは異なっており必ずしも一様ではない[1]。
電子決済の普及編集
前述のように決済面の電子化(小切手、クレジットカードなど)は、決済自体のオンライン化と不可分であり、これに金融機関のオンライン化が先行していた。電子技術、通信技術や近距離無線通信技術の発達により、電子決済や電子マネーなどの高度化が図られて今日に至っている。
今日では、全世界で急速に電子決済が普及しており、通貨の「キャッシュレス化」が進む事により「キャッシュレス社会」となるとの見方が強い。世界で最も「キャッシュレス化」が進んでいるスウェーデンでは、スウェーデン・クローナの通貨使用率が2%となっている[10]。
冬季の現金輸送が困難を極めるスウェーデン、高額紙幣は存在するが利用しにくいアメリカ合衆国、偽札が多く現金そのものに信用のない中華人民共和国・大韓民国など、店舗側に利点のある国家において普及率が高い。一方、日本では、ATMが街中にあり、通貨が何不自由なく使えるため、店舗側に手数料に見合うだけの利点がそれほどないこともあり、普及速度は上記の国家に比べて緩慢である。
ただ、日本でも2009年の資金決済に関する法律により、小口為替取引(100万円以下)の規制が緩和され、資金移動業者の登録を行えば銀行等の金融機関以外の者も決済市場に参入できるようになった[1]。2012年の時点で、電子マネー主要6規格での決済総額が3年間で2倍になるなど、急速に普及が進んでいる[11]。
モバイル決済編集
モバイル決済(もばいるけっさい)とは、携帯機器を使用した現場における電子決済システムを一般に言う[12]。使用する携帯機器のクラスにより、携帯決済、スマートフォン決済(スマホ決済)とも呼ばれる[12]。
順位 | サービス名名 | シェア |
---|---|---|
1位 | モバイルSuica | 32.1% |
2位 | Apple Pay | 24.5% |
3位 | Edy | 22.6% |
3位 | nanaco | 22.6% |
5位 | LINE Pay | 18.9% |
なお、携帯機器ではない各種カード(プリペイドカード、クレジットカード、会員カードなど。磁気カード、接触型・非接触型ICカード双方。)を利用した決済はモバイル決済ではない。
決済情報の伝達手段により以下の種別がある。
種別編集
- 非接触型IC方式
- QRコード、バーコード
- 詳細は「QR・バーコード決済」を参照
- 携帯機器のカメラで、店側に設置・提示されたQRコードやバーコード(コード類)を読み取り、決済を行う方式である。コード決済とも言う。また、携帯機器側の画面にコード類を表示し、それを店側のPOSで読み取り決済を行う方式もある[14]。常時かつ即時に通信処理可能なICカード型と比較すると、携帯機器の操作(決済専用アプリの起動など)が必要で、読み取りの手間がかかるという欠点もある[14]。また、非接触型と異なり、携帯機器の通信機能がオフライン(圏外など)の場合は決済不能である。北欧、中国、米国の一部などで普及している[14]。
脚注編集
- ^ a b c d e f 電子マネーの動向と今後の展開(岡山 正雄) 農中総研、2018年11月15日閲覧。
- ^ a b 暗号化や電子署名は、必要(時代の進展)に応じて行われる。当初の決済電文(回線も含む)や金額データは、しばしば平文であった。
- ^ a b “(3) 電子決済、電子マネーの実態 : 平成10年版 通信白書”. www.soumu.go.jp. 2019年11月19日閲覧。
- ^ 典型的には、トークンカード、磁気カード、ICカードなどがある。また、ICカードのICチップ等を携帯電話・スマートフォンに組み込んだもの(モバイル型)を含む。
- ^ 岡田仁志、高橋郁夫、山崎重一郎『仮想通貨 - 技術・法律・制度』東洋経済新報社、2015年、8頁
- ^ a b c d e 岡田仁志、高橋郁夫、山崎重一郎『仮想通貨 - 技術・法律・制度』東洋経済新報社、2015年、8-9頁
- ^ a b c 仮想通貨のしくみ(岡田 仁志) 国民生活センター(国民生活2016年8月号)、2018年12月25日閲覧。
- ^ 場合によっては磁気カード型も残っている
- ^ 仮想通貨のしくみ(岡田 仁志) 国民生活センター(国民生活2016年8月号)、2018年11月15日閲覧。
- ^ http://president.jp/articles/-/22449
- ^ 電子マネー2.4兆円、3年で倍 値引き効果で主婦利用
- ^ a b https://kotobank.jp/word/%E3%83%A2%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%AB%E6%B1%BA%E6%B8%88-1715702#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89
- ^ 「スマート・ソリューション・テクノロジーズ調査」
- ^ a b c d e f 淵田 康之. “キャッシュレス・ジャパンの実現に向けて”. 野村資本市場研究所. 2018年11月4日閲覧。
- ^ 高橋隆雄『センサーの基本と仕組み』、2011年、52-53頁。
関連項目編集
外部リンク編集
- 日本電子決済推進機構【JEPPO】日本デビットカード推進協議会(JDCPA)、日本インターネット決済推進協議会(JIPPA)、日本ICカード推進協議会(ICPA)がひとつになり成立。