(367789) 2011 AG5 とは、アポロ群に属する地球近傍天体の1つである[1]。かつて地球への衝突リスクが高い小惑星であった[5][6][4]

(367789) 2011 AG5
2040年の最接近時の2011 2011 AG5の軌道(緑)。 白丸は月の軌道、青い点は地球。
2040年の最接近時の2011 2011 AG5の軌道(緑)。
白丸はの軌道、青い点は地球
分類 小惑星
軌道の種類 アポロ群[1]
地球近傍天体[1](PHA[1])
地球横断小惑星
火星横断小惑星
軌道要素と性質
元期:TDB 2456200.5 (2012年9月30.0日[1])
軌道長半径 (a) 1.4306498(1) AU[1]
近日点距離 (q) 0.87251614(6) AU[1]
遠日点距離 (Q) 1.9887833(2) AU[1]
離心率 (e) 0.39012596(7)[1]
公転周期 (P) 625.0265(7) 日[1]
(1.71 年[1])
平均軌道速度 0.57597561(7) 度/日[1]
軌道傾斜角 (i) 003.68012(1) 度[1]
近日点引数 (ω) 053.51982(7) 度[1]
昇交点黄経 (Ω) 135.68724(7) 度[1]
平均近点角 (M) 320.04276(4) 度[1]
EMoid 3000 km[2]
前回近日点通過 JED 2456269.87315(7)[1]
(2012年12月8日[1])
次回近日点通過 JED 2456894.8996(7)
(2014年8月25日)
物理的性質
直径 140 m[3][4][5]
質量 4.1 × 109 kg[3]
(410万トン)
絶対等級 (H) 21.846 ± 0.61351[1]
発見
発見日 2011年1月8日[2]
発見者 レモン山サーベイ
発見方法 自動検出
他のカタログでの名称
367789
2011 AG5[1][3][2]
K11A05G[2]
Template (ノート 解説) ■Project

概要

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2011 AG5 は、絶対等級21.9等級であり[1]、この値から推定される直径は140mである[3][4][5]。質量は410万トンであると推定されている[3]。これは後述するとおり、衝突のリスクが高い天体としてはかなり大きな天体である。

2011 AG5 の公転軌道は、軌道長半径火星軌道にほぼ等しい2億1400万km (1.431AU) であるが、近日点距離は地球軌道の内側である1億3100万km (0.873AU) 、遠日点距離は小惑星帯の内側に相当する2億9800万km (1.989AU) と、離心率0.39の楕円軌道を持つ[1]。しかし、軌道傾斜角は3.68度とほとんど傾いていない[1]。2011 AG5は、この軌道を約1.7年かけて公転している[1]

2040年の衝突のリスク

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観測初期の情報

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2011 AG5 は、地球近傍小惑星の中でも潜在的に危険な小惑星 (PHA) に属し、その中でも最も衝突のリスクが高い天体であった[6]。2012年時点で、トリノスケールが0より高い天体は 2011 AG52007 VK184 のみで、共に1がつけられていた[3][6]パレルモスケールは衝突リスクがある小惑星で最大値の-1.00であった[3]。地球軌道との最小交差距離 (EMoid) は約3000kmである[2]

初期の計算によると、最も衝突のリスクがあるのは、2040年2月4日であり、9時38分に地球に最も接近すると見られていた[1]。最接近距離は約103万km (0.006906AU) と、軌道の2.7倍まで接近する。しかし、この時点では観測が不十分なため、推測された軌道には幅があり、もっと近くまで接近する可能性も残されていた。一番近いのは約2700km (0.000018AU) であり、この場合は地球半径以内に接近するので衝突することになる[1]。2040年における衝突確率は0.0020(500分の1)と見積もられていた[3]。また、月にはこのときに最大4万3000kmまで接近しうる[1]

2011 AG5 は直径140m、質量410万トンとかなり大きく、仮に衝突した場合、衝突する時の速度は14.67km/s、エネルギーは広島型原爆の7300倍に相当する4.6 × 1017Jを放出すると考えられる[3]。これは、人類史上最大の兵器である水素爆弾ツァーリ・ボンバの2倍以上のエネルギーである。また、2011 AG5 の見かけの等級が自転に沿って変化することから、2011 AG5は細長い形状である事が推定された[7]

小惑星の衝突リスク[1][3][6]
名前 日付 スケール 衝突確率
トリノ パレルモ
2011 AG5(かつて) 2040年2月4日 1 -1.00 0.0020
ベンヌ 2182年9月24日 n/a -1.52 0.00028
2007 VK184 2048年6月3日 1 -1.57 0.00055
2009 FD 2185年3月29日 n/a -1.80 0.0018

衝突可能性ゼロへ

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2012年5月29日にNASAのゴダード宇宙飛行センターで行われたワークショップで、2011 AG5 の2040年の衝突リスクは今後4年間の観測で1%以下になる可能性が高いことが分かった。2011 AG52032年2月3日の地球最接近時(推定距離182万km[1])に、幅365kmのある領域を通過すれば2040年に衝突する可能性が生じるが、その領域を通過する可能性は非常に低く、この領域を通過しなければ、衝突確率をゼロにする事が可能であることが分かった[8]

2012年10月に、ハワイ大学のチームによる2つの望遠鏡の追跡観測に基づいて軌道を再計算した結果、2011 AG5 は誤差を考慮しても地球から約89万km以内に接近しないことが同年12月に明らかになった[5]。これにより2011 AG5 が2040年に地球に衝突する可能性は完全に消滅し、この時点でのトリノスケールが1以上の値を持つ天体は 2007 VK184 のみとなった。また、NASAはこれを受けて、2011 AG5 の衝突リスクに関する項目および情報を削除した[3][6]。この観測は、それまでの観測から不確実性を60分の1にまで低めることに成功した結果である[4]。また、5月末の話し合いよりもかなり早い段階での議論の決着となった。ただしこれは、軌道要素が永久に変化しないことを前提としており、また不確実性が低い近未来での話であり、仮に軌道が変化したり、遠い将来には再び衝突のリスクが生ずる可能性が生じてくる。また、軌道要素と定義から、2011 AG5 がPHAであることには変わりがない[1]。トリノスケール1の天体は数日から数ヶ月で0に引き下げられる事が多いが、2011 AG5 は評価から1年半以上かかる珍しい例となった。

2013年7月29日には、小惑星番号367789番が付与された[1]

その他

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ちなみに、2011 AG5火星に対しても衝突のリスクがあり、2016年9月2日には火星に約1000万kmまで接近する[1]

出典

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関連項目

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