カサゴ

スズキ目フサカサゴ科に属する魚

カサゴ (鮋・笠子・瘡魚、Sebastiscus marmoratus) は、スズキ目フサカサゴ科(あるいはメバル科)に属する魚類標準和名[1]

カサゴ
カサゴ
Sebastiscus marmoratus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: スズキ目 Scorpaeniformes
亜目 : カサゴ亜目 Scorpaenoidei
: フサカサゴ科 Scorpaenidae
あるいは メバル科 Sebastidae
亜科 : メバル亜科 Sebastinae
: カサゴ属 Sebastiscus
: カサゴ S. marmoratus
学名
Sebastiscus marmoratus
(Cuvier, 1829)
シノニム

Sebastes marmoratus
Cuvier, 1829

和名
カサゴ (鮋・笠子・瘡魚)
英名
False kelpfish
Marbled rockfish

全長30 cm。日本近海を含む太平洋西部の暖海域に分布し、沿岸の岩礁や海中林などに生息する。食用魚としてさまざまな料理に用いられる。

名称 編集

学名 編集

学名(ラテン語)のうち属名Sebastiscus (セバスティスクス)は、ギリシア語Σεβαστός (sebastos、セバストス、「尊厳」の意)に由来する合成語で、西欧人名 Sebastian音訳例:セバスチャン、セバスティアン)と同根である。種小名 marmoratus (マルマラトゥス)は、大理石(マーブル)ラテン語 marmor (マルモル、en:marble)に由来。

和名 編集

標準和名

和名は、頭部が大きく、をかぶっているように見えることから起こった俗称「笠子」に由来すると考えられている。一方、皮膚が爛(ただ)れたように見えることから、「皮膚病にかかって瘡(かさ。かさぶた)ができたような魚」との意味での「瘡魚」が語源であるとする説もある[2]。「笠子」「鮋」「瘡魚」は漢字表記としてともに存在する。

地方名

日本方言名には、大きなものを「デカガシラ」、関西地方の「がしら」「がし」、山陰地方鳥取島根)の「ぼっか」、島根の「ぼっこう」、岡山の「あかめばる(赤眼張)」「あかちん」、四国徳島の「ががね」、瀬戸内海西部沿岸地方(広島愛媛など)の「ほご」、九州は宮崎の「ががら」「ほご」、および、長崎熊本鹿児島の「あらかぶ」「がらかぶ」「がぶ」などがある。

各国語名 編集

英語

英語名の marbled rockfish (音訳例:マーブルド・ロックフィッシュ)は「大理石模様の、岩礁の魚」との語義である。

形態 編集

最大で全長30 cm[3]、体重2.8 kg[4]IGFAによると、最大体重を記録した個体は1996年に新島東京都)で釣り上げられたものである。ただし当時、より大型になるウッカリカサゴと識別されていたかどうかは不明である。タックルレコードの種名は「Kasago」とのみ表記されている。

体色は普通、赤色から褐色地に不規則な形状の薄色斑が見られるが、体色や模様は生息環境や個体により変異がある。近縁のメバルに比べて相対的に体の断面が丸く側扁は弱く、眼が小さく、口が大きい。

浅い所に棲むカサゴは岩や海藻の色に合わせた褐色をしているのに対し、深い所に棲むカサゴは鮮やかな赤色である。赤色光の吸収と残留青色光の拡散が起こる海中、すなわち青い海の中では、赤色系の体色は環境の青色光と相殺されて地味な灰色に見えるため、これは保護色として機能する。赤い光は海の深い所まで届かないので、赤い色をしたカサゴは敵や獲物から見つかりにくい。これは深海における適応の一つで、実際、深海生物には真っ赤な体色のものが多く見られる。

外部形態の酷似する近縁種ウッカリカサゴ S. tertius との識別は混乱していたが、両者は体表の白点のふちどりの有無などが異なる別種である[5]

生態 編集

分布 編集

日本の北海道南部から朝鮮半島中国台湾フィリピンまでの海域に分布する。

生息環境 編集

海岸近くから水深200 mくらいまでの岩礁域に生息する。メバルほど泳ぎ回らず、海底で生活することが多い。昼は物陰に潜み、夜になると餌を探して泳ぎ出す。

食性 編集

肉食性。ゴカイ甲殻類、小魚などを大きな口で素早く捕食する。

繁殖 編集

卵胎生。体内受精を行い、卵ではなく仔魚を産む。秋に交尾したメスは1- 3ヶ月後くらいに数万尾の仔魚を生む。ただし母胎の仔魚はヒトのように母体とへその緒でつながれるわけではなく、自身が持つ卵黄の栄養分で育つ。なお、同じフサカサゴ科のメバルも胎生であるが、オニカサゴなどは卵生である。

伊豆半島周辺におけるカサゴを用いた研究では、産仔生態として産仔時期が11~3月、1回の産出仔魚数は1千~94千尾で平均産仔数が26千尾、産仔回数は2回で産仔間隔が13~22日間であることがわかっている。[6]

人間との関わり 編集

民俗 編集

日本においては江戸時代、勇ましい姿が武家に好まれ、端午の節句に飾られる縁起の良い魚の一つであった。

釣り 編集

日本では釣りの対象魚としてなじみ深く、穴釣り仕掛けで根がかりに注意すれば防波堤や岩場からも比較的簡単に釣れる。特に夜活発で動くものに襲いかかるため、釣り餌も生きたスジエビイソメイカの切り身、小魚などが使われる。

メバルやアイナメとともに、根魚の代表格である。船釣りの対象魚としても人気があり、東京湾相模湾ではサバの切り身を餌にした胴突き仕掛けで手軽に釣れる。また、最近ではソフトルアーを使ったルアーフィッシングの好対象魚となり、比較的容易に釣れることから「ロックフィッシュゲーム」と称され、人気が出ている。

カサゴは遊泳性が低く移動が活発でない魚である。このため、あるエリアでいったん釣られると余所からの流入による個体数回復が進みにくく、“釣られ尽くし”の状態が起きやすい。これは釣り人の集中する都市近郊で特に顕著であり、同じ傾向を持つ魚であるクロソイ、ムラソイ等と共に、各漁協、公益法人、地方自治体等による種苗養殖及び放流が行われている。

食材 編集

カサゴおよびその近縁の魚は、締まりがよい白身に脂がのっていて非常に美味のため、和・洋ともにさまざまな料理に使われる。和食では鍋料理潮汁味噌汁といった汁ものや煮付け塩焼きが好まれ、小振りであれば唐揚げとしても多く食される。また、頭が大きく歩留まりこそ悪いが刺身握り寿司にもされる。洋食であればブイヤベースアクアパッツァなど。

 
フサカサゴ属の一種、Scorpaena scrofa
カサゴではなく近縁の別属であるが、怪獣ガラモンに通じる面構えは同じ。

大衆文化 編集

特撮テレビ番組『ウルトラQ』に登場する怪獣ガラモンの顔のデザインは、真正面から見たときのカサゴの顔に着想を得て起こされている。例えば、顔の幅と変わらない大きさがあり、肉厚の“”と口角の下がった様子が特徴的な口など、両者の印象は酷似している。

脚注 編集

  1. ^ Froese, Rainer, and Daniel Pauly, eds. (2012). "Sebastidae" in FishBase. December 2012 version.
  2. ^ 栄川省造 『新釈魚名考』〈1982年
  3. ^ Sebastiscus marmoratus Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2011.FishBase. World Wide Web electronic publication. www.fishbase.org, version (10/2011).
  4. ^ All tackle records for Kasago International Game Fish Association.
  5. ^ 中坊徹次編、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』、2000年、東海大学出版会、p. 585、1526。
  6. ^ 「静岡県清水港に棲息するカサゴSebastiscusmarmoratusの生態的特性と遺伝的特性」”. 「海―自然と文化」東海大学紀要海洋学部第3巻第2号21-38頁(2005). 2020年1月30日閲覧。

関連項目 編集