カワチブシ

キンポウゲ科の種

カワチブシ(河内附子、学名Aconitum grossedentatum[1])は、キンポウゲ科トリカブト属疑似一年草有毒植物[4][5][6][7]

カワチブシ
愛知県北設楽郡 2023年9月下旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
: キンポウゲ目 Ranunculales
: キンポウゲ科 Ranunculaceae
: トリカブト属 Aconitum
: カワチブシ
A. grossedentatum
学名
Aconitum grossedentatum (Nakai) Nakai (1935)[1]
シノニム
  • Aconitum grossedentatum (Nakai) Nakai var. odaiense Nakai (1935)[2]
  • Aconitum grossedentatum (Nakai) Nakai var. sikokianum (Nakai) Nakai ex Tamura et Namba (1960)[3]
和名
カワチブシ(河内附子)[4][5]

特徴 編集

生育場所によって形体的変異が著しい。地下の塊根は径0.5-3cmになる。林縁や林内ではは斜上して先端が垂れ、草原では直立して高さは50-180cmになる。茎中部付近でよく分枝し、枝は広角度に伸長する。根出葉と下部の茎葉は、花時には枯れて存在しない。中部の茎葉の葉身は五角形から五角形状円形で、長さ5-19cm、幅6-17cm、3深裂または3全裂し、裂片は粗い鋸歯縁になるか、ときに羽状に深裂する。鋸歯または欠刻片は、卵状から披針形、狭披針形になり、幅は2-5mmになる。葉柄は長さ1-6cmになり、無毛または屈毛が生える[5][7]

花期は8-11月。花柄は長さ1.5-4.5cmで、無毛、花柄の中部に対になった小苞があり、狭楕円形で長さ3-7mmになる。花序は長さ5-12cmの散房状、総状、円錐状になり、1-10個のがつく。花は青紫色で、長さは3-5.5cmになり、ときに光沢があり、まれに黄白色の花がある。花弁にみえるのは萼片で、上萼片1個、側萼片2個、下萼片2個の5個で構成される。上萼片は円錐形まれに僧帽形になり、長さ22-30mm、幅17-24mmになり、長い嘴があり、上萼片の外面に毛は無い。花弁は上萼片の中にかくれて見えないが、柄、舷部、を分泌する距、唇部で構成される。1対あり、無毛で、舷部は長さ10-14mmあって強くふくらみ、距はふつう太くて長いがまれに短く嚢状になり、180度以上に内曲し、唇部は長さ3-4mmになり、先端は2浅裂して反り返る。雄蕊は多数ありふつう無毛、まれに開出毛がまばらに生える。雌蕊は3-5個あり、無毛。果実は長さ15-27mmの袋果になり、斜開するか直立する。種子は長さ4mmになる。染色体数2n=32の4倍体種である[5][7]

分布と生育環境 編集

日本固有種[8]。本州の太平洋側、関東地方神奈川県群馬県)から近畿地方和歌山県)までと四国に分布し、山地帯の林内、林縁または草原に生育する[5][7]

このうち、鈴鹿山脈紀伊山地に分布し、風衝草原に生育し、茎が直立して高さ30-80cmになり、全体が小型で葉に光沢があるものは、シノニム欄の var. odaiense とされ、アシブトウズまたはオオダイブシと分類されることがある[6][7]が、現在はカワチブシの草原型として整理されている[2][7]。また、四国山地に分布し、葉が3全裂し、裂片がさらに深裂して欠刻片が披針形になるものは、var. sikokianum とされ、シコクブシとされることが多い[5][7][8]が、これもカワチブシのシノニムになっている[3][7]

名前の由来 編集

和名カワチブシは、「河内附子」の意で、タイプ標本大阪府金剛山で採集され、金剛山が旧河内国に属することによる[5]

種小名(種形容語)grossedentatum は、grosse-dentatum の意で[1]、「非常に大きい鋸歯の」の意味[9]中井猛之進による命名[1]

種の保全状況評価 編集

国(環境省)のレッドデータブックレッドリストでの選定はない。都道府県別では、岐阜県、大阪府、和歌山県で絶滅危惧II類となっている[10]

分類 編集

カワチブシは、トリカブト属トリカブト亜属 Subgenus Aconitum のうち、花弁の舷部が距に向かって膨大するキヨミトリカブト節 Section Euchylodea に属し、同節のうち、花はふつう花序の上から下に向かって開花するヤマトリカブト列 Series Japonica に分類される。ヤマトリカブト列に属する日本に分布する種のうち、温帯に生育する種(高山植物でない種)としては、本種の他、ウゼントリカブト Aconitum okuyamaeオンタケブシ A. metajaponicumコウライブシ A. jaluense亜種センウズモドキ subsp. iwatekense がある。)、ヤマトリカブト A. japonicum(亜種にオクトリカブト subsp. subcuneatumツクバトリカブト subsp. maritimumイブキトリカブト subsp. ibukienseタンナトリカブト subsp. napiforme がある。)、ヤサカブシ A. nikaii が属する[11]

本種の花柄と上萼片は無毛であること。ウゼントリカブトとオンタケブシは、花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、上萼片の嘴は短いこと。コウライブシは、花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、上萼片の嘴は長いこと。ヤマトリカブトとその亜種群、ヤサカブシは、花柄と上萼片に屈毛が生えることが異なる。なお、オンタケブシは分布が限られ極まれな種であり、ヤサカブシは山口県にのみ分布する種である[11]

ギャラリー 編集

脚注 編集

  1. ^ a b c d カワチブシ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b カワチブシ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ a b カワチブシ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  4. ^ a b 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.214
  5. ^ a b c d e f g 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.490
  6. ^ a b 田村道夫 (1982) 「キンポウゲ科トリカブト属」『日本の野生植物 草本II 離弁花類』p.65
  7. ^ a b c d e f g h 門田裕一 (2016) 「キンポウゲ科トリカブト属」『改訂新版 日本の野生植物 2』p.127
  8. ^ a b 門田裕一 (2011) 「キンポウゲ科トリカブト属」『日本の固有植物』pp.55-57
  9. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1491, 1495
  10. ^ カワチブシ、日本のレッドデータ検索システム、2024年1月8日閲覧
  11. ^ a b 門田裕一 (2016) 「キンポウゲ科トリカブト属」『改訂新版 日本の野生植物 2』pp.120-122

参考文献 編集

  • 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本II 離弁花類』、1982年、平凡社
  • 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
  • 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  • 日本のレッドデータ検索システム

外部リンク 編集