キャデラック・エスカレード

アメリカの自動車

エスカレード (ESCALADE) は、アメリカGMが開発・製造、キャデラックブランドで販売する自動車である。

キャデラック・エスカレード
エスカレード Premium
概要
販売期間 1999年 -
ボディ
乗車定員 7名
ボディタイプ 5ドアSUV
エンジン位置 フロント
駆動方式 全輪駆動
後輪駆動
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概要 編集

エスカレードは、1997年フォードが発売したリンカーン・ナビゲーターの成功を受けて、GMが高級SUV市場の対抗車種として企画された。

日本では、2代目 (GMT800) からGMアジア・パシフィックジャパンが輸入している。当初はハマースタークラフトと同様に三井物産オートモーティブが輸入して販売した。2011年11月1日に輸入権がGMジャパンへ譲渡された。日本で正規輸入開始時はベースグレードのみで、GMジャパンが取扱開始時に最上級グレード「プラチナム」を追加した。ESV(ロングボディー)、EXT(ピックアップトラック)、ハイブリッドは正規輸入されていない。

初代 (1999-2000年) 編集

エスカレード
GMT400
 
 
概要
製造国   アメリカ合衆国
販売期間 1999-2000年
ボディ
乗車定員 7名
ボディタイプ 5ドアSUV
駆動方式 AWD
パワートレイン
エンジン 5.7L V8
変速機 4AT
車両寸法
ホイールベース 2,985mm
全長 5,110mm
全幅 1,955mm
全高 1,885mm
その他
姉妹車 GMC・ユーコン デナリ
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初代エスカレード (GMT400) は、1999年モデルイヤーに登場した。1998年から発売が開始されたGMC・ユーコン デナリをベースに高級SUVに仕立てたモデルで、外観の大半がユーコン デナリと共通である。エンジンは5.7 リットル (L) のV型8気筒トランスミッション4ATフルタイム4WD方式を採用している。

 
GMC・ユーコン デナリ(GMT400)

既存車種のユーコンをベースに企画から10か月で発売したが、「フェイスが違うだけで値段の跳ね上がったユーコン(あるいはタホ)」などと不振で1年余りで終売した。

2代目(2002-2006年) 編集

エスカレード
GMT800
 
ベース
 
ESV (ロングボディ)
 
EXT (ピックアップトラック)
概要
製造国   アメリカ合衆国
  メキシコ
  ロシア
販売期間 2002-2006年
ボディ
乗車定員 7名
ボディタイプ 5ドアSUV
4ドアピックアップトラック
駆動方式 AWD
FR
パワートレイン
エンジン 5.3/6.0L V8
最高出力 350PS/5,200rpm
最大トルク 52.3kg-m/4,000rpm
変速機 4AT
サス前 前:ダブルウィッシュボーン
後:リジット+コイル
サス後 前:ダブルウィッシュボーン
後:リジット+コイル
車両寸法
ホイールベース 2,945mm
3,300mm (ESV/EXT)
全長 5,050mm
5,625mm (ESV/EXT)
全幅 2,005mm
2,020mm (ESV/EXT)
全高 1,945mm
1,925mm (ESV/EXT)
その他
姉妹車 GMC・ユーコン デナリ
シボレー・アバランチ
シボレー・タホ
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2代目エスカレード (GMT800) は2002年に発売された。エンジンは5.3 Lと6.0 LのV型8気筒。用意されるトランスミッションは4ATで、フルタイム4WD方式を採用する。

このモデルからロングボディの「ESV」及びピックアップの「EXT」がラインナップに追加される。ベース車両はそれぞれシボレー・サバーバン/GMC・ユーコンXL、スポーツ・ユーティリティ・トラックシボレー・アバランチである。

前モデルの反省から各所を大幅に見直した。本モデルもシボレー・タホ/GMC・ユーコンをベースとしているが、フロント周りとリアエンドを「アート&サイエンス」に則りデザインし、エンジンは専用設計、内装は総レザー、「ブルガリ」とタイアップしたアナログ時計を装着するなど、ベース車両の面影を払拭して「キャデラック」に相応しい高級感を得た。

2004年にESVへプラチナム・エディションを導入し、全席シート・ヒーター&クーラー、保温&保冷カップホルダーを標準装備とし、専用20インチ・クロームホイール、クロームグリルムーンルーフ、内装はエボニー&シェル・レザーダッシュボード、エボニーレザーシート、プリーツ・ドアパネル・ボルスターを含むプレミアムインテリア、などをそれぞれ装備した。

2代目は販売面でも大きく成功し、高級SUVの代表格となる。2006年まで製造されたのちに3代目へフルモデルチェンジした。

映画『マトリックス リローデッド』で黒色のEXTが敵の車両として登場し、主人公達が乗る同社のCTSとともに派手なカーチェイスを繰り広げた。

3代目(2006-2014年) 編集

エスカレード
GMT900
 
ベース
 
ESV (ロングボディ)
 
EXT (ピックアップトラック)
概要
製造国   アメリカ合衆国
  メキシコ
  ロシア
販売期間 2006-2014年
ボディ
乗車定員 7名
ボディタイプ 5ドアSUV
4ドアピックアップトラック
駆動方式 AWD
FR
パワートレイン
エンジン 6.0/6.2L V8
最高出力 409PS/5,700rpm
最大トルク 57.6kg・m/4,300rpm
変速機 6AT
CVT
サス前 前:ダブルウィッシュボーン
後:マルチリンク
サス後 前:ダブルウィッシュボーン
後:マルチリンク
車両寸法
ホイールベース 2,945mm
3,300mm (ESV/EXT)
全長 5,145mm
5,660mm (ESV)
5,640mm (EXT)
全幅 2,005mm
2,010mm (EXT)
全高 1,900mm
1,890mm (ESV/EXT)
その他
姉妹車 GMC・ユーコン デナリ
シボレー・アバランチ
シボレー・タホ
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ベース リア

3代目エスカレード (GMT900) は、北米で2006年に発売された。

エンジンは6.2 LのV型8気筒、用意されるトランスミッションは6ATでフルタイム4WD方式を採用する。現地のカスタムシーン (DUB) を意識して、純正オプションで22インチ大径アルミホイールが選択可能である。オフロードの走破性能は、イギリスの自動車番組「トップ・ギア」のプログラムでクロスカントリーを行った際に、タイヤ周辺のハーネスが断裂した。

先代に引き続いてロングボディのESV、ピックアップのEXTをラインアップする。2008年に、タホが搭載したハイブリッドシステムを用いたモデルが登場した。

2008年にショートボディとロングボディ (ESV) に最上級モデルのプラチナムを設定した。エクステリアは専用フロント・バンパー、大型クローム加飾グリル、クローム加飾をそれぞれ追加し、専用22インチ・クロームホイール、大統領専用車ビーストと共通のLEDヘッドランプ、インテリアは専用色「ココア/ライトリネン」、各部に職人手縫ステッチを追加した専用ココア・レザー、デュアル・ヘッドレストモニター、保温&保冷カップホルダー、アルミ加飾、オリーブ&クルミ材トリムを標準装備とした。可変ショックアブソーバーマグネティック・ライド・コントロール・システム」を初設定した。

2012年リアコンビネーションランプ、リア・バンパー&エキゾースト・フィニッシャーを意匠変更してスクエアタイプのデュアル・エキゾーストとなる。グレード体系も見直して廉価版の「ベースグレード」、「ラグジュアリー」、「プレミアム」、「プラチナム」とした。プレミアムはプラチナムと共通の専用フロント・バンパー、大型ブラックアウト加飾グリルを装備した。プラチナムは専用内装色に「ココア/ライトリネン」に「エボニー/エボニーアクセント」が追加され、2色展開となった。

日本は2007年10月から正規輸入が開始され、2012年にGMジャパンへ扱い変更後、ESV、EXTは正規輸入されていない。日本の販売価格は955万5,000円からが約100万円値下げされた。

ハイブリッドモデル 編集

 
エスカレード ハイブリッド(GMT900)

2008年に南フロリダ国際自動車ショーでハイブリッドを発表し、2009年モデルとして同年に発売した。2輪駆動モデルは7万4,085ドルから、ESVとEXTはハイブリッド未設定、6.0LのV型8気筒にGMのハイブリッドシステムを組み合わせ、0-100 km/h加速は8.2秒、332馬力である。フレックス・フューエル仕様車も設定した。

2008年8月にエスカレードのグレード別販売台数でハイブリッドが20%に達した。ハイブリッドは庶民のエコカーであるとのイメージを崩して高級車の付加価値としての火付け役となった。

2009年にハイブリッドへプラチナムが追加設定した。

4代目(2014-2020年) 編集

エスカレード
GMT K2XL
 
ベース
 
 
ESV (ロングボディ)
概要
製造国   アメリカ合衆国
  ベラルーシ
販売期間 2014-2020年
ボディ
乗車定員 7名
ボディタイプ 5ドアSUV
駆動方式 AWD
FR
パワートレイン
エンジン 6.2L V8
最高出力 420PS/5,600rpm
最大トルク 63.5kg・m/4,100rpm
変速機 6/8/10AT
サス前 前:ダブル ウイッシュボーン式
後:リンクリジッド式
サス後 前:ダブル ウイッシュボーン式
後:リンクリジッド式
車両寸法
ホイールベース 2,945mm
3,300mm (ESV/EXT)
全長 5,145mm
5,700mm (ESV)
全幅 2,045mm
全高 1,890mm
1,880mm (ESV)
その他
姉妹車 GMC・ユーコン
シボレー・サバーバン
シボレー・タホ
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4世代目のエスカレードは、2014年型シボレー・シルバラードで採用したGMの新型トラック・プラットフォームを採用した。北米市場では2015年に発表、販売が開始された。

日本 編集

2015年2月19日に日本国内で発表して受注を開始した[1]。日本市場は「プレミアム」「プラチナム」の2グレードを導入した。価格は1149万円 - 1249万円。

2015年12月8日に一部改良でApple CarPlayを標準装備した[2]

2017年6月13日に一部改良した[3]。トランスミッションが6段ATから8段ATに多段化し、走行モードにローレンジを追加した。「プレミアム」の2列目シートをベンチシートに変更して乗車定員を7名から8名とした。価格は1260万円 - 1360万円。

2018年2月20日に一部改良で、アダプティブクルーズコントロールの前方車両追尾機能と自動減速機能のキャンセルを可能とした[4]

2019年1月16日に一部改良で、縦を基調にしたデイタイムランニングライトを搭載した[5]。価格は「プラチナム(7人乗り)」が1371万6000円、「プラチナム(8人乗り)」が1371万6000円。

2019年5月28日に特別仕様車「スポーツエディション」を設定して29日発売した[6]。7人乗りのみの設定で価格は1409万4000円。

2019年12月3日に仕様と価格を一部変更した[7]。フロントヘッドレスト内蔵デュアルディスプレイを廃止して新たなボディーカラーを設定した。価格は1377万円 - 1416万円。

5代目(2020年-) 編集

エスカレード (5代目)
 
 
ESV(ロングボディ)
概要
製造国   アメリカ合衆国
販売期間 2020年 -
ボディ
乗車定員 7名[8]
ボディタイプ 5ドアSUV
エンジン位置 フロント
駆動方式 全輪駆動
後輪駆動
パワートレイン
エンジン ガソリン
6,153cc V型8気筒OHV[8]
ディーゼル
2,993cc 直列6気筒ターボ[8]
最高出力 ガソリン
313 kW (426 PS; 420 hp) / 5,600 rpm[8]
ディーゼル
207 kW (281 PS; 278 hp) / 3,750 rpm[8]
最大トルク ガソリン
623 N⋅m (63.5 kg⋅m) / 4,100 rpm[8]
ディーゼル
623 N⋅m (63.5 kg⋅m) / 1,500 rpm[8]
変速機 8速AT、10速AT[8]
サス前 マルチリンク式サスペンション[8]
サス後 マルチリンク式サスペンション[8]
車両寸法
ホイールベース 3,070mm
3,405mm (ESV)
全長 5,380mm
5,765mm (ESV)
全幅 2,055mm
2,060mm (ESV)
全高 1,945mm
1,940mm (ESV)
車両重量 2,556–2,641kg
2,624–2,718kg (ESV)
その他
姉妹車 GMC・ユーコン
シボレー・サバーバン
シボレー・タホ
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2020年2月にロサンゼルスで5代目モデルを発表した。

パワートレインは、新開発の最大出力420hp/5600rpmで最大トルク63.5kgm/4100rpmの6.2L V型8気筒ガソリンエンジンと、277hp/3750rpm、63.5kgm/1500rpmの3.0L 直列6気筒ターボディーゼルエンジンを搭載し、可変バルブタイミングやストップ&スタート機能を採用した。ディーゼルエンジンの搭載は、エスカレードにとって初となる。トランスミッションは8速または10速オートマチックである[8][9]

サスペンションについても、快適性を向上させるべく、従来のトラック由来のリンク式サスペンションから新たに独立式マルチリンクサスペンションが採用されている[8]

車内は世界初の38インチの曲面OLEDスクリーンダッシュボードを搭載し、ダッシュボードには、キャデラックの紋章(運転席側)と「エスカレード」の名前(助手席側)が表示される。

日本でゼネラルモーターズ・ジャパンが2022年10月7日付で、2022年2月22日 - 2022年9月9日に輸入した車両のリコールを国土交通省に届出[10]た。自動ヘッドランプシステムに使用している周囲光センサーが、明るい環境下の出力電圧が設定よりも低く、ボディコントロールモジュールが周囲照度の状態を正しく判定できずに、すれ違い用前照灯が常時点灯する可能性がある。

エスカレード V 編集

エスカレード V
GMT-T1XX
概要
製造国   アメリカ合衆国
販売期間 2022-年
ボディ
乗車定員 7名
ボディタイプ 5ドアSUV
エンジン位置 フロント
駆動方式 AWD
パワートレイン
エンジン ガソリン:6.2L V8スーパーチャージド
最高出力 692ps/6000rpm
最大トルク 92.1kgf/4400rpm
変速機 10AT
車両寸法
ホイールベース 3,071mm
3,406mm (ESV)
全長 5,382mm
5,766mm (ESV)
全幅 2,059mm
2,060mm (ESV)
全高 1,948mm
1,941mm (ESV)
車両重量 2,820kg
2,906kg (ESV)
最大積載量 603kg
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2022年5月、エスカレードをベースにエンジン換装や足回りの強化を施した、「エスカレード V」が発表した。

搭載されるパワーユニットは、CT5-V ブラックウィングと同じ6.2L V型8気筒スーパーチャージドの「GM LT4」である。新たにチューニングしたスーパーチャージャーは最大13500rpmで駆動し、ユニットの最高出力は682馬力、最大トルク90.3kgm、10速AT、0-60mph (96kmh) は4.4秒以下、0-400m加速は12.47秒である。

マグネティック・ライド・コントロール・システム 編集

GMシボレー・コルベットなどに採用している可変ショックアブソーバーである。

デルファイコーポレーションとGMが共同開発したシステムで、ショックアブソーバー内のオイルに、鉄粒子を分子レベルでオイルに融合させた炭化水素系流体の磁性反応流体を使用し、ショックアブソーバー内の電流で粘性を変化させ、減衰力の連続可変を実現した。

ピエゾ・アクチュエーターなどを使用してオイルの通過穴の抵抗で減衰力を調節する既存製品と逆の発想で、機械的作動を伴わず、反応速度は1,000分の1秒単位で、レーダーなどで前方の路面状況を察知せずとも、ホイールやボディに大きなGが加わってから作動しても充分に間に合うため、アクティブサスペンション様にリアルタイム制御が可能である。

出典 編集

  1. ^ 新型キャデラック・エスカレードがデビュー 【ニュース】”. webCG. 2019年7月7日閲覧。
  2. ^ キャデラックとシボレー、Apple CarPlay標準に 【ニュース】”. webCG. 2019年7月7日閲覧。
  3. ^ 8段AT搭載の「キャデラック・エスカレード」発売 【ニュース】”. webCG. 2019年7月7日閲覧。
  4. ^ キャデラックの3車種、仕様と価格が変更に 【ニュース】”. webCG. 2019年7月7日閲覧。
  5. ^ キャデラック、3モデルの仕様変更と価格改定を実施 【ニュース】”. webCG. 2019年7月7日閲覧。
  6. ^ 全身を黒でコーディネートした「キャデラック・エスカレード」発売 【ニュース】”. webCG. 2019年7月7日閲覧。
  7. ^ 「キャデラック・エスカレード」の仕様と価格が一部変更 【ニュース】”. webCG. 2019年12月5日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k 森本太郎 編『世界の自動車オールアルバム 2020年』三栄書房、2020年8月8日、182頁。ISBN 978-4-7796-4170-1 
  9. ^ “キャデラック エスカレード 新型、米国で発表…フルサイズSUV”. レスポンス. (2020年2月6日). https://response.jp/article/2020/02/06/331445.html 
  10. ^ キャデラック・エスカレード、シボレー・コルベット リコール届出 前照灯不具合」『』AUTOCAR JAPAN、2022年10月7日。

関連項目 編集

外部リンク 編集