ギョリュウ(御柳[4][6][7]、学名:Tamarix chinensis[5][4][8])はギョリュウ科の落葉小高木[8]モンゴルから中国北部にかけての乾燥地域が原産地で[5]、日本には江戸時代中期に伝わった[5][4][8]

ギョリュウ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ギョリュウ科 Tamaricaceae
: ギョリュウ属 Tamarix
: ギョリュウ T. chinensis
学名
Tamarix chinensis Lour.[1]
シノニム

Tamarix tenuissima Nakai[2]
Tamarix juniperina Bunge[3]

和名
ギョリュウ(御柳)[4]
英名
Chinese tamarisk[5]

名称

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ギョリュウ属の学名はタマリクス(Tamarix)であるが[9][10]、日本では英語名の[9]タマリスク(Tamarisk)でも呼ばれる[9][5][4]。和名では別名としてサツキギョリュウが挙げられる[1][4][注釈 1]。中国名(漢名)は檉柳(ていりゅう)[11][12][6][7]で、一年に数度花が咲くことから[7]三春柳[6][7]の名もある。ほかに、紅柳[6]などの別名もある。

本種の標準名は Tamarix chinensis [1]中井猛之進が報告した Tamarix tenuissima は本種のシノニムであるとする見解があるが[2]、別種とする見解もある[13][14]

特徴

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ギョリュウ属は、地中海周辺からアジアにかけての乾燥地帯に分布する[5]。ギョリュウ属の種はたがいに似ているために分類は困難とされるが[6]、75種ほどに分かれている[5][注釈 2]。水湿地でよく育つ種であるが、乾燥地でも育ち[4]、塩分や寒さにも強い[5]

は小さい鱗片状で針葉樹のように見える。春と秋に枝先に桃色の1mmほどの小さいをたくさん咲かせる。果実は長さ数mmの蒴果で、種子は細かく房状の毛が生え風で飛ぶ。砂漠など乾燥地でも根を長く伸ばして水分を強く吸収する。

人間との関わり

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花や樹冠の美しさから観賞用とされ、切花とされたり庭園樹として栽植されたりする[5][4]。塩分に強いことから海岸の防風林として用いられたり[5]、乾燥にも耐えることから砂漠地帯での防砂や緑化に用いられたりする[9]

ギョリュウ属の材は硬いことから古代エジプトではチャリオットの本体部分などに使われていた[15]

旧約聖書創世記第21章において、アブラハムベエル・シェバに「エシェル」eshel という樹木を植えて神に祈るくだりがある。この木はギョリュウ属の樹木とされ、聖書の日本語翻訳では「柳」とされた例もあるが(新改訳)、「ぎょりゅう」(口語訳新共同訳)・「タマリスク」(新改訳2017)として訳出されている。出エジプト記には、荒野で飢えたイスラエルの民に神が降らせた食物「マナ」が登場するが、マナを合理的に解釈しようとする諸説の中には、ギョリュウ属との関連を推測するものがある。たとえば、ギョリュウ属の樹木[注釈 3]の樹液を吸ったカイガラムシ等の昆虫[注釈 4]が分泌する甘い液(甘露)とする説[6][16]などである。

また、薬用として利尿・解毒や風邪に効果があるとされる[5]

日本には江戸時代中期(享保年間[6]、あるいは寛保年間[6])に伝わった[5][4][8]はしかの薬として伝えられたとも[5][6]、観賞用として伝えられたともいう[8][6]

脚注

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注釈

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  1. ^ 命名者は牧野富太郎で、5月に花が咲いたものに対して「私は前に一度これを皐月(サツキ)ギョリュウと名づけたことがあった」と記している[7]
  2. ^ 54種であるとも、90種程度に及ぶともされる[6]
  3. ^ マナギョリュウ Tamarix mannifera[6][16]や ナイルギョリュウ Tamarix nilotica[16]が挙げられている。
  4. ^ 「マナ虫」とも称される[16]Trabutina manniferaNajacoccus serpentinus [16]

出典

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  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Tamarix chinensis Lour. ギョリュウ 標準”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年4月5日閲覧。
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Tamarix tenuissima Nakai ギョリュウ synonym”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年4月5日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Tamarix juniperina Bunge ギョリュウ synonym”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年4月5日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i 小林義雄. “ギョリュウ”. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2024年4月5日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 堀田満. “ギョリュウ”. 改訂新版 世界大百科事典. 2024年4月5日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l 嶋田英誠. “ぎょりゅう (御柳)”. 跡見群芳譜. 2024年4月5日閲覧。
  7. ^ a b c d e 牧野富太郎. “植物一日一題”. 青空文庫. 2024年4月27日閲覧。
  8. ^ a b c d e ギョリュウ”. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. 2024年4月5日閲覧。
  9. ^ a b c d 山中典和「コラム 緑化植物 ど・こ・ま・で・き・わ・め・る タマリスク類(Tamarix spp.)」『日本緑化工学会誌』第30巻第3号、日本緑化工学会、2005年2月、2024年4月4日閲覧 
  10. ^ タマリクス・ラモシッシマ”. 侵入生物データベース. 国立環境研究所. 2024年4月4日閲覧。
  11. ^ 檉柳”. 精選版 日本国語大辞典. 2024年4月5日閲覧。
  12. ^ 御柳”. 精選版 日本国語大辞典. 2024年4月5日閲覧。
  13. ^ Tamarix chinensis Lour.”. Plants of the World Online. キューガーデン. 2024年4月5日閲覧。
  14. ^ Tamarix tenuissima Nakai”. Plants of the World Online. キューガーデン. 2024年4月5日閲覧。
  15. ^ 古代エジプト人、痛恨のミス 日本の科学がツタンカーメンに挑む|中東解体新書| - NHK
  16. ^ a b c d e 中島路可聖書の中の化学と植物 マナ」『化学と生物』第24巻第11号、日本農芸化学会、1962年、2024年4月27日閲覧 

関連項目

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外部リンク

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