ケシ科(ケシか、Papaveraceae)は、双子葉植物に属するケシヒナゲシハナビシソウケマンソウ亜科オサバグサクサノオウタケニグサなどを含む。

ケシ科
Blauer indischer Mohn.jpg
Meconopsis simplicifolia
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperm
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
: キンポウゲ目 Ranunculales
: ケシ科 Papaveraceae
  • 本文参照

特徴編集

一年草または多年草で、一部は小型の低木。葉は羽のような形に、切れ込みのある鋸歯(掌状に中裂 - 深裂と裂辺に浅裂)がある(クサノオウタケニグサケナシチャンパギクカナダケシ単葉で、複葉になることもある。茎から直に着く(ケシ、アツミケシ、ハカマオニケシ、アザミケシ、ヒナケシ、オニケシ)ものと、葉柄を持つ種(タケニグサ、カナダケシ、ケナシチャンパギク)がある。ふつうは互生であり、まれに対生輪生で、根出葉(根生葉)を出す種(オサバグサ)も存在する。両性で、放射相称十字相称または左右相称になり、単生するか総状花序または集散花序につく。は2個、まれに3個。花弁はふつう4枚、またさらに多数のもの、あるいは全くないもの(タケニグサ、ケナシチャンパギク)もある。雄蘂は2個、4個または多数ある。子房は上位で、ふつう1室であるが多数の室に分かれるものもある。胚珠は多数あり、子房の内側に突出する側壁上につけるが、底部に胚珠が1つあることもある。

果実蒴果または痩果となり、大型に育つ種類(タケニグサ、ケナシチャンパギク)でも、種子は非常に小さく、いわゆるけし粒である。

北半球の暖帯から亜寒帯に多く、約40属800種ある[1]医薬品で強力なオピオイド鎮痛剤麻薬モルヒネ)原料のアヘンを含むケシをはじめとして、プロトピンサンギナリンなどの麻薬麻酔薬成分の各種アルカロイドを含み、重要な薬効成分だが、そのままの使用では有毒になる物質を含む種が多い。これらの麻薬麻酔薬成分を造ることができるのは、ケシ科の植物だけであるので、手術などの現代医学では必要不可欠の生物群である。日本の原産種ではオサバグサ、タケニグサ(ケナシチャンパギクを含む)、クサノオウ、ヤマブキソウリシリヒナゲシコマクサなどが自生し、ナガミヒナゲシアツミゲシなどが帰化野生化している。

分類の経過編集

近縁な群としてケマンソウ亜科コマクサムラサキケマンなど)があり、これはケマンソウ(キケマン)亜科として含める(新エングラー体系)。クロンキスト体系ではこの広義ケシ科をケシ目としている。現在のAGPIIIではケシ科に含めている。

花の形態が、キンポウゲ科に類似する(子房が多数の心皮からなり雄蘂も多数ある)ものと、フウチョウソウ科アブラナ科に類似する(雄蘂が少数で子房が2心皮からなる)ものがあるため、ケシ科はこれら2つの群を進化的に結ぶものと考えられてきた(そのため新エングラー体系ではアブラナ科などもケシ目に入れている)。しかし近年の分子系統学的研究から、アブラナ目とは直接は関係ないことが明らかになり、APG植物分類体系ではケシ科をキンポウゲ目に入れている。

 
ハナビシソウの一種、Eschscholzia glyptosperma
 
ヒマラヤの「青いケシ」
Meconopsis betonicifolia

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脚注編集

  1. ^ 福原達人 (2016)「ケシ科」『改訂新版 日本の野生植物 2』103頁。

参考文献編集

  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社

関連項目編集