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トランス (Trance) は、ハウスから派生したエレクトロニック・ダンス・ミュージックの一種である。125から150 BPMくらいまでのテンポで、短いシンセサイザーの旋律を際限なく繰り返し、うねるような雰囲気を出すのが特徴。その反復されるリズムやメロディが、さも脳内の感覚が幻覚催眠を催す「トランス状態」に誘うかのようであることからトランスと呼ばれている[1]。主にクラブシーンやレイヴパーティーなどでDJらによってターンテーブルまたはCDプレイヤーなどを用いて演奏される。トランスミュージックの中には2つの大きな流れがある。

歴史編集

ダンスミュージックとしてのトランスは、1980年代中期にアシッド・ハウスから派生した。ハウスから派生したのかテクノから派生したのかは難しいところであるが[1][2]、テクノ組のトランス参入は中期以降である。現在のトランスミュージックは主に西ヨーロッパ圏を中心に流行しているトランスと、世界規模で流行しているサイケデリックトランスがあり、これらは互いに影響を与えあいながらも異なった変化を遂げてきた。ドイツフランクフルトで誕生したトランスは隣国ベルギーのニュービートなどから強く影響を受け、リズミカルなドラムパターンや叙情的なメロディを持っており、現在のトランスミュージックの基礎を作った。また1990年代初頭からインド西海岸のゴア地方に持ち込まれたドイツ、ベルギーを初めとするハードコアテクノやジャーマントランスなどが、1993年から1994年頃ゴアトランスに発展した。

日本では2000年代以降、avexが「サイバートランス」として大きく取り上げ、当時の若者文化を介して一般にもトランスというジャンルを認知させた。

派生分類編集

アシッドトランス (Acid Trance)
アシッドテクノから派生した。当時テクノやハウスで定番の機材となっていたローランドTB-303ベースシンセサイザーのうねった音でメロディーや展開を作っていたのが特徴である。代表的なアーティストはアート・オブ・トランス英語版ハードフロアなど。
ゴアトランス
ヒッピーの聖地、インドゴア地方で誕生し発展したトランス。イスラム音階などの民族音階を用いたメロディや、宗教を思わせる民族的なパーカッションや音声をサンプリングし、有機的で民族的な楽曲が多いのが大きな特徴である。1990年代前半から後半にかけて大きく流行したが、現在ではゴアトランスから発展したサイケデリックトランスに取って代わられた感がある。なお、当時シーンを牽引したアーティストはイスラエル出身が多かった。代表的なアーティストはアストラル・プロジェクション英語版ラジャ・ラム (The Infinity Project)、Man With No Name英語版など。
サイケデリックトランス
1990年代後半にゴアトランスから派生したジャンル。ゴアトランスと比べるとよりハードかつ無機質で金属的な質感の音色が多用されているが、明確な境界はない。2000年以降に世界各地で流行の兆しを見せ、イスラエル、イギリスフランスを始め、オーストラリア南アフリカロシア、そして日本などのレーベルからCDがリリースされている。代表的なアーティストはジュノ・リアクターGMS英語版HallucinogenInfected MushroomShpongleSkazi英語版Talamasca英語版、Astral Projection、The Infinity Project、Kox Box、Man With No Nameなど。
ユーロトランス (Euro Trance)、ハンズアップ (Hands Up)
主にヨーロッパを中心に展開されているトランス。かなりハードなキックとベースラインなどハードコアテクノの派生とも言える要素も含まれているが、比較的音数が少なくアップテンポでメロディアスなメロディーラインが特徴と言える。
ダッチトランス (Dutch Trance)
1990年代後半に派生したユーロトランスの1ジャンル。ローランド製JP8000/8080シンセサイザーに搭載されたSuper Sawオシレーターの音色を多用した楽曲が多く、それを利用した壮大でメロディアスな楽曲が代表的である。1998年にリリースされたSystem F - Out Of The Blueで西ヨーロッパを中心に流行したが、主要なアーティストの多くがよりプログレッシブな音へシフトしたこともあり現在は下火である。なお、System Fを始めとする代表的なアーティストの多くがオランダ出身であり、オランダを中心に流行し始めたことからダッチ(Dutch:オランダの)トランスと呼ばれている。しかしスタンダードになってしまったが故に特徴を示すジャンル名としては形骸化してしまっている。代表的なアーティストはArmin van BuurenFerry CorstenRank 1Tiëstoなど。
プログレッシブトランス (Progressive Trance)
このジャンルはテクノやハウスなど他のジャンルとクロスオーバーする傾向が強く、プログレッシブ・ハウスとの明確な線引きもないためしばしば混同して呼称される。プログレッシブ(進歩的)の名の通り、既存のカテゴリーにとらわれない実験的でジャンルレスな楽曲が多いのが特徴である。また海外ではこれらのジャンルを総称してプログレッシブダンスミュージックと呼称することもある。括る言葉はまだ生まれていないがプログレッシヴトランスというジャンル内でも2つのタイプに分かれる。1つはSasha、John Digweedらプログレッシヴハウスの延長線上にいるタイプ。もう1つはMarkus Schulzに代表されるユーロトランスと密接に連携してきたタイプで、こちらは2004年以降増えており今日の主流となっている。代表的なアーティストはSander Kleinenberg英語版Sasha英語版(ハウス寄り)、Gabriel & Dresden英語版Markus Schulz英語版(トランス寄り)など。
エピックトランス (Epic Trance)
1990年後期日本のクラブ誌LOUDの執筆DJらにより専ら使用され始めたのが国内での起点であり、その軌跡は当時のインディーズ版やメジャー版の出版の際のライナーノーツでも引用を確認できる。また当時SAWオシレーターの音色からシンセサイズしたピチカート音が多用され、これらもエピックトランスっぽいとされた。2000年代初頭より現在定義されているような、いわゆる日本のクラブシーンでプレイされている壮大かつ荘厳なトランスの総称として根付いた。後者は日本ではカテゴリー名としてしばしば用いられるが、海外ではどちらかというと曲の特徴(壮大・荘厳)を表現する際によく使用されている。(例:Epic、Melodic、Uplifting等)
エピック」と呼ばれる音楽ジャンルが存在する。同じく壮大・荘厳といった曲の特徴から由来してこう呼称されているが、全く別の音楽ジャンルとして区別される。
ユーフォリックトランス (Euphoric Trance)
ドイツではジャンルとして定着している。明確な線引きはないが、癒しや恍惚、トランス本来の要素を含んでいる曲を指す。代表的なアーティストはAbove & Beyond、Kyau vs. Albert、Ronski Speed、Smith & Pledgerなど。
テックトランス (Tech Trance)
2000年頃にハードトランスのスタイルの1つとして作られ始めたが、2004年にエピックトランスを作っていたアーティストの一部がこのジャンルにシフトしたことでシーンが隆盛し、市民権を得た比較的新しいトランス。テクノの持つミニマルな展開やリズパターンを強く意識した楽曲が多く、プログレッシブトランスと共に現在西ヨーロッパで主流ジャンルの1つとなっている。テックハウス、ハードトランス(ダンス)から転向したDJも多い。代表的なアーティストはTiësto、John Askew、Marco V、Mark Sherry、Randy Katana、Sander van Doornなど[3]
イビザトランス (Ibiza Trance)
スペインのリゾート、イビサ島を中心に発信されるユーロトランスの1ジャンル。ピアノボーカルアコースティック・ギターの入った楽曲が多く、ハウス的な要素も持ち合わせているためバレアリックハウスと呼ばれることもある。代表的なアーティストはATBSolar Stone、Fragmaなど。
ジャーマントランス (German Trance
かつてジャーマン系DJの曲はこのように総称された。時期としては、90年代前半の曲を指す場合が殆ど。代表的なアーティストはCosmic Baby英語版HumateJam & Spoon英語版Paul van Dykなど。
ハードトランス (Hard Trance)
ハードドランスは、ハード・ハウスから派生したハードダンスというジャンルのサブカテゴリーにあたる。
激しいビートが特徴のトランス。
代表的なアーティストは、YOJI BIOMEHANIKA、Dark By Design、Emilio、Guyver、K90、Lab-4、Nostic、DJ Scot Project、Steve Hill、Technikal、DJ Wragg &Log One
テックダンス (Tech Dance)
2007年にYOJI BIOMEHANIKAが提唱した「トランスよりもテッキーでグルーヴィーな楽曲群」を指す。海外ではローリングテクノとも言われることもある。
“Tech Dance” という言葉は、YOJI、Stering Moss、Oliver Klitzingの3人で決めて作られた。
テックダンス はハードダンスというジャンルのサブカテゴリーにあたる。
回転するようなドラムのグルーヴ感が特徴である。キックドラムは必ずしも重ねたり、被せるように鳴るのが、必須というわけではない。中には、キックドラムによらず、パーカッションにより、回転するようなグルーヴ感を出している曲もある。
一般的に知られている曲のBPMレンジは、140 -143の間である。
パーカッションに、よりディストーションが効いた、裏打ちの激しいシュランツ (Schranz) というドイツ発祥のハードテクノ(150BPM以上)の一種の影響を受けていたり、ダブステップの要素がある曲、オールドスクールレイヴ(ブレイクビート・ハードコア英語版)の要素がある曲、ハードドランスや、ハードスタイルの要素を取り入れた曲など多様である。
代表的なアーティストはYOJI(現 YOJI BIOMEHANIKA)、REMO-CON、GEORGE-S、TOSHIO UEKI、NISH(現Ken Plus Ichiro)、Ryoji Takahashi
海外では、Aaron Olson、Andy Richmond、Ash Preston、DJ Audy(現Memory Loss)、BOOTEK (Phil York)、BRENT SADOWICK、Busho、Diablik、Fabio Stein、DJ Husband、Joe-E、Lee Mac、Neal Thomas、Oliver Klitzing、ORGAN DONORS、Re-Born&Verjo、Ricky-T、Sterling Moss、Vandallなど。
第二世代アーティストとしてNI-21、NIGHT LIBERATOR、OVERFLOW、SHIBEEなど。
主要レーベルは、CGI Music、die Tunes、Electric Releases、exbit trax、Harderground Recordings、Hellhouse Recordings、Metaktrax、NTR、Ominous Digital、R135 Tracks、rtrax、Tech Fu Recordings、Trancewarez Music Publishing、Tuna Tech、Virus Audio。
ロシアントランス (Russian Trance)
ジャンル名ではなくジャーマントランス・ダッチトランスと同意でロシア系のDJの曲の総称。日本ではあまり認識されていないが、近年のロシアのクラブシーンの隆盛は著しい。一過性の現象に終わるかと思われた2001年のPPKの登場から3年を経た2004年、Bobina、Vadim Zhukovという新星が欧州のクラブシーンへ進出した。両者共にU.K. オランダの複数のレーベルと立て続けに契約、その後多くのロシアのDJが欧州進出を果たしている。また、プログレッシヴトランスシーンの拡張も近年顕著である。
ハイテックフルオン (HI-TECH FULL ON)
ハイテックフルオンはサイケデリック・トランスから派生したジャンルで、一気に畳み掛けるビートが特徴。ハイテックには同名のジャンルがあるが、こちらは2006年頃に産声を上げていた。
日本のアーティストではkors kやlapix、海外ではBassfacter、Blastoyz、Duo-techなどが有名。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ a b Trance Music Genre Overview” (英語). AllMusic. 2020年2月14日閲覧。
  2. ^ Ben Murphy (2017年12月13日). “トランスを無視できなくなるトランスクラシック ベスト10”. Red Bull. 2020年2月14日閲覧。
  3. ^ 【iFLYERチケット】2018年、世界はトランスに大注目中! トランスの神的存在「ザ・ボス」John Askew来日!”. iFLYER.tv (2018年2月18日). 2020年2月14日閲覧。

関連項目編集

外部リンク編集