ネパール語

インド・ヨーロッパ語族インド語派パハール語群

ネパール語(ネパールご、: Nepali)は、ネパールブータンインドシッキム州ミャンマーの一部で話されるインド語派言語である。

ネパール語
नेपाली भाषा
話される国 ネパールの旗 ネパール
インドの旗 インド
ブータンの旗 ブータン
地域 南アジア
話者数 1,600万人
言語系統
表記体系 デーヴァナーガリー
公的地位
公用語 ネパールの旗 ネパール
インドの旗 インド シッキム州
少数言語として
承認
インドの旗 インド(連邦政府)
統制機関 ネパールの旗 ネパール・アカデミー英語版ネパール語版
言語コード
ISO 639-1 ne
ISO 639-2 nep
ISO 639-3 nepマクロランゲージ
個別コード:
npi — ネパール語
dty — Dotyali
テンプレートを表示

概要 編集

ネパール語はネパール及びインドのシッキム州の公用語である。ネパール人口の約半数が母語とし、その他のネパール人は第二言語とするものが多い。またインドでも憲法第8付則に定められた22の指定言語のひとつである。

ネパール語は東部ネパールからインドのウッタラーカンド州及びヒマーチャル・プラデーシュ州までの、ヒマラヤ山地の低層地にて話されているパハール語群の最東部の言語である。また特にネワール語(ネパール・バサ語)などのチベット・ビルマ語派のいくつかの言語との共通の単語も多く、チベット・ビルマ諸語の影響も受けている。

ネパール語はヒンディー語ウルドゥー語とも近いが、保守的でありペルシャ語英語からの借用語は比較的少なく、サンスクリット起源の単語が多い。

地理的分布 編集

ネパール 編集

2011年の国勢調査によると人口の44.6%がネパール語を第一言語とし[1]、32.8%が第二言語としている[2]

インド 編集

2011年の国勢調査には、292万6168人のネパール語話者がいると発表した。[3]

各州ごとのインドのネパール語話者[4][5]

ネパール語話者(2011年)

増加率(2011年)

西ベンガル 1,155,375 12.97%
アッサム 596,210 5.56%
シッキム 382,200 12.87%
ウッタラーカンド 106,399 16.86%
アルナーチャル・プラデーシュ 95,317 00.42%
ヒマーチャル・プラデーシュ 89,508 27.37%
マハーラーシュトラ 75,683 19.22%
マニプル 63,756 38.61%
メーガーラヤ 54,716 4.91%
ナガランド 43,481 27.06%
ミゾラム 8,994 0.51%

ブータン 編集

ブータンのローツァンパと呼ばれるブータン語を母語としている人は人口の35%である[6]。この中にはブータン難民が含まれており、その非公式推定値は30~40%と高く、南部の過半数(約204万2000人)を占めています[7]

音韻論 編集

母音 編集

ネパール語の母音
前舌 中舌 後舌
i [ĩ] u [ũ]
半狭 e [ẽ] o
半広 ʌ [ʌ̃]
a [ã]

ネパール語は6つの口母音と5つの鼻母音を区別します。/o/には対応する鼻母音がありませんが[õ]に変化することがあります。

二重母音は/ui̯/、/iu̯/、/ei̯/、/eu̯/、/oi̯/、/ou̯/、/ʌi̯/、/ʌu̯/、/ai̯/、/au̯/の11種類あります。

子音 編集

ネパール語の子音
両唇 歯茎 そり舌 硬口蓋 軟口蓋 声門
m n न/ञ (ɳ ) ŋ
破裂破擦 無声 無気音 p t t͡s ʈ k
有気音 t͡sʰ ʈʰ
有声 無気音 b d d͡z ɖ ɡ
有気音 d͡zʱ  /झ ɖʱ ɡʱ
摩擦 s श/ष/स ɦ
ふるえ r
接近 (w ) l (j )

[j]、[w]はそれぞれ[i]、[u]の異音である[j]、[w]と/ɦ/以外には対応する長子音があります。/ɳ/と/ʃ/は外来語の/baɳ/ बाण 「矢」や、/nareʃ/ नरेश 「王」などの外来語に現れることがありますが、ネパール語の音素に置き換えられることもある。

方言 編集

  • Darjula (nep-dar)
  • Soradi (nep-sor)
  • Nepali (nep-nep)
  • Gorkhali (nep-gor)
  • Baitadi (nep-bai)
  • Palpa (nep-pal)
  • Bajurali (nep-bal)
  • Acchami (nep-acc)
  • Bajhangi (nep-bah)

文字 編集

ネパール語はデーヴァナーガリーで書かれる。以下では、IASTIPAの2つを並べて表示する。下付きのドットはそり舌音マクロン長母音hは有気音チルダ鼻母音を表す。

子音 編集

  /kʌ/   /kʰʌ/   /ɡʌ/   /ɡʱʌ/   /ŋʌ/
  /t͡sʌ/   /t͡sʰʌ/   /d͡zʌ/  /  /d͡zʱʌ/   /nʌ/
  /ʈʌ/   /ʈʰʌ/   /ɖʌ/   /ɖʱʌ/   /ɳʌ/
  /tʌ/   /tʰʌ/   /dʌ/   /dʱʌ/   /nʌ/
  /pʌ/   /pʰʌ/   /bʌ/   /bʱʌ/   /mʌ/
  /jʌ/   /rʌ/   /lʌ/   /wʌ/
  /sʌ/   /sʌ/   /sʌ/   /ɦʌ/
  /t͡sʰjʌ, ksʌ/   /trʌ/   /ɡjʌ/   /ri/

子音 編集

अं अः अँ
IAST a ā i ī u ū e ai o au aṃ aḥ am̐/ã
IPA ʌ a i i u u e ʌ o ʌ ʌŋ ʌɦʌ ʌ̃
子音bで表される母音記号 बा बि बी बु बू बे बै बो बौ बं बः बँ

昔は、カイティー文字で書かれたこともある。

脚注 編集

  1. ^ Major highlights”. Central Bureau of Statistics. p. 4 (2013年). 2013年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月12日閲覧。
  2. ^ Nepali (npi)”. Ethnologue. 2016年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月6日閲覧。
  3. ^ Language – India, States And Union Territories (Table C-16)”. census.gov.in. 2022年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月27日閲覧。
  4. ^ Growth of Scheduled Languages-1971, 1981, 1991 and 2001”. Census of India. Ministry of Home Affairs, Government of India. 2015年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月22日閲覧。
  5. ^ Distribution of the 22 Scheduled Languages – India/ States/ Union Territories-2011 Census”. censusindia.gov.in. 2022年3月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月12日閲覧。
  6. ^ Background Note: Bhutan”. U.S. Department of State (2010年2月2日). 2021年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月2日閲覧。
  7. ^ Worden, Robert L.; Savada, Andrea Matles (1991). “Chapter 6: Bhutan - Ethnic Groups”. Nepal and Bhutan: Country Studies (3rd ed.). Federal Research Division, United States Library of Congress. pp. 424. ISBN 978-0-8444-0777-7. http://lcweb2.loc.gov/frd/cs/bttoc.html 2010年10月2日閲覧。 

関連項目 編集

外部リンク 編集