リュカ–レーマー・テストの証明
デリック・ヘンリー・レーマーは、エドゥアール・リュカの判定法を改良し、今日ではリュカ–レーマー・テスト(英語: Lucas–Lehmer primality test) と呼ばれる、メルセンヌ数に対する素数判定法を確立した。
リュカ–レーマー・テスト編集
p が奇素数のとき、メルセンヌ数 Mp = 2p − 1 が素数となるための必要十分条件は、S0 = 4, Sn = Sn−12 − 2 (n ≧ 1) と定義したときに Sp−2 が Mp で割り切れることである[1][2][3]。
これの一般化であるリュカ–レーマー–リーゼル・テストもある。
リュカ–レーマー・テストの証明編集
数列の一般項編集
数列 S0 , S1 , S2 , ... の一般項を求める。Sn+1 = Sn2 − 2 なので、S0 = α + β , S1 = α2 + β2 となるような α と β を見つけるには、αβ = 1 , α + β = 4 を解くことになる。すると一般項は
となる。
以下、Q = 2p − 1 とする。
十分性編集
Qは素数。
まず、Sp−2 ≡ 0 (mod Q) であれば、Q が素数であることを証明する。 Sp−2 ≡ 0 (mod Q) で、かつ Q が合成数だと仮定する。すると、Sp−2 は Q の一番小さい素因数 F を用いて Sp−2 = kF(kは自然数)と表せる。Sn の一般項から
となる。 なので、両辺に をかけて、
1を移項し、両辺を2乗すると、
よって、
となる。ここで、 と (a, b, c, dは整数)で表される数を考えたとき、a ≡ c (mod F) かつ b ≡ d (mod F) の時に二つの数は F を法として合同であるとする。そして、
という集合 G ではどの要素 gn にも gngm ≡ 1 (mod F) となるような gm が存在する。つまり、集合 G には0は含まれない。よって、集合 G には最大で F 2 − 1 個の相異なる要素しか含まれない。gn = 1 となる n のうち最小のものを e とすると任意の自然数 r について gr = gje+r (jは0以上の整数) が成り立つ。よって 1 ≤ e ≤ F2 − 1 となる。
より、2p は e の倍数。2p > e ならば、e = 2t (tは0以上p−1以下の整数)となる。言い換えれば 2p−1 は e の倍数となる。つまり、
となるはずである。しかし、上の式、
より、
よって、2p = e となる。しかし、F は Q の一番小さい素因数なので、
よって、F2 − 1 < 2p となる。 よって、2p = e なので、F2 − 1 < e となり 1 ≤ e ≤ F2 − 1 と矛盾する。 よって、背理法により、Sp−2 ≡ 0 (mod Q) ということは、Q は素数であるということの十分条件である。
必要性編集
p が奇素数であり、かつ Q が素数
次に p が奇素数であり、かつ Q が素数であれば、Sp−2 ≡ 0 (mod Q) であることを証明する。 この証明をするうえで、平方剰余の相互法則を使う。 まず、二項定理より、
Q は素数なので は n = 0, Q の場合を除いて Q の倍数。よって、
Q ≡ −1 (mod 4), 3 ≡ −1 (mod 4) で、平方剰余の相互法則により、
Q = 2p − 1 = 2(2p−1 − 1) + 1 = 2((3 + 1)(p−1)/2 − 1) + 1 ≡ 12 (mod 3)よって
つまり、
が成り立ち、よって、
両辺に を掛けて、
この式は を利用して、
とも書ける。 平方剰余の相互法則の第2補充法則 により、
よって、
ここで、 なので、
となる。両辺に を掛けて、
両辺に を足して、
よって、Sp−2 ≡ 0 (mod Q) であることは、Q が素数であることの必要条件である。
以上により、リュカ-レーマー・テスト
が示された。Q.E.D.
脚注編集
参考文献編集
関連文献編集
- 中村滋『フィボナッチ数の小宇宙(ミクロコスモス) フィボナッチ数、リュカ数、黄金分割』日本評論社、2002年9月30日。ISBN 4-535-78281-4。
- 中村滋『フィボナッチ数の小宇宙(ミクロコスモス) フィボナッチ数、リュカ数、黄金分割』(改訂版)日本評論社、2008年1月25日。ISBN 978-4-535-78492-5 。
- Hardy, G. H.; Wright, E. M. (31 July 2008), Heath-Brown, Roger; Silverman, Joseph; Wiles, Andrew, eds., An Introduction to the Theory of Numbers (sixth ed.), USA: Oxford University Press, ISBN 978-0-19-921986-5
- G.H.ハーディ、E.M.ライト『数論入門』 I、示野信一・矢神毅翻訳、シュプリンガー・フェアラーク東京、2001年7月、89-90,114-116,137頁。ISBN 4-431-70848-0。 - 原書第5版(1979年)の邦訳。
- G・H・ハーディ、E・M・ライト『数論入門』 I、示野信一・矢神毅翻訳、丸善出版、2012年1月、89-90,114-116,137頁。ISBN 978-4-621-06226-5 。 - ハーディ&ライト(2001)の復刊。
- 和田秀男『数の世界 整数論への道』岩波書店〈科学ライブラリー〉、1981年7月10日。ISBN 4-00-005500-3 。 - 前編は1次式の整数論、後編は2次式の整数論。
- 和田秀男『コンピュータと素因子分解』(改訂版)遊星社(発行) 星雲社(発売)、1999年4月(原著1987年10月20日)。ISBN 4-7952-6858-4 ISBN 4-7952-6889-4 。
関連項目編集
外部リンク編集
- 世界大百科事典 第2版『メルセンヌ数』 - コトバンク
- リュカテストによるメルセンヌ素数の発見法 (PDF)
- Weisstein, Eric W. "Mersenne number". MathWorld (英語).
- Weisstein, Eric W. "Mersenne prime". MathWorld (英語).
- Mersenne Primes: History, Theorems and Lists(英語)
- The Largest Known Primes(英語)
- GIMPS(英語)