吉林省

中華人民共和国の省、省都は長春市

吉林省(きつりんしょう、中国語:吉林省、拼音:Jílín Shěng、満洲語: ᡤᡞᠷᡞᠨ
ᡤᠣᠯᠣ
 転写:girin golo、英語: Jilin)は、中華人民共和国東北部に位置する。省都は長春市。人口は約2407万人[1]

吉林省
略称: 吉 (拼音: )
吉林省の位置
簡体字 吉林
繁体字 吉林
拼音 zh-Jilin.ogg Jílín[ヘルプ/ファイル]
カタカナ転記 チーリン
省都 長春市
最大都市 長春市
省委書記 景俊海
省長 韓俊
面積 187,400 km² (13位)
人口 (2020年)
 - 人口密度
24,073,453[1] 人 (24位)
128 人/km² (23位)
GDP (2018年)
 - 一人あたり
15,074 億 (24位)
55,611 (14位)
HDI (2018年) 0.79 () (11位)
主要民族 漢民族 - 91%
朝鮮族 - 4%
満洲族 - 4%
モンゴル族 - 0.6%
回族 - 0.5%
地級行政区 9 個
県級行政区 60 個
郷級行政区 1006 個
ISO 3166-2 CN-JL
公式サイト
http://www.jl.gov.cn/ (中国語)
http://japanese.jl.gov.cn/ (日本語)

地理 編集

北部を黒竜江省、西部を内モンゴル自治区、南部を遼寧省と接す。また東部はロシアと接し、南東部は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と接する。中部には南から延びてきた遼東大平原が広がり、東部は長白山系を中心とする森林地帯、西部も大興安嶺の山岳地帯となっている。

 長春市吉林市四平市遼源市通化市白山市松原市白城市延辺朝鮮族自治州
地級行政区画

歴史 編集

 
清に滞在したイエズス会士、Jean-François Gerbillon(1697年–1782年)が作成した清国全図のうち、アムール川流域の拡大図。アムール川中流をまたぐ中央の部分が黒竜江将軍、アムール下流から沿海州に至る右の部分が吉林将軍。河口の小さな島は樺太北端部を描いたもの。

近代以前 編集

省東部の森林地帯はツングース系狩猟民族の住地であり、中部平原地帯には濊貊系の夫余が古くから建国し、夫余から分かれた高句麗も省西南部の集安を拠点に一大国家を形成した。高句麗滅亡後は辰国(渤海)が敦化の東牟山に建国、後黒竜江省南部の上京龍泉府に都を移した。渤海が契丹に滅ぼされると東丹国の版図とされたが、まもなく女真の活動地域となり、女真民族はその後金王朝を樹立して中国北部を支配した。金朝が滅亡し元朝の支配が開始されると、その統治の下に女真族が狩猟及び農耕による生産活動が行われ、明末まで中央の緩やかな統制による女真族の活動範囲となった。明末に急速に勢力を拡大した女真族は、その後満洲族として周辺諸族を統合し清朝を樹立し中国全土を支配するようになった。

具体的な行政区画としては清初、1676年ニングタ将軍(寧古塔将軍)が吉林に移駐したのが吉林省設置の始まりで、吉林将軍の管轄範囲は現在の吉林省中東部、黒竜江省東南部からアムール川以北、ウスリー江以東の、日本海間宮海峡沿岸に至る広大な地域に及んだ。しかしアムール川以北は1858年アイグン条約で、ウスリー川以東は1860年北京条約で、ロシア帝国に割譲された。

近現代 編集

清代長白山を皇室を構成する満族の聖地としており他民族の立ち入りが制限されていたが、朝鮮族による移住が行われていた。

1907年清朝により吉林省が正式に設置され、吉林府を省会とした、現在の吉林、黒竜江の大部分を管轄し、吉長、浜江(ハルビン)、依蘭(三姓)、延吉の四道を設置した。

中華民国が成立すると吉林省が設置されたが、民初はその統治権が及ばず、国民政府による行政権が及んだのは1928年1月の易幟以降である。その後は吉林県(永吉県)を省会とし、満洲事変まで沿襲された。この時期には朝鮮が日本に併合されたため、多くの朝鮮人が越境し現在の延辺朝鮮族自治州を中心に吉林省東部に移住し間島という地域を形成した(中華人民共和国成立後に民族自治州が設定された)。

1920年代以降、鉄道建設により交通の要衝であった長春県の経済的重要性が高まり、1932年満洲国建国に際しては新京特別市となり、首都として吉林省から分離されている。

1945年日本の敗戦以降、吉林省は国共内戦の舞台となった。1949年の中華人民共和国以降も吉林市(1947年設置)が省会とされたが、1954年長春市に移転している。

現在は中国の経済発展に伴い、朝鮮族が多く居住する地域には大韓民国からの投資が活発に行われている。

行政区域 編集

下部に1副省級市と7地級市と1自治州を管轄する。詳細については下記データボックスを参照。

名称 中国語表記 拼音 面積
(Km2)
人口
(2020[1])
政府所在地
吉林省の行政区画
 
副省級市
1 長春市 长春市 Chángchūn Shì 20571.00 9,066,906 南関区
地級市
2 白城市 白城市 Báichéng Shì 25692.29 1,551,378 洮北区
3 白山市 白山市 Báishān Shì 17473.73 0,968,373 渾江区
4 吉林市 吉林市 Jílín Shì 27659.79 3,623,713 船営区
5 遼源市 辽源市 Liáoyuán Shì 5140.45 0,996,903 竜山区
6 四平市 四平市 Sìpíng Shì 14382.34 1,814,733 鉄西区
7 松原市 松原市 Sōngyuán Shì 21089.38 2,252,994 寧江区
8 通化市 通化市 Tōnghuà Shì 15607.80 1,812,114 東昌区
自治州
9 延辺朝鮮族自治州 延边朝鲜族自治州 Yánbiān Cháoxiǎnzú Zìzhìzhōu 43509.10 1,986,339 延吉市

教育 編集

中国地名の変遷
建置 1907年
使用状況 吉林省
前漢扶余
高句麗
後漢高句麗
三国高句麗
西晋高句麗
東晋十六国高句麗
南北朝高句麗
高句麗
靺鞨高句麗
渤海
五代渤海
北宋/上京道東京道
南宋/上京道咸平道
遼陽行中書省
奴児干都司
吉林将軍
吉林省(1907年)
中華民国吉林省
満洲国実効支配期間
吉林省 (中華民国)松江省合江省(1947年)
満洲国吉林省
吉林省浜江省間島省三江省(1934年)
吉林省浜江省間島省三江省四平省(1937年)
現代吉林省

人口 編集

2020年第七次国勢調査によると人口は約2407万人である。うち漢族人口は2199万人、少数民族は209万人となっている[2]

1990年には2466万人、2000年には2728万人、2010年には2746万人であった[2]。1990年から2000年にかけての人口増減率は10.63%であったが、2000年から2010年にかけては0.67%と停滞し、2010年から2020年にかけてはマイナス12.34%と減少に転じた[2]。減少率は黒竜江省に次ぐ本土ワースト2位で、長春市を除くすべての地級市・自治州で人口が減少している[1]

文化 編集

吉林市集安市国家歴史文化名城に指定されている。

また、集安市にある高句麗遺跡は2004年、高句麗前期の都城と古墳としてユネスコ世界遺産に登録された。高句麗については中国と韓国の間で中国の少数民族地方政権とみるか、朝鮮史の一部と見るかで論争が展開している

友好都市 編集

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ a b c d Jílín/Prefectures, Cities, Districts and Counties”. Citypopulation (2022年11月19日). 2023年8月22日閲覧。
  2. ^ a b c 2020年第七次全国人口普查主要数据” (pdf). 国家統計局 (2021年7月). 2023年8月22日閲覧。

外部リンク 編集