鳩谷ダム

岐阜県大野郡白川村にあるダム
新鳩谷発電所から転送)

鳩谷ダム(はとがやダム)は、岐阜県大野郡白川村一級河川庄川水系庄川に建設されたダム大牧(おおまき)ダムともいう。高さ63.2メートルの重力式コンクリートダムで、関西電力発電用ダムである。同社の水力発電所・鳩谷発電所に送し、最大4万300キロワットの電力を発生する。

鳩谷ダム
白山白川郷ホワイトロード(白山スーパー林道)から望む鳩谷ダム(2015年5月2日)
左岸所在地 岐阜県大野郡白川村字栃
位置
鳩谷ダムの位置(日本内)
鳩谷ダム
北緯36度14分54秒 東経136度53分36秒 / 北緯36.24833度 東経136.89333度 / 36.24833; 136.89333
河川 庄川水系庄川
ダム諸元
ダム型式 重力式コンクリートダム
堤高 63.2 m
堤頂長 331.5 m
堤体積 206,000
流域面積 580 km²
湛水面積 151 ha
総貯水容量 33,539,000 m³
有効貯水容量 4,387,000 m³
利用目的 発電
事業主体 関西電力
電気事業者 関西電力
発電所名
(認可出力)
鳩谷発電所 (40,300kW)
施工業者 間組
着手年/竣工年 1954年/1956年
出典 [1]
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歴史 編集

1951年昭和26年)に設立され、庄川の水力発電所群を継承した関西電力は、同年に成出ダムおよび成出発電所を[2]1954年(昭和29年)に椿原ダムおよび椿原発電所の運転を開始した[3]。同年、それらの上流において鳩谷ダムおよび鳩谷発電所の建設に着手。1956年(昭和31年)に鳩谷発電所が運転を開始した[4]

1961年(昭和36年)、鳩谷ダムの上流に電源開発御母衣ダムおよび御母衣発電所が完成すると[5]、関西電力は庄川にある既存のダムに対し再開発事業を展開。1967年(昭和42年)、祖山ダムに新祖山発電所が[6]1975年(昭和50年)に成出ダム・椿原ダムに新成出発電所・新椿原発電所が[7][8]1980年(昭和55年)には小原ダムに新小原発電所が増設された[9]。また、成出ダムと小原ダムとの間には赤尾ダムが建設され、赤尾発電所が1978年(昭和53年)に運転を開始している[10]

鳩谷ダムにおいても新鳩谷発電所の建設が計画され、関西電力は1998年平成10年)にその旨を関係各所に申し入れた。新鳩谷発電所は鳩谷ダムの左岸から新たに190立方メートル毎秒の水を取り入れ、最大12万7,000キロワットの電力を発生するというものである。庄川水系にある水力発電所としては御母衣発電所に次ぐ出力を誇り、これによってのピーク需要をまかなう。水車発電機は2台で、12万6,000キロワットを発生する1号機と、800キロワットを発生する2号機とで構成。環境に配慮して電力設備の大半は地下に設置される[11]

当初の予定では、1999年(平成11年)の夏に電源開発調整審議会上程、2000年(平成12年)8月に着工、2004年(平成16年)2月に運転開始と予定されていた[11]。しかし、2000年度経営計画の中で新鳩谷発電所の運転開始年度が2010年(平成22年)度以降に繰り延べとなり[12]2001年(平成13年)度経営計画では2011年(平成23年)度以降とさらにもう1年の繰り延べとなった[13]2002年(平成14年)度経営計画では、新鳩谷発電所の名前がついに消えてしまった[14]。岐阜県の資料によれば「平成15年5月 事業廃止」[15]とあり、計画は立ち消えとなったようである。

周辺 編集

東海北陸自動車道白川郷インターチェンジを降りてすぐ道の駅白川郷がある。国道156号を挟んで向かい側に、鳩谷発電所がある。国道156号を下し、世界遺産白川郷の歴史ある合掌造りの町並みを過ぎると鳩谷ダムに至る。鳩谷ダムが位置する場所は地名を大牧といい、鳩谷ダムは大牧ダムとも呼ばれる。かつて当地では庄川がを巻きながら流れていったことから「多巻」という地名が生まれ、それが現在の「大牧」に変化したのだという。鳩谷ダム建設に伴い、水没する大牧の集落22戸が集団移転した[16]

湖畔には荒谷発電所がある。1998年に運転を開始した関西電力の水力発電所で、鳩谷ダムに注ぐ荒谷川の水を取り入れ、最大1万1,200キロワットの電力を発生する[17][18]。荒谷発電所付近には、御母衣発電所の放水口がある。上流の御母衣ダムから取り入れて発電に使用した水を、9キロメートル近い長大な放水路トンネルで鳩谷ダムまで送水している[5]

西側には三方岩岳などの両白山地の山々が連なり、東側には猿ヶ馬場山などの飛騨高地の山々が連なる。

出来事 編集

  • 1972年(昭和47年)6月6日 - ダムの放流の際に下流2kmの河原で遊んでいた子供3人が増水した河に流されて水死。ダムの管理者は放水時にサイレンを鳴らしながら段階的に放流を行っていたが、河原でカブトムシの幼虫採集に夢中になっていた子供たちに伝わらなかった[19]

関連画像 編集

脚注 編集

  1. ^ 電気事業者・発電所名(認可出力)については「水力発電所データベース」、その他は「ダム便覧」による。
  2. ^ 水力発電所データベース 成出発電所」(2008年3月31日入力、2011年1月7日閲覧)より。
  3. ^ 水力発電所データベース 椿原発電所」(2008年3月31日入力、2011年1月7日閲覧)より。
  4. ^ 水力発電所データベース 鳩谷発電所」(2008年3月31日入力、2011年1月7日閲覧)より。
  5. ^ a b 水力発電所データベース 御母衣発電所」(2008年3月31日入力、2011年1月7日閲覧)より。
  6. ^ 水力発電所データベース 新祖山発電所」(2008年3月31日入力、2011年1月7日閲覧)より。
  7. ^ 水力発電所データベース 新成出発電所」(2008年3月31日入力、2011年1月7日閲覧)より。
  8. ^ 水力発電所データベース 新椿原発電所」(2008年3月31日入力、2011年1月7日閲覧)より。
  9. ^ 水力発電所データベース 新小原発電所」(2008年3月31日入力、2011年1月7日閲覧)より。
  10. ^ 水力発電所データベース 赤尾発電所」(2008年3月31日入力、2011年1月7日閲覧)より。
  11. ^ a b 関西電力「新鳩谷水力発電所の建設申し入れ及び新鳩谷水力発電所に関する環境影響調査書ならびに環境影響評価準備書の提出について」(1998年5月11日付、2011年1月7日閲覧)より。
  12. ^ 関西電力「平成12年度経営計画」(2000年4月4日付、2011年1月7日閲覧)10ページ。
  13. ^ 関西電力「平成13年度経営計画」(2001年3月付、2011年1月7日閲覧)10ページ。
  14. ^ 関西電力「平成14年度経営計画」(2002年3月付、2011年1月7日閲覧)より。
  15. ^ 岐阜県「環境白書(平成16年度版)208ページ(2011年1月7日閲覧)より引用。
  16. ^ 『角川日本地名大辞典 21 岐阜県』184ページ。
  17. ^ 水力発電所データベース 荒谷発電所」(2008年3月31日入力、2011年1月8日閲覧)より。
  18. ^ 関西電力「荒谷発電所の営業運転開始について」(1998年10月30日付、2011年1月8日閲覧)より。
  19. ^ 「虫とり三人水死」『朝日新聞』昭和47年6月7日.3面

参考文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集