未成年者

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未成年者(みせいねんしゃ)は、まだ成年に達しない者のこと。

目次

概説編集

成人年齢は各国により異なり、児童の権利条約のほか、親の保護監督義務の期間、若年層の雇用機会、選挙権年齢、徴兵年齢などを考慮して引き上げられた引き下げられたりすることがある[1]。成人年齢のデータがある187の国・地域のうち、141の国・地域で成人年齢が18歳(16歳・17歳も含む)である[2]

※世界各国の成年になる年齢については「成年」を参照。

日本における未成年者編集

民法は、この節で条数のみ記載する。

日本では、満20歳をもって成年とする(4条)ので、未成年者とは満20歳に達しない者(満19歳以下)をいう。年齢の計算については年齢計算ニ関スル法律(明治35年12月2日法律第50号)による。

未成年者は法定代理人親権者あるいは未成年後見人)の親権に服する。また未成年者であることが欠格事由となることがある。例えば未成年者は遺言の証人又は立会人となることができない(975条)。各種の国家資格においても、未成年者であることが欠格事由として定められている(医師歯科医師薬剤師司法書士行政書士社会保険労務士等)。

選挙権年齢は1945年から20歳以上とされていたが、2015年6月に改正公職選挙法が成立し、2016年6月から18歳以上に引き下げられた(18歳選挙権[3]

なお、皇室典範は第22条で天皇皇太子及び皇太孫の成年を18歳と規定している。

財産行為編集

  • 一般原則
未成年者は制限行為能力者である(20条1項)。したがって、未成年者が法律行為を行うには法定代理人の同意が必要である(5条1項本文)。法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は取消すことができる(5条2項)。取消権者は未成年者本人やその代理人(未成年者の場合には親権者や未成年後見人等)など120条1項に定められる者である。制限行為能力者の取消においては制限行為能力者本人も取消権者とされているので(120条1項)、未成年者本人が単独で取消す場合にも取消は完全に効力を生じるのであって、取り消すことのできる取消となるわけではない[4]。ただし、単に権利を得、または義務を免れる法律行為については法定代理人の同意は不要とされており、取消権者であっても制限行為能力者であることを理由として取消すことはできない(5条1項但書)。単に権利を得、または義務を免れる法律行為とは、未成年者が債権者から債務免除を受ける場合などである。なお、未成年者による貸金の領収は未成年者の債権が失われるので法定代理人の同意が必要となる[5]。取消権者により取り消された行為は初めから無効であったものとみなされるが(121条本文)、未成年者は制限行為能力者であるから、その行為によって現に利益を受けている限度において返還義務を負うことになる(121条但書)。取消権の詳細については取消#民法上の取消参照。
  • 随意財産の処分
民法第5条1項の規定にかかわらず、未成年者は、その法定代理人が目的を定めて処分を許した財産についてはその目的の範囲内において、目的を定めないで処分を許した財産については任意に処分できる(5条3項)。
  • 未成年者の営業の許可
未成年者の法定代理人は未成年者に対して一種あるいは数種の営業を許可することができ、この場合、許可された未成年者はその営業に関しては成年者と同一の行為能力を有する(6条第1項)。したがって、未成年者が許可された営業について行った法律行為は制限行為能力者であることを理由としては取り消すことができなくなる。
法定代理人は未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは営業の許可を取消・制限することができる(6条第2項)。この取消し・制限は将来に向かって許可の全部あるいは一部の効力を失わせる撤回であるから、その営業が許可されていた間に未成年者がなした営業行為を取り消すことはできない[6]
未成年者の営業の許可及びその取消し・制限につき、営業の内容が商業であるときは商法上・会社法上・商業登記法上の登記を要する(商法第5条など)この登記は、児童相談所ではなく法務局が受け付ける。営業の内容が商業でない場合には、許可や取消し・制限の公示の方法がないので善意の第三者にも対抗しうるものと解されている[7]

身分行為編集

  • 未成年者の婚姻
未成年者でも婚姻は可能であるが、未成年者の婚姻には婚姻の一般的要件(重婚の禁止など)のほかに、婚姻適齢に達していること(731条)及び父母の同意(737条)を要する。
第一に婚姻適齢については男性は18歳以上、女性は16歳以上でなければならない。これに反する婚姻届は受理されず、誤って受理された場合でも各当事者、その親族又は検察官からその取消しを家庭裁判所に請求することができる(744条1項本文)。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、婚姻の取消しを請求することができない(744条1項但書)。婚姻適齢に達していない者の婚姻は不適法な婚姻として民法744条によって取り消されるまでは一応有効なのであって、当然無効となるわけではないので不適齢者が婚姻適齢に達したときには取消しを請求することができなくなる(745条1項)。ただ、婚姻した不適齢者は、適齢に達した後、なお3ヶ月間はその婚姻の取消しを請求できるが(745条2項本文)、適齢に達した後に追認したときは、もはや不適齢を理由として取り消すことはできない(745条2項但書)。
第二に未成年者で婚姻する場合は、父母の同意が必要である(737条本文)。父母の一方が同意しないとき、父母の一方が知れないとき、父母の一方が意思を表示することができないときは他の一方の同意だけで足りる(737条但書)。ただ、民法737条については実親と養親がいる場合はどうなるのか、離婚や親権喪失の宣告などによって父母の一方あるいは両方が親権を喪失している場合はどうなるのかといった問題点をめぐり学説が複雑に対立しており、父母ではなく親権者あるいは未成年の後見人の同意または家庭裁判所の許可とすべきといった議論もなされている[8]。民法737条に反する婚姻届は受理されないが、誤って受理された場合にはもはや取り消すことはできない(民法744条が不適法な婚姻の取消原因として民法737条(父母の同意)を加えていないことに注意)。
未成年者は婚姻によって成年に達したものと擬制を受ける(753条)。ただし、この成年擬制の効果は民法などの私法領域のみに限られ、公法領域にその効果は及ばない(未成年者喫煙禁止法未成年者飲酒禁止法などの法律には当然適用されない。)[9]
成年擬制を受けた者が年齢20歳に達しないうちに婚姻を解消した場合には、当事者や法律行為の相手方などの社会的影響を考慮して未成年には復帰しないとするのが通説[10]である。
  • 未成年者の認知
未成年者は嫡出でない子の認知をすることができる。法定代理人の同意は不要である(780条)。
  • 未成年者の養子縁組
    • 未成年者を養子とする場合
      • 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者直系卑属を養子とする場合は、この限りでない(798条)。
      • 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない(795条本文)。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合または配偶者がその意思を表示することができない場合はこの限りでない(795条但書)。
      • 養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人がこれに代わって縁組の承諾をすることができる(797条1項)。法定代理人がこの承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない(797条2項)。
    • 未成年者が養親となる場合
民法は「成年に達した者は、養子をすることができる」と規定しており(792条)、この反対解釈から未成年者は養親となることができない。753条により婚姻によって成年に達したものと擬制を受けた者については法律実務上養親となることができることとされているが、この点については議論がある[11]
  • 未成年者の遺言
15歳に達した者は、遺言することができる(961条)。法定代理人の同意は不要である(962条)。

民法以外の法律編集

各法令における年齢の計算については、民法の場合と同様に、年齢計算ニ関スル法律(明治35年12月2日法律第50号)による。具体的に要件を満たす事となる日時は、民法の場合と同様に、条文(の文理解釈)によって異なるため、年齢計算ニ関スル法律の精査を要する。

民事訴訟法
未成年者は法定代理人によらなければ訴訟行為をすることができないが、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合には法定代理人によらずに訴訟行為をすることができる(民事訴訟法31条)。なお、訴訟能力の項目も参照。
刑法
刑事未成年者
14歳に満たない者の行為は罰しない(第41条)。詳しくは、責任能力の項目を参照。なお、少年法の項目も参照。
労働基準法
第六章「年少者」
使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない(第56条1項、例外として第56条2項)。
親権者、後見人は未成年者に代わって労働契約を締結できない(第58条)
また、未成年者は独立して賃金を請求できる(第59条)
深夜業の制限につき、第61条。一定の危険な業務または坑内労働の禁止について、第62条、第63条。帰郷旅費の制度につき、第64条(満18歳未満の者に限る)。
未成年者飲酒禁止法未成年者喫煙禁止法
日本では、満20歳未満の者が飲用・喫煙をするための煙草を購入できない。満20歳未満の者が飲用・喫煙することを知りながらこれらの者に対し販売等を行なうと販売者や親権者が処罰される。このため、満20歳未満の者でなくとも、酒・煙草の購入時に身分証明書の提示を求められることがある。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)
18歳未満の者に客を接待させたり、18歳未満の者を客として入店させることはできない。

アメリカ合衆国における未成年者編集

アメリカ合衆国では州ごとに成人年齢が異なっている[1]

多くの州では1970年代に成人年齢が21歳から18歳に引き下げられた[1]。その背景にはベトナム戦争の際に徴兵年齢が18歳であるのに対し、選挙権年齢が21歳であるのは不公正で徴兵年齢に達した者は軍隊の在り方を含めて政治的な意見を表明する機会が与えられるべきだ(old enough to fight, old enough to vote)との世論があったためである[1]。そのため連邦政府は合衆国憲法を改正して選挙権年齢を引き下げ、多くの州では成人年齢も引き下げられた[1]

同時にいくつかの州では飲酒や酒類購入年齢も21歳から18歳に引き下げられた[1]。しかし、その影響で若年者の飲酒による死亡件数が増加したため、1984年に各州に対して飲酒や酒類購入年齢を21歳以上とするよう求める連邦法(全米最低飲酒年齢法)が成立した[1]

イギリスにおける未成年者編集

イギリスでは13世紀に騎馬兵隊が一般的になり、防具の重装備を身に着けたまま乗馬した状態で戦うことができる年齢を考慮して21歳が成人年齢となったといわれている[1]

しかし、1960年代の成年年齢に関する審議会(The Latey Committee on the Age of Majority)で、若年層の成熟化が進んでおり成年年齢は歴史的起源とは関係がないとされ、コミュニティにも若年層が積極的に参加する方が利益につながるとして21歳から18歳への引き下げが勧告された[1]。これによって成年年齢は21歳から18歳に引き下げられた[1]

オーストラリアにおける未成年者編集

オーストラリアでも州ごとに成人年齢が異なっている[1]

多くの州で1970年から1974年にかけて成人年齢が21歳から18歳に引き下げられた[1]。その背景にはベトナム戦争の際に多くの若者が戦場で命を落としたため、若年層で政治に自分たちの声を反映させたいとの機運が高まり、連邦及び各州にLaw Reform Commissionが設置されて成人年齢について議論し報告書が提出されたことによる[1]。選挙権年齢についても1973年に21歳から18歳に引き下げられた[1]

脚注編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 諸外国における成年年齢等の調査結果”. 法務省. 2017年10月9日閲覧。
  2. ^ 国連人権高等弁務官事務所サイト(同サイト掲載の成人年齢、国により調査年が異なる。)及び在日各国大使館への聞き取り調査等
  3. ^ “選挙権年齢「18歳以上」に 改正公選法が成立”. 47NEWS. (2015年6月17日). オリジナル2015年6月17日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150617032536/http://www.47news.jp/CN/201506/CN2015061701001110.html 2015年6月18日閲覧。 
  4. ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』394頁、岩波書店、1965年
  5. ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』69頁、岩波書店、1965年
  6. ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』71頁、岩波書店、1965年
  7. ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』70頁・71頁、岩波書店、1965年
  8. ^ 我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健著『民法3親族法・相続法第二版』65~66頁、勁草書房、2005年
  9. ^ 我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健著『民法3親族法・相続法第二版』80頁、勁草書房、2005年
  10. ^ 我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健著『民法3親族法・相続法第二版』79~80頁、勁草書房、2005年
  11. ^ 我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健著『民法3親族法・相続法第二版』151頁、勁草書房、2005年

関連項目編集