東京モノレール10000形電車

東京モノレールのモノレール電車

東京モノレール10000形電車(とうきょうモノレール10000がたでんしゃ)は、東京モノレールモノレール電車2014年平成26年)7月18日より営業運転を開始した[3]

東京モノレール10000形電車
東京モノレール10000形電車
(2021年5月 流通センター駅
基本情報
運用者 東京モノレール
製造所 日立製作所笠戸事業所
製造年 2014年 -
運用開始 2014年7月18日
投入先 東京モノレール羽田空港線
主要諸元
編成 6両編成(4M2T
軌間 軌道桁幅 800 mm
電気方式 直流 750 V(剛体複線式)
最高運転速度 80 km/h
設計最高速度 90 km/h
起動加速度 3.5 km/h/s
減速度(常用) 4.0 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
編成定員 456名
車両定員 76名
(うち座席は先頭車 33人・中間車 40人)
車両重量 23.0 - 24.1 t
編成重量 141.9 t
編成長 93,600 mm
全長 先頭車 16,400 mm
中間車 15,200 mm(連結面間)
全幅 2,924 mm(車体基準幅)
3,038 mm(クツズリ間最大幅)
全高 4,364 mm
床面高さ 600 mm(軌道桁上面から)
車体 アルミニウム合金A-train
ハイブリッド構体
台車 跨座式2軸ボギー台車(ボルスタレス方式)
HAF-43形・HAF-44形
窒素入りゴムタイヤはブリヂストン[1]
主電動機 かご形三相誘導電動機[2]
日立製作所製 HS37627-03RB
主電動機出力 100 kW
駆動方式 2段減速式直角カルダン駆動方式
歯車比 6.55
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
1C2M2群インバータ×2基×2組、1C2M4群方式制御
制御装置 日立製作所製 VFI-HR4810B[2]
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ保安ブレーキ駐車ブレーキ
保安装置 自動列車制御装置(ATC)
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概要 編集

老朽化した1000形の後継車両として製造された[4]。東京モノレールでは2000形以来17年ぶりとなる新形式車両で、「スマートモノレール」をコンセプトに設計した[3]。構成は電動車4両、付随車2両の6両編成[3]。モノレール車両では初めての採用となる、車幅灯(前照灯ケースに収納し、青色に点灯)を設置している[3]

車両構体はアルミニウム合金A-train)製で、モノレール車両では大きな軽量化が求められることから、シングルスキン構造ダブルスキン構造を組み合わせたハイブリッド構体を採用している[3]。構体の溶接には摩擦攪拌接合(FSW)を採用することで、歪(ひずみ)が少なく、無塗装の車体を実現している[3][4]。車体装飾は「沿線の特徴である豊かな緑をイメージしたグリーン」、「空と水をイメージしたスカイブルーとブルーをグラデーションで帯状に配したカラーリング」をカラーフィルムで貼り付けている[3]

車内 編集

車内は白色内板を基本とし、妻面壁には黄色を配した[3]。床敷物はグレー色を基本としながら、出入り口部には視認性の高い黄色とした[3]。側窓ガラスにはUVカットガラスを採用しており、開閉可能な下降窓を増やすことで換気性能を向上させた[5]。座席横の袖仕切板、荷物棚、車両間の貫通扉強化ガラスを採用することで、開放感を感じさせるものとしている[5]。また、海外からの旅行客に、「『』のおもてなしを演出するデザイン」を取り入れている[5]

座席レイアウトはロングシートクロスシートを組み合わせたセミクロスシート配置で、一般席の座席表地は青色で青海波模様を採用している[3]。座席レイアウトは先頭車と中間車で異なる[3]。先頭車では1000形以来となる乗務員室直後の前向き展望席構造を採用し[4]、低床部はロングシート構造、中間車の低床部では海側の景色を楽しめるよう海側にボックスタイプのクロスシートを配置し、山側にロングシートを配置している[3][4]。各車両の連結面寄り(台車収納部の高床部)では背中合わせのロングシートと1人掛けの簡易クロスシートを配置している。このほか、各車両に旅行客用の大型荷物置き場を配置し、これは荷物を持ち上げることなく収納できるよう配慮されている[4][5]

各車両には優先席を3席配置しており、座席表地を緑色として区分、黄色の手すりを設置している[3]車椅子スペースは両先頭車に配置しており、安全手すりと非常通報装置、車いす固定用ベルトを設置している。

車内照明にはLED照明を採用しており、照明の保護カバーには和紙柄を採用した[4][5]。各車両間の貫通扉には富士山五重塔扇子盆栽など、日本を象徴するアイコンを表記している[5]。各車両に車内Wi-Fiを備えている[5]

冷房装置は能力20.34 kW(17,500kcal/h)の集約分散式を2台搭載している(1両あたり40.7 kW(35,000kcal/h))[6]

旅客案内装置 編集

車内案内表示器は各ドア上部に17インチワイド液晶ディスプレイ画面(LCD)を1基搭載しており、画面は日本語、英語、中国語、朝鮮語の4か国語に対応している[4][6]。将来の拡張に備えて2画面化の準備工事がされている[4][6]。ドア上部鴨居部には、ドア開閉表示灯を配置している[7]。これは一般的なドア開閉時に赤色が点滅する機能に加えて、駅接近時に青色でドア開方向を予告点灯する機能を備えている[7]

車両側面にはフルカラーLED方式の行先表示器を設置している[6]

乗務員室 編集

乗務員室ワンマン運転に対応した機器配置となっている[5]。計器盤はアナログ式の計器類や表示灯を廃し、これらを液晶ディスプレイ(LCD)2基に表示するグラスコックピット方式を採用した[5]。通常は、左側の画面を車内信号速度計、圧力計、ノッチ表示、保安表示灯などを表示し、右側の画面はATIの機器動作表示画面として使用する[5]

主幹制御器は左手操作形ワンハンドル式を採用した[5]

走行機器など 編集

制御装置は低損失形IGBT素子(1,700V - 1,200A)を使用した日立製作所[8]製の2レベルVVVFインバータ制御を採用した[8]。装置はベクトル制御・全電気ブレーキの採用により、1000形よりも消費電力を約40%削減できるものである[8]スペクトラム拡散制御・1C2M2群制御)。パワーユニットの冷却にはヒートパイプ冷却方式を採用しているが、モノレールの車両構造上、十分な冷却能力を期待できないことから、下部に冷却用の送風機を設けている[8]

補助電源装置はIGBT素子を使用した富士電機製(CDA137形)の静止形インバータ(SIV・定格出力124kVA)を編成で2台搭載している[6]。空気圧縮機はドイツクノールブレムゼ社製で潤滑油が不要なオイルフリーレシプロ式空気圧縮機(VV120-T形・吐出量1,000L/min)編成で2台搭載している[6][9]

車両情報制御装置には日立製作所が開発したATIシステム(イーサネットATI)を採用[10]した。車両間伝送路にイーサネットケーブルを使用することで、100Mbpsの大容量高速通信を行っている[10]。伝送ケーブルなどは、ドイツ・ハーティング製のイーサネットシステムが採用されている[11][12]。 ATIの主な機能は以下の通りである[10]

  • 運転制御機能(マスコンやブレーキなど制御指令の伝送)
  • 速度計メータ表示機能(運転台への速度・信号情報などの表示)
  • 補機制御機能(空調装置や室内灯の制御)
  • 案内制御(車内案内表示、自動放送等の制御)
  • 故障表示、処置ガイダンス
  • 検修機能(出庫点検、車上検査、試運転情報の記録)
  • 停車駅通過防止機能

編成 編集

2022年6月現在、6両編成8本(48両)が在籍している。

東京モノレール10000形 全編成一覧(2019年)
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搬入時期 備考
号車 1 2 3 4 5 6
種別 Tc1 M1 M2 M3 M4 Tc2
搭載機器 SIV,CP VVVF VVVF VVVF VVVF SIV,CP
第1編成・10011F 10011 10012 10013 10014 10015 10016 2014年03月
第2編成・10021F 10021 10022 10023 10024 10025 10026 2014年12月
第3編成・10031F 10031 10032 10033 10034 10035 10036 2015年03月
第4編成・10041F 10041 10042 10043 10044 10045 10046 2016年02月
第5編成・10051F 10051 10052 10053 10054 10055 10056 2016年10月
第6編成・10061F 10061 10062 10063 10064 10065 10066 2018年02月
第7編成・10071F 10071 10072 10073 10074 10075 10076 2019年03月
第8編成・10081F 10081 10082 10083 10084 10085 10086 2021年02月
凡例
  • VVVF - 主制御装置
  • SIV - 静止形インバータ(補助電源装置)
  • CP - 空気圧縮機

運用 編集

2014年7月18日から定期運用を開始し、2000形と、置き換え対象の1000形とともに、空港快速・区間快速・普通、種別問わずに共通運用されている。

2022年5月31日、7編成24カ所で亀裂が確認されたため、一部編成で運用を取りやめている。

脚注 編集

  1. ^ タイヤ生産「断トツ」目指す - 読売新聞 2013年4月3日
  2. ^ a b 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』通巻897号 p.119
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 日本鉄道車輌工業会『鉄道車輌工業』472号(2014年10月)pp.11 - 12。
  4. ^ a b c d e f g h 東京モノレール株式会社 技術・企画部 車両課長 原田淳一「新型車両10000形の導入について」『鉄道ダイヤ情報』第360号、交通新聞社、2014年4月、32-33頁。 
  5. ^ a b c d e f g h i j k 日本鉄道車輌工業会『鉄道車輌工業』472号(2014年10月)pp.13 - 14。
  6. ^ a b c d e f 日本鉄道車輌工業会『鉄道車輌工業』472号(2014年10月)pp.15 - 16。
  7. ^ a b 日立評論 2014年9月号「東京モノレール10000形車両の開発」。
  8. ^ a b c d 日本鉄道サイバネティクス協議会「鉄道サイバネ・シンポジウム論文集」第51回(2014年)「東京モノレール10000形新造モノレール車両用インバータ装置」論文番号508。
  9. ^ オイルフリー・コンプレッサ (PDF) 」(クノールブレムゼ鉄道システムジャパン)
  10. ^ a b c 日本鉄道サイバネティクス協議会「鉄道サイバネ・シンポジウム論文集」第51回(2014年)「東京モノレール10000形ATIの開発」論文番号514。
  11. ^ ハーティングの製品、東京モノレールの新型車両10000形のイーサネット接続に採用(ハーティングプレスリリース・インターネットアーカイブ)。
  12. ^ 鉄道の旅の安全性を向上させる、信頼性の高いイーサネット接続(ハーティングプレスリリース・インターネットアーカイブ)。

参考文献 編集

外部リンク 編集