第128独立山岳強襲旅団 (ウクライナ陸軍)
第128独立山岳強襲旅団（だい128どくりつさんがくきょうしゅうりょだん、ウクライナ語: 128-ма окрема гірсько-штурмова бригада）は、ウクライナ陸軍の旅団。西部作戦管区隷下。
| 第128独立山岳強襲旅団 | |
|---|---|
 | |
| 創設 | 1922年7月12日 |
| 所属政体 |
 ロシア帝国→ .svg){kind=small} ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国→  ソビエト連邦→  ウクライナ |
| 所属組織 |
 ウクライナ陸軍 |
| 部隊編制単位 | 旅団 |
| 兵科 | 山岳兵 |
| 兵種/任務/特性 | 山岳戦 |
| 人員 | 6,000人[1] |
| 所在地 | ザカルパッチャ州ムカチェヴォ |
| 愛称 | ザカルパッチャ |
| 標語 | ウクライナのために、その自由のために |
| 上級単位 | 西部作戦管区 |
| 主な戦歴 |
第一次世界大戦 ロシア内戦 第二次世界大戦 ハンガリー動乱 プラハの春 アフガニスタン紛争 国際連合平和維持活動 ドンバス戦争 ロシアのウクライナ侵攻 |
| 現司令官 | ドミトロ・リュシュク大佐 |
山岳戦の特殊な訓練で兵士の練度が高く、ウクライナ軍で最も精強な部隊のひとつとされる。戦争前は災害派遣が主な任務だった[1]。
概要 編集
部隊の起源は18世紀のロシア帝国時代に中央アジアで創設されたロシア帝国陸軍の4個オレンブルク大隊まで遡るとされ、19世紀に詩人のタラス・シェフチェンコが兵役に服した部隊としても知られる[2]。
1910年、22個トルキスタン狙撃連隊に改編され、1914年から第一次世界大戦に投入された[2]。
現在ではロシア内戦時に赤軍の第1独立トルキスタン狙撃旅団を基幹に第1トルキスタン狙撃師団がトルキスタン自治ソビエト社会主義共和国で再編された1922年7月12日が部隊の正式な創設日とされ、2022年ロシアのウクライナ侵攻中に創設100周年を迎えた。ウクライナ侵攻を含め、ロシアの主要な戦争に参加している[2]。
1929年12月、山岳部隊化に伴い、第1トルキスタン山岳狙撃師団に改編された[2]。
1936年5月21日、軍の師団番号統一に伴い、第83山岳狙撃師団に改称された[2]。
第二次世界大戦 編集
1942年1月、イラン進駐、独ソ戦に投入され、枢軸国に勝利し、赤旗勲章、名誉称号「親衛隊」を授与され、第128親衛山岳狙撃師団に改称された[2]。
冷戦 編集
1956年10月、ハンガリー動乱に投入され、ハンガリー人民共和国に移駐した[2]。
1956年12月15日、機械化に伴い、第128親衛自動車化狙撃師団に改編された[3]。
1958年7月、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国ザカルパッチャ州に移駐した[3]。
1976年5月、名誉称号「アンドレイ・グレチコ」を授与された[3]。
1979年12月、アフガニスタン紛争に投入された。
ウクライナ陸軍 編集
1992年1月1日、ソビエト連邦の崩壊とウクライナの独立に伴い、創設されたウクライナ陸軍に編入し、第13軍団隷下の第128親衛機械化師団に改編された。ソビエト連邦軍からウクライナ国民に忠誠を宣誓した最初の部隊となった[2]。
1994年から、ザカルパッチャ州の洪水被害に災害派遣された。
2000年5月27日、レオニード・クチマ大統領から、名誉称号「ザカルパッチャ」を授与された。
2004年2月から、国際連合平和維持活動に参加し、イラク、レバノン、シエラレオネに駐留した[2]。
2004年12月1日、部隊縮小に伴い、第128独立親衛機械化旅団に改編された。
2012年12月、山岳部隊化に伴い、第128独立親衛山岳歩兵旅団に改編された。
ドンバス戦争 編集
2014年5月、ドンバス戦争に投入され、軍縮で実戦配備可能な部隊が第15独立山岳歩兵大隊、機械化大隊だけだったが東部ルハーンシク州、ドネツィク州に配備された[4]。
2014年11月、ウクライナ領土防衛大隊の第4ザカルパッチャ領土防衛大隊（第4独立自動車化歩兵大隊に改称）、第6ズブルチ領土防衛大隊（第6独立自動車化歩兵大隊に改称）が配属された。
2016年8月22日、名誉称号「親衛隊」を返上し、第128独立山岳強襲旅団に改称された[5]。
ロシアのウクライナ侵攻 編集
2022年2月24日、早朝にムカチェヴォの駐屯基地がミサイル攻撃を受けたことで、団員はロシアのウクライナ侵攻を知ることとなり、近くの森に退避するも、全滅した部隊も出て呆然自失としていたが翌日に再編された[6]。
南部・ザポリージャ戦線 編集
2022年2月25日、南部ザポリージャ州メリトポリ地区に配備され、同日にザポリージャ守備隊が防御していたメリトポリが陥落し、ザポリージャで撃退したが、第1山岳強襲大隊のアンドリー・リトゥン大隊長が戦死した[6][7]。
東部・南ドネツク戦線 編集
2022年3月、第15独立山岳強襲大隊が東部ドネツィク州ヴォルノヴァーハ地区に配備され、第53独立機械化旅団の救援でヴォルノヴァーハを防御したが3月中旬に陥落した[8]。
東部・セベロドネツク戦線 編集
2022年4月、激戦地の東部ルハーンシク州セヴェロドネツィク地区に再配置されたが、5月までにクレミンナ、ルビージュネが陥落し、6月にヒルスケを防御していた第15独立山岳強襲大隊が投降したとロシア国防省が発表した[9][10][11]。
2022年5月6日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領から、勇気と勇敢さに対する栄誉賞を授与された[12]。
南部・ヘルソン戦線 編集
2022年8月、南部ヘルソン州ベリスラフ地区に再配置され、第17独立戦車旅団の火力支援を受けて攻勢を開始し、第15独立山岳強襲大隊のヴァディム・オドゥド大隊長が戦死したが、11月中旬にベリスラフ、ヘルソンを解放してロシア軍はドニエプル川西岸から撤退した[13][11]。
2022年12月6日、第15独立山岳強襲大隊がウォロディミル・ゼレンスキー大統領から、勇気と勇敢さに対する栄誉賞を授与された[14]。
東部・バフムート戦線 編集
2022年12月、激戦地の東部ドネツィク州バフムート地区に再配置され、ソレダルを防御したが2023年1月中旬に陥落した[15][16]。
南部・ザポリージャ戦線 編集
2023年6月上旬、南部ザポリージャ州ヴァシリウカ地区に再配置されて攻勢を開始し、ロブコベ、ピャチハトキを解放した[15][17]。
2023年11月、南部ザポリージャ州ザポリージャ地区で開催された式典に出席したが、ロシア軍のミサイル攻撃で団員20人が戦死し、巻き添えで民間人も負傷した。最前線に近い場所だったため、式典を計画した将校が批判を受けた[18]。
編制 編集
旅団司令部（ムカチェヴォ）
第1山岳強襲大隊
第2山岳強襲大隊
第15独立山岳強襲大隊（ウージュホロド）
第4自動車化歩兵大隊
戦車大隊
第1小銃大隊
第2小銃大隊
第17旅団砲兵群
- 本部中隊
- 第1自走砲大隊
- 第2自走砲大隊
- ロケット砲大隊
- 対戦車砲大隊
第10独立防空大隊
第534独立工兵大隊（ヴィノフラディウ） 整備大隊 兵站大隊
偵察中隊 電子戦中隊 通信中隊 レーダー中隊 NBC防護中隊 衛生中隊
無人航空機中隊 マヴィック・バンド2017年編制 編集
- 旅団司令部（ムカチェヴォ）
- 第15独立山岳歩兵大隊
- 第21独立機械化大隊
- 第36独立機械化大隊
- 第16独立戦車大隊
- 第4独立自動車化歩兵大隊（ウージュホロド）
- 第17旅団砲兵群
- 本部中隊
- 第1自走砲大隊
- 第2自走砲大隊
- ロケット砲大隊
- 対戦車砲大隊
- 第10独立防空大隊
ギャラリー 編集
著名な出身者 編集
出典 編集
- ^ a b The Ukrainian Mountain Assault Brigade Fighting on the Front Lines UKC
- ^ a b c d e f g h i j Легендарные части нашей Армии: 128-я Мукачевская горно-пехотная бригада Depo Odesa
- ^ a b c d 第128親衛自動車化狙撃師団 The Luftwaffe, 1933-45
- ^ Ten years ago, Ukrainian Army was raised on alarm ミリタリー・ランド
- ^ ウクライナ大統領令 No. 344/2016 ウクライナ大統領府
- ^ a b Dug in on the front lines, Ukrainian soldiers fight to repel the Russian onslaught. ニューヨーク・タイムズ
- ^ Major General Andrii Sokolov was in charge of the defence of Ukraine's south. An interview covering Chonhar, Kherson and Melitopol ウクラインスカヤ・プラウダ
- ^ Ukrainian Veterans Recall Pivotal Tank Battle In Volnovakha フォーブス
- ^ “Ukrainian army forces enemy to retreat from Kreminna in Luhansk region” (英語). www.ukrinform.net. 2022年4月8日閲覧。
- ^ До двух тысяч украинских военных и боевиков заблокированы в горском котле RIAノーボスチ
- ^ a b На Херсонщині загинув командир 15-го окремого гірсько-штурмового батальйону 128-ї ОГШБр Вадим Одуд ザカルパッチャ・ニュース・オンライン
- ^ ウクライナ大統領令 No.315/2022 ウクライナ大統領府
- ^ Ukraine's Busiest Tank Brigade Is Fighting On Two Fronts フォーブス
- ^ ウクライナ大統領令 No. 838/2022 ウクライナ大統領府
- ^ a b Defense of Soledar, Bakhmut like a horror movie ウクルインフォルム
- ^ ウクライナ軍、ソレダルからの撤退を認める 反撃に備えたものと説明 BBC
- ^ ウクライナ軍がロシア軍の戦車を砲撃するドローン映像、南東部ザポロジエ州（字幕・20日） ロイター
- ^ ロシアが授賞式攻撃でウクライナ兵20人以上死亡か ウクライナ軍幹部に批判集まる BBC