韓光成

北朝鮮のサッカー選手 (1998-)

韓 光成(ハン・グァンソン、한광성, 1998年9月11日 - )は、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)・平壌出身のサッカー選手4.25体育団所属。北朝鮮代表。ポジションはFW[1]

韓 光成
北朝鮮代表でのハン・グァンソン (2019年)
名前
カタカナ ハン・グァンソン
ラテン文字 Han Kwang-song
ハングル 한광성
基本情報
国籍 朝鮮民主主義人民共和国の旗 朝鮮民主主義人民共和国
生年月日 (1998-09-11) 1998年9月11日(25歳)
出身地 平壌
身長 178cm
体重 70kg
選手情報
在籍チーム 朝鮮民主主義人民共和国の旗 4.25体育団
ポジション FW
利き足 右足
ユース
-2017 朝鮮民主主義人民共和国の旗 蝶泳体育団
2017 イタリアの旗 カリアリ
クラブ1
クラブ 出場 (得点)
2017-2020 イタリアの旗 カリアリ 12 (1)
2017-2018 イタリアの旗 ペルージャ (loan) 17 (7)
2018-2019 イタリアの旗 ペルージャ (loan) 19 (4)
2019-2020 イタリアの旗 U-23ユヴェントス (loan) 17 (0)
2020 イタリアの旗 U-23ユヴェントス 0 (0)
2020 カタールの旗 アル・ドゥハイル 10 (3)
2024- 朝鮮民主主義人民共和国の旗 4.25体育団 0 (0)
代表歴2
2014  朝鮮民主主義人民共和国 U-16 5 (4)
2015  朝鮮民主主義人民共和国 U-17 4 (0)
2016  朝鮮民主主義人民共和国 U-19 3 (1)
2017-  北朝鮮 13 (2)
1. 国内リーグ戦に限る。2024年3月19日現在。
2. 2024年3月21日現在。
■テンプレート■ノート ■解説■サッカー選手pj

AFC U-16選手権で北朝鮮を優勝に導き、2017年に北朝鮮出身のサッカー選手として初めて、セリエA並びに欧州5大リーグで出場し[2]、得点を挙げた選手である[3]

経歴 編集

クラブ 編集

ユース時代は北朝鮮国内の蝶泳体育団(FCチョビョン。直轄のエリート育成クラブ)に籍を置きながら、北朝鮮のサッカー選手育成プロジェクトの1期生としてイタリアペルージャのISMアカデミーでトレーニングを積んだ[3][4]

2016年9月11日に18歳となりFIFA規定による国際移籍が可能となると、2017年2月にイタリア・セリエAカリアリにテスト生として加入[3][5]。同年3月のトルネオ・ディ・ヴィアレッジョにユースチームの一員として出場しパルマFC戦でバイシクルシュートを決めるなど活躍すると[3][5][6]、3月10日にはカリアリとユース選手として契約を結び、北朝鮮人選手としては前年にACFフィオレンティーナに入団した崔成赫以来2人目のセリエA所属選手となった[2][5]。また同時に、カリアリに所属した初めてのアジア人選手にもなった[7]。3月19日のラツィオ戦からトップチームに招集されるようになり、4月2日のパレルモ戦で86分から途中出場しセリエAデビュー[2][5][6][8]。先述の崔はトップチームで出場することなく退団したため、韓が北朝鮮生まれの選手としてセリエAおよび欧州5大リーグに初めて出場した選手となった[3][2][8]。デビューから2試合目となった4月10日のトリノ戦では81分から途中出場し後半アディショナルタイムにヘディングシュートを決めて初得点を記録し、北朝鮮人として欧州5大リーグで初めて得点を挙げた選手となった[3][5][6][8]。4月13日にはカリアリと新たに2022年6月30日までのプロ契約を結んだ[9][10]

2017-18シーズンはセリエBペルージャレンタル移籍し、開幕戦のヴィルトゥス・エンテッラ戦でハットトリックを達成するなど[11]、1月までの17試合で7ゴール3アシストを記録した[12]。この活躍からユヴェントスがカリアリに獲得オファーを提示したが移籍は実現せず、最終的には期間前倒しで半年ぶりにカリアリに復帰することになった[12]。2018年3月18日にカリアリと2023年まで契約を延長した[13]。2019年9月2日、U-23ユヴェントスFCに買取義務付きの2年間のレンタルで移籍することが発表された[14]

2020年1月8日、買い取りを行使した上でトップチームでの出場機会が無いまま、移籍金700万ユーロ[15]、5年契約[16]カタール・スターズリーグアル・ドゥハイルSCに移籍した[17]。2019-20シーズンは10試合に出場し3得点を挙げて、リーグ優勝に貢献したが[15]、2020-21シーズンのメンバーには登録されておらず、国連安全保障理事会による加盟国内の北朝鮮労働者を送還するよう求める対北朝鮮制裁のため退団させられたと報じられている[16]。またユヴェントスからアル・ドゥハイルへの移籍についても、同制裁への違反を安全保障理事会より指摘されていると報じられた[15]。その後は北朝鮮に帰国したとされ、2023年どこのクラブにも所属していない。さらにInstagramなどのSNSアカウントも非公開となり、消息も分からなくなっていた。

2023年11月15日の2026FIFAワールドカップ・アジア2次予選のシリア代表戦の前日に行われた練習にて撮影された映像の中から「ハンの姿ではないか」とスクリーンショット画像がX上で拡散された[18]が、その時点では北朝鮮代表の招集メンバーも公表されておらず真偽が不明であった。翌16日のシリア代表戦キックオフ10分前にスターティングメンバーが発表され、その中にハンが背番号10で登録されており生存が世界中のサッカーファンに知れ渡ることとなった[19]

2024年現在、4.25体育団に所属している。

代表 編集

北朝鮮代表としてAFC U-16選手権2014ではキャプテンとして全6試合に出場し4得点を挙げ、北朝鮮の2大会ぶり2度目の優勝に貢献[3][2][7]2015 FIFA U-17ワールドカップでも北朝鮮の全4試合に出場しベスト16入りに貢献した[3][2][7]

2017年6月6日、カタールとの親善試合でA代表デビュー。2019年11月14日、2022 FIFAワールドカップ・アジア2次予選トルクメニスタン戦で代表初ゴールを挙げた。その後北朝鮮が当予選を途中辞退したため北朝鮮代表が戦った2次予選5試合の記録が無効となったため自身の得点記録も無効となった。

2023年11月、2026 FIFAワールドカップ・アジア2次予選2試合に出場し、同月21日のアウェイでのミャンマーとの2戦目で1得点を記録し、上述に伴って記録上は当試合が自身にとってA代表初得点となる。

人物 編集

エピソード 編集

  • ペルージャ移籍後の活躍から2017年9月24日にペルージャ会長のマッシミリアーノ・サントパードレと共に現地のTV番組に出演する予定だったが、直前で出演をキャンセルした。その後、現地新聞の取材によりサントパードレは出演キャンセルが北朝鮮からの電話要請によるものであったこと、TV出演した場合にはハンの強制帰国や、ハンの家族に危険が及ぶ可能性があったことを明かした[20][21]
  • 国連安全保障理事会が金正恩の核兵器開発計画を支援するために外国からの資金が送金されているとの懸念から、加盟国に対して全北朝鮮国民の送還を命じる制裁の影響で、2021年にカタールから北朝鮮に移る予定であり、それ以来消息を絶っていた[22]が、2026 FIFAワールドカップ・アジア2次予選シリア代表戦に先発出場し、生存が確認された。

代表歴 編集

試合数
  • 国際Aマッチ 13試合 2得点(2017年 - )


北朝鮮代表国際Aマッチ
出場得点
2017 2 0
2018 1 0
2019 7 1
2023 2 1
2024 1 0
通算 13 2
ゴール
No. 開催日 開催都市 スタジアム 対戦国 結果 大会
1. 2023年11月21日  ヤンゴン トゥウンナ・スタジアム   ミャンマー ○6-1 2026 FIFAワールドカップ・アジア2次予選

タイトル 編集

クラブ 編集

アル・ドゥハイルSC

代表 編集

U-16北朝鮮代表

脚注 編集

  1. ^ 〈2026W杯アジア2次予選〉ピックアッププレーヤー③ハン・グァンソン選手”. 朝鮮新報 (2024年3月19日). 2024年3月19日閲覧。
  2. ^ a b c d e f <サッカー>北朝鮮選手、初めて伊セリエAデビュー”. 中央日報 (2017年4月3日). 2017年4月21日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h 北朝鮮の知られざる「エリート育成法」とは? セリエAで初ゴールを奪うFWも!”. サッカーダイジェストweb (2017年4月15日). 2017年4月21日閲覧。
  4. ^ 北朝鮮とイタリアサッカーの知られざるコネ。18歳FWがセリエA初得点、中田英寿発掘のスカウトも尽力”. フットボールチャンネル (2017年4月14日). 2017年4月21日閲覧。
  5. ^ a b c d e f わずか13分で歴史的快挙…北朝鮮籍18歳ハン・グァンソン、同国初のセリエAゴール”. GOAL (2017年4月10日). 2017年4月21日閲覧。
  6. ^ a b c d 北朝鮮人としてセリエA初ゴールのグァンソン「チームメイトに感謝」”. サッカーキング (2017年4月10日). 2017年4月21日閲覧。
  7. ^ a b c 北朝鮮の18歳がセリエA移籍!クラブ史上初のアジア人選手に”. Qoly (2017年3月12日). 2017年4月21日閲覧。
  8. ^ a b c セリエAで北朝鮮人選手初のゴール。カリアリの18歳FWがデビュー2戦目で”. フットボールチャンネル (2017年4月10日). 2017年4月21日閲覧。
  9. ^ カリアリ、北朝鮮人セリエA初ゴールのグァンソンとプロ契約を締結”. サッカーキング (2017年4月14日). 2017年4月21日閲覧。
  10. ^ 北朝鮮籍の18歳FWハン・グァンソンがカリアリと2022年までのプロ契約を締結”. GOAL (2017年4月14日). 2017年4月21日閲覧。
  11. ^ 中田ヒデがいたペルージャ、北朝鮮人FWが爆発!開幕戦でハットトリック”. Qoly (2018年8月26日). 2018年2月5日閲覧。
  12. ^ a b 北朝鮮代表FWハン、ユヴェントス移籍は実現せずも…カリアリに復帰”. サッカーキング (2018年2月1日). 2018年2月5日閲覧。
  13. ^ カリアリ、北朝鮮代表FWハン・グァンソンと契約延長…期間は2023年まで”. サッカーキング (2018年3月19日). 2018年3月20日閲覧。
  14. ^ Han alla Juventus”. CagliariCalcio.com (2019年9月2日). 2019年9月4日閲覧。
  15. ^ a b c 1月に北朝鮮代表FWを移籍させたユベントス、国連から制裁違反の指摘”. フットボールチャンネル (2020年9月29日). 2020年10月1日閲覧。
  16. ^ a b 金明昱 (2020年9月27日). “欧州や中東クラブから北朝鮮のサッカー選手はなぜ消えたのか。日本ではあり得ない衝撃の理由”. Yahoo!ニュース. 2020年10月1日閲覧。
  17. ^ The Player Han Kwang Is Al Duhail New Professional” (英語). Al Duhail Sports Club (2020年1月8日). 2020年1月9日閲覧。
  18. ^ https://twitter.com/futbolrpdc/status/1724940721952612754”. X (formerly Twitter). 2023年11月16日閲覧。
  19. ^ 北朝鮮代表、消息不明だった元ユヴェントスのハン・グァンソンが出場…安堵の声広がる”. Qoly. 2023年11月16日閲覧。
  20. ^ イタリアで大ブレイクの北朝鮮FW、政府からTV出演を止められる…”. Qoly (2017年9月27日). 2018年3月20日閲覧。
  21. ^ やはり“北朝鮮の圧力”だった…19歳FWが「怯え、震えていた」とペルージャ会長”. サッカーダイジェスト (2017年9月27日). 2018年3月20日閲覧。
  22. ^ ユヴェントスにいた北朝鮮人FWハン・グァンソン、消息不明…24歳で実質引退 「もうプレーはできない」”. 2023年10月18日閲覧。

外部リンク 編集