「ル・マン」耐久グランドツーリングカー

「ル・マン」耐久グランドツーリングカー ("Le Mans" Grand Tourisme Endurance, "LM" GTE, LMGTE) とは、国際自動車連盟FIA 世界耐久選手権向けに特別分類しているグランドツーリングカーである。

フェラーリ・488 GTE(2017年)

概要 編集

 
フォード・GT(2016年)

グループGT2が2011年に耐久レース用規定に発展して誕生した。国際モータースポーツ競技規則 (国際スポーツ法典) の付則J項ではグループE (フリーフォーミュラ・レーシングカー群) 部門IIのSCに属するGT型車両とされる。

グループGT3同様性能調整を用いるが、FIA/ACOの裁量に不満が多かったため、2016年から性能調整決定から人間性を排したアルゴリズムを用いている(計算式などは非公表)[1]

ベース車両となる市販車は2シーターあるいは2×2シーターのクーペで、大規模メーカーの場合は連続する12ヶ月間で200台、小規模メーカーは25台の生産が必要。しかしフォードGTのように、FIA/ACOの許可を得られれば市販車の生産前にホモロゲーションを取得することも可能である。エンジンの排気量は自然吸気は5500cc、過給器付きは4000ccまで[2]

かつてACOはグループGT3との統合をSROにもちかけたが結局破談となり、空力開発の自由度を上げることで差別化して決着した[3]

WECではLMP1の高コスト化やGT3人気の後押しもあって多数のマニュファクチャラーの参入を見せており、2017年からLM-GTEプロクラスがワールドカップから世界選手権へと格上げされた。

一方でアマチュアにはGT3ほどの人気は無く、WECの姉妹カテゴリであるアジアン・ル・マン・シリーズではLM-GTE車両は採用されていない。

しかしその後参戦メーカー数が減少に転じ、2021年時点で参戦を継続しているメーカーがポルシェフェラーリの2社のみとなってしまったことなどから、ACOでは2023年をもってLM-GTEを廃止することを決定した[4]。また前述の2社も、ル・マン・ハイパーカー(LMH)もしくはLMDhクラスへの参戦準備との兼ね合いで、2022年でLM-GTEでのワークス活動を終了するとしており、最終年はワークス不在のシーズンとなる[5]

歴史 編集

  • 2011年 - グループGT2の発展として誕生。
  • 2014年 - グループGT3との統合を図るも頓挫。
  • 2016年 - リアオーバーハングの空力開発を大幅に緩和。
  • 2017年 - マニュファクチャラー増加に伴い、WECのLM-GTEプロクラスがワールドカップから世界選手権に格上げされる。
  • 2021年1月 - ウェザーテック・スポーツカー選手権を運営するIMSAは2022年シーズンにGTデイトナPro(GTD Pro)クラスを新たに導入することを発表した。FIA-GT3マシンで争われるこのクラスは、LM-GTEマシンでオールプロが基本となる現行のGTル・マン(GTLM)クラスを置き換えるもの[6]
  • 2023年限りでLM-GTEを廃止。

ホモロゲーション取得車両一覧 編集

マニュファクチャラー 車種 画像 出典・備考
  アストンマーティン V8 ヴァンテージ GTE   2012-2017
ヴァンテージ AMR GTE   2018-2023
  BMW Z4 GTE (E89)   2013-2015
M6 GTLM (F13)   2016-2017 IMSA スポーツカー選手権のみの公認
BMW・M8 GTE (E92)   2018-2021
  シボレー コルベット C7.R   2014-2019
コルベット C8.R   2020-2023
  ダッジSRT SRT・バイパー GTS-R   2012-2015
  フェラーリ 458イタリア GT   2011-2015
488 GTE/GTE Evo   2016-2023
  フォード GT (Mk.VIII)   2016-2019
  ロータス エヴォーラ GTE   2011-2012
  ポルシェ 911 GT3-RSR   2006-2012
911 RSR (991.1)   2013-2016
911 RSR (991.2)   2017-2019
911 RSR-19   2020-2023

参戦可能だったレース一覧 編集

脚注 編集

関連項目 編集