アストンマーティン・ヴァンテージ
アストンマーティン・ヴァンテージは、イギリスの自動車メーカー、アストンマーティンが製造しているスポーツカー。以前はメインモデルの高性能バージョン名だった。
初代(1977年-1989年)編集
1977年からメインモデルであったアストンマーティン・V8の高性能モデル、V8ヴァンテージが生産された。このV8ヴァンテージは、0~60mph(約96km/h)加速でフェラーリ・デイトナを凌駕し、170mph(約274km/h)に達する最高速で、「英国初のスーパーカー」と称賛された。
2代目(1993年-2000年)編集
アストンマーティン・ヴァンテージ | |
---|---|
ヴァンテージ | |
リア | |
概要 | |
販売期間 | 1993年 - 2000年 |
ボディ | |
駆動方式 | FR |
パワートレイン | |
エンジン | 5.3L V型8気筒DOHCツインスーパーチャージャー |
最高出力 | 550PS/6,500rpm |
最大トルク | 76.0kgm/4,000rpm |
変速機 | 6速MT |
サスペンション | |
前:ダブルウィッシュボーン 後:ド・ディオンアクスル | |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,611mm |
全長 | 4,755mm |
全幅 | 1,945mm |
全高 | 1,330mm |
車両重量 | 1,970kg |
メインモデルであったヴィラージュのハイパフォーマンスモデルとして1992年のバーミンガムショーで発表され、翌年の1993年に発売された。
ヴィラージュのボディをベースに、イートン・コーポレーション製のスーパーチャージャーが二基装着されアメリカのキャラウェイがチューニングし最高出力558PS/6,500rpm、最大トルク76.0kgm/4,000rpmを発揮する5.3LV型8気筒DOHCエンジンが搭載されている。
トランスミッションにはシボレー・コルベットZR-1に採用された6速MTが用いられ、後輪駆動となっている。
サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン、リアがド・ディオンアクスル。
フェンダーが大きく拡大され285/45ZR18という太いタイヤが組み合わせられた。
0-60mph加速は4.6秒、最高速度は300km/hと、車重を感じさせないパフォーマンスを発揮する。
3代目(2005年-2018年)編集
アストンマーティン・ヴァンテージ | |
---|---|
クーペ(フロント) | |
クーペ(リア) | |
概要 | |
販売期間 | 2005年 - 2018年 |
ボディ | |
駆動方式 | FR |
パワートレイン | |
エンジン |
4.3L V型8気筒DOHC(2005年-2008年) 4.7L V型8気筒DOHC(2008年-) |
最高出力 |
385PS/7,300rpm(2005年-2008年 426PS/7,300rpm(2008年-) |
最大トルク | 41.8kgm/5,000rpm |
変速機 | 6速MT、6速AT |
サスペンション | |
前:ダブルウィッシュボーン 後:ダブルウィッシュボーン | |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,600mm |
全長 | 4,382mm |
全幅 | 1,866mm |
全高 | 1,255mm |
車両重量 | 1,570kg |
今までと異なり3代目はポルシェ・911などをライバルとするローエンドモデルの「ベイビー・アストン」となり、歴代ヴァンテージの中では最も馬力が低い。しかしアストンの中では安価な下位モデルだとしても、日本円で約1500万円からという価格であり、高級車ということに変わりはない。
エンジンはジャガー・XKと同じV型8気筒(AJ-V8)を採用しているが、ボアアップで排気量を4Lから4.3Lに拡大し、ドライサンプ化によって全高を切り詰め、低重心化を図るなど、ケルンの専用工場でさまざまな手が加えられており、実際ジャガー・XKと同じ部分はシリンダーブロックの外側の形状のみという徹底ぶりで、共用部分は少ない。出力は380hp(385PS)/410Nmである。
同社のV型12気筒モデル、アストンマーティン・DB9と同じ総アルミ応力担体VHプラットフォームを使う。V型8気筒エンジンは、V型12気筒が収まっていたエンジンコンパートメントの前車軸の後ろに押し込まれ、前後の重量配分を理想化しているが、剛性は確保されているものの、軽合金製シャシというにはかなり重いものである。
内装もDB9と似たようなイメージで、まさにDB9の縮小版といった感じだが、DB9は2+2シーターのGTであることに対して、V8ヴァンテージは2シーターのスポーツカーであり、後輪駆動のスポーツカーとして理想的なバランスを実現している。
3ドアハッチバックのクーペとロードスターと呼ばれるオープンカーがある。
レース専用車としてN24という車両がアストンマーティン・レーシングより発売されている。
2007年-編集
N400(限定車)を発表。排気量は変わらないが、吸気のチューニングによりエンジンパワーが400hpに向上。
2008年-編集
2009年モデルとして4.7Lの新型エンジンを発表、420hp(426PS)/470Nm(346lb.ft)にパワーアップした。
ヴァンテージの名称を持つ車両として、6LV型12気筒を搭載するアストンマーティン・DB7ヴァンテージの最高出力に並んだ。
4代目(2018年-)編集
アストンマーティン・ヴァンテージ | |
---|---|
概要 | |
販売期間 | 2018年 - |
ボディ | |
駆動方式 | FR |
パワートレイン | |
エンジン | M177型 4.0L V型8気筒 ツインターボ |
最高出力 | 510PS/6,000rpm |
最大トルク | 69.8kgm/5,000rpm |
変速機 | 7速MT、8速AT |
サスペンション | |
前:ダブルウィッシュボーン 後:マルチリンク | |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,705mm |
全長 | 4,465mm |
全幅 | 1,943mm |
全高 | 1,273mm |
車両重量 | 1,530kg |
2017年11月21日、およそ12年ぶりのモデルチェンジとなる4世代目ヴァンテージが日本を含む世界6か国で同時に発表された[1]。エンジンは従来の自然吸気4.7リッターV8にかわり、メルセデスAMG由来の4リッターV型8気筒ツインターボを搭載する。最高出力は510PS。最大トルクは685Nm。0-100km/h加速は3.6秒、最高速度は314km/hに達する。
2022年3月16日、V12ヴァンテージを世界限定333台で欧州で発表した。エンジンは5.2リッターV型12気筒ツインターボ。アストンマーティンにとってV12ヴァンテージ新型が最後のV12内燃機関車となる。最大出力700ps/6500rpm、最大トルク76.8kgm/1800~6000rpmを発生する。0~96km/hを3.4秒、最高速は320km/hに到達する。軽量化のために、フロントバンパー、ボンネット、フロントフェンダー、サイドシルにカーボンファイバー、リアバンパーとデッキリッドにはコンポジットを使用。ZF製8速ATと機械式LSDを介して後輪駆動となる[2]。
モータースポーツ編集
GTE編集
2008年、ヴァンテージ GT2(のちにGTEに変更)がデビュー。
2018年、新型ヴァンテージ GTEが登場
ヴァンテージ GTEは、FIA 世界耐久選手権(WEC)、ル・マン・24時間レースに出場するために作られた、LM-GTEのレーシングカー。GTEは、6速エクストラック製シーケンシャルギアボックスとロードカーと同様にメルセデスAMG V8エンジンを使用。パワーを上げるためにエンジンに追加の変更が加えられる[3]。車はGT3仕様に変更が可能[4]。
アストンマーティン・レーシングによって、WEC、ル・マン・24時間レースに参戦した。
DTM編集
HWA AGは、アストンマーティンおよびR-モータースポーツと提携して、2019年ドイツツーリングカー選手権にヴァンテージ DTMを発表した。ヴァンテージはフォーミュラEに集中するために撤退した、メルセデス・ベンツに代わりエントリーした[5]。だが2019年1シーズン限りで撤退した。
GT3編集
ヴァンテージ GT3は、V12 ヴァンテージ GT3の後継モデル。エンジンの出力は542PS(399 kW; 535 hp)で、トルクは516lb⋅ft(700N⋅m)。クイックシフトのエクストラック6速シーケンシャルギアボックス、アルコン製モータースポーツマルチプレートクラッチ、オーリンズ4方向調整可能ダンパー、アルコン製ブレーキ、ボッシュアンチロックブレーキシステムを備える。乾燥重量は1,245kg(2,745ポンド)[6]。
GT4編集
ヴァンテージ GT4は、モータースポーツのエントリーレベルのドライバーを対象としている[6]。ヴァンテージGT4は、2019年ニュルブルクリンク24時間でデビューした[7]。
セーフティカー編集
またレース用車両ではないが、2021年よりF1で使用されるセーフティカーとしてヴァンテージのカスタム仕様車が供給されている[8]。
脚注編集
- ^ “アストンマーティン ヴァンテージ 新型、青山の夜に登場!!…イギリス、日本など6か国同時に発表”. レスポンス(Response.jp). 2017年11月21日閲覧。
- ^ “アストンマーティン『ヴァンテージ』、V12エンジン復活…世界限定333台はすでに完売”. レスポンス. 2022年3月17日閲覧。
- ^ “アストンマーティン ヴァンテージ 新型、「GTE」発表…2018/2019年のWECレーサー”. レスポンス. 2017年11月22日閲覧。
- ^ “Converting The GT3 Aston Martin Vantage To GTE Spec & Back! – dailysportscar.com”. www.dailysportscar.com. 2019年6月5日閲覧。
- ^ “R-Motorsport Aston Martin to replace Mercedes in the DTM”. Autosport. 2020年10月2日閲覧。
- ^ a b “Check out the new Aston Martin Vantage GT3 and GT4 race cars”. Top Gear. 2020年9月19日閲覧。
- ^ “ASTON MARTIN ALL SET FOR VANTAGE GT4 DEBUT IN NÜRBURGRING 24H”. Aston Martin. 2020年9月19日閲覧。
- ^ F1、2021年シーズンよりアストンマーティンのセーフティカー&メディカルカーを使用。メルセデスも継続 - オートスポーツ・2021年3月9日
外部リンク編集
- アストンマーティンVantage - アストンマーティン(日本)