Ε

ギリシア文字の第5字母
エプシロンから転送)

Ε, ε(エプシロン、ギリシア語: έψιλονギリシア語ラテン翻字: epsilon)は、ギリシア文字の第5字母であり、母音[e]を表す。数価としては5を表す。ラテンアルファベットEキリル文字Е, Є, Ѐ, Ё, Э はこの文字を起源とする。

ギリシア文字
Αα アルファ Νν ニュー
Ββ ベータ Ξξ クサイ
Γγ ガンマ Οο オミクロン
Δδ デルタ Ππ パイ
Εε エプシロン Ρρ ロー
Ζζ ゼータ Σσς シグマ
Ηη イータ Ττ タウ
Θθ シータ Υυ ウプシロン
Ιι イオタ Φφ ファイ
Κκ カッパ Χχ カイ
Λλ ラムダ Ψψ プサイ
Μμ ミュー Ωω オメガ
使われなくなった文字

()
ディガンマ サン
ヘータ ショー
ギリシアの数字
スティグマ
()
サンピ

()
コッパ

本来の呼称は「エプシロン」であるが、日本の一部の分野の業界ではラテンアルファベットの E(イー)につられて「イプシロン」と呼ばれることがある。「イプシロン」は現代ギリシア語では Υ, υ を指すので、誤りである。英語ではエプサイロンあるいはプスィロン[1]のように発音される。

起源 編集

フェニキア文字 𐤄  (ヘー)に由来する。フェニキア文字では無声声門摩擦音[h]を表す文字だったが、ギリシア文字では母音[e]を表す文字に転用された[2]。古くは短母音以外に長母音もこの文字で表されたが、後に狭い[eː]ειで、広い[ɛː]ηで表されるようになった[3]

文字名称は古くはエー( εἶ )であり、これはセム語名ヘーに由来するか、または単純に母音[e]を伸ばしたものと考えられる[4]。2世紀ごろに二重母音αιが同音の[e]に変化し、ビザンチン時代の文法学者が両者の区別のためにɛをエプシロン(ἒ ψιλόν、単なるエ)と呼んだのが現代の名称の由来である[5]

記号としての用法 編集

小文字の「ε」は

商品名・固有名等 編集

符号位置 編集

大文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 小文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 備考
Ε U+0395 1-6-5 Ε
Ε
Ε
ε U+03B5 1-6-37 ε
ε
ε
Έ U+0388 - Έ
Έ
έ U+03AD - έ
έ

脚注 編集

  1. ^ 西脇順三郎全集: 文学論 1-2. 1971:315.
  2. ^ Allen (1987) p.53
  3. ^ Allen (1987) pp.70-75,90
  4. ^ Allen (1987) p.169
  5. ^ Allen (1987) pp.172-173

参考文献 編集

  • W. Sidney Allen (1987) [1968]. Vox Graeca (3rd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521335558