デジタル英語: digital, 英語発音: [ˈdiʤətl]ディジタル)とは、整数のような数値によって表現される(飛び飛びの値しかない)ということ。工業的には、状態を示す量を量子化、離散化して処理(取得、蓄積、加工、伝送など)を行う方式のことである。

計数(けいすう)という訳語もある。古い学術文献や通商産業省の文書などで使われている。語源はラテン語の「 (digitus)」であり、指で数える、といった意味から派生して、(離散的な)数あるいは数字というような意味となった。

令和三年に日本で施行された『デジタル社会形成基本法』では第二条でデジタルを「インターネットその他の高度情報通信ネットワーク」や「電磁的記録」を用いるものとしており、本項で示す範囲より狭い物となっている。

概要編集

データの数値化にあたっては量子化を行い、整数値(すなわちdigit)で表現するのが一般的である[1]。例えば、上昇中の位置では、階段の何段目かがデジタルで、坂道中の位置がアナログである。整数で表現するか、桁数を無限にした実数で表現するかの差がある。デジタルでは、データ量を離散的な値(離散量)として表現することになり、それらの中間の量は誤差を含んだ隣の離散量で表現する。この誤差は適切な量子化を行うことで実用上影響のない範囲にすることができ、データ量に比例したアナログ量を用いるのとほぼ等価な処理が提供できる。自然言語なども文字で構成される離散的な情報であり、デジタルコンピュータを用いなくとも、古代文明の頃からデジタル処理は存在したと言える。

今日のコンピュータの主流であるデジタルコンピュータでは、01だけしか使わない二進法を物理的な表現形式(電圧の高・低など)として用いるので、デジタルは「0と1の二つだけしか無い」「0か1かの二択」「2でしか割り切れない」という定義、解釈がよくなされる。従って、「赤か緑か青か」(光の三原色)のような三択や、「上・下・左・右・前・後」(方角)のような六択(「0か1か」が三種類ある、或いは0の同類と1の同類で三つ組が二つある)など、3で割り切れる概念は、「0か1か」の二択とは相容れない概念になる。

しかし、5者択2符号などにより2状態の素子5個を使って直接十進法を扱うデジタルコンピュータなどもあるように、デジタルは0か1かの二択という説明は、デジタルの一部を説明しているに過ぎない。そのため、デジタルは二択のみではない。「二進法」というのは、数の表記法であって数そのものではない。“デジタル”という語そのものには、「数を二進法で表記する」「2でしか割り切れない」「○か×かの“二択”」というような意味は含まれていない。その逆の“アナログ”という語そのものには、「数を三進法で表記する」「3で割り切れる」「○か×かだけじゃなく△もある“三択”」というような意味は含まれていない。従って、0と1の2択のみをデジタルと呼ぶのは不正確な慣用表現である。また21世紀以降、ITを利用する場合についてカジュアルにデジタルと呼び、それ以外をアナログと呼んでいるが、用語の定義からすれば両者ともに間違った使い方であるが、『デジタル社会形成基本法』ではそのカジュアルな定義が採用されている。

表記編集

一般的には「デジタル」と表記されることが多いが、日本産業規格 (JIS X 0001, JIS X 0005) では「ディジタル」(ディジタル計算機、ディジタル化する、ディジタルデータなど)の表記が用いられている。これは、"digital" のつづり "di" を意識してのことである(disk=ディスク、display=ディスプレイなどと同様)。

かつてはディジタルと書かれることも多く、これは1955年に文部省が発行した『国語シリーズ27 外来語の表記 資料集』の影響が大きく、同書で原音がディの音はジとされたが原音の意識がなお残っている場合はディと書くことが許容され、資料集は現状整理という位置付けだったようだが同年版の『記者ハンドブック』(共同通信社)の外来語の書き方の欄などメディア関係者が参照する資料に主要な記述がそのまま転載、事実上のガイドラインとなっていた[2]。時代が下って原音に近い外国語の発音が広まったことから1981年の『記者ハンドブック』第4版では原音のティ、ディ、テュ、デュで慣用が定まっている場合はチ、ジ、チュ、ジュで書くとなっているが、デジタルの語は1970年代末までに慣用が定まり、使われ続けている[2]。それにより、デジタルネイティブのように別の時期の表記が合わった外来語も存在する[2]

学術分野では文部省資料の影響はあまり強くなく、1960年代から1970年代の専門書ではディジタル表記が圧倒的に使われていた[2]。1960年代の一般紙では最先端の技術だった電子計算機をディジタル型、ディジタル電子計算機と書かれ、事実上のガイドラインがあっても1つの表記以外をあまり確認できなければ新聞も倣ったとみられる[2]

デジタルの表記が広まった理由の1つはデジタル時計で、1965年の東京時計製造パタパタ時計の新聞広告には東京デジタルとあり、1968年にソニーがパタパタ時計とラジオ一体型のデジタル24を発売、メディアで宣伝するため文部省資料と同じ表記になったとみられる[2]。1970年代後半にはデジタル腕時計のブームで広告にはデジタルの語が踊り、1978年にカシオ計算機山口百恵を起用したCMで山口が歌う「デジタルはカシオ」のフレーズが流行、学術分野以外ではデジタルの語で急速に固まった[2]広辞苑第三版(1983年)及び第四版(1991年)はデジタルがディジタルを参照させるようになっており、逆になったのは1998年の第五版であった[2]

特徴編集

デジタルデータは、離散値として数値化しているので、アナログデータと比べて短期的には劣化しにくい特性をもつ。伝送・記録再生などを行う場合、デジタル量もアナログ量と同様に電圧電流などの電気信号に置き換えて取り扱われる。外乱が生じて信号にノイズが混入した場合、アナログ処理では特別な処理を行わない限り信号に混じったノイズを取り除くことが困難である。

これに対し、デジタル処理では、数値は飛び飛びで離散しており、中間値をもたないので、ノイズによって生じた誤差が一定量以下ならばそれを無視でき、数値データを劣化する前の値に復元することができる。この数値は、六進数十進数のような「素因数が複数」の記数法でも適用でき、データが整数表現の場合、1がノイズによって0.8(10)(=4/5)や0.4(6)(=2/3)や1.2(十進数だと6/5、六進数だと4/3)に変化しても1と認識させられる。

実際の記録・伝送などではノイズなどの影響が無視できず、元のデータと異なるデータが再生されてしまうこともある。例えば、1が0.4(10)(=2/5)や0.2(6)(=1/3)、または1.6(10)(=8/5)や1.4(6)(=5/3)に変化すると、異なる値0または2として再生される。しかし、データを予め誤り訂正符号などを使って冗長化しておくと、誤りを無視する、途中で劣化しても自動的に修復する、誤りの発生を検出して再送を要求したりすることができ、信頼性の高い処理を提供することが可能になる。

同じ情報を圧縮せずに送る場合、アナログに比べデジタルの方が帯域幅を必要とする。ただし、デジタル処理の場合は圧縮や多重化が効率よく行われるため、実用する場合はアナログより必要な帯域幅が狭い。

デジタル処理編集

デジタル化処理編集

アナログデータをデジタルデータに変換することを「デジタル化する」、「デジタイズする」などという。

デジタル処理の適用編集

デジタルデータをそのまま扱う場合(単純なリニアサンプリング)について述べる。

実際のデジタル処理では、二進数1桁をビットとし、8ビットなどのまとまった単位をオクテットまたはバイトとして取り扱い、さらにそのまとまりをワードという単位として取り扱うことが多い。これは処理装置や記憶装置の語長に合わせて効率よく使えるようにするためである。

デジタルデータにおいては、表現可能な数値範囲を超えたり、最小値に近い数値を扱ったりする際には注意が必要である。

アナログ処理の媒体(磁気テープ、供給電圧や電線など)は材料のバラツキや製造上の品質管理の都合上、仕様より高めの限界値で製造される(例えば全ての部品のばらつきが低い方向に振れても仕様を満たす設計の場合、同じ条件で高い方向に振れた場合は仕様より高めの限界値となる。)。また、電線などの伝送路も汎用品を使った場合は過剰に仕様より高い限界値を持っている。このため、入力が仕様より超過した場合、少しの超過では影響が少なく、媒体の真の限界値を超えると過大な影響がある。

しかし、デジタル処理では、定義された最大値を超えた場合には桁溢れ(オーバーフロー)となり、以後の演算処理の結果は保証されない。また、最小値に近い数値では量子化誤差が無視できず、S/N比の劣化として現れることがある。更に、数値計算の際に不用意な処理手順による桁落ちが生じ、著しい有効桁数の減少を招くこともあるので、注意を要する。

符号化編集

符号化とは対象を上限のある整数に変換することで有り、様々な分野でそれぞれ適切な表現形式を用いてデータを符号化している。

  • 数値の場合、上限(範囲)の定められた整数は既に符号化されている。小数以下を含む数値の場合、指数表記として符号化する浮動小数点型、任意の位置を小数点とする固定小数点型などとして扱える。記数法を用いずに全ての数字に独自の命名をして扱うことや、十進数十六進数六進数九進数といった「1/3が割り切れる」「一の位が3または0ならば3の倍数」の記数法を用いたりすることが出来る。
  • 文字は既に符号化されている。必要であれば文字コードで文字とコード(取り扱いやすい任意の整数)を対応させることができる。
  • 音声は、任意の時間とその地点の音量でPCMなどによる方法で符号化できる。
  • 音楽は、楽譜によって周波数、時間軸、音色などをデジタル化出来る。楽譜を電子化した物としては、機械演奏用のMIDIMML、電子出版や配布用としてPDFなどがある。演奏した物を音声と同じ方法で符号化できる。
  • 絵、映像は、平面を等間隔で区切り、RGBなどの成分に分解し、各色の明るさなどを数値化する。その情報を任意の時間で連続記録すれば動画となる(一般的な動画には音声がついているが、技術的には関連は無く、応用技術として単に動画と音声を同時に再生している。)。
  • 図形は、ベクタ形式による。この形式は、狭義には線分の始点と終点の座標を数値で記録する。広義には、各種の図形に対して、例えばなら、「図形コード=円、中心座標、半径」を記録する。これらのデータからの例えば円を描くことは図形表示ソフトウェアに任せる。また、絵や、映像と同じ方法でも符号化できる。

国策としてのデジタル化編集

日本の高度経済成長を支えたものは、テレビジョン冷蔵庫洗濯機などの家庭電化製品であった。

しかし、日本の産業を重厚長大型から軽薄短小型へ移行された1983年頃から、ワードプロセッサや、パーソナルコンピュータなどデジタル家庭電化製品が庶民の手に届くようになる。

政府国策により、日本の輸出主力を、アナログ家電からデジタル家電に改めたのであった。いわゆる産業構造の転換である。

1980年代後半に登場した携帯電話は、初期のアナログ方式から電波利用効率の高いデジタル方式への切り替えにより、料金の低下と普及率の上昇をもたらした。

21世紀は「デジタルの世紀」という表現もある。

アナログのテレビジョン放送も、日本では2011年に廃止した。デジタル化は消費者の負担を伴うが(テレビ受像機の買い替えが必要となるなど)、日本企業が欧米企業に負けないための政策だとも言われる。

令和三年に 『デジタル社会形成基本法』が施行された。ここで言うデジタルは「インターネットその他の高度情報通信ネットワーク」や「電磁的記録」、人工知能などハイテクの事である。

脚注編集

関連項目編集