ナイトクラブ
ナイトクラブ(英語: night club)とは、夜(ナイト)に営業する何らかのクラブのことを指す用語で、時代や国、地域によって、この用語が表現する内容にはかなりの違いがある。




概要
編集Night(夜)+ Club(会員制)という二つの言葉を組み合わせた用語である。会員制という表現には語弊もあり、一般的には料金を支払えば入場できる店も多い。一口にナイトクラブと言っても、時代や国や地域によって、各店ごとにその内容は大きく異なっている。
ヨーロッパ諸国では、夜間に営業していて、人々が集い、アルコール飲料(酒)が飲めて、音楽が流れており、(ダンサーが踊っているのを観て楽しめたり)自分たちが踊ることも楽しめる、といったようなお店が、おおむね「Night club」という総称で呼ばれている。[注 1]
日本には、「ナイトクラブ」という用語について、日本語での飲食店・風俗店の変遷の歴史がある。デジタル大辞泉では「ダンス・バンド演奏・ショーなどを楽しむ高級飲食店」等と記載されている。日本のナイトクラブは女性のホステス、コンパニオンが接待を行う店舗と、接待を行う女性はおらず、アルコール、ショー、バンド演奏のみの店舗の両方があった。またナイトクラブとは別に、ディスコ[注 2]が1990年代以降に別な名称で呼ばれるようになった「クラブ」が存在する。[注 3]
日本
編集デジタル大辞泉では、「ダンス・バンド演奏・ショーなどを楽しむ高級飲食店[1]」とし、また「本来は同伴客の利用する所」と記述している[1]が、それだけに限らない。日本での初出は、『新種族ノラ』(吉行エイスケ、1930年)に「フランス租界にあるナイト・クラブで近代の支那女の踊るスペイン・タンゴの優婉な姿態を連想し」とあり、1930年にはナイト・クラブは上海にまでは来ていたが、東京には上陸していなかったと思われる[2]。日本でナイト・クラブが流行るのは、井上友一郎の「銀座二十四帖」(1955)の引用が示すとおり、戦後になってからである[2]。
ナイトクラブとキャバレーの違いについては、ニューラテンクォーター元営業部長の諸岡寛司(1935年-)が、「店側が客に対して飲食物が提供でき、客が社交係ではない女性を同伴できる夜間営業の店がナイトクラブ、できないのがキャバレーである」と述べており、風俗営業法におけるキャバレーとナイトクラブの違いも同様であると言う[3]。
また、キャバレーの歴史に詳しい美術蒐集家の福富太郎は、「昭和30年代前半までのキャバレーとはバンドが演奏できるステージを備え、数十人の客がダンスをできるだけのフロア面積がある大きい店」とした[4]。つまり、カップル(恋人どうしの男女など)でも音楽・ダンス・お酒などを楽しむことができるお店が「ナイトクラブ」であった。
現在の日本の関連法規
編集現状での日本国では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)の第2条で区別されており、第1号で『キャバレーその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食をさせる営業』と定められ、同条同項の3号で、『ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(第1号に該当する営業を除く。) 』と定義されていることから、接待を行う店員の性別、及び接待される客側の性別に限らず、『店側が客の接待をするのか』で区別されている。
また、建築基準法における建物の用途規定として適用される別表第一の『耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない特殊建築物』と別表第二の『用途地域内の建築物の制限』に、ナイトクラブに関する規制の記載があり、商業地域・準工業地域以外の用途地域には建設できない。
ナイトクラブに関連する日本の作品
編集- 東京ナイトクラブ
- 二人の世界(作詞:池田充男、作曲:鶴岡雅義、編曲:福島正二 - 石原裕次郎が歌った1965年の楽曲(歌詞にナイトクラブが登場する)翌年映画化
- 星のナイト・クラブ(作詞:橋本淳、作曲・編曲:筒美京平) - 西田佐知子が歌った1969年の楽曲
- 匂艶 THE NIGHT CLUB(作詞・作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ) - サザンオールスターズが歌った1982年の楽曲
- DUMP SHOW! - ナイトクラブを舞台にした演劇。2011年上演。
世界のナイトクラブ
編集ナイトクラブまたはダンスクラブは、通常、飲酒、ダンス、その他の娯楽のために夜に営業しているクラブです。ナイトクラブには、ダンスフロア、レーザー照明ディスプレイ、ライブ音楽のステージ、録音した音楽をミックスするディスクジョッキー(DJ)を備えたバーやディスコ(通常は単にディスコと呼ばれます)があることがよくあります。ナイトクラブは、劇場やスタジアムなどのライブハウスよりも小さい傾向があり、顧客用の座席はほとんどまたはまったくありません。
ナイトクラブで発生した主な事件・事故
編集- 1942年11月28日 - アメリカ合衆国ボストンのナイトクラブ「ココナッツ・グローヴ」にて大規模な火災が発生。ナイトクラブ火災では史上最悪の492人死亡[5]。
- 1973年6月24日 - アメリカ合衆国ニューオーリンズのフレンチ・クオーターにあるゲイバー「アップステアーズ・ラウンジ」にて放火事件が発生。32人死亡[6]。
- 1977年5月28日 - アメリカ合衆国ケンタッキー州にあるビバリーヒルズ・サパー・クラブにて大規模な火災が発生。165人死亡[7]。
- 1996年3月18日 - フィリピンのケソン市にあるナイトクラブ「オゾンディスコ」にて火災が発生。162人死亡[8]。→詳細は「オゾン・ディスコ火災」を参照
- 2000年12月25日 - 中華人民共和国洛陽市の「東都商城」の地下で建設作業員が溶接作業を行っていたところ家具などに引火し、洛陽クリスマス火災を引き起こす。同ビル上階のダンスホールでクリスマスを祝っていた客ら309人が死亡[9]。
- 2002年10月12日 - インドネシアのバリ島で爆弾テロ事件が発生。イスラム過激派組織ジェマ・イスラミアがナイトクラブなどを標的に爆弾を爆発させ外国人観光客ら202人が死亡[10]。
- 2003年2月20日 - アメリカ合衆国ロードアイランド州のナイトクラブ「ザ・ステーション」で開かれていたコンサートで使用された花火が防音素材に引火し、中にいた観客ら300人以上が死傷[11]。→詳細は「ザ・ステーションナイトクラブ火災」を参照
- 2004年12月30日 - アルゼンチンブエノスアイレスのナイトクラブ「レパブリカ・クロマニヨン」のショーで使用した花火が建物に引火。194人死亡[12][13]。→詳細は「レパブリカ・クロマニヨン火災」を参照
- 2008年9月20日 - 中華人民共和国深圳市の舞王倶楽部でショーで使用した花火が火災を引き起こし、クラブ内にいた客の内43人が死亡[14]。
- 2009年12月5日 - ロシアペルミのナイトクラブでペルミ・ナイトクラブ火災が発生。150人以上死亡[15]。
- 2013年1月27日 - ブラジルリオグランデ・ド・スル州サンタマリアのナイトクラブで火災が発生。232人以上が死亡した。原因は店内で使用された花火[16]。
- 2015年10月30日 - ルーマニアブカレストのナイトクラブで火災が発生。一つしかない出入口に客が殺到して45人が死亡。原因はロックコンサート中に火花が引火して火災に発展したもの。この火災をきっかけに大規模なデモが発生、翌週にはヴィクトル・ポンタ首相が辞任した[17]。
- 2016年6月12日 - アメリカ合衆国フロリダ州でオーランド銃乱射事件が発生。49人が死亡[18]。
- 2018年
- 2020年8月24日 - ペルーリマのナイトクラブに警官隊が突入、逃げ惑う客が転倒して13人以上が死亡。店内ではコロナウイルス感染症が蔓延する中で禁止されているパーティーが開催されていた[21]。
- 2022年
- 1月23日 - カメルーンヤウンデのナイトクラブで大規模な火災が発生。16人以上が死亡、8人が重傷。原因は店内で花火が爆発したことによるもの[22]。
- 1月24日 - インドネシア西パプア州ソロンのナイトクラブで、対立するグループが衝突して火災が発生。18人以上が死亡[23]。
- 8月5日 - タイ王国チョンブリ県サッタヒープのナイトクラブで音楽公演中に火災が発生。13人以上死亡、数十人負傷[24]。→詳細は「チョンブリー県ナイトクラブ火災」を参照
- 11月6日 - ロシアコストロマのナイトクラブの店内で火災が発生。13人以上が死亡。原因は店内で使用された花火[25]。→詳細は「コストロマ・カフェ火災」を参照
脚注
編集注釈
編集- ^ 英語と仏語版ウィキペディアでは「discothèque」(日本記事名ディスコ)は「Night club」(日本記事名ナイトクラブ)にリダイレクトされている。
- ^ 日本では、1960年代の中川三郎ディスコテークが初期の例である
- ^ 1990年代のジュリアナ東京やベルファーレなどテクノ系ダンスホールの時代には、ディスコという名前は次第に使用されなくなり、クラブと呼ばれるように変化していった
出典
編集- ^ a b “ナイトクラブ(night club)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書”. goo辞書. 2025年5月3日閲覧。
- ^ a b JKボイス-日国を推挙する理由:ジャパンナレッジ 日本の風俗用語を調べる最高の武器鹿島茂、ジャバンナレッジ、2008年09月
- ^ 諸岡『赤坂ナイトクラブの光と影』(講談社、2003年)ISBN 4062117371
- ^ 福富『昭和キャバレー秘史』(河出書房新社、1994年)
- ^ Thomas, Jack (1992年11月22日). “The Cocoanut Grove inferno” (英語). The Boston Globe. 2003年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
- ^ “Upstairs Lounge Fire Memorial, 40 Years Later” (英語). NOLA Defender (2013年6月23日). 2017年7月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
- ^ “47 years ago today: 165 dead in Beverly Hills Supper Club Fire” (英語). WLWT (2024年5月28日). 2024年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
- ^ 「Philippines sentences over 1996 Ozone Disco fire」『BBC News』2014年11月20日。オリジナルの2025年4月20日時点におけるアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
- ^ “China tries 23 over Christmas disco blaze” (英語). CNN (2001年8月13日). 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
- ^ “バリ爆弾事件から20年、追悼式典に遺族ら参列 インドネシア”. AFP (2022年10月12日). 2023年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
- ^ Parker, Paul Edward (2013年2月5日). “The Station Fire: Timeline of a tragedy” (英語). The Providence Journal. 2025年4月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
- ^ “Argentine Nightclub Fire Kills 175” (英語). CBS News (2004年12月31日). 2024年12月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
- ^ “Argentina: 7 Members of Band Convicted in Club Fire” (英語). The New York Times. (2011年4月21日). ISSN 0362-4331. オリジナルの2024年5月21日時点におけるアーカイブ。 2025年5月3日閲覧。
- ^ “中国深センのディスコで火事、43人死亡”. AFP通信 (2008年9月21日). 2025年5月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
- ^ “Russian nightclub owner convicted for fire that killed 156” (英語). Reuters (2013年4月30日). 2020年2月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
- ^ “ブラジルのナイトクラブで火災、死者230人以上”. ロイター (2013年1月28日). 2022年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
- ^ 吉野太一郎 (2015年11月9日). “ルーマニアのナイトクラブ火災で45人死亡 反政府デモ「腐敗が殺した」”. huffingtonpost. 2024年10月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
- ^ “プライドマーチなどに攻撃予告の男を逮捕、8年半で脅迫状60通”. CNN (2021年2月7日). 2022年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
- ^ “ブラジルのナイトクラブで襲撃、少なくとも14人死亡”. AFP (2022年1月28日). 2022年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
- ^ “ナイトクラブでけんか、催涙弾で17人死亡”. CNN (2018年6月17日). 2024年11月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
- ^ “ナイトクラブ摘発で客が逃げ出し転倒、死者13人”. CNN (2020年8月24日). 2024年6月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
- ^ “ナイトクラブで火災、死者16人 カメルーン首都”. CNN (2022年1月26日). 2025年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
- ^ “ナイトクラブで衝突・火災、18人死亡 インドネシア”. AFP (2022年1月25日). 2025年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
- ^ “ナイトクラブで火災、13人死亡 数十人負傷 タイ”. CNN (2022年8月5日). 2022年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
- ^ “ロシアのナイトクラブで火災、13人死亡 2人拘束”. AFP (2022年11月6日). 2022年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
- ^ 森岡みづほ (2025年3月16日). “ナイトクラブ火災で59人死亡、北マケドニア コンサートで発生”. 朝日新聞. 2025年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
- ^ Nikolik, Nevenka (2025年3月16日). “MoI: Three minors confirmed dead so far, more than 20 injured in Kochani nightclub fire” (英語). Mia.mk. 2025年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
- ^ “MLB=ドミニカ屋根崩落、死者200人超に 元中日ブランコ氏ら犠牲”. Reuters (2025年4月11日). 2025年4月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月20日閲覧。