ヌカカ

双翅目ヌカカ科の昆虫

ヌカカ(糠蚊)は、ハエ目(双翅目)ヌカカ科 (Ceratopogonidae) に属する昆虫の総称。体長が1mmから[1]3mmほど[2]。世界に6000種類以上が棲息する[2]

ヌカカ科 Ceratopogonidae
Culicoides sonorensis
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ハエ目(双翅目) Diptera
亜目 : カ亜目(長角亜目, 糸角亜目) Nemato
下目 : カ下目 Culicomorpha
上科 : ユスリカ上科 Chironomoidea
: ヌカカ科 Ceratopogonidae
Newman, 1834
亜科

一部のは、メスがと同様に吸血動物となる[1][3]脊椎動物から吸血するヌカカは世界で1300~1400種、日本に80~90種おり、それ以外の大半の種は他の昆虫を襲う[2]。吸血性ヌカカの一部はなど家畜感染症を媒介するほか、ヒトに有害な感染症としてオロプーシェ熱が判明している[2]

地球温暖化とともに生息域拡大が懸念されているが、研究者は少なく、多くの種は飼育方法も確立されていない[2]

概要

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和名のヌカカは、「粒のように小さな蚊」という意味から命名された[2]。地域によってはイソヌカカ(磯糠蚊)やヌカガ(糠)、鳥取県西部の弓ヶ浜半島では干拓事業が行なわれた後にわいたとされていることからカンタクムシ(干拓虫)と呼ばれている。まくなぎ(蠛蠓)、めまといもヌカカの一種で、夏の水辺などをひと塊になって飛んでいる。キャンプ場などにもみられる。

小さな種は網戸をすり抜け[2]人家に侵入することもある。また衣服の中へ這い入ることもある。

上から見た感じは黒ゴマの粒のように見え、よく観察すると薄く透明なに、黒い斑紋を装うものが多い。

蚊と異なり、刺咬された直後は刺された感触もほとんどないが、数時間後に痒みが始まり、翌日以降に腫れと強い痒みが起こり、小さな水ぶくれができることもある。完治まで1週間以上かかることもある。対処法としては、皮膚科医の診察を受けることである。医療機関では、炎症アレルギー反応を抑える錠剤、痒みを抑える錠剤とプロピオン酸クロベタゾール軟膏を処方することが多い。

虫除けとしては、イカリジン(KBR3023[4])やジエチルトルアミド(ディート)を配した虫よけスプレーが有効といわれる。

長距離移動

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下層ジェット気流ユーラシア大陸から日本列島へ流れる梅雨期に東シナ海上でウシヌカカが捕集されていることから、海を越えて日本に飛来している可能性が指摘されている[5]。2020年6月には鳥取県米子市鹿児島県奄美大島などでの被害の増加が報じられている[6]

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)鹿児島研究拠点は、ヌカカの飛来を監視して、畜産関係者にワクチン接種を呼び掛けるなど注意喚起している[2]

病原体の媒介

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ヒトに対してはオロプーシェ熱を引き起こす節足動物媒介性ウイルスであるオロプーシェウイルスの主要な媒介昆虫である[7]

また反芻動物に感染し、流産、早産、死産、先天異常を起こすアカバネウイルス、アイノウイルス、チュウザンウイルスなどの病原体を媒介する[5]

ニワトリヌカカは鶏のロイコチトゾーン病を媒介する[8]

脚注

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  1. ^ a b 栗政明弘, 宮野佳子, 矢倉はるな, 養藤繁, 古川秀生, 岩崎裕子「米子市弓ヶ浜半島におけるヌカカ類による刺咬被害状況,被害発生環境および対処方法に関するアンケート調査」『米子医学雑誌』第66巻第2-3号、米子医学会、2015年5月、19-35頁、CRID 1050015354550841472ISSN 00440558 
  2. ^ a b c d e f g h 読売新聞』夕刊2024年9月26日みんなのカガク面「ウイルス持つヌカカ流入警温暖化で生息域拡大も」(農業・食品産業技術総合研究機構鹿児島拠点の柳瀬徹上級研究員へのインタビュー)
  3. ^ 馬場まゆみ「奄美大島における2011年から2018年のヌカカ刺症の検討」『西日本皮膚科』2019年 81巻 3号(日本皮膚科学会西部支部)pp.196-200, doi:10.2336/nishinihonhifu.81.196
  4. ^ Repellent efficiency of BayRepel against Culicoides impunctatus (Diptera : Ceratopogonidae)”. The University of Aberdeen. June 23, 2020閲覧。
  5. ^ a b 梁瀬徹、「ヌカカの長距離飛翔とウイルス感染症の媒介」『日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集』2011年 63巻 第63回日本衛生動物学会大会 セッション ID:S02, p.32, doi:10.11536/jsmez.63.0_32_2, 日本衛生動物学会
  6. ^ “猛烈なかゆみ、網戸すり抜ける「スケベ虫」被害増加”. 産経新聞ニュース. (2020年6月19日). https://www.sankei.com/article/20200619-S3C555Z5KJIXZEKGU6KRII5ADY/ 2020年6月20日閲覧。 
  7. ^ 感染症週報 通巻第26巻第26号”. 厚生労働省/国立感染症研究所. pp. 11-12. 2024年8月26日閲覧。
  8. ^ 秋葉和温、「鶏のロイコチトゾーン症の研究史における暗中模索からの脱出記録(25)」『畜産の研究』2014年 68巻 7号 pp.771-776, 養賢堂

関連項目

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外部リンク

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