パチンコ店

日本の遊戯・娯楽施設
パチンコ屋から転送)

パチンコ店(パチンコてん)は、パチンコパチスロ雀球等の遊技機器を設置して、客に遊技をさせる営業[1]を行う店舗である。パチンコホールパチンコパーラーパチ屋等とも称される。

パチンコ店の例
ワンダーランド小戸Ⅱ
福岡市西区

概要 編集

 
パチンコ店、渋谷区2004年

日本の法律上は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第2条第1項で定義する5種の風俗営業のうち、第4号に該当する遊技業の一種である。パチンコ店を営むに当たっては、所在地を管轄する都道府県公安委員会の許可を要する。また都道府県や市町村レベルで条例による出店規制を行っている例も多い(パチンコ店等規制条例も参照)。2015年現在は遊技産業健全化推進機構への誓約書の提出も事実上必須となっている。

風営法上18歳未満の者の店舗内への立ち入りは禁止されている(風営法第18条・第22条5項)。

店舗には通常数十台 - 数百台程度のパチンコ・パチスロ機が設置されるが、店舗面積に余裕のある郊外型店舗を中心に、設置台数が千台を超える店もある。2015年11月現在、1店舗での設置台数は「楽園大宮新館」(さいたま市大宮区)の2103台が最高。店舗には遊技機器や景品カウンターの他、客に軽食等を提供する喫茶コーナーなどが併設される場合が多いほか、駐車場において児童が車内に放置される問題(パチンコ#児童の車内放置等も参照)を防ぐために託児所を併設している店も少なくない。

営業時間については、風営法の規制上深夜0時までに閉店しなければならないほか(風営法第13条)、都道府県単位で条例により営業時間が制限される。東京都では条例により午後11時から翌日の午前10時までの間は営業が認められないため[2]、「午前10時開店・午後11時閉店」の13時間営業が一般的となっている[注釈 1]。その他の道府県でも「午前9時もしくは午前10時開店・午後11時閉店」となっている地域が多いが、青森県では午前8時30分開店、沖縄県では深夜0時閉店となっている[3]ほか、石巻市では主に週末に午前7時開店としている店舗もある[4]。また、2006年の風営法改正で同法違反時の罰則が強化されたことに伴い「閉店時刻には客が全員店から退去していること」が求められるようになったため、一般客に対しては最終閉店時刻の10 - 20分前を閉店時刻としてアナウンスすることが多くなった。ただし年末年始やお盆などの時期[注釈 2]については都道府県条例にて営業時間を延長することが認められており、中でも三重県では毎年12月31日から1月1日にかけては「伊勢神宮参拝客のためにトイレを提供する」という名目でオールナイト営業が行われている[5][6][7]。このほか、複合型リゾートホテル「ザ パラダイスガーデン サセボ」(佐世保市)内にオープンしたパチンコ店「パラダイス」では主に外国人宿泊客をターゲットとしているため、営業時間はホテルのチェックインに揃えた16時から22時40分まで、また宿泊客に外国人がいない日は休業とするなど特殊な営業形態を採っている[8]

パチンコ店周辺には、パチンコの遊技の結果として提供される特殊景品を買い取る景品交換所が設置されている(但し、パチンコ店内では積極的に景品交換所の所在地を案内することはない)。通常はこれに特殊景品の卸問屋を交えた、いわゆる三店方式による関係が成り立っている。

なお最近はゲームセンターの中に、パチンコ・パチスロ機をゲームセンター用に改造した機器(いわゆる七号転用機)を大量に設置し、それをゲーム機の主力とする店が現れており、中にはアドアーズ系の「アドスロ」など、それら七号転用機のみを設置した専門店も存在する。

経営・資本 編集

パチンコ店は、2017年現在業界最大手のマルハンの年間売上が1.6兆円を上回るほか、他にも数千億円規模の売上高を持つ企業が複数存在している。このため他業界の大手企業による進出例も少なくなく、クレディセゾン系のコンチェルト(コンサートホール)などはその成功例といえる一方で、かつてダイエー系列だったパンドラなど、後に株式売却・撤退に追い込まれた例もある。

一方でパチンコ業界では在日韓国・朝鮮人資本の企業の割合が比較的高いとされている事により、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の資金源の一つとなっているとの批判もある(パチンコ#パチンコと在日韓国・朝鮮人の関係パチンコ#北朝鮮の資金源も参照)。

2000年代は下記の統計にも見られるように、店舗数自体は減少傾向にある一方で、パチンコ・パチスロ機の設置台数は2007年以降ほぼ横ばいとなっていることから、小規模店舗が淘汰され設置台数の多い大規模店舗への集約が進む傾向が見られた。しかし2017年以降、設置台数自体が大きく減少する傾向にあり、それに伴う形で店舗の減少が加速している。また、主に個人経営ないしそれに近い店舗が閉店後、リニューアルされ大手チェーンの店舗へと鞍替えする傾向も見られる。閉店したパチンコ店の跡地はデベロッパーが取得し分譲マンションとなるケースが見られる。

業績悪化を理由にパチンコ業から他業種への転換を図る例がある(例:パチンコ業からコストコ再販店に転換したサンスター/長野県長野市[9])。

統計 編集

以下はいずれも警察庁発表の資料による。[10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20][21][22]

店舗数 編集

総計 パチンコ店 パチスロ店 100台以下 101 - 300台 301 - 500台 501 - 1000台 1000台以上
2005年 15,165 13,163 2,002
2006年 14,674
(▲491)
12,588 2,086
2007年 13,585
(▲1,089)
12,039 1,546
2008年 12,937
(▲648)
11,800 1,137 538 5,664 4,649 1,976 110
2009年 12,652
(▲285)
11,722 930 464 5,374 4,627 2,069 118
2010年 12,479
(▲173)
11,576 903 463 5,216 4,585 2,076 139
2011年 12,323
(▲156)
11,392 931 370 5,066 4,499 2,218 170
2012年 12,149
(▲174)
11,178 971 340 4,853 4,411 2,355 190
2013年 11,893
(▲256)
10,873 1,020 318 4,588 4,365 2,400 222
2014年 11,627
(▲266)
10,610 1017 293 4,355 4,218 2,518 243
2015年 11310
(▲317)
10,319 991 263 4,154 4,082 2,534 278
2016年 10,986
(▲324)
9,991 995 247 3,880 3,987 2,585 287
2017年 10,596
(▲390)
9,623 973 209 3,630 3,845 2,603 309
2018年 10,060
(▲536)
9,131 929 210 3,295 3,645 2,590 320
2019年 9,639

(▲421)

8,747 892 219 3,058 3,451 2,565 346
2020年 9,035

(▲604)

8,203 832 225 2,733 3,213 2,518 346
2021年 8,458

(▲577)

7,690 768 284 2,613 2,881 2,364 316
2022年 7,665

(▲793)

7,054 611 365 1,993 2,716 2,302 349

設置台数 編集

総計 パチンコ パチスロ 雀球等 1店舗あたり平均
2005年 4,899,198 2,960,939 1,936,470 1,789 323.1
2006年 4,937,381 2,932,952 2,003,482 947 336.5
2007年 4,590,577 2,954,386 1,635,860 331 337.9
2008年 4,525,515 3,076,421 1,448,773 321 349.8
2009年 4,506,250 3,158,799 1,347,176 275 356.2
2010年 4,554,430 3,163,650 1,390,492 288 365.0
2011年 4,582,784 3,107,688 1,474,838 258 371.9
2012年 4,592,036 3,042,476 1,549,319 241 378.0
2013年 4,611,714 3,009,314 1,602,148 252 387.8
2014年 4,597,819 2,954,285 1,643,290 244 395.4
2015年 4,580,197 2,918,391 1,661,562 244 405.0
2016年 4,525,253 2,833,133 1,691,876 244 411.9
2017年 4,436,841 2,749,532 1,687,084 225 418.7
2018年 4,302,731 2,637,309 1,665,243 179 427.7
2019年 4,195,930 2,557,845 1,637,906 179 435.3
2020年 4,004,787 2,432,563 1,572,048 176 443.3
2021年 3,814,173 2,338,294 1,475,703 176 451.0
2022年 3,516,730 2,190,288 1,326,303 139 458,8

新型コロナウイルス感染症での批判 編集

2020年に入り、日本政府により緊急事態宣言が発令され、同時に民間人には不要不急の外出自粛要請、企業に対しては生活に必要不可欠な商品を取り扱う店舗や飲食店などを除き、多くの企業に対して休業要請がなされた[注釈 3]

当初はパチンコ・パチスロ店の多くが休業要請発令以降も営業を続けていたが、徐々に休業する店舗が増えていった。しかし、大阪府福岡県といった一部の府県等では休業要請に従わずに営業を続ける店舗が存在した[注釈 4]。これは営業を続けなければ営業赤字で廃業せざるを得ないなど、パチンコ店側の事情を抱えており[注釈 5]、休業要請に従いたくても休業に踏み切れず、止むを得ず営業を続ける必要があったためである。そして、全国的にそのような経営上の事情を抱えた店舗が多数あった。

しかし、報道メディアがこのような経営者側の事情を考慮せず、営業を続ける店舗を必要以上に連日報道し続けたことに加え、営業を続ける店の店名を大阪府などの自治体が積極的に公表するなどしたため、社会全体が「パチンコ店 = 悪」というイメージを形成するに至り、パチンコ業界は所謂「魔女狩り」同然の扱いを受ける羽目になった。インターネット上ではTwitterYahoo!ニュースのコメント欄などで、これらの報道に煽られた者たちによって盲目的なパチンコ店批判が過熱し、中には「クラスター発生の原因となる最たる存在」「パチンコはそもそも違法賭博[注釈 6]」「存在そのものが悪」など、事実と異なる悪質なパチンコ店批判を投稿する例が多くみられた[注釈 7]。また、いわゆる「自粛警察」と呼ばれる者たちが営業中のパチンコ店に押しかけたりもした[23]

なお、休業要請が発令されて以降、2023年1月現在においてパチンコ店でクラスター感染が発生した事例は存在しない[24]。むしろ、パチンコ店では喚起の徹底、手指の消毒やマスクの着用厳守を求めるなど、他業種以上に感染対策を採っていることが経営者や従業員、来店客などの証言で判明している。また、機種の方向に顔を向けて遊戯していることから「マスクの着用や手指の消毒をしてさえいれば、そもそも飛沫感染は必然的に避けられるはず」という指摘も多くあった。

これを受け、東京都医師会がパチンコ業界を魔女狩り同然の対象となる原因を作ってしまったことを謝罪する声明を発表した[25]

この云われなき偏見による風評被害はパチンコ業界に大きな損害をもたらしている。パチンコ店はマルハンガイアといった、手広く展開している大手企業の店舗から個人で営業している小規模な店舗まで様々であるが、当然ながら小規模法人店や個人店は大手法人店に比べて資金面で不利であるため、多くの小規模法人店や個人店がこのコロナ禍において閉店に追い込まれている。閉店に追い込まれているのは個人業による飲食店も同様ではあるが、パチンコ店の場合は政府・自治体・政治家までもがこの過剰ともいえる報道に乗っかって不必要に店名を公表するなどの行為を行なったり、それを「国や自治体、政治家のお墨付き」的な解釈で自粛警察の出現や報道に煽られた者たちによる云われなき偏見による風評被害が追い打ちをかけた点で大きく異なる。そのため、中には「休業要請に従い、一時休業します。しかし、パチンコ屋だけが本当に悪なのでしょうか?」などと書いたポスターを貼り出して社会に訴える店舗も多くあった。

主な店舗 編集

暴力団排除条例とパチンコ 編集

自治体が定める暴力団排除条例に基づく暴力団排除特別地域内で営業するパチンコ店事業者は、暴力団員らに対して みかじめ料の支払いや便宜供与を行ってはならないとされており、違反者には支払った側であっても罰則が科される[26]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ パチスロ必勝ガイド』(白夜書房)の人気連載「91時間バトル」は、東京都のパチンコ店の多くが13時間営業であることにちなんで名づけられた(13時間×7日間=91時間)。
  2. ^ 風営法上の表現は「都道府県が習俗的行事その他の特別な事情のある日として条例で定める日」となっている。
  3. ^ 飲食店は20:00以降の店内飲食の自粛、24時間営業の飲食店は持ち帰りに限定するなど、企業や業種によって差異がある。
  4. ^ あくまで休業の要請にすぎず、命令ではないため、要請を受け入れずに営業を続けても違法行為にはならない。
  5. ^ パチンコ店は電気代や家賃・人件費・機種入替え費など、複数の経費やコストがかかり、営業しなかった場合は経費がそのまま店舗負担となる。
  6. ^ パチンコ店は風俗営業適正化法に基づく許可営業であり、警察による許可を得ていない営業は風俗営業適正化法違反となるが、許可を得た営業は合法的な遊技であり、賭博とはみなされない。
  7. ^ 時勢に便乗して面白半分に批判投降を繰り返した者も相当数居ると推定されている。

出典 編集

  1. ^ 風営法第2条第7号
  2. ^ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例 第5条
  3. ^ 日刊スポーツ大阪版、2016年10月26日21面。
  4. ^ “朝7時から1円スロット 震災機に店へ、被災地の閉塞感”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2017年1月22日). http://www.asahi.com/articles/ASK1M74BRK1MUNHB00W.html 2017年1月22日閲覧。 
  5. ^ 金木有香『三重あるある』TOブックス、2014年10月31日 ISBN 978-4-86472-300-8(16ページより)
  6. ^ 三重県地位向上委員会 編『三重のおきて ミエを楽しむための48のおきて』アース・スター エンターテイメント、2015年1月25日、174p. ISBN 978-4-8030-0657-5(93ページより)
  7. ^ スロット特集『団長の40時間ブッ続けのオールナイトスロット実戦in三重』 - 7RUSH@スポニチ
  8. ^ ホテル内に外国人客を対象にしたパチンコ店が誕生”. P-world. ピーワールド (2017年3月24日). 2017年4月20日閲覧。
  9. ^ “先の見えないパチンコ業から撤退、コストコ再販店にかけた長野市の社長 出店理由は…”. 信濃毎日新聞デジタル (信濃毎日新聞). (2023年12月28日). https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023122800723 2023年12月28日閲覧。 
  10. ^ 平成22年中における風俗関係事犯の取締り状況等について - 警視庁生活安全局保安課・2011年4月
  11. ^ 平成21年中における風俗関係事犯等について - 警視庁生活安全局保安課・2010年4月
  12. ^ 平成23年中における風俗関係事犯の取締り状況等について - 警視庁生活安全局保安課・2012年4月
  13. ^ 平成24年中における風俗関係事犯の取締り状況等について - 警視庁生活安全局保安課・2013年3月
  14. ^ 平成25年中における風俗関係事犯の取締状況等について - 警視庁生活安全局保安課・2014年3月
  15. ^ 平成27年における風俗環境の現状と 風俗関係事犯の取締り状況等について
  16. ^ 平成28年における風俗環境の現状と 風俗関係事犯の取締り状況等について
  17. ^ 平成29年における風俗環境の現状と 風俗関係事犯の取締り状況等について
  18. ^ 平成30年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯の取締り状況等について”. 2019年4月8日閲覧。
  19. ^ 令和元年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯の取締り状況等について”. 警察庁. 2020年4月14日閲覧。
  20. ^ 令和2年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯の取締り状況等について”. 警察庁. 2021年9月22日閲覧。
  21. ^ 令和3年における風俗営業等の現状と 風俗関係事犯の取締り状況等について”. 警察庁. 2022年5月2日閲覧。
  22. ^ 令和4年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について”. 警察庁. 2023年4月17日閲覧。
  23. ^ パチンコ店で「家に帰れ、この野郎」 26歳の好青年が“自粛警察”に豹変した理由、2020年11月16日閲覧。
  24. ^ 国民に殴られ続けたパチンコ店幹部は言った、「クラスターはない。これが事実」 、2020年11月16日閲覧。
  25. ^ 東京都医師会が緊急謝罪:パチンコ業界への風評で
  26. ^ 東京都暴力団排除条例 Q&A”. 警視庁 (2022年7月4日). 2022年8月20日閲覧。

関連項目 編集