絶対零度(T→0, β→∞)の極限では、フェルミ分布関数はヘヴィサイドの階段関数を用いて
となる。このときの化学ポテンシャルをフェルミエネルギーと呼ぶ。
量子数νで指定されるエネルギー準位ενを占有しているフェルミ粒子の個数 nνの統計的期待値⟨nν⟩を考える。占有数はマクロな観測量では無いが、期待値を求めておくと量子理想気体などの解析に便利である[2]。⟨nν⟩をグランドカノニカル分布で求めると、以下のようになる[3]。
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つまりフェルミ分布関数のεに占有数の期待値を求めたい準位のエネルギーενを入れると占有数の期待値が求まる。フェルミ分布関数が 0 から 1 までの値しかとれないことは、パウリの排他原理によりフェルミ粒子が一つの準位には一つまでしか占有できないこととも整合している。
実際にフェルミ分布関数を用いる場合には、準位が存在しないエネルギーεでのフェルミ分布関数を考えることがある。しかしそのような場合、準位が存在しないエネルギー領域でのフェルミ分布関数の値に占有数としての意味は無い。
たとえば半導体や絶縁体中の電子を考える際、フェルミエネルギーがエネルギーギャップ中に存在するため、エネルギーギャップ中まで拡張したフェルミ分布関数を考えることが多い。